第三話「食事」
朝、カイジを待ち受けていたのは、ルイズの鞭であった。
「ご主人より寝坊する使い魔がどこにいるっ……! あぁ~んっ……! ナメてるのかっ……貴様っ……!
ククク……これは躾けっ……ねぼすけな使い魔に対する愛のムチっ……! ククク……カカカ……」
「がっ……! ぐぁっ……! やめろっ……!」
ククク……これは躾けっ……ねぼすけな使い魔に対する愛のムチっ……! ククク……カカカ……」
「がっ……! ぐぁっ……! やめろっ……!」
容赦なく叩きつけられるムチっ……!
悲鳴っ……阿鼻叫喚っ……
ビシリ、ビシリとムチを打つルイズは恍惚とした表情を浮かべる。ルイズの中で何かが目覚めたようだ。
だが、救いは意外なところからやってきた。コンコンと扉がノックされる。
悲鳴っ……阿鼻叫喚っ……
ビシリ、ビシリとムチを打つルイズは恍惚とした表情を浮かべる。ルイズの中で何かが目覚めたようだ。
だが、救いは意外なところからやってきた。コンコンと扉がノックされる。
「ルイズ……入るわよ……! ククク……」
(ぐっ……ツェルプストーっ……何をしにきたっ……!)
(ぐっ……ツェルプストーっ……何をしにきたっ……!)
入ってきたのは、褐色の肌に燃えるように真っ赤な髪のグラマーな少女っ……! そう、微熱のキュルケである。
「何をしにきた、って顔ね、ルイズ。あなたの使い魔を見に来たのよ。ククク……」
「きぃ~っ……! はっ……ご、ごほん。アンタは何を召喚したというのよ……」
「サラマンダーだっ……貴様のような平民しか召喚できないゼロとは、根本的に違うっ……本当の使い魔たる幻獣っ……!」
「きぃ~っ……! はっ……ご、ごほん。アンタは何を召喚したというのよ……」
「サラマンダーだっ……貴様のような平民しか召喚できないゼロとは、根本的に違うっ……本当の使い魔たる幻獣っ……!」
(なんだ……まるで恐竜……! ジュラシック・パーク……! 見てないけどっ……!)
サラマンダーを見つめるカイジ。サラマンダーがカイジを見かえした、その瞬間であった。
カイジの右手の甲がぼんやりと光り、どこか熱を帯びたようになる。
次の瞬間っ……!
カイジの右手の甲がぼんやりと光り、どこか熱を帯びたようになる。
次の瞬間っ……!
『我が名はフレイム……! はじめてお目にかかるっ……!』
「なに……? このトカゲっ……喋るのかっ……!?」
「あら、フレイムは韻獣じゃないから喋らないわよ? ふふ、使い魔さん、ほほの傷がワイルドで素敵だわ……それじゃあね、ゼロのルイズ」
「ぐっ……!」
「あら、フレイムは韻獣じゃないから喋らないわよ? ふふ、使い魔さん、ほほの傷がワイルドで素敵だわ……それじゃあね、ゼロのルイズ」
「ぐっ……!」
キュルケと一緒にサラマンダーも出て行く。きゅるきゅると鳴くその鳴き声は、カイジには言葉として聞こえていた。
『またお会いしよう……幻獣の友人よ……!』
(一体……何がっ……まるで言葉がわかるようなっ……! 幻聴じゃねえっ……!)
ざわ…… ざわ……
混乱するカイジに八つ当たり気味にルイズのムチが飛んだ。
「おいっ……なにをっ……! 俺は何もっ……!」
「コココ……キキキ……主人の精神の安定を保つのも使い魔の役目っ……! これは愛情っ……! 愛のムチよ……!」
「コココ……キキキ……主人の精神の安定を保つのも使い魔の役目っ……! これは愛情っ……! 愛のムチよ……!」
ムチを振るうルイズは知らない。
自分が引き当てた使い魔が、使い魔の王たる力を身に付けてしまったことを……!
自分が引き当てた使い魔が、使い魔の王たる力を身に付けてしまったことを……!
食堂に行き、豪華な食事を前にしても、ルイズは非情であった。
「貴様は使い魔っ……外見がいかに人間にみえても、使い魔は使い魔っ……! 人間ではないっ……犬っ……!
だから食事は床で食べろっ……! そこで喰えっ……!」
だから食事は床で食べろっ……! そこで喰えっ……!」
ボロ…… ボロ……
カイジの流す涙が、粗末なスープに落ちた。
(人間としての尊厳っ……それをここまで踏みにじられなくてはならないのかっ……!
帝愛の強制労働所以下っ……尊厳の剥奪っ……! いっそ、ここから出て行きたいっ……!
がっ……駄目っ……! ここで食事を取らないことで、体力は落ちていくっ……確実にっ……!
雌伏っ……耐えろっ……! 生きてこその尊厳っ……!
そうだ……俺は奴隷だっ……だからこそ、皇帝を刺すっ……!)
帝愛の強制労働所以下っ……尊厳の剥奪っ……! いっそ、ここから出て行きたいっ……!
がっ……駄目っ……! ここで食事を取らないことで、体力は落ちていくっ……確実にっ……!
雌伏っ……耐えろっ……! 生きてこその尊厳っ……!
そうだ……俺は奴隷だっ……だからこそ、皇帝を刺すっ……!)
カイジは飲んだ。地面に置かれた皿からスープを……! 犬のようにっ……!
と、ぽとりと鳥の皮がスープに放り込まれた。
と、ぽとりと鳥の皮がスープに放り込まれた。
「くれてやるから、食べろ……あと、皿は手に持って食べていいっ……! 誇りを持て……このルイズの使い魔としてっ……!」
俯くカイジ。かすかに体を震わせている。ルイズはすこし機嫌を直した。
(きっと感動しているのね……主人の優しさに……! ククク……たわいのない使い魔よ……カカカ……)
否っ……断じて否っ……!
カイジは俯いた顔で笑っていたっ……!
カイジは俯いた顔で笑っていたっ……!
(ククク……言ってろっ……ガキっ……!
俺の誇りは、奴隷は奴隷でも、Eカードのように皇帝を刺す奴隷としての誇りっ……!
哀れみをかけるならっ……好きにするがいいっ……! 俺の損にはならないっ……!
俺は皇帝を刺すっ……! それまでは、せいぜい夢を見ていろっ……!)
俺の誇りは、奴隷は奴隷でも、Eカードのように皇帝を刺す奴隷としての誇りっ……!
哀れみをかけるならっ……好きにするがいいっ……! 俺の損にはならないっ……!
俺は皇帝を刺すっ……! それまでは、せいぜい夢を見ていろっ……!)
カイジは胸に入れたEカードにそっと手を当てる。
かつてカイジに悪夢を見せたEカードも、ここでは希望……皇帝を刺すという、カイジの希望そのものであった。
かつてカイジに悪夢を見せたEカードも、ここでは希望……皇帝を刺すという、カイジの希望そのものであった。
奴隷の心にともった、たった一つの灯火っ……光っ……!
人は、希望があるからこそ、生きることができるっ……!
人は、希望があるからこそ、生きることができるっ……!
第三話「食事」終わり