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ゼロ=パペットショウ-06


 燃えて、ゆく。




 ゼロ=パペット・ショウ
   第六幕




それは、幼い頃の思い出だった。
子供の頃から、人形を見ることが好きだった。
いつしか彼は疑問に思う。なぜ、この人形は“動かない”のだろう、と。

頭がある。胴体がある。腕には指すらついている。両脚だって、ついていたのだ。

ここまで人間と同じ形をしているというのに、なぜ人形は動かないのか。
人間と人形、どこが違うのか。人間だから動くのか。人形だから動かないのか。

「そんなに動いているのを見たいんだったら、エミリオが動かしてみればいいんじゃない?」

エミリオ。それは彼の名だった。
そして彼に、人形は動くのを待つのではなく“人が操り動かすもの”と認識させた少女の名は、

 イザベラと、言った。



燃えてゆく。燃えてゆく。燃えてゆく。
棺の群れが、燃えてゆく。炎に包まれ、燃えてゆく。

燃えてゆく。燃えてゆく。燃えてゆく。
彼女の髪が、彼女の服が、彼女の彼女の彼女の彼女が、彼女が、イザベラが燃えてゆく。

「阿ア……亜ァ……、何テ古都駄……
 (なんてことだ……)」

自身を押し潰す棺桶≒瓦礫は、咄嗟の人形操作によって回避した。しかし、包み込むように放たれた炎までは回避できない。
空を飛んでいた原住生物らしきものには気付いていたが、火を吐き風を起こすなどということは考えてもいなかった。
考えてしかるべきだったのかもしれない。なぜなら敵対している三人も、風や炎で攻撃してきたのだから。
しかし、レオノフにとっては今も自分を焼き続ける炎など、何の痛痒ももたらしてはいなかった。

 イザベラが、燃えている。

彼女はいつもレオノフの中心にあった。
他の記憶は定かではないが、彼女のことだけは一瞬たりとも忘れたことはなかった。
いつも、手の届く場所に彼女を置いていた。この世で最も安全な場所に、彼女を置いていた。
自らの武器≒人形達の、中心に。
棺の塔の、頂上に。

 そのイザベラが、燃えている。

彼女≒人形は、ただ火をかけられただけで燃え尽きるようなことはない。
そもそも棺に使われている材質も、ハルケギニアでは見ることも出来ない特殊な合金であったし、
彼の作る人形も最低限の耐火処理はされている。

そう簡単に燃え尽きたりはしない。そう、人形自身は。
しかし、彼女の髪は? 目は? 肌は?
焼けてゆく。焦げてゆく。燃えてゆく。愛しい彼女が、燃えている。

「イザベラ……イザベラ……イザベラ、イザベラいざべらイザベらぁぁあ」

炎に包まれたままのイザベラ。必死で手繰り寄せる。抱きしめる。
未だ消えない彼女の服の火は、レオノフ自身がその肉体を押し付けることにより消えてゆく。
肉体が焼かれる音を聴きながらも、レオノフは彼女の炎を必死に消火する。

「ヨ蜘蛛……世ク喪ヨクモ翼モぉ!
 (よくもよくもよくもよくも!)」

火は水で消える。道理だった。しかし、水などというものはここには存在しない。
ならば何を持って消すべきか。レオノフは決して迷わない。

小型の異形。今までルイズの首筋に刃を当てていた、人蜘蛛。
その人形が、切り裂いた。レオノフの頸動脈を。

噴水のように流れ出た血液は、劇的な効果をもたらしてゆく。少なくとも、弱まってきた人形一つ分の火を消すには、充分な量だった。

「イザベラ……」

血と炎により見るも無惨な姿となった彼女の頬を、レオノフは優しく撫でる。それは酷く優しさに満ちていて。

炎蛇のコルベールが放った爆炎により、その優しさごと消し飛んだ。


「やった……か?」


爆炎という魔法がある。
錬金により空気中の水蒸気を気化した燃焼油へと変化、大気と攪拌させた上で火の魔法で着火するというトライアングルスペル。
着火された火は気化した油を瞬く間に燃焼させ、巨大な爆発を起こす。
その爆風と、“周囲の酸素を食い尽くす”という二次効果により対象を死に至らしめるという必殺のスペルである。

今回行った魔法は、爆炎の応用だった。
炎はサラマンダーのフレイムにより、初めから用意されていた。と、なれば後は水蒸気を燃焼油へと錬金すれば良かったのだが。
爆炎が爆炎たりえる理由は、瞬時に起こる大規模な爆発にある。小規模の爆発では酸素を食い尽くすまでは行かないからだった。
コルベール一人の錬金では、瞬時に用意できる気化油に限りがある。
それを補うために、タバサとキュルケを含めた三人同時に錬金を行ったのが、今回の爆発の正体だった。

「また凄い効果ね。これならあの人形使いでもひとたまりもないと思うわ」

既に疲労によって地に座り込んでいたキュルケ。
タバサは辛うじて立ってはいるが、杖にもたれかかるような体勢からもその疲労が窺える。

使い手を失ったからだろう。力の抜けた青年の人形から解放されたルイズは、泣きそうな顔でそんなキュルケ達を見つめていた。

辛い、戦いだった。コルベールは心底そう思う。
あの人形使いが風竜をあそこまで放置しなければきっと、この策は上手く行かなかっただろう。
恐らく、風竜が先住魔法を使えるなどと、思ってもいなかったに違いがない。だからこそあそこまでの接近を許したのだ。
風竜の正体を知っていたら、銃で撃退されていたに違いない。

ということは、あの風竜は韻竜ということか。まあ、それも、あの老紳士と比べれば大した問題じゃないだろう。

そんな事を思いながらコルベールは、傷だらけの自身の身体を改めて検分する。
左足に四発。右脚に二発。左手に三発。胴体部分には四発もの弾丸が着弾している。

よくもまあ生きていたものだと、自嘲するしかない。

生徒を守るという使命感により感じなくなっていた痛みが、今さらながらやってくる。
穴の空いている内臓も、一つや二つで済めばいいが。
正直、目の前が暗くなってきた。早く治療を受けなければ、それこそ命を失うだろう。

と、泣きじゃくるようなルイズの声。振り向いてみると、キュルケがルイズを優しく抱きしめている。
代々の確執を乗り越えた友情の誕生だ、などと暢気な気分で苦笑が漏れる。
見ればタバサも同じような表情をしていた。きっと似たようなことを考えていたのだろう。

それは、戦いが終わった平和な光景。老紳士という厄災が消えた、平和な光景。
だったはず。

「ユル鎖ナ胃……
 (ゆるさない)」

聞こえてしまった。大切な何かが欠けてしまったかのような、あの声が。

「小ムスメ共ガ、ヒト離モ、逃ガ屍マ閃――――!!
 (小娘共が、一人も逃がしません)」

老紳士の左手には、使い魔の証=ルーンが輝きを放っていた。







人形劇は第二部へ。これよりの演目は、老紳士の復讐。


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