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使い魔はじめました-17


使い魔はじめました―第17話―

翌朝。ルイズとサララは朝もやの中佇んでいた。
ルイズの額には、血管が青白く浮き出ている。
「遅いわね……! 何をしてるのよギーシュは!」
その声に明らかに怒りを含ませながらルイズは呟いた。
きっともうすぐ来ますよ、とサララはとりなしつつ、ため息をついた。
約束の時間は過ぎているのだが、ギーシュは待ち合わせ場所へ来ない。
「ああもう、姫様から承った大事な任務だっていうのに、
 何をしているのかしらあいつったら!」
頬を膨らませてブーブーと文句をこぼす。
「彼なら来ないよ」
「何ですって!」
朝もやの中から聞こえた声に、ルイズは不機嫌さを隠さずに返した。
現れたのは一人の長身の貴族だった。羽帽子を被っている。
ルイズの顔がさあっと青ざめ、ついで瞬時にりんごのように赤く染まる。
「わ、ワルドさま……」
「久しぶりだな! ルイズ、僕のルイズ!」
ワルドと呼ばれた彼は、人なつっこい笑みを浮かべるとルイズに駆け寄り抱え上げた。
「相変わらず君は羽のように軽いね!」
「……お恥ずかしいですわ」
普段とは違って、随分としおらしい様子をしている。サララとチョコは目を丸くした。
「あ、えっと、紹介しますから降ろしてくださいな、子爵様」
一人と一匹の視線に気がついて、ルイズは照れくさそうに微笑む。
「ええと……私の使い魔、いえ、パートナーのサララと、そのパートナーのチョコです」
「姫殿下から話は伺っているよ。はじめまして。
 僕の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
 魔法衛士隊、グリフォン隊で、子爵だ」
気さくな感じで、ワルドはサララに近寄った。
「今回の任務に、君たちと同行するよう姫殿下から命じられてね。
 君たちだけではやはり心もとないし、かといって、
 多くの人員を動かすわけにもいかない。そこで僕が選ばれたのさ」
それは心強いです、ありがとうございます、と答えながらもサララは首を傾げた。
「おや、何か聞きたいようだね。……ああ、ルイズと僕の関係かい?
 幼馴染でね、親が決めた婚約者同士なのさ」
ルイズさんはまだこんなに若いのに? と驚いた。
「貴族の女子の結婚は早いのよ。……一部に例外もあるけど」
最後の方はぼそりと呟いた。どうやら心当たりがあるらしい。

「はは、そういうことさ。……え、ミスタ・グラモンが来ない理由かい?
 ……この任務を遂行するには少しばかり、その……、口が軽そうだと思ってね。
 僕の一存で断りを入れたんだ。まずかったかな?」
少し考え込む。……特に問題はないと思うと伝えた。
「そうかい。それならよかった。さて、では出発しようか」
「あ、それじゃあサララに馬を出さないと……」
「大丈夫だよ、一緒に乗って行こう。羽のように軽い女の子二人増えても、
 僕のグリフォンは飛んでいけるよ」
口笛を吹くと、朝もやの中から立派なグリフォンが現れた。
鷲の頭と上半身に、獅子の下半身がついた幻獣である。立派な羽も生えている。
ワルドはひらりとグリフォンに跨ると、ルイズに手招きした。
もじもじしながらも、ルイズはワルドに抱きかかえられグリフォンに跨った。
「さて、次は君の番だよ」
サララはそう言われ急いで近寄った。しかし、はた、と足を止めワルドを見上げる。
「……どうかしたのかな?」
人のよさそうな彼の笑顔の横に、うっすらと白いモヤが見えた気がしたのだ。
ダンジョンの中、体か精神に異常をきたしているときに見えるモヤ。
まばたきしたら消えてしまいそうな薄さで、それが存在しているように見えた。
「ちょ、ちょっとサララ! なんでワルド様の顔を見つめてるのよ!」
何を勘違いしたのか、ルイズが顔を真赤にしながら叫ぶ。
少し、顔色が悪そうに見えたので、と慌ててごまかした。
「ふむ? 今朝はちょっと冷え込んだからかもしれないね」
ワルドはそう答えると、ひょいとサララを抱えて座らせる。
「ちょっと、ボクを忘れないでよね!」
チョコがひらりとサララの膝に乗るのを確認すると、手綱を握った。
「では諸君、出発だ!」
グリフォンは助走をつけると、勢いよく空へ飛び立った。
ルイズ達が出発して数時間後。太陽は高々と真上にあった。
「さて……彼女らは大丈夫かのう」
学院長室でオスマン氏は書類を処理する合間にぽつりと独りごちた。
アンリエッタからルイズ達に与えられた任務を聞き、当初は不安であったものの、
サララの実力を思い返して、大丈夫だろうと納得した。
しかし、魔法の使えぬ少女二人とドットメイジの旅路は、
やはり心配になってしまうのである。
「ミス・ロングビルにでも護衛を頼むべきだったかのう」
そんな風にして悩んでいた時、ドアがけたたましく叩かれた。
「入りなさい」
オスマン氏が答えると、一人の少年が転がるように飛び込んできた。
「失礼いたします、オールド・オスマン!」
少年を見て、オスマン氏は思わず叫んだ。
「ミスタ・グラモン? 君は確か王女殿下の任務に出たはずでは!」
面喰らったのも無理はない。そこにいたのは、ギーシュだったのだから。
「ああ、姫殿下の任務のことをご存知なのですね。実は……」
ギーシュは、自分が何故ここにいるのかを説明した。
任務に出るため荷物をまとめ、いざ部屋を出ようとした時。
王女殿下からの使者を名乗る人物が彼の部屋を訪れたのだ。
何事か、と扉を開いた瞬間、『眠りの雲』と思しき魔法によって
意識を奪われて今まで眠っていたのだという。
「ああ……、まさか姫殿下の任務が、誰かにバレていたなんて……!
 裏切り者がいるとは! きっとアルビオン貴族の暗躍です! 」
意気消沈するギーシュを、オスマン氏は慰める。
「ミスタ・グラモン。既に杖は振られたのじゃ。
 今さら嘆いてもどうしようもあるまい。
 我々に出来ることは、ただ待つことだけじゃて」
そう告げながら、オスマン氏は空の向こうを祈るような気持ちで見つめた。


オスマン氏の心配は、ラ・ロシェールに着くまでは取り越し苦労だった。
背後でイチャイチャしている二人に、サララとチョコが
うんざりした以外、彼らの旅に特に支障はなかった。
出発した日の夜には、既にラ・ロシェールに到着していた。
彼女らは『女神の杵』亭という街で一番上等な宿をとった。
貴族相手の宿だけあって、テーブルは顔が映りこむほどピカピカだ。
こんな上等な宿に泊まったことのないサララは、そわそわしている。
「んもー、みっともないわね。ちょっと落ち着きなさいよ」
そんなサララを見て呆れたようにルイズは息をついた。
流石に、一日グリフォンに乗りっぱなしだったのでクタクタである。
そこに、『桟橋』へ交渉に行っていたワルドが戻ってきた。
困ったような顔をして席につく。
「アルビオンへ渡る船は、明後日にならないと出ないそうだ」
「急ぎの任務なのに……」
ルイズは口を尖らせる。サララとチョコはほっとした。
どうやら、明日は早起きせずにすみそうだ。
しかし疑問が湧き上がり、サララはそれについて尋ねた。
「え? 何で明後日まで出ないのかって? 明日はスヴェルの月夜……、
 二つの月が重なる日だ。その翌朝がアルビオンが最も、ここに近づくんだよ」
「近づくって、そんな大陸が動いてるわけじゃあるまいし、意味わかんない」
チョコの言葉をもっともだと思いつつも、きっと風とかが関係してるんだろうな、と
サララは動かない頭でぼんやりと考えをめぐらせた。
風の調子がいいと船や竜は早く進める。季節によって風も違う。
明後日はよい風が噴く日なのに違いないんだろうと自己完結した。
「さて、じゃあ今日はもう寝ようか。部屋はとってくれたんだろう?」
「ええ、私とサララが相部屋で、ワルド様がお一人」
ルイズが渡した鍵を、ワルドが微笑みながら受け取る。
「ありがとう。いくら婚約者とは言っても、結婚前に同じ部屋に寝ては、
 君の母上に八つ裂きにされてしまいかねないからね」
ははは、と笑って告げた後で、ワルドは真剣な眼差しでルイズを見つめた。
「しかし……二人でしたい、大事な話がある。
 寝る前に少し、僕の部屋へ来てくれないか?」
その目の奥に不気味な光があったことに、疲れていたサララも
顔を真赤にしていたルイズも気づくことはなかった。

「ねえ、サララ。あのワルドって人なーんか妙じゃない?」
チョコがベッドの脇に置かれた籠の中であくびをしながら尋ねた。
猫をベッドに入れないでください、と宿の人に言われたためだ。
「何ていうか……紳士すぎるよね。優しすぎる」
悪いことじゃないのに何故心配するのか、と答える。
「サララったら、そういうとこお人よしなんだから。
 うーん、でもボクもどこがおかしいとは言えないんだよなー。
 普通、こういうお仕事の時って、何か邪魔が入ったりするじゃない?
 でも今回は、ぜんぜん、なーんにもないんだもん」
その言い草に、サララは苦笑いをこぼす。
要は、折角意気込んで出てきたのにドキドキ感がなくてつまらない、と言いたいらしい。
妙なところで自分に似てるなあと思いながら、その頭を撫でる。
確かに、普段の仕事であれば盗賊に襲われたり、モンスターに襲われたり、
必要なアイテムが見つからなかったり、と一筋縄ではいかない。
でもまあ、たまにはこんな風にのんびりした仕事があってもいいだろう。
そう答えを返したが、やはりまだ不満そうだった。
「……疲れてるからこんなこと考えちゃうんだろうね。
 ふぁ……おやすみ、サララ」
しかし眠気に負けたのか、大きなあくびを一つすると、そのまま寝息を立て始めた。
サララは、ワルドの部屋に出かけたルイズを待とうかと思ったが、
あまりに疲れていたため、早々に寝ることにした。
ここは山の中だが、港町だと聞いている。きっと見たこともない商品が
たくさん売られているに違いない。許可をもらえたら、
街の中を見て回ろう……そう考えながら、サララは眠りに落ちていった。



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