第四話
次の日、宝物庫にルイズは目撃者として呼ばれた。横にはグレイヴもいる。
彼は喋れないのであまり意味はなかったのだが、目撃者だったため一応連れて
きたのだ。
さらにキュルケと知らない女の子が呼ばれている。その子の名前はタバサ
といい、キュルケの友人らしい。
教師同士の話を聞いてみると盗まれたものは『破壊の杖』というもので、
盗んだ盗賊の名は土くれのフーケというらしい。
大胆にも壁にメッセージと自分の名前を残していったのだ。
シュヴルーズが当直の責任を追及されていたが、オスマンの登場により
いったん話は終わった。シュヴルーズをかばうようにオスマンは当直の現状に
ついて尋ねる。どうやら、ちゃんと当直をしている教師はいないようだ。
無理もないわねとルイズは思う。オスマンも言っていたが誰が魔法学院が
襲われると考えるのだ。しかし現実として宝物庫は襲われている。
「犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
オスマンが質問する。
「この三人です」
コルベールが答える。三人とはルイズとキュルケとタバサのことだ。
グレイヴは使い魔なので数には入らない。
うすうすと分かってはいたが、やはりあの二人も目撃者らしい。すると
あのとき飛んでいたのは、フーケの使い魔ではなくタバサの使い魔だったの
だろう。何か手がかりを持っているといいのだけど。フーケの顔を見ているとか。
詳しく説明してみたまえと言われ、ルイズは昨日のことを説明し始める。
グレイヴの銃のことは隠した。卑怯な気はしたが言い出せなかったのだ。
ルイズの説明を引き継ぐようにキュルケが話し始める。
「私はタバサと一緒に彼女の使い魔でちょっと出かけていたんですが、学院に
帰ってきたとき何か大きな音がしたんです。それで気になって見にいって
もらったんです」
キュルケは一息ついて続ける。
「彼女の使い魔はウィンドドラゴンなので、すぐに大きなゴーレムが見えました。
肩に黒いローブのメイジが乗ってました。それでそのゴーレムに近づいてみたん
ですけど、いきなりゴーレムが崩れたんです。すぐに周囲を見渡したんですけど、
黒いローブのメイジはいつの間にか消えていたので、引き返しました」
「顔は見えなかったのかね?」
オスマンが尋ねる。
「ヴァリエールも言ってましたが、黒いローブのせいで見えませんでした」
「ミス・タバサは?」
「見てません」
タバサが答える。
「手がかりはなしというわけか」
周囲の空気が重くなるが、オスマンの秘書のロングビルが現れたことにより
一変する。彼女は朝からフーケの調査を行い、その居場所を突き止めた
らしかったのだ。
彼女が言うには近くの森の廃屋に黒ずくめの男が入っていくのを、目撃した
人がいるらしい。
黒ずくめのローブと聞いてルイズはフーケに間違いないと思い、オスマンに
そのことを伝える。
王宮に知らせ、助けを求めようとするコルベールに対し、オスマンは
自分達で解決すべきだとし、捜索隊の有志を募る。
「我はと思うものは、杖を掲げよ」
誰も捜索隊に志願しないのを見てルイズは決心した。元はといえば
私が原因なんだから私が何とかしないと。そう思い杖を掲げる。
それを見てキュルケも杖を掲げ、続いてタバサも杖を掲げる。
キュルケはルイズに対する対抗心で、タバサはキュルケを心配して。
彼は喋れないのであまり意味はなかったのだが、目撃者だったため一応連れて
きたのだ。
さらにキュルケと知らない女の子が呼ばれている。その子の名前はタバサ
といい、キュルケの友人らしい。
教師同士の話を聞いてみると盗まれたものは『破壊の杖』というもので、
盗んだ盗賊の名は土くれのフーケというらしい。
大胆にも壁にメッセージと自分の名前を残していったのだ。
シュヴルーズが当直の責任を追及されていたが、オスマンの登場により
いったん話は終わった。シュヴルーズをかばうようにオスマンは当直の現状に
ついて尋ねる。どうやら、ちゃんと当直をしている教師はいないようだ。
無理もないわねとルイズは思う。オスマンも言っていたが誰が魔法学院が
襲われると考えるのだ。しかし現実として宝物庫は襲われている。
「犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
オスマンが質問する。
「この三人です」
コルベールが答える。三人とはルイズとキュルケとタバサのことだ。
グレイヴは使い魔なので数には入らない。
うすうすと分かってはいたが、やはりあの二人も目撃者らしい。すると
あのとき飛んでいたのは、フーケの使い魔ではなくタバサの使い魔だったの
だろう。何か手がかりを持っているといいのだけど。フーケの顔を見ているとか。
詳しく説明してみたまえと言われ、ルイズは昨日のことを説明し始める。
グレイヴの銃のことは隠した。卑怯な気はしたが言い出せなかったのだ。
ルイズの説明を引き継ぐようにキュルケが話し始める。
「私はタバサと一緒に彼女の使い魔でちょっと出かけていたんですが、学院に
帰ってきたとき何か大きな音がしたんです。それで気になって見にいって
もらったんです」
キュルケは一息ついて続ける。
「彼女の使い魔はウィンドドラゴンなので、すぐに大きなゴーレムが見えました。
肩に黒いローブのメイジが乗ってました。それでそのゴーレムに近づいてみたん
ですけど、いきなりゴーレムが崩れたんです。すぐに周囲を見渡したんですけど、
黒いローブのメイジはいつの間にか消えていたので、引き返しました」
「顔は見えなかったのかね?」
オスマンが尋ねる。
「ヴァリエールも言ってましたが、黒いローブのせいで見えませんでした」
「ミス・タバサは?」
「見てません」
タバサが答える。
「手がかりはなしというわけか」
周囲の空気が重くなるが、オスマンの秘書のロングビルが現れたことにより
一変する。彼女は朝からフーケの調査を行い、その居場所を突き止めた
らしかったのだ。
彼女が言うには近くの森の廃屋に黒ずくめの男が入っていくのを、目撃した
人がいるらしい。
黒ずくめのローブと聞いてルイズはフーケに間違いないと思い、オスマンに
そのことを伝える。
王宮に知らせ、助けを求めようとするコルベールに対し、オスマンは
自分達で解決すべきだとし、捜索隊の有志を募る。
「我はと思うものは、杖を掲げよ」
誰も捜索隊に志願しないのを見てルイズは決心した。元はといえば
私が原因なんだから私が何とかしないと。そう思い杖を掲げる。
それを見てキュルケも杖を掲げ、続いてタバサも杖を掲げる。
キュルケはルイズに対する対抗心で、タバサはキュルケを心配して。
「ではこの三人に行ってもらおうかの」
オスマンが決断するが、ミセス・シュヴルーズが生徒達を危険にさらす
わけにはいかないと反対する。しかし、それなら自分が行くかね? と言われ
言葉をにごした。
それからオスマンはタバサがシュバリエの称号を持っていることを皆に
伝える。つまり実力の認められているメイジなのだ。キュルケも知らなかった
ようでタバサに確認している。当の本人は誇らしげにするでもなく黙って
立っていたが。
次にオスマンはキュルケについて、強力な炎の使い手と誉める。最後に
ルイズだがオスマンも困っているようだった。誉めるところを探すのに
苦労しているのが感じられる。結局、将来が期待されているという何とも
微妙なものだった。
オスマンはちらりとグレイヴを見るが何も言わなかった。彼のことは
ガーゴイルであることも、『ガンダールヴ』らしいことも秘密なのだ。
コルベールもグレイヴのことを見ていた。ミス・ヴァリエールが行く以上、
彼も行くだろう。彼女達のことを守って欲しい。彼にならそれが可能だと
感じていた。
ルイズ達が行くことに決まり、ロングビルが道案内をしてくれることに
なった。移動手段としてオスマンが馬車を用意してくれる。一度解散し
おのおの準備をして、その馬車に集合することにした。
オスマンが決断するが、ミセス・シュヴルーズが生徒達を危険にさらす
わけにはいかないと反対する。しかし、それなら自分が行くかね? と言われ
言葉をにごした。
それからオスマンはタバサがシュバリエの称号を持っていることを皆に
伝える。つまり実力の認められているメイジなのだ。キュルケも知らなかった
ようでタバサに確認している。当の本人は誇らしげにするでもなく黙って
立っていたが。
次にオスマンはキュルケについて、強力な炎の使い手と誉める。最後に
ルイズだがオスマンも困っているようだった。誉めるところを探すのに
苦労しているのが感じられる。結局、将来が期待されているという何とも
微妙なものだった。
オスマンはちらりとグレイヴを見るが何も言わなかった。彼のことは
ガーゴイルであることも、『ガンダールヴ』らしいことも秘密なのだ。
コルベールもグレイヴのことを見ていた。ミス・ヴァリエールが行く以上、
彼も行くだろう。彼女達のことを守って欲しい。彼にならそれが可能だと
感じていた。
ルイズ達が行くことに決まり、ロングビルが道案内をしてくれることに
なった。移動手段としてオスマンが馬車を用意してくれる。一度解散し
おのおの準備をして、その馬車に集合することにした。
ルイズとグレイヴは集合場所に一番乗りだった。周囲にまだ誰もいない。
グレイヴは昨日の二丁の銃に加え棺桶を持ってきている。デルフリンガーは
置いていかれて、部屋ですねていた。
あの銃を持ってきているのは理解できる。凄い威力だった。役に立つかも
しれない。しかし何故棺桶まで持ってきているのか疑問だった。もしかしたら、
あれも銃なのだろうか? あの銃も変わった形をしているし、棺桶の形をした
銃もあるかもしれない。扱いづらそうだが。
棺桶を指さし尋ねる。
「もしかして、これも銃なの?」
グレイヴはうなずく。
やっぱりそうなのだ、しかしどうやって撃つのだろうか?
それを尋ねようとしたらキュルケとタバサが来てしまった。できればあまり
知られたくないことだったので、話を打ち切った。
「ヴァリエール?」
「何よ?」
「あんた、その平民も連れて行くの?」
そうだった、キュルケ達にとっては彼はただの平民なのだ。何とか
誤魔化さないと。
「そうよ、こいつだって目撃者なんだから」
「まあ、いいけどね」
深くは追求せず、キュルケは肩をすくめた。
最後にロングビルが来る。やはりグレイヴに少し驚いているようだったが
何も言わなかった。そして御者を買って出てくれる。
「ミス・ロングビル、手綱なんて彼に任せればいいのではないですか?」
グレイヴを見て言う。
「いいのですよ、私は貴族の名をなくしていますから」
キュルケがそのことについてさらに聞こうとしたが、ルイズが止めさせた。
キュルケは今度はグレイヴについて聞き始める。
グレイヴは昨日の二丁の銃に加え棺桶を持ってきている。デルフリンガーは
置いていかれて、部屋ですねていた。
あの銃を持ってきているのは理解できる。凄い威力だった。役に立つかも
しれない。しかし何故棺桶まで持ってきているのか疑問だった。もしかしたら、
あれも銃なのだろうか? あの銃も変わった形をしているし、棺桶の形をした
銃もあるかもしれない。扱いづらそうだが。
棺桶を指さし尋ねる。
「もしかして、これも銃なの?」
グレイヴはうなずく。
やっぱりそうなのだ、しかしどうやって撃つのだろうか?
それを尋ねようとしたらキュルケとタバサが来てしまった。できればあまり
知られたくないことだったので、話を打ち切った。
「ヴァリエール?」
「何よ?」
「あんた、その平民も連れて行くの?」
そうだった、キュルケ達にとっては彼はただの平民なのだ。何とか
誤魔化さないと。
「そうよ、こいつだって目撃者なんだから」
「まあ、いいけどね」
深くは追求せず、キュルケは肩をすくめた。
最後にロングビルが来る。やはりグレイヴに少し驚いているようだったが
何も言わなかった。そして御者を買って出てくれる。
「ミス・ロングビル、手綱なんて彼に任せればいいのではないですか?」
グレイヴを見て言う。
「いいのですよ、私は貴族の名をなくしていますから」
キュルケがそのことについてさらに聞こうとしたが、ルイズが止めさせた。
キュルケは今度はグレイヴについて聞き始める。
「ねえところで、その棺桶は何なの? さっきから気になってたんだけど」
キュルケがルイズに尋ねる。
「それは、その、グレイヴの持ち物で私もよく知らないの」
とっさに誤魔化そうかと思ったが上手く言葉が出てこない。
「変わったもの持ってるわね。これもあの箱に入ってたの?」
「そうよ、そこからグレイヴが持ってきたの」
「で、これ何に使うの? 大きくってけっこう邪魔なんだけど」
また答えにくいことを聞かれた。グレイヴに直接聞きなさいよという言葉を
飲み込む。彼がもし、その質問に答えてしまったらやっかいなことになる。
「わかんないけど、殴るとか? けっこう重いし、威力はあるわよ」
本当は銃らしいということは秘密にしたい。
「殴るって、あなた正気なの? 相手はあのゴーレムなのよ、大きさ見た
でしょう?」
呆れたように言われる。
そんなことは分かっていたが、いまさら引くことはできない。
「ゴーレムじゃなくてフーケを殴ればいいでしょう」
「あんたねえ、こんなもので殴られたら死ぬわよ? フーケを殺すつもり?」
いっそう呆れたような顔をされる。
「そもそもこれ、扱えるの? 触ってみたけどすっごい重そうよ?」
「大丈夫でしょ、グレイヴが運んできたんだから」
「けっこう力持ちなのね、顔も悪くないし。無口なのが減点かしらね」
喋れないと知っているはずなのにそんなことを言う。
「無口じゃなくて喋れないの!」
ルイズも律儀に言い返した。
「それにしても彼も災難よねえ、無謀な主人が志願したせいでこんなことに
付き合わなくっちゃいけないんだから」
気の毒そうにグレイヴを見ながら言う。
「今なら間に合うわよ、彼だけでも帰してあげたら?」
「うるさいわね、彼は私の使い魔なの。主人を守る義務があるわ。それに
あんただって、さっき納得したでしょう」
「納得というか、まさか戦わせるつもりで連れてきたとは思わないわよ。
メイジ同士の戦いに平民を巻き込むつもり? 私だってフレイムは置いて
きてるわよ。ちょっと力持ちなくらいじゃどうにもならないわよ?」
ちなみにタバサの使い魔、ウィンドドラゴンのシルフィードは上空をついて
きている。
「いいのっ、きっと何かの役に立つわ」
グレイヴの正体を喋れないルイズは強引に押し切る。
「こんな主人であなたも大変ねえ」
キュルケが同情の視線をグレイヴに向けた。
キュルケがルイズに尋ねる。
「それは、その、グレイヴの持ち物で私もよく知らないの」
とっさに誤魔化そうかと思ったが上手く言葉が出てこない。
「変わったもの持ってるわね。これもあの箱に入ってたの?」
「そうよ、そこからグレイヴが持ってきたの」
「で、これ何に使うの? 大きくってけっこう邪魔なんだけど」
また答えにくいことを聞かれた。グレイヴに直接聞きなさいよという言葉を
飲み込む。彼がもし、その質問に答えてしまったらやっかいなことになる。
「わかんないけど、殴るとか? けっこう重いし、威力はあるわよ」
本当は銃らしいということは秘密にしたい。
「殴るって、あなた正気なの? 相手はあのゴーレムなのよ、大きさ見た
でしょう?」
呆れたように言われる。
そんなことは分かっていたが、いまさら引くことはできない。
「ゴーレムじゃなくてフーケを殴ればいいでしょう」
「あんたねえ、こんなもので殴られたら死ぬわよ? フーケを殺すつもり?」
いっそう呆れたような顔をされる。
「そもそもこれ、扱えるの? 触ってみたけどすっごい重そうよ?」
「大丈夫でしょ、グレイヴが運んできたんだから」
「けっこう力持ちなのね、顔も悪くないし。無口なのが減点かしらね」
喋れないと知っているはずなのにそんなことを言う。
「無口じゃなくて喋れないの!」
ルイズも律儀に言い返した。
「それにしても彼も災難よねえ、無謀な主人が志願したせいでこんなことに
付き合わなくっちゃいけないんだから」
気の毒そうにグレイヴを見ながら言う。
「今なら間に合うわよ、彼だけでも帰してあげたら?」
「うるさいわね、彼は私の使い魔なの。主人を守る義務があるわ。それに
あんただって、さっき納得したでしょう」
「納得というか、まさか戦わせるつもりで連れてきたとは思わないわよ。
メイジ同士の戦いに平民を巻き込むつもり? 私だってフレイムは置いて
きてるわよ。ちょっと力持ちなくらいじゃどうにもならないわよ?」
ちなみにタバサの使い魔、ウィンドドラゴンのシルフィードは上空をついて
きている。
「いいのっ、きっと何かの役に立つわ」
グレイヴの正体を喋れないルイズは強引に押し切る。
「こんな主人であなたも大変ねえ」
キュルケが同情の視線をグレイヴに向けた。
そんなことを話しているうちに森の入り口に着く。ここからは徒歩で行く
ことになる。
グレイヴはデス・ホーラーからのびている二本の鎖を両方の二の腕に一本
ずつ巻きつけ、両手にはケルベロスを持つ。右手には赤い装飾をされた銃、
左手には白い装飾をされた銃を持っている。両腕より鎖によって吊るされて
いる棺桶は太ももの後ろあたりにある。
歩くだびに棺桶が揺れている。おそらくはあの格好がグレイヴの戦闘態勢
なのだろう。ルイズ達も杖をしっかり構え、ロングビルのあとをついていく。
しばらく歩くと森が一部なくなっておりちょっとした広場になっている。
その中央に廃屋が見える。ロングビルの聞いた情報によると、あの廃屋の中に
フーケがいるらしい。
ことになる。
グレイヴはデス・ホーラーからのびている二本の鎖を両方の二の腕に一本
ずつ巻きつけ、両手にはケルベロスを持つ。右手には赤い装飾をされた銃、
左手には白い装飾をされた銃を持っている。両腕より鎖によって吊るされて
いる棺桶は太ももの後ろあたりにある。
歩くだびに棺桶が揺れている。おそらくはあの格好がグレイヴの戦闘態勢
なのだろう。ルイズ達も杖をしっかり構え、ロングビルのあとをついていく。
しばらく歩くと森が一部なくなっておりちょっとした広場になっている。
その中央に廃屋が見える。ロングビルの聞いた情報によると、あの廃屋の中に
フーケがいるらしい。
木々に隠れながら作戦会議をする。偵察を送り、フーケが確認されしだい
ゴーレムを作る暇を与えず一気に倒す、という作戦に決まった。あの
ゴーレムは脅威だ、できるなら戦いたくはない。
問題は偵察を誰にするかだったが、グレイヴが自らがというような動きをする。
「えーと、あんたが行ってくれるの?」
首を縦に振るグレイヴ。
「ちょっと、ヴァリエール何言ってるのよ! こんなことに巻き込んだだけ
じゃなく、危険なことまで任せるつもりなの? メイジとしての誇りまで
ゼロになったの?」
「い、いいのよ、こいつは使い魔なんだから、主人のために危険な目に
あったって当然だわ」
つい心にもないことを言ってしまう。しかし真実を言わずに説得する手段は
浮かばなかった。それに彼に任せたほうがいい気がする。
彼はガーゴイルなのだ、むしろこういうことのために作られたのでは?
という気までする。
「とにかく、あいつが行きたいって言ってるんだから、あいつでいいの」
キュルケがグレイヴを向いて言う。
「あなたもよ、なんでそんなこと言うのよ。いくら使い魔でもそこまで
しなくていいのよ?」
首を横に振るグレイヴ。
「まあ、志願してくれているのなら、彼に任せてみてもいいのではないですか?
あの小屋にフーケがいると決まったわけではありませんし。何かあったら
すぐに彼を助けられるようにしておきましょう」
ロングビルがまとめるように言った。
「わかりましたわ、ミス・ロングビル」
キュルケが折れ、再びグレイヴのほうを見る。
「あなたもフーケがいたらすぐに逃げるのよ」
さらにからかうように付け加える。
「それと逃げるならゼロのルイズのほうじゃなくて私達のほうに逃げるのよ?」
「ツェルプストー! 何言ってんのよ、あんた」
「ゼロのルイズのほうに逃げちゃったら、助かるものも助からないでしょう?」
顔色を変えて言い返そうとするが、今まであの小屋を見張っていたタバサに
止められる。
「そこまで」
確かにここであまり長話をするわけにもいかない。もうすでにかなりの時間が
過ぎてしまっていた。
ルイズはまだ納得していないようで、あとで覚えてなさいよと呟いていた。
ゴーレムを作る暇を与えず一気に倒す、という作戦に決まった。あの
ゴーレムは脅威だ、できるなら戦いたくはない。
問題は偵察を誰にするかだったが、グレイヴが自らがというような動きをする。
「えーと、あんたが行ってくれるの?」
首を縦に振るグレイヴ。
「ちょっと、ヴァリエール何言ってるのよ! こんなことに巻き込んだだけ
じゃなく、危険なことまで任せるつもりなの? メイジとしての誇りまで
ゼロになったの?」
「い、いいのよ、こいつは使い魔なんだから、主人のために危険な目に
あったって当然だわ」
つい心にもないことを言ってしまう。しかし真実を言わずに説得する手段は
浮かばなかった。それに彼に任せたほうがいい気がする。
彼はガーゴイルなのだ、むしろこういうことのために作られたのでは?
という気までする。
「とにかく、あいつが行きたいって言ってるんだから、あいつでいいの」
キュルケがグレイヴを向いて言う。
「あなたもよ、なんでそんなこと言うのよ。いくら使い魔でもそこまで
しなくていいのよ?」
首を横に振るグレイヴ。
「まあ、志願してくれているのなら、彼に任せてみてもいいのではないですか?
あの小屋にフーケがいると決まったわけではありませんし。何かあったら
すぐに彼を助けられるようにしておきましょう」
ロングビルがまとめるように言った。
「わかりましたわ、ミス・ロングビル」
キュルケが折れ、再びグレイヴのほうを見る。
「あなたもフーケがいたらすぐに逃げるのよ」
さらにからかうように付け加える。
「それと逃げるならゼロのルイズのほうじゃなくて私達のほうに逃げるのよ?」
「ツェルプストー! 何言ってんのよ、あんた」
「ゼロのルイズのほうに逃げちゃったら、助かるものも助からないでしょう?」
顔色を変えて言い返そうとするが、今まであの小屋を見張っていたタバサに
止められる。
「そこまで」
確かにここであまり長話をするわけにもいかない。もうすでにかなりの時間が
過ぎてしまっていた。
ルイズはまだ納得していないようで、あとで覚えてなさいよと呟いていた。
グレイヴはルイズ達に顔を向け一度うなずき、走って小屋に向かう。
小屋の前に着くと間髪を入れずに、足で扉を蹴って中に入っていく。
しばらくするとグレイヴが小屋から出てきて銃で手招きをする。
それを見て全員は周囲を警戒しながら小屋に寄っていく。
中を確認すると誰もいないようだった。ルイズ達が小屋に入るなか、
ロングビルは辺りを偵察してきますと周囲の森に消えていった。
小屋の中で手がかりを探していると『破壊の杖』が見つかった。
ルイズがふとグレイヴを見ると『破壊の杖』に少し驚いているような
気がした。なにか気になることがあるのかと思ったが、デルフリンガーの
ときと同様、勘違いの可能性がある。深くは気にしないことにした。
それにしても、あっさり見つかったわねとタバサが抱えていた『破壊の杖』
を見る。
突然、グレイヴの気配が変わり、彼は窓を破り飛び出す。
あわてて壊れた窓から外を見てみると、銃を構えているグレイヴの向こうに、
フーケの巨大な土ゴーレムが立っていた。
小屋の前に着くと間髪を入れずに、足で扉を蹴って中に入っていく。
しばらくするとグレイヴが小屋から出てきて銃で手招きをする。
それを見て全員は周囲を警戒しながら小屋に寄っていく。
中を確認すると誰もいないようだった。ルイズ達が小屋に入るなか、
ロングビルは辺りを偵察してきますと周囲の森に消えていった。
小屋の中で手がかりを探していると『破壊の杖』が見つかった。
ルイズがふとグレイヴを見ると『破壊の杖』に少し驚いているような
気がした。なにか気になることがあるのかと思ったが、デルフリンガーの
ときと同様、勘違いの可能性がある。深くは気にしないことにした。
それにしても、あっさり見つかったわねとタバサが抱えていた『破壊の杖』
を見る。
突然、グレイヴの気配が変わり、彼は窓を破り飛び出す。
あわてて壊れた窓から外を見てみると、銃を構えているグレイヴの向こうに、
フーケの巨大な土ゴーレムが立っていた。