あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第2話「接触」


その場にいたものは、目の前で起きていることをよく把握しきれていなかった。
魔法の使えない「ゼロのルイズ」が召喚に成功し、その結果が見たこともないゴーレムで、さらに中から人間がでてきた。
全力で理解しようと思考を巡らせるが、すればするほどわけがわからなくなる。
渦中のルイズもまた同じであった。一体目の前の「それ」はなんなのか?
混乱するルイズに「それ」―キリコから不意に声がかけられる。

「すまないが、聞きたいことがある。」
「ふぁ!?え、え・・・と」
頭の中が整理しきれていときに声をかけられたので、思わず素っ頓狂な声をだすルイズ。
構わずキリコが続ける。
「ここはどこなんだ?見る限りでは俺がさっきまでいた場所と違うように見えるが。」
「その・・・えーと、あの・・・」
ますます混乱ルイズに代わり、コルベールが質問に答える。

「ミス・ヴァリエールはまだ落ち着いていないようですので、私が代わりにお答えいたしましょう。
 ここはハルケギニア大陸、トリステイン王国の魔法学院、さらにそのすぐ近くの平原です。」
ハルケギニア、トリステイン。どちらもキリコには聞きなれない名称だった。
「(さっきの様子じゃATを見たことがないように思えるが・・・そんな偏狭の星がまだあったのか。しかし魔法学院とはいったい?)」
そんな疑問を頭の隅にとどめながら、別の質問を続けていく。
「聞かない名前の国名だが、ここはなんという惑星だ?いや、そもそもギルガメスとバララント、どっちの陣営に所属しているんだ?」
「惑星・・・とは、一体なんでしょうか?それにギルガメスとバララントとやらは、どこかの国名でしょうか?どちらにしろ私にはわかりませんなぁ・・・。」
この返答にキリコは驚いた。惑星間航行が当然の時代に、自分達が住むアストラギウス銀河を二分するほどの二大勢力を知らないなどとは、
いくら偏狭の惑星であろうとまずありえないことだった。

キリコはここに至ってようやく、自分が今置かれている状況がかなり異常なことだと考え始めていた。
先ほどのコルベールの言葉を思い返してみると、どうも惑星という概念すらない。この分だと宇宙などに関しても同様であろう。
さらに魔法学院という、ファンタジー作品の世界にありそうな施設。それらから答えを導き出すのに時間はかからなかった。
「(ここは俺の知っている世界・・・アストラギウス銀河じゃないのか・・・!)」
もっと言えば、全く違う「異世界」かもしれない。キリコは悪い夢でも見ている気分だった。

一方二人が話している間に冷静になったルイズには、ある疑問が浮かんだ。
「そうだ・・・ミスタ・コルベール、こういう場合はどっちが使い魔になるんですか!?」
二つのものを召喚したなら、そのどちらと契約すればいいのだろうか。
そんな想定外の事態に対する、至極自然な質問だった。
コルベールも改めて考えてみる。最初見たときこそ浮かれていたが、そもそもこの人型はなんであろうか。
そして中から出てきた彼との関係はなんなのか。それらを聞いてみることにした。

辺りを窺うようにしていたキリコは質問される。
「え~、彼女の疑問もありますので、今度はこちらからよろしいですかな?」
視線をコルベールに戻し、キリコは頷く。



「では・・・あぁそうだ、そういえばまだ互いに名前を知りませんでしたね。私はジャン・コルベールと申しまして、先のトリステイン魔法学院で教師をしております。
 それと彼女は生徒の一人、ミス・ヴァリエールこと、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールです。」
「コルベール、先生か。俺はキリコ・キュービィだ。キリコでいい。」
コルベールの自己とルイズの紹介にキリコも続く。

「ミスタ・キリコですね。それではお訊ねしますが、これは・・・ゴーレムでしょうか?というか、あなたはなぜこの中にいたのでしょう。」
「これはゴーレムじゃない。AT―アーマードトルーパーという分類の兵器で、俺はそのパイロットだ。」
「なんと!これは兵器なのですか!?しかし、アーマードなんたらと言われても・・・・・・。」
この世界では、メイジがゴーレムを兵器の一つに使うことはあるが、フネなどのように生産・体系化などはされていない。
コルベールが信じられないのも、そういった理由があるからだった。

今のやり取りで判明したことを、コルベールはルイズに告げる。
「たぶん、召喚によって呼ばれたのは彼なのでしょう。このアーマード・・・え~と、『AT』といいましたか。
 これは中に彼が乗っていたから、一緒に呼ばれたのだと思います。」
ルイズは驚きを隠せなかった。自分が呼んだのはゴーレムではなく、その中にいた人間だったのだ。

再びコルベールがキリコに質問する。
「そういえば、見たところ杖を持っていないようで・・・お尋ねしますが、あなたはメイジでしょうか?」
これほどのものを所有しているなら、さぞ凄いメイジなのではないだろうか。だがキリコの答えはそれを否定する。
「いや・・・俺はただの一兵士だ。ところでメイジというのが何か分からないが。」
「メイジというのは、魔法が使えるものをさす言葉です。知らないということは、もしや貴族でも・・・?」
「あぁ、違うな。俺は魔法なんか使えないし、貴族でもない。いたって普通の人間だ。」
ルイズにとって、それは最悪の結果だった。使い魔として人間を、それも魔法の使えない平民!そんなヤツを自分は呼んでしまったのだ。

やがてそんな状況を理解した生徒が段々と騒ぎ始める。
「ハハハ・・・な、なんだ、ホントに呼んだのはただの平民で、あっちのゴーレムはオマケだってよ!」
「やっぱりゼロはゼロだったな!驚かせやがって。」
「ホントは召喚どころか、その辺からつれてきたんじゃないのかー?ゼロのルイズ!」
静かだった場が一転、再び喧騒の渦に覆われていく。

そんな中、思い出したようにルイズが言う。
「ミスタ・コルベール!もう一度召喚の許可を!」
「なりませんぞ、ミス・ヴァリエール。例えなんであれ、召喚したものとは契約を結ぶのがきまりです。
 それにあなたも約束したでしょう『あと一回だけ』と。一度した約束を反故にするなどあってはなりません。」
もはやルイズは何もいえなかった。
確かに召喚はした。だけど平民が使い魔なのは嫌。だが契約しなければ留年。ならば召喚をやりなおしたい。しかし約束はやぶれない。
そんなどうしようもない状況についには頭を抱えてしまう。

そんなルイズや周りにも、お構いなしにとキリコは訊ねる。
「状況をまだハッキリ理解したわけじゃないが・・・俺はその『契約』とやらをしないといけないのか?」
ルイズを指差しながら言う。
「申し訳ないのですが、そういうことになります・・・。ですが彼女も進級がかかっているのです。勝手なこととは承知の上でお願いします。
 ミス・ヴァリエールと、使い魔として契約してもらえないでしょうか?」
コルベールとしても、素性のわからぬキリコを使い魔とするのには、少々抵抗があった。



しかし儀式の決まりを破るのもまた許されないこと、ルイズだけ特例扱いはできない。
彼女の努力は知っている。その姿だってこの目で見ている。だからこそ、他の生徒と分け隔てなく、かつ平等に接しなければいけない。
教師という立場のコルベールに出来ることは、キリコに頭を下げるのが精一杯であった。

相対するキリコは冷静に現状を推察する。
「(今の俺はここ・・・トリステインとやらにいる。それはこのルイズとかいう少女が魔法で呼び出したから。理由は使い魔としての契約。
 ・・・俺みたいなのが呼ばれるのはかなり異例みたいだ。それでも契約とやらをしなければ、ルイズは留年・・・その場合俺はどうなる?いやそれよりも)」
また一つ、キリコの脳裏に疑問がよぎった。それを確かめるため、再びコルベールに訊く。

「一度呼んだものを送り返すことは出来ないのか?」
頭を上げたコルベールは申し訳なさそうな顔で答える。
「そういった魔法は残念ながら・・・。召喚の『サモン・サーヴァント』は一方的に呼び出すことしか出来ないのです。」
随分といい加減な面があるものだなと、口には出さずあきれるキリコだった。
「戻ることができないなら・・・いずれにしても、俺は学院とやらにやっかいになるしかないのだろうな。」
その問いに無言でコルベールは頷く。
各地をあちらこちらと放浪するのが当たり前のキリコとて、知識も常識も全く通じない、ましてや異世界で同じことをするのは流石に躊躇われた。
ならば行動に制約はつくであろうが、外を出回るよりはずっと安全であろう学院にとどまっていたほうが、何かと都合はいい。
結局、キリコが生きていくためには最初から選択肢などなかった。

不安げな顔でコルベールが見守る中、キリコはさきほどの問いに対する回答を出す。
「わかった・・・そいつの使い魔とやらになろう。」
「おぉ、契約していただけますか!それはよかった!」
どうせ(現状では)帰る手立てが見つからないのなら、当分はここで暮らしていかなければならないだろう。
そのための手段になることくらいはしておこうというのが、キリコの出した結論である。
なにはともかくキリコは了承した。残るはルイズである。
「さぁ、あとはあなただけです、ミス・ヴァリエール・・・。」

コルベールにそう促されると、改めて状況を纏め、心を落ち着けてルイズは考える。
進級するためには使い魔がいなければならないのは百も承知。だが目の前の使い魔候補は人間で平民だ。
貴族である自分が、それをおいそれと納得できるわけがない。
しかし留年したとなれば、それこそヴェリエール家の名に泥をブチまける行為。
「(元はといえば、呼び出したのはわたしなんだから、その責任はとらなくちゃいけない・・・。)」
それに教師であるコルベールは、自分のために頭を下げてくれた。魔法もろくに使えない「ゼロ」と蔑まれる自分のために・・・。
「(教師にここまでさせて引き下がるなんて・・・それこそ恥知らずよ、ルイズ!)」
心の中で自分を叱咤し、奮い立たせる。それまでうつむいていた顔をあげると、その瞳にもはや迷いは無かった。
「わかりましたミスタ・コルベール・・・私、契約します!」
「よく決心しました、ミス・ヴァリエール。それでは早速契約の儀を・・・」

ここであることに気づいたキリコが割り込む。
「待て。そういえば聞いてなかったが、一体どう契約を交わすんだ?」
「口付けです。その後にルーンが体に刻まれて、それで契約完了となります。」
そういうことはもっと早く説明しておけと、内心で毒づくキリコであった。


ルイズも思い出したように顔が赤くなる。気恥ずかしいのでさっさと済ましてしまおうとキリコに詰め寄る。
「ほ、ほら!はは早く済ませるわよ!・・・感謝しなさいよ、貴族にこんなことされるなんて、滅多に無いんだから!」
強引に自分と同じ高さまでキリコの頭をもって、勢いまかせにキスをする。
それが終わると、やがてキリコの左手の甲にルーンが刻まれ始める。その痛みに思わず呻き、うずくまるキリコ。
「あぁ、心配はいりません。ルーンが刻まれている故の現象です。少しの間なので我慢してください。」
だから先に言えと、ちょっとした恨みをコルベールに覚えていた。


ルーンが刻まれるのが終わり、ようやくキリコも落ち着いた。そのルーンを、コルベールがもの珍しそうに眺める。
「ふむ、みたことのないルーンですな。」
そういってスケッチをとった後、本日はこれまでと生徒たちに解散を促した。
「お前はそこの平民と歩いてこいよルイズー。」
「レビテーションだって満足に使えないしなー。」
ルイズを小馬鹿にしながら魔法で飛んでいく生徒たち。

そうやって自分を笑うものにかまわず、キリコに命じるルイズ。
「あたしたちも帰るわよ、ついてきなさい。」
何故飛ばないのか、いや飛ぶ魔法が使えないのであろうかと、キリコは考える。
それをルイズに聞こうと思ったが、どこか怒っている様子を見るに薮蛇だろうと察し、やめておく。

ふと思い出したようにATのほうを向くと、コッパゲ・・・いやコルベールがまたもや興味深そうに調べていた。
「なにしてんのよ!ほら、さっさと行くわよ!」
ATのことが気になったが、「是非とも自分に任せて欲しい!」とコルベールに半ば強引に押し切られてしまった。
これ以上言っても無駄と悟ったキリコは、とりあえず注意する点を告げて後をまかせることにし、早足でルイズの後をついていった。
日が夕日になるほど傾くまで、いくばくか時間が掛かる午後の出来事であった



予告

目にも見えぬ偶然が、時に巨大な因果になる。
そこから芽生えた種には、誰も気づかない。
人知れず育った芽は、やがて有象無象を飲み込んでいく。
果ては生んだものにすら、その牙を向ける。
この世の全てを喰らおうと、際限など無いかのように。

次回「契機」
必然たりえない偶然はない。


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