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狂蛇の使い魔-16



第十六話



明くる日。
朝食を済ませたルイズは、「見てもらいたいものがある」とワルドに呼び出され、宿にある中庭へとやって来ていた。

宿の裏にあるその場所は、かつて軍の訓練場として利用されてきたという。
さすがに大人数の軍隊全員が収まるほど広くはないが、小規模の訓練であれば充分通用するだけの大きさはあった。
今では宿の物置にでもされているのか、あちこちに木箱や樽が置かれている。

ルイズが宿からの階段を降りると、中庭の中央にワルドが立っているのが見えた。
早足で彼のもとへと駆け寄る。

「やあ、ルイズ。いきなり呼び出してすまなかったね」

ルイズに気づいたワルドが、彼女に向けてにっこりと微笑みかける。

「ワルド様、見てもらいたいものというのは……?」
「ああ、実は彼から決闘を挑まれてね」

そう言って、ワルドが中庭の奥に顔を向ける。
その視線の先には、置かれていた樽に腰かける浅倉の姿があった。
左手に手鏡を持ち、右肩にデルフリンガーを担いで、暇そうにたたずんでいる。

「彼がどのくらいの腕なのか興味があるからね。是非にと引き受けたんだけど、よければ君にも見ていてもらいたいんだ」

自信に溢れた表情でワルドが言った。


「そいつが来たら始めるんだったな」

そう言いながら、浅倉は座っていた樽から腰を上げた。
背負っているデルフリンガーをカチャカチャと鳴らしながら二人に近づいていく。

「や、やっぱりそんな、決闘だなんて……」
「大丈夫。ほんの腕試しさ! 彼を死なせたりしないようにある程度は手加減をするから、ルイズは安心して見ていてくれ」

二人を止めようとするルイズの言葉を遮るようにして、ワルドが言った。
彼女を不安にさせないよう、にっかりと笑顔を作ってみせる。

そんな彼の振る舞いを、浅倉は鼻で笑った。

「大した自信だな……。せいぜい、死なないように気をつけろよ? ……おい、これを持て」
「え? ……うわっ!」

ルイズに手鏡とデルフリンガーを押しつけると、浅倉はズボンのポケットからデッキを取り出し、手鏡に向けてかざした。
現れた銀色のベルトが、腰に装着される。

「ほう……」

ワルドが思わず感嘆の声を漏らした。

「変身!」

デッキをベルトに差し込み、ガラスの割れるような音と共に浅倉が紫の蛇の鎧を纏う。
変身が完了すると、王蛇はため息と共に首を回し、手を軽く払った。


「なるほど。それが噂のマジックアイテムか……。実に興味深い」

ワルドはそう言いながら、王蛇から数歩距離をとる。
そして王蛇の方を向き直ると杖を抜き、構えた。
目付きも真剣なものに変わるが、余裕の表情は崩さない。

それを見た王蛇も、ルイズに持たせていたデルフリンガーをぐわしと掴むと、彼女の目の前で鞘から剣を引き抜いた。
「ひっ」というルイズの声に構うことなく、王蛇は一度剣を振るうと、用済みとなった鞘を後ろに放り投げた。

「邪魔だ。どいてろ」

言われるや否や、ルイズは後ろにある壁まで後ずさった。

戦いとなれば一切手を抜かないのが浅倉というものだ。
ワルドの実力はルイズの知るところではあるが、果たして彼は無事でいられるだろうか……?
ハラハラしながら両者を見守る。

「僕の二つ名は『閃光』だ。風の……」
「黙れ。ここの連中はどうもおしゃべりが過ぎる……。とっとと始めるぞ」

話を強引に止められ、ワルドは一瞬むっとしたが、すぐに元の表情に戻る。

「……じゃあ、始めようか。かかってきたまえ」
「そうか……。なら、遠慮なくいくぜぇっ!!」

腕を大きく広げた王蛇が、ワルド目掛けて勢いよく地を蹴った。


(は、速い……!)

王蛇が振り下ろした剣をすんでのところでかわしながら、ワルドは心の中で呟いた。

先に攻撃を仕掛けさせることで、相手の実力がどれくらいのものなのかを見極めるつもりだった。
だが、もはやそんな悠長なことを言っていられない。
次から次へと繰り出される斬撃に、反撃はおろか身を守る呪文すら詠唱させてもらえないのだ。

また、その威力も凄まじいものであった。
地面が抉られ、壁も所々が砕けていることから、その身に一撃でも攻撃をくらってしまえば致命傷は免れないだろう。
手加減など論外である。

(彼は本気で私を殺るつもりなのか……?)
突き出された剣を後ろに飛び退くことで回避し、そのまま数歩後退して王蛇と距離をとった。
額を嫌な汗がつたっていく。

先ほどまでの余裕は何処へか消え去り、今では焦りに満ちた表情をしていた。

(なんとか呪文を使えれば……!)

そう考えているうちに、目の前まで迫った王蛇が再び斬りつけてきた。
ワルドは咄嗟に横へと身を転がすことで、なんとかその一撃を避ける。
後ろにあった木箱の上から半分が、一瞬で消し飛んだ。


「口ほどにもないな……もっと俺を楽しませろ」

王蛇が動きを止め、ワルドに向かって言い放つ。

「くっ……!」

余裕を見せつけられたワルドは、表情により一層苦々しさを増しながら王蛇に杖を向け、素早く呪文を唱えた。

詠唱が完了すると、風が塊となって四方から王蛇に襲いかかった。
風の魔法、エアハンマーである。

王蛇はその強化された感覚で押し寄せる風の気配を察知すると、前に向けて勢いよく飛び上がった。
先ほどまで王蛇がいた地点に風の塊が殺到し、相殺される。

「ハァッ!!」

飛び上がった王蛇は、そのままワルド目掛けて空中から剣を振り下ろした。
ワルドもすぐに杖を構え呪文を詠唱し、攻撃に備える。

杖と剣が、激しい音とともにぶつかりあった。



「ぐぅっ……!!」

上空から振り下ろされた剣を、ワルドは風の魔法エア・ニードルで魔力を纏った杖を使い、膝を地面についてどうにか受け止めた。
しかし力の差は歴然で、両手で抑えている杖がじわじわと押し込められていく。

一方の王蛇は、右手に持った剣にだんだんと力を加えていくことで、相手が必死に抗う様を楽しんでいた。
仮面の中で、浅倉は不気味な笑みを浮かべた。


「ッ!!」

王蛇が突然剣を引き、反動でワルドの体がふわりと浮き上がる。
その隙を突いて、王蛇は無防備なワルドの体を蹴り飛ばした。

「うがぁッ!!」

後ろに向かって一直線に吹き飛んだワルドは、積んであった木箱の山に体を打ち付けられると、そのまま地面に転がり落ちた。
地に臥したワルドが朦朧としていた意識を手放すと同時に、王蛇がトドメを刺さんと駆け出した。
が。

「やめてぇっ!!」
「うおっ!?」

ルイズが王蛇に駆け寄ると、その体に飛びつき、押し倒した。
地面に倒れてもなお、ルイズは王蛇に抱きついて離れない。

「もうやめて! これ以上やったらワルド様が死んじゃう!」
「おまえぇ! 邪魔をするなァッ!!」

王蛇がルイズの首を掴み上げ、殴りかかろうと拳を振り上げた、ちょうどその時。

二人の頭の中で、あの耳鳴りのようなものが響き渡った。

「ん……?」

王蛇がルイズの首から手を離し、辺りを見回しながらゆっくりと立ち上がった。
むせかえっていたルイズも、顔を動かして辺りの様子をうかがう。


「アサクラ」

宿から中庭に飛び出てきたタバサが、こちらに向かって歩み寄ってきた。
キュルケもその後に続いて現れたが、中庭の惨状とボロボロになって気絶しているワルドの姿を見て唖然としている。

「怪物」
「分かっている。ちょうどいい憂さ晴らしだ……。鏡を出せ」

視線に気づいたルイズが、息を整えながら手鏡を差し出した。
王蛇は手鏡を受け取ることなく、そのまま鏡に飛び込んでいった。

王蛇の後を追うように、タバサもルイズの持った手鏡に向かってデッキをかざした。
ベルトが現れ、腰に巻かれる。

「変身」

ベルトにデッキを差し込み、けたたましい音が鳴ると同時に白虎の鎧が体を覆う。
変身を終えると、タイガは無言で鏡の中へと入っていった。



二人が鏡に消えていくのを見届けると、ルイズは急いでワルドの元へと駆け寄った。
状況がなんとなく把握できたキュルケは、ルイズの肩を掴むと彼女に詰め寄った。


「ちょっとルイズ、これは一体どういうこと? ちゃんと説明しなさい!」
「あ、後で何でも話してあげるから、今は誰か助けを呼んできて欲しいの! ワルド様が怪我をしてるのよ! お願い!」

半泣きになりながらそう言うと、ルイズはキュルケに頭を深々と下げた。

「わ、分かったから頭を上げなさい! 今人を呼んでくるから!」

ルイズの顔を無理やり上げさせると、キュルケは宿に向かって元来た道を戻って行った。



(ルイズが、頭を……!?)

今まで自分に対しては意地でも頭を下げようとしなかったルイズが、婚約者のためとはいえこうもあっさり頭を下げたことに、キュルケは驚きを感じていた。

そういえば、ルイズが塞ぎ込んで以来、彼女のツンツンとした態度を一度も見ていない。
それどころか、まるでトゲが抜けたかのように素直で大人しくなってしまっている。

これも浅倉の影響なのだろうか……?

再び騒動を起こした男のことを考えながら、キュルケは宿の中を駆け抜けて行った。




浅倉、モンスター、仮面ライダー……
これらの登場により狂い始めた、ルイズたちの数奇な運命。
彼女が気づいたのは、その一端にしかすぎなかったのである。



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