あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ラスボスだった使い魔-09


 ブルドンネ街から少し外れた、不衛生と言うにも少々生ぬるい路地裏。
 そこにある武器屋の中で、ルイズとユーゼスは剣の見定めを行っていた。
「アンタ、この剣を使える?」
「無理だな」
 『店主のお勧め』である、1.5メイルほどの大きさの頑丈そうな大剣を見て、ユーゼスは即座にそう判断する。
「ま、そうでしょうね。重そうだし」
「ふむ、これで『私にちょうど良い剣だ』などと言われたら、お前に対する評価を改めなければならないところだったぞ、御主人様」
「……それはどうも」
 どのように改められるかは、今更考えるまでもない。
「やっぱり、こっちのレイピアの方が良いんじゃない?」
 ルイズが片手で、細身の剣を差し出す。
 それを見たユーゼスはアゴに手を当てて考えた後、否定の言葉を口にした。
「悪くはないが、細すぎる。攻撃方法が突きに限定されるし、つばぜり合いにでもなったら確実に折れるぞ」
「う~ん……」
 そう言われると、確かにその通りのような気がしてくる。
(それ以前に、つばぜり合いになったら、まず負けちゃうんじゃ……)
 ユーゼスの腕力から判断した、ほとんど確信に近い予想ではあったが、あえて口には出さないことにした。
 ……仮にも自分から『剣を買ってあげる』などと言い出した手前、今更『やめましょう』とは言えないのだ。
 では何を買えば良いのだろう、と二人で首をひねっていると、
「開いているか?」
 凛とした女性の声が、狭い店内に響く。
 ルイズとユーゼスがそれにつられて入り口の方を見ると、そこには毅然とした態度の年若い女性が立っていた。
 杖もマントもないことから、少なくとも貴族ではないことがうかがえる。
 年は大体だが20歳を過ぎたあたり、短めの金髪、先程会ったエレオノールとは違った意味で気の強そうな青い瞳。
 下手をすると男にも見えてしまいかねないような顔だが、女性独特の線の柔らかさは確かに確認が出来る。
 また、その歩き方には『油断のなさ』がにじみ出ていた。
(……軍人か?)
 あのタイプの人間に遭遇したことがあっただろうか、とユーゼスは脳内で検索をかけてみる。
 ……確か、トレーズ・クシュリナーダの側近に女性がいたような気がするが、雰囲気としてはアレが一番近いだろうか。
「何だ、アニエスか」
「『何だ』とは失礼だな、客に向かって」
「……今、ちょうど貴族のお嬢様が、従者に使わせる剣を選んでらっしゃるんだよ。何を買うつもりかは分かんねぇが、邪魔だけはするんじゃねぇぞ」
「分かった、分かった」
 店主とのやりとりの後、金髪の女性は店の隅へと歩いていく。
 そしてそこにある乱雑に剣が押し込まれているタルの前に立ち、ガチャガチャと剣の束の中をかき回し始めた。
「……何やってんのかしら、あの平民」
「あの中から『それなりに良い剣』を選んでいるのではないか?」
 そもそも『剣を購入する』という行為自体が初めてなので、ルイズとユーゼスは『手本』とするべく、しばらく金髪の女性の様子を見ることにした。
 ……当然ながら、店主は良い顔をしていないが。

 そうして観察すること、しばし。
「これを貰おう」
 『お勧め』として出された剣ほど太くもないが、余計な装飾も、作った人間の遊び心も見当たらない『質実剛健』を体現したような剣を手に取る金髪の女性。
 『ふむ、あのような物が良いのか』というユーゼスの呟きを耳にして、店主は顔をしかめた。
「……また、味も素っ気もねぇ剣を選びやがるな、お前は」
「何か問題でもあるのか?」
「ねぇよ。……ったく、せっかくのカモが……」
 ぶつくさ言いながらも、店主は金髪の女性が差し出した剣を鞘に入れる。
「それと、例のモノを」
「あいよ。お前も変わってるよな、わざわざ銃を改造して欲しいなんざ……」
「実用性と扱いやすさを重視しているだけだ」
 店主はげんなりした様子で店の奥に引っ込み、1分もしない内に布に包まれた棒状の物を持って来た。
「ふむ……」
 金髪の女性が布を解くと、中から木と鉄が組み合わさって出来た50サントほどの長さの銃が現れる。
(……アレがこの世界の『兵器』のレベルか)
 ユーゼスにしてみれば、『クラシカル』や『骨董品』を通り越して、『貴重な文化財』のレベルである。
 見たところ、火薬を使った単発式のようだが……。
(剣も『錬金』で鍛えて、魔法もかけたと言っていたな。魔法で大抵のことが出来てしまうから、工業技術が発達しにくいのだろうな)
 仮に、人間が本当にその身一つで出来る範囲を、1~10と定義する(扱う事象自体は何でも良い)。
 魔法を使えば、その範囲が1~100にまで広がるとする。
 ……察するにハルケギニアの人間たちは、その『100』までで満足してしまっているのだろう。
 実際、科学技術で再現するにはかなり困難な事象も、割合あっさりと魔法でこなしてしまう。
 仮に範囲を超える事態が起きたとしても、『120』や『200』程度の範囲であれば、使い方を工夫するなり、人員を増やすなりすれば解決が出来る。
 しかし、どう工夫を凝らそうが、完全に魔法の範囲を超えてしまう事態には、全く対応が出来ずに終わるだろう。
 例えば『1000』や『10000』の規模であったとしても、まず間違いなく最初に魔法を使った解決策を模索するはずだ。
 ハルケギニアでは前提と言うか、根底に『魔法』があるため、魔法以外の解決方法が極めて見つかりにくい。
 そもそも、『魔法』が発達しすぎているせいで、その解決方法になりえる『魔法以外の解決方法』の手段が発達しないのである。
 ……部屋が暗かったとして、ランプでは心もとない。
 地球人は、これをどうすれば解決出来るのだろうと考え、試行錯誤の末に電球や蛍光灯が発明された。
 しかし、このハルケギニアでは『魔法なりマジックアイテムなりを使えば良い』で解決してしまう。
 魔法技術もそれなりに発達の余地はあるのだろうが、国が出来てから6000年も経過しているのに、今だ文明が中世レベルであることを考えると、どうも魔法にはエネルギー的にも応用範囲的にも『限界』があるようだ。
(……とは言え、無節操な産業の発達は私も好まないがな)
 産業が発達すれば、必然的に自然が汚染される。
 科学技術がほとんどないということは、このハルケギニアは美しい自然を美しいまま保っていられるということでもある。
 この世界は、下手に加速させるよりも、このままでいるのが一番良いのかもしれないな―――などと、ユーゼスは珍しく感傷的に思うのだった。

「ねえ、銃はどうなの?」
「……? どう、とは何だ?」
「アンタが銃を使えるのか、ってことよ」
 しんみりしていると、横にいたルイズから声をかけられる。
 ユーゼスは主人の問いについて、ふむ、と軽く考えると、
「難しいな」
 と答えた。
「……もうちょっと詳しく答えなさい」
「あのような『扱う者の技量が反映されすぎる』武器は、私に向いていない。
 ただ『使うだけ』ならともかく『動き回りながら撃つ』となると、かなりの技量と習熟と実戦経験が必要になるだろうな」
「ふーん」
 使うのならば、やはり剣のような単純な武器だろう。
 何しろ『斬る』と『突く』くらいしか攻撃方法がないので、扱いが単純なのである。それこそ『使い方』だけを感覚として得て、多少の身体能力の向上を得たユーゼスでも使えるほどに。
「じゃあ、取りあえず剣を選びましょうか。レイピア以上で、あの『お勧め』以下のサイズのを」
「そうだな」
 結局ルイズとユーゼスも、金髪の女性にならってタルに押し込まれている剣の中から選ぶことにした。
「う~んと、コレなんてどうかしら?」
「形状が独特すぎるな。斬る時に引っかかる。……これはどうだ?」
「細工の趣味が悪すぎ! アンタは仮にもわたしの使い魔なんだから、そんなの持ってたらわたしの品格まで疑われちゃうでしょ!」
「そんなものか」
「そんなものよ! ……じゃあ、コレ!」
「短すぎる。それでは対人戦闘で動脈をかき切るか、刺すことくらいにしか使えないぞ」
「……それじゃ『貴族の従者』ってよりは『暗殺者』ね……」
 アレでもないコレでもないソレでもない、と次々に刃物を手に取りながら言い合う主人と使い魔。
(……どうでもいいのだが、いちいち武器を手に取るたびに『使い方』が頭に流れ込んでくるのは、何とかならないのだろうか……)
 『頭に浮かぶ』だけならまだ良いのだが、身体の方が勝手に『その武器に最適な身体の動かし方』を実行しようとするのだ。しかも無意識レベルで。
 握り方、構え方、重心の取り方、体重移動のやり方、振るい方、身体のねじり方、刃の角度の付け方、果ては持ち運び方や歩き方まで、である。
 ……一つや二つ程度ならば許容も出来るのだが、こう取っ替え引っ替えしていては、ハッキリ言って疲れる。
 ルーンの機能のオン・オフが自在に出来ればいいのだが、そんな便利な機能はないし、構造をいじるには『精神制御』の部分と同じく、固着する前に操作する必要がある。
(……諦めるしかないか)
 これほどの剣に触れる機会など、そうそうあるものでもないだろう。
 これも貴重な体験、と割り切って、ユーゼスは剣の物色を再会した。
 そして、手違いで錆びだらけの剣を掴み上げてしまう。
「コレは―――駄目だな」
「ダメね」
 さすがにこれは意見が一致した。
 さっさと戻そう、とタルの中に錆びた剣を押し込もうとすると、
「おうおう! 手に取って見るなり『駄目だ』とは、言ってくれるじゃねえか!」
 いきなり剣が大声で抗議を始めたのだった。

「剣が喋っただと?」
 この魔法の世界では、このようなこともあるのだろうか。
 ユーゼスが物珍しそうに錆びた剣を見ていると、店の主人から怒鳴り声が上がる。
「やい、デル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」
「デルコー?」
 改めて、その剣を観察してみる。
 『店主のお勧め』と比べて、長さ自体はそれほど変わらない。違うのは刀身が折れなさそうな程度には細いことだ。
 ―――錆びさえ浮いていなければ、そこそこに良い剣だったと言えるだろう。
「『お客様』ぁ? こんな剣もマトモに振れねえようなヒョロヒョロした兄ちゃんが『お客様』だぁ? ふざけんじゃねえよ! 耳をちょんぎってやらあ! 顔を出せ!」
「……それって、インテリジェンスソード?」
 戸惑いながら、ルイズが店主に問う。
「そうでさ、若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣を喋らせるなんて……」
 『おめえは黙ってろ』だの『溶かすぞ』だの『やってもらおうじゃねえか』だの、口汚い口論を始める店主とインテリジェンスソード。
 店主のかたわらでは、自分たちの事の成り行きを見物していたのか、まだカウンター近くにいた金髪の女性が『ほう、あんなものもあったのか』などと言っている。
 ユーゼスは試しに錆びたインテリジェンスソードを二、三度振ってみた。
(……重さ自体は少し重い程度か。この『喋る剣』も興味深いのだが)
 やはり、錆びているのが致命的だ。
 そのままじっと錆びたインテリジェンスソードを眺めていると、その剣が何かに気付いたように声を上げる。
「……おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」
「『使い手』?」
 言い得て妙な表現である。
 確かに、自分のルーンの能力ならば武器をある程度は『使う』ことが出来る。
 ……自在かつ巧みに『操る』、武器を手にして『戦う』のは、自分の領分ではないが。
「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい。てめ、俺を買え」
「……ふむ」
 数秒ほど考え、ユーゼスは店主に気になることを尋ねてみる。
「……これと同じインテリジェンスソードで、もう少し理知的で、物静かで、主人に忠実そうなものはないか?」
「おい、そりゃどういう意味だ!?」
 錆びたインテリジェンスソードの抗議を無視して、店主はユーゼスの質問に答える。
「はあ、すんません。あいにくウチにあるインテリジェンスソードは、そのデル公の一本だけでして……」
「他の店に行けばあるのか?」
「いや、インテリジェンスソードを扱ってる店ってのは、なかなか見当たらないと思いますぜ」
「……………」
「あ、あの、ちょっと、兄ちゃん―――いや、お兄さん? お兄さんの実力を見抜けるインテリジェンスソードなんて、ハルケギニア広しと言えど、このデルフリンガー様くらいのもんで……」
「……そうだな、買おう」
「お、おお! 買ってくれるか、兄ちゃん! そう来なくっちゃな!」
 ユーゼスが下した決断に、デルフリンガーという名前の剣は鍔をガチャガチャと鳴らしながら喜んだ。
 ルイズはそれを聞いて、露骨に不満そうな声を上げる。
「え~? そんなのにするの? もっと綺麗で、喋らないのにしなさいよ」
「……誰がこんな錆びた剣を『実際に使う』などと言った?」
「……………え?」
 困惑の声を上げたのは、デルフリンガーである。
「インテリジェンスソード……なかなか面白い研究材料だ。持って帰って色々と調査をしてみる。
 さて、改めて『実際に使う』ための剣を選ぶぞ、御主人様」
「え、ええええええええええ!!?」
 絶叫が、武器屋の中に響き渡った。

「な、なあ、嘘だよな? もう、兄ちゃんったら、冗談なんか言わなさそうな顔してサラッとキツいジョークを言ったりするんだから。……ねぇ?」
 そんなデルフリンガーの呼びかけを無視して、二人は相変わらず剣を選ぶ。
「う~~~ん……。……なんか、こう、『コレだ!』ってのが無いわね」
「そうだな、細すぎず太すぎず、長すぎず短すぎず、形や装飾も華美すぎず……」
 首をひねるルイズとユーゼス。
 もう、こうなったら本格的に別の店に行った方が良いか、と思い始めていると。
「……はあ、見ていられんな」
 呆れた様子で、金髪の女性がカウンター脇からこちらへと歩いてきた。
「な、何よ、アンタ?」
「……貴族のお嬢様、今あなたの手元にある予算は?」
「え? ……えっと、1000エキュー持ってきて、ユーゼスの白衣とか水の秘薬とかで使ったから……820エキューくらい?」
 唐突に質問されたので、思わず素直に答えてしまうルイズ。
「この錆びた剣の値段は?」
 金髪の女性は、次に店主へと質問する。
「あー、それなら100でいい」
「安いな。……では、残りは720エキューほどか……」
 ふぅむ、と呟いた後、剣が押し込まれたタルから視線を外す。
 そして壁にかけてある剣を検分し始めた。
「あれ、このタルの中から選ぶんじゃないの?」
「その中にあるのは、全て500エキュー以下の投げ売り品だ。……あいにく私は金のない平民だからな、その中から比較的良い品を選ばせてもらったのだが」
 数秒ほど壁に並べられた剣を眺めた後、金髪の女性は一本の剣を手に取った。
「これなどはどうだ?」
 女性から剣を手渡される。
 長さは若干短め、太さはデルフリンガーと同程度、装飾もほとんどない。
 端的に言うと、特徴らしい特徴のない剣である。
「ふむ、悪くないな」
「……少なくとも、このボロ剣よりはマシね。値段はいくらになるのかしら?」
「…………650エキューになりまさ」
 いかにも不服そうに言う店主だったが、金髪の女性は構わずに決断を促した。
「では、これで決まりだな」
「ああ」
「ま、良いか」
「い、いやいや、そんなどこにでもあるような剣じゃなくて、この長い年月を経て幾多の経験を蓄積した……」
 そんな購入者の様子を見て、何とか自分の『剣』としてのポジションをキープしたいデルフリンガーだったが、
「あ、どうしても煩(ウルサ)いと思ったら、こうやって鞘に入れれば大人しくなりまさあ」
「ちょ、ちょっと待っ」
 ガシャン、と鞘に収められて沈黙してしまった。

「じゃあ、二つで750エキューで良いわね?」
「へい、毎度」
 やはり不満そうな様子ではあったが、客は客なので淡々と仕事をこなす店主。
 そして、剣2本がユーゼスに渡されたのだが、
「……重い」
 軽々と振り回されるイメージがあるが、剣はなかなか重量がある。それが2本なのだから、鍛えてある人間であってもそこそこの負担になってしまう。
 加えて、エレオノールから受け取った分厚い魔法の本が3冊。
 ……剣は、鞘から抜かないとルーンの効力は発揮されないので、身体能力の向上は望めない。
 要約すると、荷物だらけで凄く重い。
 ぬぅ、と声を上げながら剣2本を背負い、肩の鞄に入れてある本の重さを実感するユーゼスだった。
「そう言やお前、城勤めになったんだって?」
「まあな、ここに来るのもこれが最後かも知れん。何しろ支給品があるようだからな」
「……既製品でお前が満足するとは思えねえけどな」
 そんな店主と金髪の女性の雑談を聞きつつ、武器屋を後にする。

 そして魔法学院への帰り道にて。
「くっ、剣と本の重さで、バランス、がっ……! ぐあっ!?」
「また落馬!? ……ああもう、こんなヤツを屈服させようって決意したわたしって、間違ってるのかしら……」
 なお、帰りには5時間ほどかかったことを追記しておく。



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