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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-33


33,シェザールとロルカーン

ノクターナルが話し終わって後、タムリエル生まれは衝撃を受けている。

「えーと、ねぇ、マスター。衝撃の展開らしいけど、何がどう凄いんだい?」

ハルケギニア生まれとして真っ当な意見のマチルダが言った。
フォックスは小さく、消え入りそうな声で答えた。

「つまり、俺たちが信じている神は、まったく神ではなかったと言うことだ」

これでほぼ全ての説明が終わるのだが、これだけだと二人の心情が把握出来ない。少々前に戻る。


驚きの声を鬱陶しそうに聞きながら、ノクターナルは言った。

『何故驚く?お前達を守るために末弟はアイレイドと戦い、
 その後息子であるモーリアウスをお前達の下へ送ったではないか』

マーティンは何か考え事をしている。ルイズは全く着いていけない。
とりあえず、夜の女王に最大の疑問を聞いてみることにした。

「その…ノクターナル様。心臓取られても死なないの?」

『痛いが死なぬ。ロルカーンはその力をほとんど心臓に含ませていた故、
 制約が課せられて後、自身の力でニルンには行けなくなったがな』

へぇ、痛いで済むんだ。でもそれならどうして…死んだ事になっているのかしら?
いや、それ以前に…

「その、エイドラとデイドラは違うって」

『アヌイ=エルに似ているか、シシスに似ているかの違いのみだ。
 全てシシスが創ったと言える。そう我は父より教わった』

お父さんってシシスよね。ならこれは間違っているかもしれない訳ね。
ルイズはそのように解釈した。タムリエル人はそう思わなかった。

「プリンス・ノクターナル。先ほどの神はもしやシェザールの事では?」

ロルカーンの名でタムリエルに知られる神は、
人の神として知られている。人を助けるという領分は、
シロディール地方ではシェザールと言われる神の仕事だった。
彼はアイレイドから人間を守っていたが、
ある時フラリと消え去ったと伝えられている。

専門家の研究では、他の地域の人間を助けに行ったのだろうとされているが、
結局帰ってくることはなく、後になって聖アレッシアがアイレイドを打ち倒し、
現在に至っている。何度か九大神に近い神として、
大々的に奉ろうという話が出ているが、何故か時の皇帝はそれに許可を出さず、
シェザールはシロディール地域のみで信仰を集める神となっている。
詳しくは『シェザールと神々』でも読むと分かりやすい。

『左様。それもまた末弟の名の一つなり』

ロルカーンなのにシェザール?どういう意味かしら。
ルイズは疑問をノクターナルにぶつけた。


『娘。お前の名は何だ?』
「ルイズです。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」

『ならばお前は「ルイズ」であり「フランソワーズ」であり「ブラン」であり、
「ヴァリエール」であるのだな?あまり使われぬ名もあろう』

確かに、ミス・ブランと呼ばれた事は今まで一度もない。
そういうことか。場所によって呼び名が変わるとかそういうのね。
なんとなくルイズは理解できた。神格の名前が、所によって変わることは良くあることだ。

「ですが、シェザールは途中で去りましたし、
 モーリアウスを送ったのはカイネのはず。
 かの神はキナレスと同一のはずですが…?」

九大神の司祭なら、アイレイドとの戦の際に現れた神の事は知っていて当然である。
説法の中に神の名前を含ませたりしないといけない。諳んじて言える程度には覚えていた。
モーリアウスというのは、聖アレッシアの伴侶となる半神の雄牛として知られる神格である。
彼は「カイネの息吹」の異名を持ち、今は自然や空等を司る神である「キナレス」
の下に位置する神として知られている。

『アカトシュに諫められたのだ。それでも行こうとした故、
 竜神はムンダスへの門を閉じた。そして奴隷の女王はシェザールの崇拝を止め、
 アカトシュを信仰するようになった』

マーティンは驚きで体を凍らせた。奴隷の女王とは、聖アレッシアを表す名の一つである。
ノクターナルは話を続ける。

『そして末弟は二神の嫁を持っていてな。一神はキナレス。
 そしてもう一つの神はその侍女マーラ。そしてマーラはアカトシュの妻でもある』

ややこしくなってきたわね。
そうルイズは思いながら今聞いた話を整理する。

えーと、ロルカーンは世界を創造した事で心臓を抜き取られたけど、
実はまだ生きていて、古代エルフのアイレイド達と人間の争いの際に人間を助けたと。
で、アカトシュに怒られて行けなくされた代わりに、奥さんを通して息子を送った訳ね。
行けなくされた時に、デイドラも行くことが出来なくなった。
それを勘違いしたアレッシアは、アカトシュを奉るようになったのね。
いえ、勘違いさせたのかしら?あくどいわね。
マーティンの友達が言ってた事って、嘘もいいとこじゃない。
でも、なんてロルカーンは死んだ事になっているのかしら?

「な、確かにカイネはショール(シェザールの別名)の未亡人と聞いたことがありますが…
 しかし、ならば何故ロルカーンは死んだ事に?」

はぁ。とノクターナルはため息を付いた。
あまりに定命の者の頭が可哀想だと思って。

『考えてみよ。末弟が何故ニルンをエセリウスの近くではなく、
 オブリビオンに近いムンダスに創ろうと思ったか。
 何故エイドラはお前達に無関心かをな』

辺りに沈黙が漂う。ルイズは蚊帳の外過ぎて付いていけない。


「ええと、その、ノクターナル様。分からないので教えてもらえませんか?」

困りながら言ったルイズの言葉に、
意外にもノクターナルはニヤリと笑って答えた。

『ああ。分からぬ事、理解出来ぬ事は無理矢理考えても何も浮かばぬ。
 ならば早々に聞けば良い。考えた上で分からぬ事は何の問題も無いからな。
 その程度の頭すら持ち合わせておらぬのは、流石はインペリアルと言ったところか?』


インペリアルと称される、シロディール生まれの人間は「自称」文化人種である。
自分たちの文化を、彼らからしてみれば「野蛮」な文化と取り替え、
彼らからしてみれば「素晴らしい」文化にしてあげようと、
嫌なお節介とも言える同化政策を他国に強制してきた種族なのだ。
ちなみに、NOと言ったら戦争してでも教えてくれる。困った連中だ。

これを勘違いして、本気で文化人だと言う者がたまにいるが、
アレッシア・オッタスの案内書シリーズでも見ると良い。
あれが普通に売れる世界の中心にいる種族が、
本当に文化的かどうかをよく考えてみるべきだ。
個人的に、排他的と言ったほうがよく似合うと思われる。


通常なら分からない、とマーティンは答えられただろうが、
そこまで頭が回る状態ではない。
だから分からない。とすら言えなかった。
ノクターナルはひどい顔をしたタムリエル人を見て、
また語り始めた。

『つまりほとんどのエイドラは、あまり創造に関わってはおらぬということだ。特にアカトシュはな。
 むしろあの竜は、アイレイドとの戦でニルンから人間を消そうとしていたぞ?しかし叶わなかった。
 故にロルカーンをお前達の記憶から消し、彼の地から力を得られる様にしようと考えたのだ。
 キナレスはどうにかしたかったようだが、アカトシュに敵うはずもないからな。従う他無い。』

マーティンとフォックスの顔色が変わった。
それは正に三神が偽りの神であった事を知った、モロウウインドの民の様に。

「…ノ、ノクターナル様?そ、それは一体…?」

いかにも動揺した声でフォックスは言った。
仮面越しではあるが、顔色が悪そうだ。
順を追ってノクターナルは説明をし始めた。

『始めに、我らの常闇の父シシスは、アヌイ=エルに体を作り替えてくれと頼まれた。
 アヌイ=エルは秩序と不変を司る存在だが、体が朽ちかけていたのだ。
 かの神は本来創造とは無縁であったからな。我が父に頼むほか無かった』

秩序と不変を司るということは、規則や法を守れという意味に取られがちであり、
実際、九大神の主神であるアカトシュもその様に戒めている。
しかしそれは、生ある者に合わせて最大限に譲歩した考え方である。
本当に秩序だった不変を望むなら、生命を創る時点で間違っている。
生き物は変化する存在なのだから、創らない事が正解だ。
さらに言えば、それら全てを無かった事にすると都合が良くなる。
もっとも、ニルンの創造に関わっていないのと、
あまりにも他の神々が関わり過ぎているので、
竜の神はそういった行いが出来ないだけなのだ。


自分にそれらの考え方を適応していない理由は、神も己には甘いということだ。
むしろ、ニルンの神々は大甘と言える。そして生ある者にとても厳しい。
特にエイドラはろくな報酬を与えず、英雄にお使いをさせる事で有名だ。
報酬だけを考えたら、デイドラの方がよっぽど気前が良い。

『Aka(竜)になりたいと言ったから、シシスはアヌイ=エルの体と混じり、
 彼の存在の形を変えた。その時に生まれた莫大な力によって、最初の我らが生まれた。
 この時、我らは皆同じ存在であり、名前も持っていなかった。
 シシスに近い考え方を持つか、アヌイ=エルに近い考え方を持つかの違いはあったがな。
 それが霊(et'Ada)だ。これは我が父シシスより伝え聞いた。
 そうであったかは覚えておらぬ。されど、
 我も今はエイドラと言われる者達と、黒き闇で話をした事は覚えている。
 デイドラとエイドラは兄弟姉妹であり、ロルカーンと呼ばれる者は我が末弟なのだ』

「霊…」

マーティンは信じられない顔でその言葉を聞いている。
マーティンはその存在を古いエイドラか何かを言っているのだろうと思っていた。

『さて、アヌイ=エルの形が変わりアカトシュとなったが、
 何故か彼の存在はシシスに怒り狂った。そして二神は戦い合うのだ。
 その時流れた血肉から星々が生まれた。この時マグナスやメファーラ、
 それとお前達が知らぬいくつかの神達が、暇つぶしに我らに名を付け、
 体を構築させた。あの存在達は我らと同格なのか、それとも父と同格なのか、
 我にはあまり良く分からぬ』

さっきの四本腕の女が、そんなに凄い神様なのかねぇ?
どうしたってボケ加減ではこいつと良い勝負しそうな気がするんだけど。
等と思いながらマチルダは、ノクターナルの話を分からないなりに聞く。

『それから我やマグナスは、血肉から生まれし星を並べて麗しき星座を創った。
 ああ、我らの形はその時、今よりも遙かに巨大であった。
 今もなろうと思えばなれぬ事はないが、
 変わったところで特におもしろみもないからな』

愕然とした顔で、タムリエルの二人はそれを聞いている。

いくらデイドラに関わっているとは言えども、
二人とも心の中は九大神の色に染まっている。
シロディールで生まれたからには当然だ。故に信じたくない話だった。
エセリウスではネタバレすなっ!とタロスあたりが叫んでいる。

『時間はお前達が作りだした概念だが、時はそれよりずっと以前から流れている。
 疲れて戦いを止めた不死の竜と蛇は、辺りを見回して我らを初めて認識した。
 そしてシシスは自分に近き者を引き入れる『オブリビオン』の世界の、
 海の部分だけを創った。今でも覚えている。汝らは純正なる我の子だと言われた事をな。
 その後直ぐに我が父は消え去った故、我らは苦労したぞ?創造なぞしたことがなかったのだからな。
 アカトシュは『エセリウス』の全てを創り、そこに自分に近しい者達を連れて行った』

「オブリビオンの海?」

ルイズが聞いた。ノクターナルは答える。


『オブリビオンはデイドラを統べし者達の領域以外は、
 そのほとんどが海となっておる。海といえども普通の物ではない。
 魂だけしか入ることを許されぬ海よ。故に肉体が欲しくば何処かのデイドラの主なり、
 王子なり、もしくは誰の物でもない領域に身を寄せるしか術はない』

神様の世界なだけあってすごいのね色々と。
ルイズはそんな事を考えながら続きを聞いた。

『しばらく時が経った。アズラが星々は私の物だ、
 とか抜かしたので何度かきつく灸を据えたな。
 ある日の事だ。我らが時折来る父に言われて適当に創った領域に、
 ロルカーンと名乗る者が現れた。エイドラを連れてな。
 あれは最後のシシスの子と名乗った』

「そのエイドラとはまさか…」

マーティンがか細い声で言った。ノクターナルはふむ、と首をかしげてから言った。

『何がまさかかは知らぬが、マグナスとキナレス。そして後にアルドマーになる、
 あまり力を持たぬエイドラ達だ。確か、それとトリマニックもいたな』

アルドマー?全てのエルフの祖だ。とノクターナルはルイズに答えた。

「え、エルフって神様なの?」
『不死の存在から定命の存在になりたがったのだ。我にはその理屈が未だ理解できぬ』

ルイズは思考する。
えーとえーと。エルフが神様なら、アイレイド達が人間をどうにかしようとしたことも、
ある意味正当性が…いえ、エルフになった神様達が関与した訳じゃないから、
それとこれとは別ね。もしかしてこの世界のエルフもエイドラだったのかしら?

それがどうかを知るには、ジェームズの隣でとりあえず話を聞いているティファニアの、
指輪とオルゴールの作用によって使える様になった先住魔法を見れば良いが、
そこまでルイズの思考は及ばなかった。


「つまり、何ですかな。ノクターナル様」

グレイ・フォックスは震えながら言い始めた。
ティファニアとジェームズ。それにマチルダとタバサは、
どうしたら良いか分からずにじっとしている他無かった。

『何だ?』
「我らは、その、あなた様達に創られたと?」

『否。創ったのはマグナスとロルカーンだ。他に赤き人間を創った神もいたはずだ。
 我らはいくらか力を提供し、星系の星の形を丸くした程度に過ぎぬ。
 ウッドエルフのいくらかを、カジートに変えたのはアズラだがな。
 そしてオルシマーを創ったのはトリマニックだ…他は覚えておらぬ。
 まどろみの中で創造を見ていたからな。我は生ある者の創造には関わっておらぬのだ』

オルシマーとは、後にタムリエル世界でオークとなる種族であり、
トリマニックは、現在デイドラの主でマラキャスと呼ばれる存在である。
今はこの解釈だけで納得していただきたい。

マーティンは信じられない様子でノクターナルを見続けている。
そうか、これがあの時のダークエルフの気持ちか。
己の教義を全て否定されて、九大神教団に入ったエルフの気持ちか。
ノクターナルの言葉に、嘘偽りの気配は一切見えなかった。
マーティンは、不安げながらも覚悟を決めて言った。


「では、プリンス・ノクターナル。何故エイドラは、九大神は我らの神となっているのです?」

良い質問だ。とノクターナルは言って答えた。

『最初、ニルンを創っていたのはマグナスであり、ヴァーミルナはそれを手伝っていた。
 ヴァーミルナが時折、マグナスと関連付けられて考えられるのはそれが理由だ。
 ロルカーンは人間を創っていた。今のそれは色々と枝分かれが進んでいるな。
 ところが、噂を聞きつけ神になりたがったエイドラが、大量に現れだしてな。
 マグナスはそれに嫌気が差してどこかへ行った。ヴァーミルナを残してな。
 ロルカーンは飽き性だったのか、もっと前に消え去っておったな。
 しばらく経って、心臓を赤き山に投げ捨てたのはアカトシュだ。どこで奪って来たのかは知らぬ』

故に、とノクターナルは話を続ける。

『創り主がおらぬ世界だ。いくらでも話は造れよう。
 そして奴らは、マグナスがおらぬ世界の定命の者達に、
 我らこそが神と教えたのだ』

まぁ、そうよね。筋は通るわね。とルイズは思った。
誰かが創ったけれど、途中から嫌になって消えたわけで、
創りかけのそれをちゃんと創り終えて、
神様として崇めさせた。でも、アカトシュはあまり良く思っていなかったのよね?
それなのにどうして創るのを許可したのかしら…
自分の子供達とも言えるエルフ達がそこに行ったから?

脳細胞を全て使いながら、ルイズは話を整理していく。
実際のところその通りだった。
親は子に厳しくしつつも、どこか甘くしてしまうものだ。
孫とかなら、もうどうしようもないくらい甘くなるのだろう。
けれど、最近のエルフはデイドラ信仰が主流である。
アカトシュ的に悲しい事ではないだろうか。

『ロルカーンも、エセリウスにいるのだろうが詳しくは知らん。
 少なくとも、オブリビオンの何処にもおらぬ』

すぅと、マーティンは大きく息を吸い、吐いた。
顔がとても青くなっている。

「では、何故かの神々は我らに奇跡をお与えに?」

『あの程度で奇跡と言わせる為だ。本来もう少々力を使えば、
 かの神達に治せぬ病など無い。ただの魔女ですら吸血病を治せるのだぞ?
 されど、お前達はつけあがるからな。そして面倒なのだ。
 末弟が創りし世界の者達は脆弱であり、
 何らかの神に頼らねば生きていけぬ。
 もしデイドラの信仰が強くなればどうなるであろうか?』

デイドラって、あんまり良くない存在なのよね。
ルイズは、以前マーティンから聞いたデイドラについての事を思い出す。

自分たちにとって楽しい事をする為なら、人間やエルフとか、
それに獣人がどうなっても構わない連中…
このノクターナルは違うみたいだけど、
楽しむ為に、親族にまで手を出したりするのかしら?
ルイズの疑問に、ノクターナルの話が答えた。


『アカトシュをどうにかしようと思うデイドラが現れよう。
 デイゴンなぞは特にそう思うであろうな。
 殺せずとも、閉じこめる方法くらいはあるだろう。
 我が父も喜んで協力するかもしれぬ。竜が嫌いなのだ。あのお方は。
 それは困る故、お前達に嘘を教え、九大神を崇め奉らせているのだ。
 面倒だが、そうせねばならぬ。仕方が無いから、
 お前達に拝ませてやっているのだと言っていたぞ。
 これだから人間から神になったタロスは困る』

マーティンは座っていた椅子から床に落ちる。
そのまま起きあがらず、両手で頭を掴みうなり声を上げた。
自身が信じていた物を、今全否定された。
決めた覚悟は、打ち砕かれた。

「マ、マーティン!?大丈夫?ちょっと、返事してよ!ね、ねぇったら!」

椅子から落ちたマーティンに驚いて、ルイズは彼に駆け寄った。
彼女からしてみれば、今までの話はただの物語である。
しかしマーティン達からしてみれば、
ずっと信じていた宗教を否定された瞬間だった。

フォックスは、どうにか正気でいる事が出来た。
それは、彼がそこまで神と関係のある生活をしていなかったからである。
自身の宗教を否定されたダメージは大きいが、まだしばらくすれば立ち直れる。
だが、マーティンは違う。若い頃からずっと神々に翻弄され続ける人生だったからだ。
彼を形成する物の中で、最も大きいのは宗教である。
だからこそ、こればかりは代えが利かない。

「何故、何故だと言うのか!何故街が襲われた時にアカトシュ神が助けてくれなかったのか!
 私は信じたくない!だが、これは、これは…」

証拠がありすぎた。最後の最後まで、彼らが何の行動も起こさなかったのは事実である。
マーティンが命と引き替えに、召喚魔法を使ってようやくアカトシュの化身が現れた。
しかし、それにマーティンの魂が入り込んだのだ。アカトシュ自身は来ていない。
だが、殺したかったと?アイレイドに殺させたかったのが本意だと?
それだけは、どうしても信じたくなかった。

『受け入れろとは言わぬが、あのタロスは前科持ちだな。
 ネレヴァリンにどうしようもないコインを渡し、
 あの赤き山に登らせた。そして英雄があの地に潜む者を倒した後何と言ったと思うか?』

ノクターナルはとても楽しそうに笑っていた。
デイドラは、基本的に人間の弱いところを痛ぶるのが好きな連中である。
ノクターナルは手荒な事は嫌いだが、人の弱っているところに追い打ちを掛けることは、
そこまで問題でもなかった。そして彼は彼女の信者ではない。
遠慮する必要性が無い。

『神の祝福があればこそ、赤き山の悪魔を倒せた!と九大神の司祭に言わせたのだ。
ネレヴァリンは怒り狂ってな。それから後、アズラのせいで英雄は妻を殺すハメになった。
ああ、赤き山の悪魔は元々ネレヴァリンの親友だ。もはや何もかもが嫌になったあの神殺しは、
タムリエルを去ったのだ。もし、エイドラがお前達を創りし神なら、
己で悪魔ダゴス・ウルをどうにかすると我は思うがな。普通は』


救いようの無い話に、ルイズは何とも言えない気持ちになった。
これが嘘かどうかは分からないけれど、もし、本当だとしたら、
ネレヴァリンって人はとても悲しい人だったのかしらね。
でも、どうして優しいって言われている神様が、
そんな事をさせたのかしら?
しんみりした顔のルイズは、ノクターナルを見た。
目が合った。先ほどの話で出来た疑問を言った。

「アズラって優しいデイドラと聞いたのですけれども…」

『あれが!?笑い話だ。あれほど高慢な我が妹を優しいと!騙されれば騙した者を殺し!
 誓いを破りし三人の見せしめとして、全てのチャイマーの肌と目の色を変えてダークエルフに仕立て上げ!
 己の信者の人生100年を孤独に過ごさせ、狂うか強くなるかでシェオゴラスと賭をする女が優しいと!
 誓いを破った三神達を、その誓いを立てさせた竹馬の友たるネレヴァルに殺させる女が優しいと!』

腹を抱えて思いっきり笑っている。
その様にルイズはゾッとした。確かにこの何かは人間ではない。
けれど、何となくのほほんとしている神様らしき何かだと思っていた。
今確かにそれ以外の、もっと恐ろしい何かだと理解出来た。
そして、おそらくそれこそがデイドラなのだと。

『まぁ、己の信者や分を弁えた者達にはそれなりにやっている様だがな。
 されど、あれを優しいと言うか。あり得ぬな。やはり生ある者は理解出来ぬ』


アズラ。彼女は巷ではデイドラ王子の中でも話が分かると評判だが、
実際の所、定命の存在をとても軽んじて見ているからこそ、
仕方ないですねー、で?何か用ですか?
また星ですか?欲しいんですか?ならこれでもやってきてくれませんか?
そしたらあげますから。と、心の内では人を小馬鹿にした態度で、
しかし、それを表には出さずに尊大に振る舞うデイドラ王子である。
私のお陰であなた達は生きているのですよ?分かっていますか?オーラが常に漂っている。
そしてそれで悦に浸っている。いわゆる女王様気質という奴だ。
もちろん、それを馬鹿にしたり、疑問を持ったりした存在には容赦しない。

定命の種を超越した存在であり、自身を信奉する者達には神の責任として、
ちゃんと世話してやっている分信者も多いが、実社会でこんなのに会ったら、
間違いなく地雷である。正確に言うと核地雷だ。ブチ切れたルイズが可愛く見える程に。

古きダガーフォールの英雄は、アズラを呼び出した際にある依頼を受ける。
その依頼とは、

「私に対して無礼な事を言っている愚かな司祭がいるので、殺してきてくれませんか?」

アンアンが可愛く見えるわがままっ子である。神様なのだから言わせておけば良いだろうに。
ちなみにもし断ると

「違う!あなたはこの頼みをはいと言うのです!はい、美しきアズラ。
 私は喜んで、あなたの象牙の指が音を鳴らすと共に司祭を殺すと言うのです!
 この不作法者!偏屈者!野蛮人!さて、私は女である事を忘れ、
 何か後悔する事を言う前に行かねばなりません」

なんておっかない事を叫ぶ。さすがは狂気を司る神と賭け事をする仲なだけはある。
それなりに頭のネジが外れているらしい。象牙とは美しい白を表すのだが、
当時のアズラの肌の色は黒に近い褐色だ。色覚にまで異常があるようだ。
だが、こんな事をアズラ様の目の前で言ったらもうどうしようもない。
だって彼女は死者の国の管理人なのだから。


また、彼女は人を吸血鬼にする病である吸血病にかかってしまった人間を、
元に戻す方法を知っているはずである。にも関わらず、何故彼女はシロディールの英雄に、
吸血鬼となった信者を殺させたのだろうか?

おそらく、治すのが面倒だったのだろう。死んだらこっちに来るのだから、
適当に相手をしてやれば良いと思っていたのではないだろうか。
ただロウソクを立てて、弔っている風に見せかけているのだろう。
その方が信者ウケも良いし。

ちなみに、ノクターナルを呼び出すと

「そなたは力を望むか?ならば我に痛みをもたらす者をどうにかしてくれぬか?」

と言われる。ある魔法使いを倒して欲しいらしいが断ると、

「考えるに、全てにおいて心無いな。我とお前は契約を交わさず、
 がっかりした我は冷たい我が領域に帰る訳だ。
 お前の魂はそこらの連中よりもよほど冷たいな。
 もう少々他者を見習え」

と、軽く恨み節を吐いて消える。どちらが良いかは人それぞれだろう。
マリコルヌなら、もっと神様に罵られたいからアズラを選ぶに違いない。
基本的にデイドラの女性は美形である為、罵られがいがあるだろう。

一般的なデイドラのイメージと、その真実の間は乖離が激しいのだ。
一見優しい顔をした人間程、迂闊に信用してはならない様に。


「マ、マーティン…」

ルイズは嘆くマーティンを見た。ノクターナルはおもしろくなって来たので、
まだ何か言おうとしたがティファニアにダメです。と言われたので、
仕方なくそこまでで話を終えた。

「…あ、ああ。ルイズかい?すまない。取り乱してしまった」

息が乱れ、涙を流し、マーティンは咳き込んだ。ルイズが慌てて背中をさする。

「えーと、ねぇ、マスター。衝撃の展開らしいけど、何がどう凄いんだい?」

ハルケギニア人として真っ当な意見のマチルダが言った。
フォックスは小さく、消え入りそうな声で答えた。

「つまり、俺たちが信じている神は、まったく神ではなかったと言うことだ。
 自分の信じている何かが否定されちまったってわけだ…
 明日から改宗しないとなー…ブリミル?いや、いっその事ノクターナルにでも」

「落ち着いておくれよマスター!別に良いじゃないか。死んじまった訳でなし。
 普通に拝むのも嫌だってのに、こんなのを心から信じたらそれこそヤバイって」

うつろな目でフォックスがブツブツ呟く。マチルダがどうにかしようと頑張っている。
ノクターナルが何か言おうとしたが、その前にハリセンで叩かれた。
マーティンは、床に座り込んで言った。

「はは。考えてみればおかしいと思ってはいたのだ。
 だが、考えない様にしていた。神が私たちに試練を与えていると、
 そう信じていたのだ。だからこそ、私は、私は…」


そう言ってむせび泣く。ルイズはどうすれば良いか分からなかった。
私も、ブリミルを否定されたらこうなるかしら…オモロ顔の人を信仰したいとも思わないわね。

ブリミル教は魔法至上主義である。神は魔法を通して世界に働きかけている。という考え方だ。
ルイズは魔法を使えなかった。故にあまり信じたいとも思っていない。
常識的な祈り等はするが、熱心に信じたいとはそれほど思わずに育ってきた。
最初から自身が『虚無』だと知っていれば、また話も違っただろうが。

マーティンは違う。何と言っても神の力を目の当たりにし、
その力で世界を救えたと思っていたからだ。
それを面倒だから自分たちがやらされていた。
さらに言えば消えて欲しかったが、それでデイドラと戦うのは嫌だから、
仕方なく力を貸し与えた等とはどうしても考えたくなかった。
しかし、あまりにも確証が有りすぎた。


マーティンはまだ泣いている。一応使い魔として私が呼び出したんだから、
どうにかマーティンを慰めないといけないわよね。
でも、どうすれば良いのかしら…?
ルイズは、いつか自分がされた様に、マーティンに話しかけた。

「そ、その、ねぇマーティン。私、こういう時、何言ったら良いのかわかんないけど…
 神様が神様でなくても、その、良いんじゃないかなって。ええとね、
 何て言えば良いのかしら」

ふむ、と今まで静観していたジェームズがマーティンを見て遠くを見る目で言った。

「なぁ、お若いの。君の気持ちは私にはある程度分かる気がする。
 互いに神に裏切られた者としてな。だが、私も君も生きている。
 ならば、前へ行けるのではないか?そう考えて生きる事が、
 人間に出来る唯一の事ではないだろうか?私は、そんな気がするよ」

ジェームズは自嘲気味に口をつり上げる。マーティンは涙ながらに彼を見た。

「弟が死に、私に託された願いは勝手に破られ、意気消沈している中レコンキスタが現れた。
 連中は神の名を騙り、聖地を奪還すると息巻いた。そしてアルビオンは潰れ、私は今やただの人だ。
 だが、それでも生きている。姪に諭されてな。それで良いのではないかと思う。
 君の神は神では無かった。だが、それでも君は生きている。それで良いじゃあないか」

「そうだと思うには、時間が必要です…とりあえず今日は眠る事にします」

体から絞り出す様にマーティンは言った。そして立ち上がり、
明らかに肩を落として部屋から出ようとした時、
ドアの前に鏡が現れた。中から、美しい女と逝っちゃってる目をした少年と、
タマネギ頭の憎いアイツがやってきた。

「バイアズーラ!」
「…君は、確か私の友の」

曇王の神殿に友がやって来た時、何度か一緒に来ていたウッドエルフの青年だった。
アズラ信者である事は、その言動から良く分かっている。


『な…ノクターナル。何故お前がここにいる?』
『お前とは何だお前とは。我がどこにいようが構わぬであろうが。ヴァーミルナよ、そんな姿をしてどうした?』
「知リ合イ?」

今の発音は何だ?とヴァーミルナとタマネギ頭を除き、皆が男を見た。
サイトは、結局あの時から今までずっとヴァーミルナの領域にいた。
そんな訳でハッキリ言ってとってもマズイ訳で。

「き、君は…?」

マーティンが青ざめた顔で言った。さっきの衝撃はまだ回復していないが、
その青年の顔を見てさらに青くなった。明かに人の色、というより定命の存在の肌の色をしていない彼は、
本人としてはニッコリと笑ったつもりだった。周りからすれば、ゾンビの様な笑顔だった。

「お、おばけ…」

沈黙を貫いていたタバサが怖そうな声で呟いた。
さっきからの話はほぼ分かっていないが、
鏡から現れた目の前にいる人らしき何かが、人間で無いことだけは理解出来た。

「おバけジャなイヨ?ニん間だヨ?」
「化け物―!?」

皆が騒ぐ中、ノクターナルはふむ、とサイトの顔を見てから、ヴァーミルナの顔を見る。
ああ、なるほど。と彼女なりに理解した。


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