その日、世界は変わった。
ルイズはその兵器を使える唯一の人間だった。しかし、誰よりそれの恐ろしさを知っていた。だから使うのを嫌がった。
あれほど魔法に執着していたのに、あの日から私がいくらからかっても、軽くあしらうようになった。その頃の私は、魔法が成功して余裕ができた、その程度しか考えていなかった。だけど、そうじゃなかった。
「魔法が最高だと思ってるなんて、幸せね」
あの、疲れた表情と言葉が、未だに忘れられない。そのときは、私は無邪気に憤慨できた。あの兵器の威力を見る前は。
天空に放たれた光は、跳ね返るかのように地上に降り注ぎ、狙った大地を焦土にしてしまった。私はそれを、あの塔のモニターという遠見の鏡で見てしまった。
私は理解した。メイジがどんなに束になろうと、これには敵わないと。
ルイズはその兵器を使える唯一の人間だった。しかし、誰よりそれの恐ろしさを知っていた。だから使うのを嫌がった。
あれほど魔法に執着していたのに、あの日から私がいくらからかっても、軽くあしらうようになった。その頃の私は、魔法が成功して余裕ができた、その程度しか考えていなかった。だけど、そうじゃなかった。
「魔法が最高だと思ってるなんて、幸せね」
あの、疲れた表情と言葉が、未だに忘れられない。そのときは、私は無邪気に憤慨できた。あの兵器の威力を見る前は。
天空に放たれた光は、跳ね返るかのように地上に降り注ぎ、狙った大地を焦土にしてしまった。私はそれを、あの塔のモニターという遠見の鏡で見てしまった。
私は理解した。メイジがどんなに束になろうと、これには敵わないと。
キュルケの回顧録より
ルイズは、エクスキャリバーを使う気はなかった。誰がどんなに請うても、首を縦に振らなかった。たとえアンリエッタが興味本位で撃つよう頼んでも、エレオノールが脅迫しても。アカデミーの人間がどんなに調べても、それを撃つどころか、一部の起動すらできなかった。
それの威力を知っている、そしてそれを造ったのが誰か知っているルイズは、魔法に固執しなくなった。平民でメイドのシエスタやコック長のマルトーなどとも親しくなり、よく話すようになった。同級生たちにそれをからかわれたりしたが、爆破してやるとそれもなくなった。キュルケは、それをいい傾向だと見ていたが。
しかし、そんな平和な日々は続かない。急遽決まったアンリエッタ姫の学院視察、その日の夜。
「ルイズ、力を貸して欲しいの」
突然の姫の訪問に、しかしルイズは驚かない。遥か天空の機械の眼から、彼女はアンリエッタが寮に向かってくるのを見ていた。
望む望まないに関わらず、ルイズは巨大な力を持っているのだ。
それは遺憾ながら、コルベールの滑らせた口からアカデミーのエレオノールを経て、王室に伝わっていた。『ヴァリエール家の三女が強力な兵器を召喚した』と。
「今、アルビオン王家に叛旗を翻している貴族たち、レコン・キスタをどうにかしないと、トリステインが危ないの。彼らは聖地奪還を掲げ、ハルケギニアの統一を目指しているわ」
アルビオンで内戦が起きているのはよく『見え』ていた。日に日に戦線を後退させ、今では浮遊大陸の隅にある城に篭城している。あれは、ニューカッスル城といっただろうか。
「そこで、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになりました。条件は、わたくしがゲルマニアに嫁ぐこと。成り上がりのあの国には、始祖の血という正当性がのどから手が出るほど欲しいものですから」
それを聞いても、ルイズの頭は冷静だった。かつての彼女なら憤慨していただろうが、異世界のあらゆる英知が詰まったその頭では、それが『しかたのないこと』と理解できてしまった。強大な勢力が統一を名目に宣戦布告してくるかもしれない、そして自国の国力ではそれに対抗できない、ならば力のある隣国と軍事同盟を結ぼう、しかし相手は政略結婚を条件にしてきた。それだけだ。幾度となく繰り返された歴史が、また繰り返されるだけの話。
「……アルビオンに、同盟を阻止できる何かがあるのですね?」
「――――っ。ええ、そうよ」
考えてみれば簡単な話だ。同盟ができなければ、トリステインはレコン・キスタに滅ぼされる。逆を言えば、レコン・キスタはトリステイン・ゲルマニアの同盟をなんとしても阻止したい。しかし、妨害できる材料がなければそのまま放置しておけばいいのだ。わざわざそれをルイズに話すということは――――
「私に、その『何か』を取り戻して欲しいのですね?」
「……ええ。城には既にレコン・キスタの間諜が入り込んでいるらしいの。だから、信頼できるあなたに頼みに来たのよ。危険なのは判っているわ、だけどあなた以外に信じられる人がいないの……」
そして、彼女は、ルイズが一番触れられたくないことに触れてしまった。
「それに、あなたにはエクスキャリバーがあるじゃない。あれはとても強力な兵器と聞い」
「あれを、使えと言うのですか」
アンリエッタの笑顔が凍りつく。恐ろしく低い、今まで一度も聞いたことのない底冷えのする声。アンリエッタは一瞬、それが誰の声か判らなかった。
「そ、そうよ。平民の造った物とはいえ、あれもあなたの使い魔なのだから、あなたを護ることくらいなら……」
「姫様。あれの威力、レコン・キスタで試してみましょうか。二度とトリステインに楯突く国家は現れなくなるでしょう」
ルイズの表情は笑顔。しかし、アンリエッタはその笑顔を生涯忘れられなかった。世界の全てを呪ったような、そんな笑顔だった。
それの威力を知っている、そしてそれを造ったのが誰か知っているルイズは、魔法に固執しなくなった。平民でメイドのシエスタやコック長のマルトーなどとも親しくなり、よく話すようになった。同級生たちにそれをからかわれたりしたが、爆破してやるとそれもなくなった。キュルケは、それをいい傾向だと見ていたが。
しかし、そんな平和な日々は続かない。急遽決まったアンリエッタ姫の学院視察、その日の夜。
「ルイズ、力を貸して欲しいの」
突然の姫の訪問に、しかしルイズは驚かない。遥か天空の機械の眼から、彼女はアンリエッタが寮に向かってくるのを見ていた。
望む望まないに関わらず、ルイズは巨大な力を持っているのだ。
それは遺憾ながら、コルベールの滑らせた口からアカデミーのエレオノールを経て、王室に伝わっていた。『ヴァリエール家の三女が強力な兵器を召喚した』と。
「今、アルビオン王家に叛旗を翻している貴族たち、レコン・キスタをどうにかしないと、トリステインが危ないの。彼らは聖地奪還を掲げ、ハルケギニアの統一を目指しているわ」
アルビオンで内戦が起きているのはよく『見え』ていた。日に日に戦線を後退させ、今では浮遊大陸の隅にある城に篭城している。あれは、ニューカッスル城といっただろうか。
「そこで、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになりました。条件は、わたくしがゲルマニアに嫁ぐこと。成り上がりのあの国には、始祖の血という正当性がのどから手が出るほど欲しいものですから」
それを聞いても、ルイズの頭は冷静だった。かつての彼女なら憤慨していただろうが、異世界のあらゆる英知が詰まったその頭では、それが『しかたのないこと』と理解できてしまった。強大な勢力が統一を名目に宣戦布告してくるかもしれない、そして自国の国力ではそれに対抗できない、ならば力のある隣国と軍事同盟を結ぼう、しかし相手は政略結婚を条件にしてきた。それだけだ。幾度となく繰り返された歴史が、また繰り返されるだけの話。
「……アルビオンに、同盟を阻止できる何かがあるのですね?」
「――――っ。ええ、そうよ」
考えてみれば簡単な話だ。同盟ができなければ、トリステインはレコン・キスタに滅ぼされる。逆を言えば、レコン・キスタはトリステイン・ゲルマニアの同盟をなんとしても阻止したい。しかし、妨害できる材料がなければそのまま放置しておけばいいのだ。わざわざそれをルイズに話すということは――――
「私に、その『何か』を取り戻して欲しいのですね?」
「……ええ。城には既にレコン・キスタの間諜が入り込んでいるらしいの。だから、信頼できるあなたに頼みに来たのよ。危険なのは判っているわ、だけどあなた以外に信じられる人がいないの……」
そして、彼女は、ルイズが一番触れられたくないことに触れてしまった。
「それに、あなたにはエクスキャリバーがあるじゃない。あれはとても強力な兵器と聞い」
「あれを、使えと言うのですか」
アンリエッタの笑顔が凍りつく。恐ろしく低い、今まで一度も聞いたことのない底冷えのする声。アンリエッタは一瞬、それが誰の声か判らなかった。
「そ、そうよ。平民の造った物とはいえ、あれもあなたの使い魔なのだから、あなたを護ることくらいなら……」
「姫様。あれの威力、レコン・キスタで試してみましょうか。二度とトリステインに楯突く国家は現れなくなるでしょう」
ルイズの表情は笑顔。しかし、アンリエッタはその笑顔を生涯忘れられなかった。世界の全てを呪ったような、そんな笑顔だった。
それから数日間、ルイズは学院とアカデミーの人間にエクスキャリバーの運用を叩き込んだ。エレオノールと学院の生徒は反発したが、アンリエッタとオスマンの命令が下達されると大人しく作業するようになった。
そして、後にD-dayと呼ばれるその日、ルイズとアンリエッタと、枢機卿マザリーニをはじめとする将軍や大臣が、トリステイン空軍旗艦メルカトールに乗り、アルビオンに発った。様々な問題や文句が大臣や将軍からあがったが、姫とヴァリエール家の三女の説得は、それを黙らせた。乗員の中にはヴァリエール公爵などルイズの家族がいたが、ルイズの一言でこれも黙らせた。
「お叱りは、結果を見てからでもできます」
そしてその日、歴史上最も短く、最も犠牲者の多い戦争が始まった。
そして、後にD-dayと呼ばれるその日、ルイズとアンリエッタと、枢機卿マザリーニをはじめとする将軍や大臣が、トリステイン空軍旗艦メルカトールに乗り、アルビオンに発った。様々な問題や文句が大臣や将軍からあがったが、姫とヴァリエール家の三女の説得は、それを黙らせた。乗員の中にはヴァリエール公爵などルイズの家族がいたが、ルイズの一言でこれも黙らせた。
「お叱りは、結果を見てからでもできます」
そしてその日、歴史上最も短く、最も犠牲者の多い戦争が始まった。
風石を大量に消費し、メルカトールはニューカッスル城上空に現れた。トリステインによる突然の介入にアルビオン王家、レコン・キスタ共々驚いたが、たった一隻の援軍に、片方に絶望を、もう片方に嘲笑を与えた。
しかし、それは一回の手旗信号により変わる。
『レコン・キスタに告ぐ。我はトリステイン公爵ヴァリエール家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。即時降伏せよ。従わぬ場合は、光の鉄槌が諸君を襲うだろう』
レコン・キスタ側の空軍司令部、戦艦レキシントンの艦橋では、たちの悪い冗談だと思っていた。が、公爵家名義での通達だ、冗談では済まされない。
すぐに主砲をメルカトールに向け、返答を送る。
『こちらレコン・キスタ空軍司令サー・ジョンストン。その要求には従えない』
それが儀礼的なものとは、双方承知していた。
『了解した。トリステイン王国はレコン・キスタに宣戦布告する』
しかし、それは一回の手旗信号により変わる。
『レコン・キスタに告ぐ。我はトリステイン公爵ヴァリエール家が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。即時降伏せよ。従わぬ場合は、光の鉄槌が諸君を襲うだろう』
レコン・キスタ側の空軍司令部、戦艦レキシントンの艦橋では、たちの悪い冗談だと思っていた。が、公爵家名義での通達だ、冗談では済まされない。
すぐに主砲をメルカトールに向け、返答を送る。
『こちらレコン・キスタ空軍司令サー・ジョンストン。その要求には従えない』
それが儀礼的なものとは、双方承知していた。
『了解した。トリステイン王国はレコン・キスタに宣戦布告する』
宣戦布告と同時に、ルイズはエクスキャリバーから持ってきた衛星通信機に声を吹き込む。
「作戦開始。目標、第一ポイント。敵旗艦」
外では将軍や大臣が敵主砲に怯えて騒いでいるが、すぐに大人しくなるだろう。今、艦橋にいるのは国の頂点に近しい者たちと最小限のクルーだけだ。即ち、アンリエッタ、マザリーニ、ヴァリエール公爵、ヴァリエール夫人、エレオノール、そしてルイズ。
「ルイズ、お前は、何をしたかわかっているのか?」
「もちろんです。ほら、お父様も敵艦を見ていないと。歴史の変わる瞬間を見逃しますわ」
「ちびルイズ! お父様に向かって……」
「あねさま。黙って見ていてください」
くるりとエレオノールに背を向け、エクスキャリバーに指示を出す。
「照射」
そして向き直り、
「これが、異世界の平民の力です」
その言葉と同時に、レキシントンは天空からの青い光に包まれた。
騒いでいた将軍大臣達、艦橋の人々、ニューカッスル城の王族貴族、そして、レコン・キスタ。レキシントンに乗っていた者と、光の下にいた者以外の、その場に居合わせた全ての人が、その光を見て唖然としていた。
たった数秒の、光の柱。それが、史上最大の戦艦を、消し去った。
「第二ポイント。敵主力戦艦群。照射」
時が止まったように動かない人々の中で、ただ一人、ルイズが淡々と通信機に命令を言う。
次に大きな戦艦が幾つか消え去った。
「第三ポイント。敵地上拠点。照射」
無慈悲にも、地上の野営地が焦土となる。
「後は指定ポイントを順次照射。民間人と市街には絶対に当てないよう注意すること」
その言葉は、さながら『元の世界』の軍人の様だった。
もう『照射』の声も無く、次々に光の柱が現れては消え、次々に人が、船が消えてゆく。
「どうです、姫様。私の言葉の意味が理解できましたか? 貴女は私に、『これを使え』と命じたのです」
ルイズは、震えていた。しかし、必死でそれを隠して、努めて平静を装い、アンリエッタに告げる。アンリエッタは、蒼白な顔で涙を流しながら、その光景を見ていた。
「これが、『所詮』と侮った異世界の平民の力、魔法の無い世界で造られた兵器。個人を護る為に使えるようなものではありません。大量殺戮と対空防衛の為の、文字通りの戦略兵器なのです。これが……私の、使い魔……エクスキャリバーの……真実……です」
「ああ……ルイズ……こんな、私は、こんなつもりじゃ……」
嗚咽と共に、アンリエッタは崩れ落ち、ルイズにすがりついた。
「ごめんなさい……ごめん……なさい……」
怖くて、泣きたかった。しかし、泣くわけにはいかなかった。ルイズは、強大な力を持ち、そして今、それを行使したのだ。泣いてしまったら、エクスキャリバーの威力を誇示するために人柱になった、消え去ったレコン・キスタの兵士に申し訳が立たない。戦争とはいえ、敵とはいえ、こちらのエゴで殺してしまったのだ。そして、この件に加担した学院の生徒、教師、アカデミーの人間に罪の意識を持たせぬために、ルイズ一人がこの殺戮の責任を負うために、ルイズ名義で宣戦布告をしたのだ。今ここで子供のように泣くわけにはいかなかった。
「作戦開始。目標、第一ポイント。敵旗艦」
外では将軍や大臣が敵主砲に怯えて騒いでいるが、すぐに大人しくなるだろう。今、艦橋にいるのは国の頂点に近しい者たちと最小限のクルーだけだ。即ち、アンリエッタ、マザリーニ、ヴァリエール公爵、ヴァリエール夫人、エレオノール、そしてルイズ。
「ルイズ、お前は、何をしたかわかっているのか?」
「もちろんです。ほら、お父様も敵艦を見ていないと。歴史の変わる瞬間を見逃しますわ」
「ちびルイズ! お父様に向かって……」
「あねさま。黙って見ていてください」
くるりとエレオノールに背を向け、エクスキャリバーに指示を出す。
「照射」
そして向き直り、
「これが、異世界の平民の力です」
その言葉と同時に、レキシントンは天空からの青い光に包まれた。
騒いでいた将軍大臣達、艦橋の人々、ニューカッスル城の王族貴族、そして、レコン・キスタ。レキシントンに乗っていた者と、光の下にいた者以外の、その場に居合わせた全ての人が、その光を見て唖然としていた。
たった数秒の、光の柱。それが、史上最大の戦艦を、消し去った。
「第二ポイント。敵主力戦艦群。照射」
時が止まったように動かない人々の中で、ただ一人、ルイズが淡々と通信機に命令を言う。
次に大きな戦艦が幾つか消え去った。
「第三ポイント。敵地上拠点。照射」
無慈悲にも、地上の野営地が焦土となる。
「後は指定ポイントを順次照射。民間人と市街には絶対に当てないよう注意すること」
その言葉は、さながら『元の世界』の軍人の様だった。
もう『照射』の声も無く、次々に光の柱が現れては消え、次々に人が、船が消えてゆく。
「どうです、姫様。私の言葉の意味が理解できましたか? 貴女は私に、『これを使え』と命じたのです」
ルイズは、震えていた。しかし、必死でそれを隠して、努めて平静を装い、アンリエッタに告げる。アンリエッタは、蒼白な顔で涙を流しながら、その光景を見ていた。
「これが、『所詮』と侮った異世界の平民の力、魔法の無い世界で造られた兵器。個人を護る為に使えるようなものではありません。大量殺戮と対空防衛の為の、文字通りの戦略兵器なのです。これが……私の、使い魔……エクスキャリバーの……真実……です」
「ああ……ルイズ……こんな、私は、こんなつもりじゃ……」
嗚咽と共に、アンリエッタは崩れ落ち、ルイズにすがりついた。
「ごめんなさい……ごめん……なさい……」
怖くて、泣きたかった。しかし、泣くわけにはいかなかった。ルイズは、強大な力を持ち、そして今、それを行使したのだ。泣いてしまったら、エクスキャリバーの威力を誇示するために人柱になった、消え去ったレコン・キスタの兵士に申し訳が立たない。戦争とはいえ、敵とはいえ、こちらのエゴで殺してしまったのだ。そして、この件に加担した学院の生徒、教師、アカデミーの人間に罪の意識を持たせぬために、ルイズ一人がこの殺戮の責任を負うために、ルイズ名義で宣戦布告をしたのだ。今ここで子供のように泣くわけにはいかなかった。
レコン・キスタの首謀者、オリヴァー・クロムウェル名義で降伏が宣言されたのは、それから十二分後のことだった。