あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ナイトメイジ-27


うららかな昼下がり、ルイズは自室にて机の上を見下ろしていた。
「これね」
その隣にいるベルもまた腕組みをして机の上を見下ろしている。
「これよ」
もちろん机が珍しいわけではない。
2人が視線を注いでいるのは机の上に置かれた300ページほどの古びた一冊の本。
皮で装丁はされているが、時の経過には勝てず表紙はぼろぼろで茶色く変色しているといった有様だ。
「でも、これが本当の始祖の祈祷書なの?聞いてた以上に偽物っぽいわね」
ベルは祈祷書を摘んでぴらぴら振り回す。
「乱暴に扱わないでよ!」
それをルイズが奪い取って机の上にバンとたたきつける。
強く叩きすぎて天井からホコリがぱらぱら落ちてきた。
「何か、こうドキドキするわね。これに私が使える魔法が書かれているかも知れないのよね」
「多分ね」
「どんな魔法が使えるようになるのかしら」
「そうねー」
しばし沈思黙考。
指先で肘を叩いていたベルがかすかに笑った。
「足がクサくなる」
「は?」
「鼻から怪光線」
「ちょっと何よそれ」
「月を見るとマグロに変身」
「何でよりにもよってマグロなのよ」
「すっとこどっこいになる」
「もはや魔法でも何でもないわね」
「じゃあ、魔法っぽく脳みそがスライムになる」
「魔法っぽいけどいやよそれは」
「だったらトコロテン」
「脳みそが変わるのはもういいから」
「ばるばる」
「意味わかんないわよ」
「耳から赤外線」
「方向性が最初に戻ってる」
「赤外線ですか。いいですねそれ」
そこにベッドのシーツを取り替えに来たシエスタが口を挟む。
今まで喋らなかったのでわからなかったが、実は最初からこの部屋にいたのだ。
「赤外線は良いですよ。お芋が美味しく焼けますから」
「芋?焼くの?てゆーか赤外線ってなに?芋を焼くためのものなの?」
「さあ」
「さあって……」
「それよ、ルイズ!」
頭を抱えるルイズの鼻先にベルの指先が突きつけられた。
おまけに無意味な迫力まである。
「そ、それ?」
「赤外線よ、赤外線。美味しい焼き芋が食べられるようになるって最高じゃない」
「いいですよね。焼き芋。わたし、ミス・ヴァリエールが赤外線出せるようになったらお芋、たくさん持ってきますね」
「あ・な・た・た・ち!」
ベルとシエスタの口が止まる。
何か声にそこはかとなく殺気がこもっていたようだ。
「どんな魔法が出てくるかなんてわからないじゃない。まずは、これをみてからよ」
「そうよね。早く見なさいよ」
「わかってるわよ」
釈然としない気分になったものの、ルイズは椅子を引いて始祖の祈祷書の前に座る。
風のルビーの嵌っている手を意識した。
これも魔法に関係するはず。
ルイズはその手を滑らせ祈祷書に触れた。
その途端、風のルビーと始祖の祈祷書が輝きだす。
胸が押さえつけられないほどに高まる。
光を浴びながら、震える指でルイズは祈祷書を開いた。
まず最初のページ。
──姫様はこの祈祷書は白紙だと言っていた
なのに、なのに、ルイズの目には確かに古代のルーン文字で書かれた文章が飛び込んできたのだ。
「ベル、見てよ!ほら、これ、ちゃんと書いてあるわよ」
「どこに?」
「どこってここよ」
ルイズは指先で文字をなぞってベルにどこに文字が書いてあるかを教えてやるがベルは目をすがめて首をかしげ、要領の得ない顔をするばかりだ。
「シエスタ、あなたはどう?」
諦めたのかベルはシエスタを呼んで祈祷書を見せる。
「白紙……ですよね」
シエスタも同じで白紙としか見えていない。
「私は読める。でもベルやシエスタには読めない。じゃあ、これって」
「本物みたいね」
そう、本物。
本物の祈祷書。
胸の鼓動はどんどん早くなり、体が熱くなってくる。
動いてもいないし、暑くもないのに汗が出てきそうだ。
「それで、なんて書いてあるの?」
「えーと……」
古代の文字ではあったが、文法も文字の種類も授業で習ったとおりだ。
ルイズはそれを現代語に直し、少しずつ口に出して読んだ。

      序文

   これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、「火」「水」「風」「土」と為す。

   神は我に更なる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、更に小さな粒より為る。
   神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。
   我が系統は更なる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四に非ざれば零。
   零即ちこれ「虚無」。 我は神が我に与えし零を「虚無の系統」と名づけん。

   これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐ者なり。またそのための力を担いしものなり。
   「虚無」を扱うものは心せよ。 志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし「聖地」を取り戻すべく努力せよ。
   「虚無」は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。
   時として「虚無」はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。
   たとえ資格無き者が指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は「四の系統」の指輪を嵌めよ。
   されば、この書は開かれん。

         ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

「虚無?虚無よ!ねえ、ベル。私の魔法は伝説の虚無なのよ」
ルイズはこれほど興奮したことはない。
ゼロと言われていた自分の系統は、伝説の系統なのだ。
オルゴールの歌を聴いた時に薄々はそうかもしれないと思っていたが、確証はなかった。
それが確信に変わった。
感動で体が震えそうになる。
「わかったから次」
「次は……次」

   以下に、我が扱いし「虚無」の呪文を記す。

次だ。
いよいよ次から虚無の魔法の呪文が記述されるているのだ。
涙まで出そうになりながらルイズはページをめくった。


次のページは白紙だった。


「あ、あれ?」
慌ててさらにページをめくる。

ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり

白紙のページはまだ続く。
そうしていると、待ちくたびれてきたのかベルはシエスタとお喋りを始めた。
「赤外線じゃなくてもマイクロ波でもいいわね。ごはん温め直せるし」
「マイクロ波って怪力線のことですよね。ごはん食べられなくなりませんか」
「怪力線って……よく知ってるわね。そんなこと」
「ひいおじいちゃんが昔、言ってたんです」
「どんな人なのよ」
「2人とも静かにして!!」
後ろで野次馬と化していた2人が静かになったところでルイズはさらにページをめくり続ける。

ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり
ぱら、ぺらり

残りのページがどんどん少なくなる。
さっきまで興奮で汗ばんでいた手は逆に不安でかさかさになりページがめくりにくくなっていた。
そしていよいよ最後のページ。

ぱら、ぺらり


最後のページは








白紙だった


「なんで?なんで?なんで?どうして?ここまで書いておいて呪文は無し?」
「本物なのは確かなんだし、読み進めるのにまだ条件があるんじゃない?」
「条件?どんな?」
「知らないわよ」
「そーーーんーーーーなーーーーー」
その声は誰が聞いても哀れみを誘うものだった。
合掌


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