あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

谷まゼロ-01


ここは、魔法使いが学びを請う魔法学園。ハルケギニアに存在するトリステイン王国内に居を構えている。
名をトリステイン魔法学園。
そこで今、春の使い魔の召喚儀式が執り行われていた。
儀式の主役である生徒たちは、教師に教わった通りに呪文を唱え、
生涯共にするであろう使い魔とかけがえのない出会いを果たしていた。

だが、その中で一人召喚の儀式が上手くいっていない生徒がいた。
その生徒とは、桃色がかったブロンドの髪の少女、名をルイズといった。
ルイズは、未だに使い魔を呼び出せてないことを周りの生徒から罵りの言葉を投げられていた。
唇を噛んで肩を震わせているルイズは、他の生徒に言い返すことはできなかった。
何故なら、ルイズが使い魔を呼び出せていないのは事実であったからだ。
顔を紅潮させてルイズは叫んだ。

「この際、変なやつでもいいから出て来なさいよっ!」

ルイズは、すでに何度も失敗している召喚の魔法を再び唱え、杖を振る。
魔法を唱えたその瞬間、辺りを覆い隠すほどの噴煙起こす爆発が生じた。
ルイズは、また失敗したと思った。だが、煙が徐々に晴れてくると何かの影が爆心地だった所に見える。
その影を見たルイズの心は躍った。ついに成功したのだと。

だが、完全に煙が晴れ、影の正体が明らかになると風船が萎むかのように、落胆の色がルイズの顔に表れた。
生徒の一人が、召喚されたものを指をさして、野卑た口調で言った。

「おい人間だぜ!ルイズ、『サモン・サーヴァント』で人間を呼び出してどうすんだ!しかも……平民?」

その生徒が指さす方向には、一人の青年が地面に転がっていた。
黒尽くめの衣装で、手には小さな本らしきものを持っている。
青年は、まるで座っている椅子をいきなり引き抜かれてコケたような体勢であった。
しかし、注目すべき点は他に存在した。
その青年の顔には、その前面を隠すようにぴったりと張り付いた仮面があった。
白く、そして酷く無機質。そして視界を確保するためなのだろうか、申し訳程度に目の部分に穴が開いている。

「平民を呼ぶとはさすがはゼロのルイズだ!しかもあの平民、仮面をつけてるぞ、変人同士お似合いだな!」

誰かがそう言うと、人垣でどっと笑いが起きる。
笑われたことに腹を立てたルイズは顔を真っ赤にさせ、
引率の教師らしき中年男性に詰め寄った。

「ミスタ・コルベール!儀式のやり直しを要求します!」

ミスタ・コルベールと呼ばれた黒いローブの男性は、首を横に振った。
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール。決まりなのだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。
 例外なく、一度呼び出した使い魔は変更することはできない。なぜなら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。
 好むと好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」

「でもっ!……でもこんなのって!お面してるんですよ!?」

再びミスタ・コルベールは首を横に振った。
そして子供に言いきかせるかように柔らかな口調で言った。

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール、儀式を続けなさい」

ルイズはがっくりと肩を落とした。そして観念したのか、
無様に転がっている自分の使い魔となる青年の下に歩いて近づいて行った。

ルイズが目の前まで来ると、青年は前触れもなく、突然立ち上がった。
ルイズは一瞬驚いて後ずさるが、立ち上がった青年を上から下へと視線をやり、よくよく見てみた。
青年はルイズが思うより身長が高かった。
加えて、顔に仮面をつけているので一切表情がわからない、
そのためルイズは不気味さを覚えている。
どう話しかけようかルイズが逡巡していると、仮面をつけた青年の顔がルイズに向いた。
やはりこの青年が何を考えているかルイズにはわからなかった。


……何だ?ここは?

仮面をつけた青年が、呼び出されて初めに思ったことだった。至極まともな感想であった。

青年の名前は『谷』といった。
彼は、日本の鳥山高校に通う高校生。通学途中に呼び出されたのでガクランに鞄といった格好であった。
まず谷はどこからこんな変な状況になったのかを過去からなぞって考えてみた。

たしかオレは通学するために電車に乗ってて、駅に着いて降りようとした、そうしたらここにいた。

とても簡潔な答えであった。
付け加えるとするならば、彼は大好きな小説を読みながら電車の乗車口から降りたのだ。
そのとき谷は、自分の体に当たって誰かを突き飛ばしても、気付かないほど熱中して本を読みながら歩いていた。
そしてそのことが此度の要因となった。目の前に現れた光る鏡に、そのまま歩いて突っ込んでしまったのだ。
それが谷が居た世界、地球と、今いる世界、ハルケギニアを繋ぐゲートであった。

だが、そんなことは与り知らない谷であった。
とりあえず立ち上がって、周りを見渡した。
豊かな草原が広がっており、いかにもといった感じの西洋風の石造りの古城が見えた。
谷には、誰もが一度は想像したことがあるようなファンタジー世界に思えた。

そして、目の前には魔法使いのコスプレをしたような少女や、男子たちが目の前にいる。

つまり、これはこういうことだ。

谷は電車の下りようとした瞬間に、
このファンタジーな世界に迷い込んだことを彼なりに自己解釈した。
そして突然大きな声で喋った。


「夢だなコレ!」


いきなりわけのわからないことを言いだした仮面の男にルイズは混乱した。

「え?なに……!?なんなの……!?」
「いつのまに眠ったんだオレ?」

谷は完璧に今いるこの場所が夢の世界だと思い込んでいた。
元々思い込みの激しい性格ではあるが、このような展開においては、まだまともと言えるかもしれない。

谷は、次に『島さん』のことを考えた。
『島さん』とは、谷が思いを寄せる『島 リホコ』という名の同学年の女生徒である。
谷は、その『島さん』に対して、並々ならぬ恋心を抱いている。今現在は一方的な片思いではあるが、
彼にとっては、何を投げだしても惜しくないほどの女性であり、彼女に想いを寄せている。
『島さん』こそ谷にとっての世界の中心であり、酸素のようになくては生きていけないほどの存在。
普通の人間から見れば、異常ともとれるような強い恋心。
一歩間違えれば、ストーカーとなんら変わらない。むしろそれよりもヒドイ。
だが、彼は『島さん』の幸せを心から願っていたし。そのためにはどんな苦労も厭わない。

そして、『島さん』を思い浮かべない時はない。
このときもまた、『島さん』が登場する夢だと信じ込んでいた。
自分の心の芯に根付く願望が見せる夢だと。

意味不明なことを口走ってから、何か考え耽っている仮面の男に、戸惑いを覚えながらもルイズは声をかけた。

「……ね、ねぇ。とりあえず、あんた名前は?」

その言葉に改めてルイズの存在を視認した谷は、仮面をつけた顔向けた。
谷は指をルイズに向ってさして、見下ろしながら言った。

「お前、オレの夢の世界の住人だろ?何言ってんだ!そのくらいわかれ!」

「……????な、なんなの?何を言ってるの?名前を教えなさいって言ってるのよ!」

ルイズのがっかり度は、さらに増していた。
人間で平民。そして変人。意思疎通ができるかも怪しい。
谷は首をかしげると、めんどくさそうに言った。

「谷」

「なによ?タニ?変な名前」

一方で、目の前にいるルイズを、谷は変わったやつだと思った。
そして頭の先から足先まで、ルイズを見た。白いブラウスに短すぎるスカート、そしてマント。
まるでハロウィンの仮装であった。
目の前の少女に、トリックオアトリートと言われても、なんら違和感がない。

ふと谷は、『島さん』がこの格好をしていたならと考える。
短いスカートを来て、魅力的な太ももを露わにしている姿を想像してしまった谷。
谷の顔は真っ赤になり、急に忙しなく周囲を見渡した。

「おいっ!島さんはどこだ!?オレの夢なんだから絶対いるだろ?なあ」

「はあ!?頭おかしいんじゃないの。ホント何言ってんのよ『コイツ』……」

それは何の前触れもなく訪れた。
まるで、噴火するはずもない砂場に作られた山が突然噴火し、溶岩を噴出したかのような不条理。


「コイツとはなんだあああああああああああああ!!!!!」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」


谷が突然ルイズに向って拳を振り上げて殴りかかろうとし、鼓膜が破れるかと思わるほどの声量で叫んだのだ。
何の脈絡もなく、怒髪天を衝いた谷に流石のルイズも身の危険を感じ、
悲鳴を上げながら、頭を両手で押さえて身を屈めた。
しかし、拳は振り下ろされなかった。

恐る恐るルイズが頭をあげると、そこには拳を振り上げたまま固まっている谷がいた。
しばらくすると、谷は静かに拳を下ろし、何故か項垂れていた。

谷は、自己嫌悪を苛まれていたのだ。夢の住人に対して、何をやっているんだろうかと自問自答していた。
なんで夢の中で『島さん』を探そうとしてるんだと。

何千回も見た『島さん』が出る夢。
『島さん』が自分に対して「好き」と言ってくれる夢。
自分のセコイ願望が生み出した夢。
自分で『好き』と言わせている惨め過ぎる、そして馬鹿すぎる夢。

今回もまた、こんな馬鹿げたファンタジーの世界に『島さん』を出演させて、
自分の浅ましい願望を実現させようとしている。谷はそう考えていた。
谷はつらかった。彼は現実の『島さん』に好かれたいのだから。

ごめんなさい……夢だからって好き勝手やって。

谷は心の中で『島さん』に本気で謝っていた。

そんな心情を知らないルイズは、谷がいきなりネジが切れた人形のように止まってしまったかのように思えた。
しかし、チャンスだと考えた。急いで杖を振って呪文を唱える。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。
 この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

呪文を唱え終えると、ルイズは放心状態の谷の仮面に、ぴょんとジャンプしてキスをした。
キスをすることが、使い魔の契約となるのだった。
これで『コントラクト・サーヴァント』は完了、しばらく待てば体に『使い魔のルーン』が刻まれる。
そのはずだった。ルイズもそのことを知っていた。
だが、待てどもそのような気配は毛頭ない。
どこか縋りつくように、そして心なしか力のない口調でルイズは尋ねた。

「ミスタ・コルベール」

ミスタ・コルベールは谷をまじまじと見つめてから言った。

「うーん。これはあれではないだろうか。仮面を外して直に行わなければならないのでは?
 ミス・ヴァリエール、とりあえず試してみなさい」

なるほど、とルイズは思った。だから『コントラクト・サーヴァント』がうまくいかなかったんだと。
ミスタ・コルベールの発言は、ルイズに希望を与えた。
未だに心ここにあらず状態の谷に近づき、ルイズは仮面に手をかけ、もぎ取ろうとするがびくともしなかった。
何かで固定されているようには見えないのに、ずれる気配すらもない。
顔を真っ赤にして、谷の体に足をかけて引っ張るがどうにもならない。
その場にいる者たちに、スカートの下から現れた陶器のように白い肌をした太ももを披露しているだけであった。

突然谷がルイズの顔の横に手をかけ、そのまま押しのけ、ルイズを自分から引き離した。

「むおっ……!!何すんのよ!っていうかなんで外れないのよ!!?呪いでもかかってんの!?それとも同化してんの!?
 ちょっと自分で仮面を外しなさいよ!『コントラクト・サーヴァント』できないじゃない!!」

辺りから再び笑いが起きる。

「おいおい!ルイズ!平民相手に『コントラクト・サーヴァント』できないのかよ!?」

嘲笑はさらに大きなものとなった。
見かねたミスタ・コルベールが、ルイズに諭すかのように言った。

「ミス・ヴァリエール。今は『コントラクト・サーヴァント』をしなくてもいいです。出来る時になったらしなさい」

そうは言われても、ルイズにとって屈辱には他ならなかった。
奥歯で噛みしめ悔しそうな顔をしている。

「さてと、皆教室に戻るぞ」

ミスタ・コルベールがそう告げると、生徒たちは短く呪文を唱えて杖を振った。
すると、生徒たちの体が宙に浮き、そのまま遠くに見える古城に向って飛んでいった。

その、人が空を飛ぶという現実世界では信じられない光景をぼんやりと見つめていた谷が叫んだ。

「こりゃ夢だわ!!いやもう間違いねェ!!こりゃ夢だ!」

「何言ってんのよ……コイ……。とにかくついて来なさいよ」

禁句ワードと思しきものを避けて、ルイズは谷にそう言った。
得体のしれない使い魔。先が思いやられるルイズであった。


日が暮れ、谷とルイズは学院内にある女子寮の一室、ルイズの部屋に来ていた。
谷はなにがなんだかわからないまま、ついてきてしまっていた。
未だに、しばらくすれば、この夢から醒めると思っているのだった。

谷は窓から、夜空にある二つの月を眺めていた。

谷の言い分を聞いたルイズは、ほとほと呆れていた。
この世界が自分の夢の世界だと主張しているのだから、頭がおかしいと思われても仕方がない。

「ちょっと!!タニ!!何度言ったらわかるの?ここは現実よ!!」

「だーかーらっ!。夢だって言ってんだろ!?」

「あんたバカじゃないの!?ここのどこが夢だっていうのよ!?
 説明してみなさいよ!!あんたは呼吸してるでしょ!?あんたは実際にここにいるでしょ!?
 これが現実じゃなかったら、どこに現実があるのよ!?」

「何だ?お前。そしたらあれか。ここが現実だとしたら、あの月はなんなんだ?
 二つあるじゃねえか!こんなの地球じゃねェ!!別世界だ!!」

そこまで自分で言った瞬間、谷の背筋が冷たくなった。嫌な予感が頭によぎる。

「……これが、現実だったらどうするんだ?……し、島さんと会えなくなるじゃねェのか!?
 ちょっと待てよ!!ありえねェぞ!全然笑えねェ!断じて認めねェ!!」

突然谷は窓を開け放って、首の血管がくっきり浮き上がるほど力強く、遠吠えする狼のように叫んだ。

「島さあああああああああああああぁぁん!!!!」

「うるさあああああああああああああい!!!」

ルイズは辟易していた。変人どころのレベルじゃない。
なにか猛烈に勘違いしたまま、それを断じて貫こうとしている。
半ば諦めモードのルイズは投げやりに谷に質問した。

「その『シマサン』って誰よ?」

まともな答えが返ってくるとは思っていなかった。
しかし、意外にも谷の返答は、今までのと比べると要領を得ていた。

「島さんは、オレが大好きな女性だ!!凄い魅力的なんだぞ」

ルイズはその言葉に何故かカチンと頭にきた。
谷が初めて嬉しそうにしているのが、他の女の自慢だったからかもしれない。

自分の主人であるわたしを差し置いて……なんなのコイツ。

沸々とルイズの中で苛立ちが沸き立っていた。
そして、悪気はなかったしそんなつもりもなかったが、ルイズは自ら大き過ぎる地雷を踏んだ。

「そのシマサンっていう女、どーせあんたが言うほど大した女じゃないんでしょ」

言葉を言いきった瞬間、ルイズにもわかるほど、周囲の空気が変化した。
ベッドに腰かけて喋っていたルイズの目の前に、無言で谷が立っている。
その無機質な仮面で隠された顔でルイズを見下ろしていた。とてつもない圧迫感と威圧感。

このあとルイズは生涯忘れることのない経験を味わうことになるのだった。


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