あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔導書が使い魔-04b


「諸君! 決闘だ!」
大げさなポーズを取りながらギーシュが言った。
ヴェストリの広場に噂を聞きつけ集まった多くの生徒達がそれに同調するよう
に応える。
広場には野次馬の輪ができ、その中心には3人。
「覚悟はいいかい。ルイズと平民の使い魔君」
1人はギーシュと。
「五月蝿いわね」
「御託はいい、さっさとやらんか」
ルイズとアルである。
口元をヒクヒクとさせながらも、ギーシュは薔薇の造花を突きつけた。
「さあルイズ、怪我したくないなら今のうちだ。僕にその無礼な使い魔と一緒
に謝るんだ」
多少は冷静になったのか、取引らしきものをさも名案とばかりに語るギーシュ。
「却下だ」
「するわけないでしょ」
だが当然のごとく2人は跳ね除ける。
ギーシュは一瞬硬直するも、余裕は崩さなかった。
「そうだな。このままでは決闘にもなりはしない」
それは相手が平民と“ゼロ”のルイズであるから、という明らかな嘲りと油断。
一方的な哀れみすらも持ち、ギーシュは語りかける。
「ハンデだ。僕はゴーレム1体で戦おうじゃないか」
薔薇の造花を振ると、花びらが1枚落ちそこから女性を模したゴーレムが現れる。
「どうだい? これが僕『青銅』ギーシュのゴーレム『ワルキューレ』だ」
惚れ惚れと言うギーシュに――

先ほどから目の前でギーシュがなにか喚いている。
ルイズはそれを聞きながらもほとんどを聞き流していた。
頭の中を駆け巡るのは、緊張と不安と恐怖である。
かっとなったとはいえ勢いで決闘を受けてしまい今更後には引けない。
怖い……。
青銅でできたゴーレムの一撃は軽々とルイズを吹き飛ばすだろう。ルイズの攻
撃など青銅は意にも介さないだろう。
この手にあるのは一度も成功しない魔法を操る細い杖だけ。
なんと頼りないことだろう。なんと情けないことだろう。
心の弱い部分が今すぐ謝れ、逃げろと訴えてくる。事実そうしたほうが賢いの
だろう。こんな戦いは無益だとわかっている。
ちらりと横を見る。となりにいるアルは腕を組み、まるで敵ではないとばかり
に余裕の笑みでギーシュを見ていた。
ルイズは思う。負けるわけにはいかない、と。
杖を握り込むと、大きく息を吸う。頭に浮かぶはライバルたる赤毛の女。口は
勝手に動く。
「ギーシュ、早くしてくれないかしら。わたしはあの2人と同じでその長った
らしい語りは告白だと思ってしまうわ」
ルイズは長々と口上を述べているギーシュに言った。
「――もちろん断るけど」
「――っ!」
ギーシュの表情から余裕が消える。
「いいだろう……。グラモン家の3男、ギーシュ・ド・グラモン。『青銅』の
ワルキューレがお相手する」
ルイズはそれを見て、杖を掲げた。
「ラ・ヴァリエール家の3女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・
ヴァリエール! 来なさい!」
「行け! ワルキューレ!」
薔薇の造花が振られ、ゴーレムが2人へと走り出した。
「やれやれ、名乗りとはまた悠長な」
そう言ってアルが動き出そうとしたとき、目の前に出された手で動きを制され
る。
「……なんのつもりだ?」
動きを制す手を、ルイズをアルは見た。
ルイズは前を、近づいてくるゴーレムを見ながら言う。
「あんたは下がってて」
「なにを――」
「これだけは――譲れないの」
「――」
それになにを感じたのか。アルは口をつむぐと1歩後ろへ下がり。
「行くわよ、ギーシュ!」
ルイズはゴーレムへ1歩踏み込んだ。



時を同じくして学院長室。
「――と、言うことです」
「なんとまあ……」
ルーンついての経緯を聞き終えたオスマンは、椅子へと深く座り込んだ。
テーブルから水キセルを取り出すと吸い始める。
「意思を持ち、人に化けれる魔導書……跳ね返った契約……また随分とやっか
いじゃのう」
プカプカと輪を作る煙を見ながらオスマンは呟く。
「それだけではありません!」
興奮したようすでコルベールは続ける。
「ミス・ヴァリエールに刻まれてしまったルーンは、この『ガンダルーヴ』と
まったく同一なのです!」
「ふむ……伝説か……」
吐き出した煙が雲のように漂った。
コルベールは一瞬煙に顔をしかめるも、オスマンへと意を向けた。
「どう思います、オールド・オスマン」
「ふーむ……」
オスマンが腕を組み悩み始めたときだった。
突如ドアがノックされる。
「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
それはミス・ロングビルの声であった。
「なにようじゃ?」
オスマンが促すと、扉越しに声が響く。
「ヴァストリの広場で、生徒達の決闘騒ぎが起こっています。教師達が止めに
入ろうとしても、集まった生徒達が邪魔で近づけないそうです」
「……本当に貴族という連中は……」
心から疲れたような声を出すオスマン。
「それで? 騒いでいる中心人物は誰かね?」
「1人はグラモン家のギーシュ」
「ああ、あの女好きの家系か。まーた女関係だろうな。それで、相手は?」
ため息をついたオスマンは、次の言葉で心臓が止まるかと思った。
「相手は――ラ・ヴァリエール家のルイズと、その使い魔です」
「――げほげほげほげほっ!?」
オスマンはあまりの驚きで蒸せる。
「よ、よりにもよって公爵家の娘になにをしておるんじゃ! グラモン家の馬
鹿息子は!」
このトリステインにおいて公爵家は王家に次ぐ地位を持っており、しかもラ・
ヴァリエール家は王家の血を遠く引いているという筋金入りの家系であるのだ。
さらにいうと、この学院の運営資金もかなりの部分でラ・ヴァリエール家の援
助を受けている。
怪我などされたらこちらが睨まれる。もし死ぬことなどあればこの学院関係者
全員の首が飛びかねない。
「教師達から『眠りの鐘』の使用許可が求められています」
「許可する! 即刻止めに行かせろ!」
「わかりました」
ロングビルの足音が遠くなる。
「オールド・オスマン!」
事情はわかっているコルベールは真っ青な顔でオスマンを見た。
オスマンが杖を振るうと壁に掛けられた布が剥がされ、等身大の鏡があらわに
なる。
「ええい! 今はどうなっておる!」
鏡に向かい杖を振ると、鏡面にこことは違う景色が写り始めた。



汗は額から頬を伝い顎へ垂れ、落ちる。
振りかぶられる青銅の拳。
まるで猛牛のごとく襲い掛かってくるゴーレムを前に。ルイズは大きくバック
ステップでかわし、素早く呪文を唱えて杖を突き出す。
「ファイヤーボール!」
だが火球は出ず、見当違いの場所が爆発し地面が抉れた。
「またかよー!」
げらげらと野次が飛ぶ。
「――っ!」
だが相手をする暇も悔やむ暇もない。ワルキューレが迫る。
またも大きく振りかぶられる青銅の拳。
(近い!)
「ああっ!!」
スレスレを通る拳を、思いっきり横に飛ぶことでかわした。
ゴロゴロと地面を無様に転がる。
すぐに次が来る。
そう思い立ち上がろうとしたとき、ゴーレムが止まっていることに気がついた。
顔を上げると、ギーシュが静かにこちらを見ていた。
「もう止めないか?」
なにを言っているのかわからない。
「わかっただろう。君は僕には敵わないことが」
「――」
「あれからもう10分ほど経ってる。君のしぶとさはわかったが、冷静になって
考えて勝ち目はないだろう?」
たしかに体は疲れきり、土にまみれている。
「その執念に免じて、謝罪しろとはもう言わない。だが、負けを認めてくれ」
唱える魔法は所詮失敗。爆発は一度もかすりもしない。
「僕は本来、レディには優しいんでね。傷つけたくはないんだ」
だけど。
ゆらりと立ち上がる。足は恐怖と疲れで震え、息は上がり、打開策も無い。
だけどっ。
だけどっ! 決して膝は屈しない!
「その杖を手放せば、もうそれで――」
杖を突きつける。
「いいから、さっさとそのゴミ人形で来なさいよ」
ギーシュの顔が瞬時に赤くなり、歪んだ。
「人がせっかく優しく諭せば! もう手加減はなしだ! ワルキューレ!」
どん、と今までにない速度で迫るゴーレム。
ルイズは動かず、口早に呪文を唱え。
「ファイヤーボールッッ!!」
前方が地面ごと爆発し、大きな土煙が上がった。
「……やった?」
そう油断したのがいけなかった。
土煙からゴーレムが飛び出してくる。
「――あ」
避けよう、そう思ったときにはすでに拳は振られている。
バキ、とへし折れる音がして、ルイズは殴り飛ばされていた。
今度は力なく地面を転がるルイズ。彼女は転がり続け、アルの前で止まる。
シーンと周囲の生徒達が黙った。
ギーシュは加減を誤ったかと顔を青くするが。
「……ふ……くっ」
まだ立ち上がるルイズを見て、安堵の息を吐いた。
なんとか、立ち上がるルイズだが。
「そこまでだな、ルイズ」
「……?」
「杖が折れている」
そう、ルイズの杖は真ん中から真っ二つになっている。
もはやそれでは、失敗でも魔法は使えない。
「これで君の負け――」
そう続けようとしたが。
「決闘のルールは、相手の杖を落とすまでよ」
ルイズの目はまだ続けると言っていた。
ギーシュは心底呆れたとため息を吐く。
「やれやれ。それじゃあ」
薔薇の造花を振る。花びらが1枚落ちるとそれは剣となる。ギーシュは剣を掴
むとルイズへと投げた。
目の前に転がった剣を見たあと、ルイズはギーシュを睨む。
「これはなに?」
「剣だよ。杖がそうなってしまっても戦おうというなら、それを使えばいい。
剣は平民がメイジへ対抗するために持つ牙だからね。ゼロのルイズ。魔法とい
う牙がない君にはちょうどいいだろう?」
ギーシュはニヤリと笑った。
「…………っ!」
ギリリと歯をルイズが食いしばり、そのまま駆け出そうとしたが。
「うむ、遠慮なく使わせてもらおう」
後ろから声が上がった。
それはルイズが危険になってもずっと傍観していたアルであった。
戸惑うルイズを尻目にアルはしゃがみ剣を掴む。
「アル、わたしはメイジよ。剣なんか使わないわ」
そうルイズが言うが。
「剣ではなく、杖ならばいいのだな」
「そうよ、でも杖も」
視線の先、握られているのは折れた杖。
「ならば問題は無い」
「え?」
ルイズが顔を上げたとき、目の前で怪異が起こっていた。

アルは賞賛した、ルイズの気高さを、誇り高さを、その執念を。
だから杖が折れてもなお立ち向かおうルイズを見て、心動かぬわけはなかった。
目の前に剣が投げられる。
その時、彼女の中でなにかが動いた。
――外的刺激による活性。目録一部復旧。
――キーワード『剣』。現在復旧記述内における『剣』の項目を検索。
――該当3件。うち、現状に適している物を選別。
剣を拾う。それは青銅で出来ていて、鍛えられてもいないこの金属は戦場では
使い物にならないだろう。
だが、その属性が剣であればそれでよかった。今の状態では1から作り出すの
は負担がかかりすぎるのだから。
「――ヴーアの無敵の印において」
印を結ぶ。心に持つは鍛造の意思。
「――力を与えよ、力を与えよ、力を与えよ!」
指先に火が灯り、それを一気に柄から剣先まで這わせた。
剣が炎に包まれ、そこから現れたのは。
「――バルザイの偃月刀」
彼女にとって慣れ親しんだ武器であった。
「――」
野次馬が、ギーシュも、ルイズも含めこの場にいた全てが目の前の光景に息を
呑んだ。
呆然とするルイズへ、アルは偃月刀を投げ渡す。
「ほれ」
「ひゃっ!」
あたふたと受け取るルイズ。
「それは魔術的儀礼での術の媒体。剣にして『魔法使いの杖』だ。それならい
いだろう」
「え? え? あんた今――」
「今は、そんなことを気にしている場合か汝?」
その言葉にハッとして前を向く。
そこには未だ混乱から覚めないギーシュがいる。
そうだ、今は気にしている場合ではなかった。
「……ありがと、アル」
できる限りそっけない言葉。それでも、言うだけで恥ずかしかった。
「ふん。我がここまで手を貸したのだ。圧勝以外は認めんぞ」
「当然!」
ルイズは剣を両手で握り締める。
「ワルキューレっ!」
混乱から覚めたギーシュが、その心を表すかのように薔薇を振るい。それに合
わせるようにゴーレムが動いた。
それは先ほどよりも速く、疲れ切ったルイズにはもはや避けようはない。
「――っ!!」
遠目で見ていたキュルケは、それを見てとっさに杖を抜くが。
(ここからじゃ間に合わないっ!?)
誰もが、ルイズが吹き飛ぶ場面を想像した。
だが。
「なんだ」
ルイズはその場に立っていた。
「なんだよ!」
その後ろで、左右に分断されたゴーレムがガラガラと崩れながら勢いよく地面
を転がる。
「なんだよ! それはぁっ!!」
剣を握るルイズの左手でルーンが輝いていた。

ルイズは驚いていた。
体は疲労し、立つのがやっとだったのに。剣を握った瞬間に、急に体が軽くな
ったのだ。
剣はまるで長年使っていた愛用品のように手に馴染み、体は疲れも感じない。
理由はわからない、考えがまとまらず、思考は空回りするばかり。
剣? ルーン? アルの支援?
ただ、左腕が熱い。
ああ今は余計なことを考えるのはやめよう。この熱があればどこまでもいける。
熱が、心に火を点す。
その熱に浮かされるように、剣を構える。
目の前では大いに取り乱したギーシュが、新たに6体のゴーレムを作り出して
いた。
(相手は1体じゃなかったのかしら? まあいいわ、すぐに0になるんだから)
膝を曲げて、ルイズは思いっきり飛び出した。
体は羽のように軽く、宙を飛ぶかのように舞った。

次に行かせたワルキューレが6等分に分断されたのを見て、ギーシュは思わず
叫びそうになった。
先ほどまで逃げ回るだけだったルイズが、あの奇怪な剣を握った瞬間様変わり
した。
まるでグリフォンのごとく優雅に素早く動き、竜のごとく苛烈に攻撃をする。
その身体能力は同じ人間とは思えないような変わりようだ。
剣も剣で。金属の中では柔らかいほうとはいえ青銅を音すら立てず、まるでバ
ターのごとく切り裂いている。
だがなにより。ルイズの左手で煌々と輝くルーンが、ギーシュの目についた。
あれはなんだ? なぜメイジにルーンが? 自身の体にルーンを刻む魔法など
ないはずだ。
「だから! なんだよそれはっ!」
新たに3体のワルキューレが縦、横、斜めとそれぞれ真っ二つにされた。
「くっ!」
残りのゴーレムは2体。
崩れたゴーレムの破片の中心、そこには荒い息を吐きながら立つルイズの姿。
ルイズはこちらを見る。
「――ひっ!?」
その鋭い視線に、体を貫かれたかと思った。
「――」
そしてルイズは力を溜めるかのように少し屈むと、こちらへ向かい、大きく飛
び上がった。
「わ、ワルキューレぇぇええっっ!!」
必死に残った2体に迎え撃たせた。
もう手加減もなにもない。ただ金属の塊をぶつけてやろうと思った。
ワルキューレがルイズの着地点に走る。
こうなったらルイズも終わりだろう。そうギーシュは確信した、が――
ルイズが空中で体を捻る。
握った剣は遠心力を生み、体全体を使い独楽のように回転した。
そしてそのまま着地点へと待ち構えていたゴーレムとすれ違い、着地。
ざざーっと殺しきれぬ力で、地面を回転しながら足の裏で滑り――止まった。
「…………」
「――――」
両者は無言。
周囲から驚きの声一つ上がらぬ中。
ルイズの背後で、ずるりとゴーレムの胴に切れ目が入り、滑り落ちる。
ガランとゴーレムが崩れる音をバックに、ルイズはギーシュへと歩く。
もはや茫然自失となっているギーシュの前で止まり、剣を突きつけた。
「あなたの負けよ」
それにガクガクとギーシュは頷いた。
「あ、ああ……僕の、負けだ」

ギーシュから背を向ける。
邪魔なので剣を放した瞬間、今まで感じなかった疲労感が急に押し寄せてきた。
ふらりと体が揺れる。
そして崩れ落ちそうになる体が、誰かに支えられた。
残った力でなんとか首を上げると、そこにはキュルケがいた。
「……やるじゃない」
言葉少なに言う彼女の顔には笑み。
なぜか恥ずかしくなって顔を背ける。
顔を向けた先には、こちらに向かい走ってくるシエスタと。
「ふん、まあまあだな」
ニヤリと笑うアルの姿があった。
意識が遠くなる。
(また、あんたは偉そうに……)
暗くなる視界の中、心で悪態をつきながらも口元には笑みが浮かんでいた。



「……なんじゃ、あれは」
学院長室。オスマンは『遠見の鏡』の前で魂が抜けたように呟いた。
その隣でコルベールは恐ろしいかのように言った。
「勝ってしまいました……」
鏡の中では、今頃『眠りの鐘』を持ってきた教師達が戸惑っている。
「ミスタ・コルベール。ミス・ヴァリエールに剣術の覚えは?」
「いいえ、少なくとも私は聞いたことがございません」
「となると」
「やはり、あのルーンの効果でしょうか……」
ごくりとコルベールは唾を飲んだ。
「これは大発見です! オールド・オスマン! あのミス・アル・アジフもそ
うですが、これは伝説の再来です!」
興奮するコルベールにオスマンはあくまでも冷静だった。
「これ、落ち着かんか」
「あ……すいません。ですが、これは大変なことですよ」
まだ興奮覚めやらんといったコルベール。
「ふむ、それで。ミスタ・コルベール、君はこれをどうするのかね?」
「それはもちろん、王室に連絡し指示を」
「やめておけ」
そう言うコルベールを、オスマンは制した。
「なぜです?」
「ミスタ・コルベール。お前さんは生徒を王室やアカデミーの戦争の道具や研
究材料にしたいか?」
ハッとなるコルベール。
「い、いえ……そういうわけでは……」
オスマンは存在を忘れていた水キセルを咥えると、それを吹かす。
「うむ、わかっておる。お前さんは生徒をそんな目で見るような人ではない。
だがな、今こやつらを王室に報告すればそうなるであろう」
キセルから浮いた煙は輪を形作ると、そこにオスマンは息を吹きかける。
「平和なこの時代、戦の種なんぞわざわざ撒かなくてもよい」
輪は息に吹かれて崩れ去った。
「どちらにしろ、これはしばらく内密にことを進めるぞ」
「わかりました」
「君にはもう少し、『ガンダールヴ』について調べてもらう。いいかね?」
「はい」
言うが早いがコルベールが早々に部屋を出て行く。
1人になったオスマンは『遠見の鏡』を見る。
3人の女の子たちに囲まれ抱かれ眠るルイズの傍、放置されていた奇怪な剣が
ザラザラと砂になっていった。
「……これは、伝説以上にやっかいなことになるかもしれんのう」
オスマンはルイズを囲っている女の子の1人。
銀髪の少女を見て静かに呟いた。



――見られている。
そう感じたのは少し前であった。
だが、直接なにかをしてくるわけでもなく。視線から害はないと判断するとア
ルはそれを無視していた。
目の前ではキュルケにすがりスースーと寝息を立てるルイズ。そしてルイズの
髪を愛し気に梳くキュルケがいる。
「本当に……勝っちゃったんですね」
アルの横でシエスタが呟いた。
「言ったろう。負ける道理はないと」
ふふん、と胸を張る。
一瞬目を丸くしたシエスタは、ふふと綻ぶように笑った。
ふと、アルはまた視線を感じた。
そちらを向くと、青い髪の少女がこちらをジッと見ている。
「……?」
なんだと思って声を掛けようとしたが。
「アルさん。キュルケ様がルイズ様を運ぶらしいですよ」
「うむ?」
シエスタの声に反応して、そちらを向く。キュルケがルイズを背負い、こちら
を待っていた。
再び視線を戻すと、青い髪の少女はこちらに背を向け学院へと歩いていってい
る。
「……ふむ?」
首をかしげるアルに、再度シエスタから。
「アルさん、キュルケ様行ってしまいますよ」
「ああ、わかったわかった」
まあ、どういうこともないだろう。そう思い、アルはキュルケの後を追った。



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