あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

鷲と虚無-11


才人が朝食の残りを口に入れている間に、最初はウォレヌスが、次はプッロがトイレに行った。
昨夜から用を足していないのは彼らも同じだ。その間に才人は朝食を食べ終える。
量こそはそれ程多いわけではなかったが、何はともあれ空腹は十分に満たされた。
そしてプッロが戻ると、ウォレヌスが見計らった様に口を開いた。
「そろそろ教室とやらに行った方がいいと思う。授業が始まった後に行けばあの娘が色々とうるさそうだ」
「ええ、俺もそう思いますね。今はこれ以上ここにいてもする事はないし」
才人も特に反対する理由は無い。どっち道、昼食時にはここには戻ってくる。
そして三人は改めてマルトーに礼を言い、教室への道を聞くと厨房を後にした。

教室は広々とした石造りの部屋で、大学の講義室のように下から上に階段のように席が続いている。
中に入ってまず目に入ったのが生徒達の使い魔だ。
その多くは生徒達と同じ席にたたずんでおり、猫やカラスなどの普通の動物もいたが才人のとってはファンタジーにしか出てこない“架空”の動物――すなわちキュルケも連れていたサラマンダーなど――も数多い。
既にキュルケのフレイムを見て多少の免疫が出来ていたとは言え、才人は驚嘆した。二人もかなり面食らったようだ。
「あの神話に出てきそうなバケモノたちが、使い魔とやらなんですよねえ」
プッロがポツリと呟く。
「だろうな……人間が召還されると言うのは確かに相当珍しいようだ」
その通り、人間どころか人間に近い姿を持つ使い魔さえ、自分達以外には誰もいない。
これはつまり、オスマンの「使い魔に人間はいない」やシエスタらの自分達への反応に嘘は無かったと言う事だ。
人間が召還されると言うだけでも有り得ない上に、それがまったく別の異世界からの召還。なぜこんな事が起こったのだろう?
(そもそも一体なんで俺が……世界には他にも60億人もいるってのに。ったく、運が悪いってレベルじゃねえだろこれ)
才人は再び自分の境遇を呪う。だがそうしても自分がこのファンタジー世界に古代人のオッサン二人と一緒に取り残されたと言う事実は何も変わらない。

教室の中には既に数十人の生徒と思われる少年少女が着席していた。あのキュルケの姿も、特徴的な赤髪と褐色の肌のおかげですぐに確認できた。
キュルケは数人の男子生徒に囲まれており、彼女の人気振りがうかがえた。だがあの美貌なら当然だろう。
ルイズの方も、彼女の桃色がかった金髪はひと際目立ったのですぐに見つける事が出来た。
だが何かが変だ。他の生徒達は皆隣同士で座ってるのに、ルイズだけは隣に誰もおわず、一人だけで座っている。
(俺達の分のスペースを取っておいたのかな?)
そう思った時、才人は生徒達が自分たちを見てなにやら騒ぎ始めたのに気づいた。

「おい、なんで平民が教室に入ってきてるんだ?」
「誰かあいつらをつまみ出せよ」
どうも自分たちが教室の中に入るというのが問題らしい。何か変な事になる前に早くルイズの所に行った方がいい。
才人はそう思い、ルイズの元へと急いだ。

ルイズは才人達を目に留めると、「来たわね。さ、座りなさい」と言った。
プッロとウォレヌスは何も答えずにそのまま椅子に座った。
才人も同じくそうしようとしたが、ルイズに制止された。
「何やってんのよ、そこはメイジの席……あんたらが座るのは床。プッロ、ウォレヌス。立ちなさい」
ルイズの語調は早朝と比べて、幾分疲れたかの様に聞こえる。勢いが無い。
プッロさんに手玉に取られたのが答えたのかな、と才人は推測した。
そしてプッロもウォレヌスも椅子から立ち上がる気配はない。
「ちょっとあんた達、聞こえなかったの?」
「椅子が空いてるのにわざわざ床に座れるかよ。何回言えば解る?おれはお前の下になったつもりなんてないんだよ」
少しためらったが、結局才人も二人に習い椅子に座った。
ルイズは苦虫を噛み潰したような表情になり、ぐぬぬぬと唸ったが、何も言わなかった。
しかし、自分達の分の席を取っておいた、と言うわけでないのなら何であいつの周りには誰もいないんだろう、と才人は不思議に思った。



そして他の生徒達は何故かは解らないが、自分たちが教室にいるの事を不思議に、そして不快に思ってるようだ。
それがなぜかを知る為、才人は彼らの言葉に聞き耳をたててみた。
「あいつら、ゼロのルイズの隣に座ったぞ」
「一体誰なんだあいつら?ゼロのルイズと何か話してたぞ」
「ただの平民が貴族と同じ席に座るなんて、気でも狂ってるのか?」
どうやら彼らは、平民とやらが自分たちと同じ席に座るのを不快に思っているらしい。
オスマンはここは貴族に魔法を教える学校だと言ってたし、ルイズも、プッロもウォレヌスも殆ど相手にしていないとはいえ自分が貴族である事を盛んに主張していた。
ならば彼らも全員貴族なのだろう。貴族と平民。才人にはフィクション以外では殆ど馴染みの無い言葉だ。
その理解も“貴族は金持ちでなんとなく偉い”と言った程度だ。今までの例に漏れず、学校で習ったフランス革命などについての歴史は綺麗に頭の中から溶けて無くなっていた。
当然、単に平民とやらであるという理由だけで見下されるのはいい気分ではない。

それは他の二人とも同じなのだろうか、才人はウォレヌスが小さく「小うるさい蛮人のガキどもが」と呟くのを耳にした。
バンジン、と言うのはどう言う事なのか才人は不思議に思った。
野蛮人と言う意味だろうか。だがここの人間は才人のイメージするような野蛮人、つまり毛皮を着た原始人という風な連中ではない。
だが今はその事について聞く様な状況ではない。今のところは黙っておこうと才人は判断した。
そして驚く事に、なぜかルイズまでもが歯軋りをしている。
だがどう考えても自分達の事を思ってそうしているわけだとは思えない。
おそらくは他の生徒達が自分までもを馬鹿にしてるのが悔しいのだろう、と才人は見当をつけた。それがなぜかは解らないが。

やがて教室に教師と思われる、小太りの中年女性が入ってきた。
紫色のローブと、三角帽子をつけた優しそうな人だ。
彼女が教室の一番下にある机に座ると同時に、それまでガヤガヤと騒がしかった生徒達は彼女に抗議の声を上げ始めた。
「ミセス・シュブルーズ、なんで平民が教室にいるんですか!どう言う事なのか教えて下さい!」
「すぐにあいつらを追い出して下さい!」
「ゼロのルイズがあの平民達と話をしていました!」

そのシュブルーズと呼ばれた先生は、生徒達の詰問に落ち着いた様子で答えた。
「その事については学院長から説明を受けました。彼らは昨日ミス・ヴァリエールに召還され、使い魔となった平民達です。気にしない様にしなさい」
先ほどまで騒いでいた生徒達は突如シン、と静かになったかと思うと、次はどっと笑い始めた。
忙しい連中だな、と才人は思った。
「おいおい、てっきり失敗したのかと思ったら平民を、しかも三人召還してたのかよ!さすがゼロのルイズだ!」
「成功してもやっぱりはゼロはゼロだな!」

彼らは思い思いにルイズをからかい、笑う。
才人はルイズが顔を赤くし、悔しそうに拳を握り締めたのに気づいた。
これはちょっと酷い。これでは殆どいじめだ。
ルイズの後ろに座っていた、太っちょの男子などはルイズに直接声をかけた。
「ゼロのルイズ、召喚に失敗したからってそこら辺を歩いてた平民を連れてくるんじゃない!見っともないぞ!」
これにはルイズも立ち上がり、声を張り上げて言い返した。
「違うわ!本当に召喚できたのよ!こいつらが勝手にきちゃったのよ!それに私はもうゼロじゃないの!」



だが今度は意外な事にプッロが席から立ち上がり、ルイズに口を出した。
「おい、勝手にきたってのは聞き捨てならねえな!俺がいつこんな場所に来たいって言ったんだ?お前が“勝手に”つれて来たんだろうが!」
「あ~もう!頼むからあんたは黙ってて!」
ウォレヌスの方は手を頭に当ててうなだれた。こんな下らん言い争いはゴメンだと言わんばかりに。
「おいおい、平民を連れてくるにしたってもうちょっと品の良い奴をつれて来いよ。これじゃちょっと程度が低すぎるぜ?」
「だから違うって言ってるでしょ!なんならミスタ・コルベールに聞いて見なさい!」
ここに至って、シュブルーズが懐から小さな杖を取り出し、何かを呟いた。
するとルイズもプッロも太っちょも、見えない手に押さえつけられたかの様にストンと椅子に座り込まされた。
「いい加減にしなさい!教室で下らない口論をする事は許しません!他の皆さんも、お友達の悪口を言うような程度の低い事は止めなさい!さあ、早く授業を始めますよ」
シュルブルーズがそう叱責を飛ばすと、プッロはブツブツと何か呟き、ルイズはしょんぼりとうなだれた。

最初にゴタゴタはあった物の、授業はおおむね滞りなく進んだ。
授業の最初は都合の良い事に、今までの復習のようでシュブルーズは基本から説明してくれ、そのおかげで才人たちにも魔法の仕組みと言う物が良く解った。
例えば、魔法には大昔に失われた虚無の系統を除いて四つの系統、すなわち火、土、水そして風が存在し、魔法使い(メイジと言うらしい)にはそれぞれ得意とする系統が存在する事、そして“足せる”系統の数でメイジのランクが決まる事などだ。
無論、才人にとってもこれは非常に興味深い物だったが、一番関心を奪われたのはウォレヌスとプッロの二人らしく非常に熱心に耳をかたむけている。
だが心なしか、ウォレヌスの表情の方が暗い。その理由は才人にはわからない。
そして彼女は最後にこう付け加えた。
「そしてこれらの魔法の為に、我々は社会を維持する事が出来るのです。例えば、もし魔法が無ければ重要な金属を作る事も出来ませんし、石を切り出す事も出来ません。作物の生産も今よりずっと手間取るでしょう。我々がいなければ平民達はたちどころに生きる術を失うのです」

これを聞いたプッロは不思議そうな顔をし、ルイズに「おい」と声をかけた。
「……なによ」
「平民が生きる術を失う、ってどう言う意味だ?なんでそうなるのか解らねえんだが」
ルイズは棘を含めた言い方で返した。
「……あんたらしい馬鹿な質問ね。魔法が使えない平民が生きられるわけないじゃない」
「馬鹿だとぉ?まあいい、って事はなんだ魔法ってのは貴族しか使えないってのか?」
「当たり前でしょ!魔法が使えるからこそ貴族なのよ!あんた達が来た場所ってのは一体――」

その瞬間、シュブルーズのカミナリが飛んだ。
「ミス・ヴァリエール!授業中に無駄なおしゃべりをするのは許しません!」
「で、でも!こいつが勝手に話しかけただけで……」
「使い魔の不始末は主人の不始末です。それと、あなたも……」
そう言ってシュブルーズはプッロを睨んだ。
「授業中は静かに!」
プッロは「へえへえ、すみませんね」と小さく言い、肩をすくめて見せる。
ルイズは、プッロの方も叱責を受けたせいか素直にすみませんと言った。

これで才人はなんでルイズや他の生徒達があんなに偉そうだったのか少し理解出来た。
貴族しか魔法を使えず、シュブルーズの言うように魔法のおかげで社会が成り立ってるのなら確かにそれはすごい。
少し位威張るのも当然かもしれない。だからと言って良い気分はまったくしないが。



これらの基本をおさらいした後に、シュブルーズは本題に入った。
「では、今日は皆さんに“錬金”の魔法を覚えてもらいます。一年生の時にやり方を覚えた方もいるでしょうが、基本は大事ですから手を抜かずにしっかりとやりなさい。まずは私が手本を見せましょう」
そう言って彼女は懐から小石を取り出すと、それを机に置く。
そして杖を持つと、何かを呟いた。その途端、信じられない事にただの石ころが何かの光り輝く金属に変化した。
「そ、それってもしかして……金ですか?」
キュルケが恐る恐ると言った様子でシュブルーズに聞いた。
「いいえ、残念ながらただの真鍮です。ゴールドはスクエアでないと錬金できません。私はトライアングルなので……」
彼女はもったいぶった様に言ったが、トライアングルと言うだけでも上にはスクエアしかいないのだから中々の実力者なのだろう。
そして彼女は錬金を行う魔法の使い方を教え始めたが、魔法に縁など無い才人には何を話しているのかは全く理解出来ない。

才人もこの錬金と言う物には驚いたがウォレヌスとプッロの反応はまさに驚愕としか形容出来ない物だ。
最初はポカンと口を開けていた二人だったが、やがて二人は小声で話し始めた。
「今……確かにただの石ころが真鍮に変わったんですよね。何かの手品とかじゃなく」
「ああ……間違いない」
そう言ってウォレヌスは首を振った。
「冗談じゃない、あんな事が死すべき定めの人間に出来て良い筈が無い」

その時、ルイズが苛立った様に声を張り上げた。
「あんた達、さっきの先生の言葉を聞いて無かったの?授業中は黙ってなさい!」
だがこれは逆効果だったようだ。シュブルーズは話を中断し、ルイズを睨んだ。
「ミス・ヴァリエール。私の言った事を理解しましたか?私は授業中は静かに、と言ったのです」
「で、ですが私はこいつらが話し始めたので注意を……」
「前にも言いましたが、使い魔の不始末は主人の不始末です。彼らを黙らせないのならあなたの責任です。よろしい、あなたがきちんと授業を聞いていたかどうか試して見ましょう。あなたが錬金の実演をしてみなさい」
突然の指名に、ルイズは思わず聞き返した。
「え?わ、私ですか?」
「そうです。ちゃんと私の話を聞いていたのなら出来るはずです。さあ、やってみなさい」

彼女のその言葉と同時に、生徒達がザワザワと騒ぎ出した。
「あ、あのミセス・シュブルーズ。絶対に止めさせた方がいいと思いますけど……」
キュルケが困ったようなような顔をして言う。
「何故です?」
「危険だからです。凄く」
教室にいた人間の殆どがうなずいた。
「確かにミス・ヴァリエールの実技の成績はあまり良くないのは知っていますが、それ以外の部分では彼女はとても優秀です。彼女なら出来る筈です」
と言った後に、シュブルーズは忘れずに一つ付け加えた。
「もし授業をちゃんと聞いていたのなら、ですが」

才人も他の二人も、なぜ生徒達がこうも騒ぎ始めたのかが理解出来なかった。
一体何が“危険”なのだろう。ルイズ自身までが青ざめた表情になっている。
そして才人はルイズが何かをブツブツと呟くのを耳にした。
「……大丈夫、大丈夫よ。学院長も召喚は成功だって言ってくれた。私はもう魔法が出来るようになったの。私はもうゼロじゃない。これを成功させればあいつらも私を見直す筈……」
そしてルイズは立ち上がり、表情は蒼白ながらキッパリと言った。
「私、やります!」
シュブルーズは満足げにうなずいたが、他の生徒達はますます騒ぎ出し、キュルケに至っては殆ど哀願するようにルイズに言った。
「お願いだからやめて、ルイズ。どうなるかはあなたにも解ってるでしょう!?」
「いいことツェルプストー、私はもうゼロじゃないの!使い魔を召還出来たのがその証拠!そこで見てなさい」
そう高らかに宣言し、ルイズは席を立ちシュブルーズの所に進み出た。



ルイズがシュブルーズの机の前に立つとほぼ同時に、ウォレヌスが口を開いた。
「プッロ、才人君。机の下に隠れた方がいい」
「え?なんでです?」
プッロは意味が解らないと言う様に聞いた。
「この騒ぎ具合は普通じゃないのは解るだろう。何かが危険だ。それに他の生徒の殆どはそうしてる」
才人は周りを見回した。なるほど、確かに生徒達の殆どは既に机の下に隠れている。
別に隠れても失う物は何も無い。三人は机の下にもぐりこんだ。

机の下からは何も見えないが、声を聞く事は出来る。
才人はルイズの隣に立ったシュブルーズが、錬金を始める様に命ずるのを聞いた。
「さあ、始めなさい。やり方は解りますね?」
「はい」
そしてルイズが何かの呪文らしき物を力強く口に出すのを聞くのと同時に、才人の耳にとてつもない轟音が響いた。
爆弾のような(と言っても才人は本物の爆弾を聞いた事があるわけではないが)としか形容がしない音だ。
それがクラス中を揺さぶり、最初に驚いた使い魔達が暴れだす音が聞こえてきた。
その次は生徒達の罵声だ。
「クソッ!誰かさっさとあいつを退学にさせろよ!」
「やっぱりゼロのルイズはゼロのまんまね!冗談じゃないわ!」
「ラッキーが!俺のラッキーがヘビに食われちまった!」

才人は恐る恐る机から身を出し、周りを見渡した。プッロとウォレヌスも続いて起き上がった。
「……雷でも落ちたのか、これは?」
ウォレヌスが唖然とした様子で呟いた。
教室の中央は黒こげになっている。ミセス・シュブルーズは倒れているが、ピクピクと痙攣しているので生きているようだ。
机はめちゃくちゃに壊されており、錬金された筈の石ころは影も形も見えない。当のルイズは服がボロボロになってはいるが、シュブルーズとは違いちゃんと立っている。
彼女はうつむいたまま悔しそうにギリギリと歯を食いしばり、手は血が滲む程強く握り締めていたが、才人達にはそれが見えなかった。

結局、その日の錬金の授業はそのまま中止になった。
ミセス・シュブルーズは命に別状は無かったとはいえ、とても授業に参加出来る状態ではなかったからだ。
彼女は爆音を聞きつけたやってきた他の教師達にそのまま医務室に連れて行かれた。
この惨状を招いたルイズはと言うと、滅茶苦茶になった教室(爆発だけでなく、暴れた使い魔達が壊した備品も含めて)の掃除を命じられた。

そして教室にはルイズと三人だけが残された。だが誰も掃除を始めようとはしない。
ルイズはうつむいたまま動こうとしないし、ウォレヌスは腕を組んだまま壁の背にもたれ、プッロは椅子に座ったまま足を机の上に投げ出していた。
しばらくの間気まずい空気が流れたが、その内プッロが口を開いた。

「おい、さっきのあれ、ありゃなんだったんだ」
「そうだ。あれはどう考えても錬金と言う奴ではないだろう。まるで落雷のようだった。一体何をしたんだ?」
最初、ルイズは黙ったままだったが、ポツリポツリと答え始めた。
「……見て解らない?失敗よ。完全な」
それを聞いて才人はやっとゼロのルイズと言う言葉の意味を理解出来た。
ゼロと言うのは成功率ゼロと言う意味だったのだ。そして同時になぜ彼女がクラスメートから笑われていたのかも解った。
「なあルイズ」
「……なによ」
「お前のあだ名のゼロのルイズって奴。あれってもしかして……魔法を必ず失敗する、って意味か?」



ルイズは答えなかったが、プッロはどうやらそれを肯定と受け取ったらしい。
「おいおいお嬢ちゃん、それ本当か?まさか魔法が使えないのにさっきまで貴族だのなんだのと威張り腐ってたのか?お前、魔法が使えるから貴族だって言ってたよな。じゃあお前はただのガキなのか?今朝杖を突きつけたのもただのコケおどしか?え?」
確かにそれが本当なら噴飯物だ。
ご主人様だの貴族だのと散々威張っていたのに、肝心の本人が魔法を使えないなどと、冗談にすらならない。
単に魔法が使えない鬱憤を自分達にぶつけていた様にしか見えない。才人は憤慨し、ウォレヌスまでもが嘲りの声を出した。
「なるほど、あの爆発は魔法が失敗したのか。確かにどう見ても錬金とやらではなかったからな……まったくお笑いだな、おい」

ルイズは相変わらずうつむいたまま、答える。
「……そうよ。魔法が必ず失敗して爆発を起こすからゼロのルイズ。簡単でしょ?……さあ、掃除を始めましょう。手伝って。ウォレヌス、あんたは机の残骸を片付けて」
だがウォレヌスは鼻で笑った。
「ハッ!なぜそんな事を?これはお前がやらかした事だろう。お前が起こした不始末をなぜ私達が片付ける必要がある」
これには才人も同意した。
「俺も同感だ。自分の不始末は自分で始末しろよ」
なるほど、確かに彼女はどうやら魔法が使えないと言う理由でクラスメートに馬鹿にされているようだ。
だがだからと言って自分が彼女の尻拭いをする必要は無い。
そして最後にプッロが一言付け加えた。
「それが嫌だってんなら、暇な奉公人にでも手伝って貰っとけ。どっちにしろ、俺たちの誰もお前を手伝う気なんて無いってことだ」

ルイズは少しずつ顔をあげる。その顔は悔しさと不甲斐なさに歪んでおり、目には涙すら浮かんでいる。
そして彼女は三人を睨み付けながら、感情を爆発させた。

「……あああ、あんた達はなんでいちいちあーだこーだと口答えするの!?き、昨日もそう、今日もそう!おまけにつ、杖まで奪う!ああ、あんたらは私の使い魔なのよ!しゅ、主人の私には絶対服従の筈なのに一体なんで!
な、なんでたかが平民がこんなに私に逆らうの!?いや、そもそもなんで貴族への敬意なんてカカ、カケラも持たない平民三人が私のつ、使い魔になったのよ?しかも三人!あ、悪夢だわ!
おまけに魔法がやっとの事でせせ、成功してやっとゼロの名前が無くなるかと思ったらあいも変わらずば、爆発!昨日の召喚の成功はい、一体なんだったのよ!?それともやっぱりし、失敗?失敗だったの?
ええ、そうにちち、違いないわ、私は召喚に失敗したからこそあんた達みたいなややや、野蛮人がやってきたのよ!そうに違いないわ!私はゼロのルイズ!
これからも一生魔法を使えずに終わるのよ!これでま、満足?笑いなさい、笑いなさいよ!どうせ心の中じゃもうわわわ、私の事を嘲笑ってるんでしょ?さあ、笑いなさい!」

あらん限りの声を喉から絞り出し、殆ど絶叫といって言い様子でどもりながらまくしたてるルイズ。
肩で息をしながら、ルイズは三人をにらんでいたがやがて自分の杖を床に叩きつけると、彼女は涙をこぼしながら教室から駆け出していった。
才人達は彼女の突然の剣幕に圧倒され、何も出来なかった。


新着情報

取得中です。