朝食後、外に出る。そこでは多くの二年生が、召喚したばかりの使い魔とコミュニケーションをとっている。
しかしルイズは既に疲れきっており、割り当てられた使い魔との触れ合いの時間を有効利用する気にもなれなかった。
不愉快なことに、真っ先にキュルケが目に入った。だが彼女はこちらの姿を認めると、ぎょっとした顔でそそくさと離れていく。
「ちょっと、お茶」
今さらこの程度のことで、こいつを屈服できるとも思えないが、とりあえずは偉そうに横柄に、命令を下す。
「分かった。俺はお茶を淹れることでも頂点に立つ男だ」
嬉々として、お茶の用意に行く。その間に、ルイズはこいつをどうにかできないか、と思案を巡らせた。
しかしルイズは既に疲れきっており、割り当てられた使い魔との触れ合いの時間を有効利用する気にもなれなかった。
不愉快なことに、真っ先にキュルケが目に入った。だが彼女はこちらの姿を認めると、ぎょっとした顔でそそくさと離れていく。
「ちょっと、お茶」
今さらこの程度のことで、こいつを屈服できるとも思えないが、とりあえずは偉そうに横柄に、命令を下す。
「分かった。俺はお茶を淹れることでも頂点に立つ男だ」
嬉々として、お茶の用意に行く。その間に、ルイズはこいつをどうにかできないか、と思案を巡らせた。
「おお、お前は今朝のメイドではないか」
今朝、洗濯の時に世話になったメイドの娘だ。ツルギは嬉しそうに声をかける。
「あ、ミス・ヴァリエールの使い魔の、確か……」
「神代剣、神に代わって剣を振るう男だ」
するとメイドの娘、シエスタはくすくすと笑った。
「そうそう、ツルギさんでしたよね。今は何をしていらっしゃるんですか?」
「ル・イーズにお茶を頼まれてな。しかし、どこに行けばいいのやら」
「それなら、私がご案内します」
「そうか。なら、今朝の礼も含めて君の仕事を手伝おう。」
「え、でも……」
「安心するがいい。俺は給仕でも頂点に立つ男だ」
「それじゃあ、お願いしますね」
今朝、洗濯の時に世話になったメイドの娘だ。ツルギは嬉しそうに声をかける。
「あ、ミス・ヴァリエールの使い魔の、確か……」
「神代剣、神に代わって剣を振るう男だ」
するとメイドの娘、シエスタはくすくすと笑った。
「そうそう、ツルギさんでしたよね。今は何をしていらっしゃるんですか?」
「ル・イーズにお茶を頼まれてな。しかし、どこに行けばいいのやら」
「それなら、私がご案内します」
「そうか。なら、今朝の礼も含めて君の仕事を手伝おう。」
「え、でも……」
「安心するがいい。俺は給仕でも頂点に立つ男だ」
「それじゃあ、お願いしますね」
「このヴェルダンデと一晩語り合ってね」
「そう、一晩中……ね」
「ああ……この知的な瞳、感動的な触り心地!!まさに僕の使い魔になるべくしてなった……」
ガチャン。やや派手な音を立て、ケーキが置かれる。
「チップは多めに置いていけ。名門ディスカビル家の財政復興のための寄付金として、貰っておいてやる」
「はぁ? 何を言ってるんだ、君……。ああーっ! モンモランシー、ここは騒がしいから、向こうの木陰で語り合おう!」
無礼な給仕を叱りつけようとしたところで、いきなりギーシュはぎょっとした顔でテーブルを立ち上がる。
「ちょっと、何よ。ギーシュ?」
疑問を呈しながらも、モンモランシーは付いていく。
「そう、一晩中……ね」
「ああ……この知的な瞳、感動的な触り心地!!まさに僕の使い魔になるべくしてなった……」
ガチャン。やや派手な音を立て、ケーキが置かれる。
「チップは多めに置いていけ。名門ディスカビル家の財政復興のための寄付金として、貰っておいてやる」
「はぁ? 何を言ってるんだ、君……。ああーっ! モンモランシー、ここは騒がしいから、向こうの木陰で語り合おう!」
無礼な給仕を叱りつけようとしたところで、いきなりギーシュはぎょっとした顔でテーブルを立ち上がる。
「ちょっと、何よ。ギーシュ?」
疑問を呈しながらも、モンモランシーは付いていく。
寄付金も取れなかったツルギは、やや落胆しながら背を向けた。そこに茶色のマントの少女の呟く声が聞こえた。
「ギーシュ様……どちらに?」
「ん? ギーシュとはあの男のことか?」
そう言ってモンモランシーを連れて、そそくさと離れようとしていたギーシュを指差す。
茶色のマントの少女はギーシュのもとに小走りに近づいていった。そして、口論。怒鳴り声と弁解する男の声が重なり合い、
最後に、頬を引っ叩く気持ちのいい音が連続して広場に響き、二人の少女は荒い足取りで去っていく。
頬を赤くし、呆然としていたギーシュは立ち上がり、ツルギに文句をつける。
「どうやら君は、貴族に対する礼を知らないようだね。君に……」
ギーシュの言葉が終わらないうちに、ツルギはどこからともなく紫の剣を取り出し、宣戦布告とばかりに突きつける。
「貴様こそ無礼な奴め! 決闘を申し込む!」
「ギーシュ様……どちらに?」
「ん? ギーシュとはあの男のことか?」
そう言ってモンモランシーを連れて、そそくさと離れようとしていたギーシュを指差す。
茶色のマントの少女はギーシュのもとに小走りに近づいていった。そして、口論。怒鳴り声と弁解する男の声が重なり合い、
最後に、頬を引っ叩く気持ちのいい音が連続して広場に響き、二人の少女は荒い足取りで去っていく。
頬を赤くし、呆然としていたギーシュは立ち上がり、ツルギに文句をつける。
「どうやら君は、貴族に対する礼を知らないようだね。君に……」
ギーシュの言葉が終わらないうちに、ツルギはどこからともなく紫の剣を取り出し、宣戦布告とばかりに突きつける。
「貴様こそ無礼な奴め! 決闘を申し込む!」
ツルギの言葉と行動に場は一瞬硬直し、どっと笑いが起こる。
「平民が貴族に決闘!?」
「さ、さすがゼロのルイズの使い魔だ! やることが違うぜ!」
「分かっているのかい? 貴族に決闘を挑むということが、どういうことか?」
剣を手でゆっくりと払いのけたギーシュに対して、ツルギは言葉を翻すようなことをしなかった。
「本気のようだね。ヴェストリの広場で待っているよ」
「いいだろう」
ギーシュはそのまま踵を返した。
「平民が貴族に決闘!?」
「さ、さすがゼロのルイズの使い魔だ! やることが違うぜ!」
「分かっているのかい? 貴族に決闘を挑むということが、どういうことか?」
剣を手でゆっくりと払いのけたギーシュに対して、ツルギは言葉を翻すようなことをしなかった。
「本気のようだね。ヴェストリの広場で待っているよ」
「いいだろう」
ギーシュはそのまま踵を返した。
彼の去った後、剣を納めたツルギの所にルイズが人ごみを掻き分けてやってきて、いきなり怒鳴りつけた。
「アンタ!!何やってんのよ!!」
「そうか、お茶を淹れるを忘れていたな」
「そんなことはどうでもいいわよ! 何勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」
そしてルイズはツルギの手を引っ張って歩いていく。
「おい、どこへ行くつもりだ」
「ギーシュに謝りに行くのよ。今ならまだ許してくれるかもしれない」
ツルギはルイズの手を振り払い、胸を張って言った。
「断る。既に成立した決闘を反故にするわけにはいかない」
「あなたは何も分かっていない。平民は貴族に勝てないの。ケガで済めばいいほうなんだから!」
しかし、ルイズの言葉は全く聞き入れられなかった。ツルギは近くにいた小太りの少年に、行き方を尋ねた。
「おい、ヴェストリの広場はどこだ?」
「ああ、あっちだあっち」
「マリコルヌ!」
ルイズが止めるのも聞かず、ツルギはまっすぐに示された方向へと歩いていく。
マリコルヌを睨みつけたルイズは、すぐさま後を追った。
「アンタ!!何やってんのよ!!」
「そうか、お茶を淹れるを忘れていたな」
「そんなことはどうでもいいわよ! 何勝手に決闘の約束なんかしてんのよ!」
そしてルイズはツルギの手を引っ張って歩いていく。
「おい、どこへ行くつもりだ」
「ギーシュに謝りに行くのよ。今ならまだ許してくれるかもしれない」
ツルギはルイズの手を振り払い、胸を張って言った。
「断る。既に成立した決闘を反故にするわけにはいかない」
「あなたは何も分かっていない。平民は貴族に勝てないの。ケガで済めばいいほうなんだから!」
しかし、ルイズの言葉は全く聞き入れられなかった。ツルギは近くにいた小太りの少年に、行き方を尋ねた。
「おい、ヴェストリの広場はどこだ?」
「ああ、あっちだあっち」
「マリコルヌ!」
ルイズが止めるのも聞かず、ツルギはまっすぐに示された方向へと歩いていく。
マリコルヌを睨みつけたルイズは、すぐさま後を追った。
「逃げずに来た事は誉めてあげよう」
「シャル・ウィー」
バラの花を掲げたギーシュに、ツルギは紫色の剣を構えることで応えた。
一触即発。だが二人の間にルイズが割り込む。
「待って! ギーシュ、いい加減にして! 決闘は禁じられているじゃない!」
「禁止されてるのは貴族同士の決闘だよ。彼は平民。問題は何も無い。」
「それは……そんなこと今まで無かったから」
「ルイズ、君はもしやこの平民に、その乙女心を動かしているとか」
「誰がよ! やめてよね、自分の使い魔がみすみすボロクソにやられるのを見過ごせるわけ無いじゃない!」
「君が何を言おうと、彼はやる気だし、もう決闘は始まっているんだ!」
バラの花を振る。花びらが一枚、宙に舞い、地面に落ちて女戦士をかたどった青銅の像を造り上げた。
「何!?」
「僕の名は青銅のギーシュ。従って、青銅のゴーレム、ワルキューレがお相手する」
ツルギが驚いた隙に、青銅の女戦士は急接近し、彼の腹に一撃を入れる。とてつもなく重い一撃に、ツルギは膝を着いてしまう。
「シャル・ウィー」
バラの花を掲げたギーシュに、ツルギは紫色の剣を構えることで応えた。
一触即発。だが二人の間にルイズが割り込む。
「待って! ギーシュ、いい加減にして! 決闘は禁じられているじゃない!」
「禁止されてるのは貴族同士の決闘だよ。彼は平民。問題は何も無い。」
「それは……そんなこと今まで無かったから」
「ルイズ、君はもしやこの平民に、その乙女心を動かしているとか」
「誰がよ! やめてよね、自分の使い魔がみすみすボロクソにやられるのを見過ごせるわけ無いじゃない!」
「君が何を言おうと、彼はやる気だし、もう決闘は始まっているんだ!」
バラの花を振る。花びらが一枚、宙に舞い、地面に落ちて女戦士をかたどった青銅の像を造り上げた。
「何!?」
「僕の名は青銅のギーシュ。従って、青銅のゴーレム、ワルキューレがお相手する」
ツルギが驚いた隙に、青銅の女戦士は急接近し、彼の腹に一撃を入れる。とてつもなく重い一撃に、ツルギは膝を着いてしまう。
「くっ、何だこれは! ワームか!?」
ツルギの言葉を文句と感じ取ったギーシュは、嘲笑するように言った。
「メイジである貴族が魔法を使って戦うのは、当然のことだ」
「ワームが相手なら、容赦はしない」
ツルギは立ち上がり、右手の剣を、縦に構える。地面を突き破って奇妙な虫が姿を現し、跳躍。
それは吸い込まれるようにして、彼の左手に握られた。
ギーシュはそれをただの悪あがきと受け取った。
「手加減が過ぎたかな」
「全てのワームは、この俺が倒す! 変し……」
奇妙な虫を右手の剣に装着させようとしたところで、ルイズがツルギに飛びついた。
「お願い、もうやめて!」
ツルギの言葉を文句と感じ取ったギーシュは、嘲笑するように言った。
「メイジである貴族が魔法を使って戦うのは、当然のことだ」
「ワームが相手なら、容赦はしない」
ツルギは立ち上がり、右手の剣を、縦に構える。地面を突き破って奇妙な虫が姿を現し、跳躍。
それは吸い込まれるようにして、彼の左手に握られた。
ギーシュはそれをただの悪あがきと受け取った。
「手加減が過ぎたかな」
「全てのワームは、この俺が倒す! 変し……」
奇妙な虫を右手の剣に装着させようとしたところで、ルイズがツルギに飛びついた。
「お願い、もうやめて!」
「これでもう分かったでしょ!? 平民はメイジに絶対勝てないの!」
「俺は負けたわけではない! 離せ、ル・イーズ!」
「……まだ続ける気は、あるかい?」
二人のやり取りを見ていたギーシュは、先ほどと同様にバラを振った。バラの花びらがツルギの目の前の地面に舞い落ち、
大剣に形を変える。
「続ける気があるのなら、その剣を取りたまえ。その気がないのなら、僕にこう言うんだ。ごめんなさい、とね」
「俺は負けたわけではない! 離せ、ル・イーズ!」
「……まだ続ける気は、あるかい?」
二人のやり取りを見ていたギーシュは、先ほどと同様にバラを振った。バラの花びらがツルギの目の前の地面に舞い落ち、
大剣に形を変える。
「続ける気があるのなら、その剣を取りたまえ。その気がないのなら、僕にこう言うんだ。ごめんなさい、とね」
「ふざけないで!」
ルイズは怒鳴るが、ツルギはまたもどういう勘違いをしたのか、いたく感銘を受けたようだ。
「相手に剣を与えるとは……君の高貴な振る舞いに応えよう」
ツルギは右手の剣と左手の奇妙な虫を放り出し、両手で地面に突き刺さった大剣に手をかける。
「ちょっと、何やってんのよ! 今度こそ、殺されちゃうわよ! いい、これは主人の私の命令よ!」
「俺は、全ての頂点に立つ男だ!」
言いながら、大剣を一気に引き抜く。と、同時に飛び掛ってきたワルキューレを、すれ違いざまに一刀両断にする。
ルイズとギャラリーが、一斉に感嘆の声を上げた。
ルイズは怒鳴るが、ツルギはまたもどういう勘違いをしたのか、いたく感銘を受けたようだ。
「相手に剣を与えるとは……君の高貴な振る舞いに応えよう」
ツルギは右手の剣と左手の奇妙な虫を放り出し、両手で地面に突き刺さった大剣に手をかける。
「ちょっと、何やってんのよ! 今度こそ、殺されちゃうわよ! いい、これは主人の私の命令よ!」
「俺は、全ての頂点に立つ男だ!」
言いながら、大剣を一気に引き抜く。と、同時に飛び掛ってきたワルキューレを、すれ違いざまに一刀両断にする。
ルイズとギャラリーが、一斉に感嘆の声を上げた。
ヴェストリの広場で決闘が繰り広げられているのとちょうど同じ頃。
トリステイン学園の教師、コルベールは自らの発見を伝えるべく、学院長室を訪れていた。
彼の報告を受けた学院長、オールド・オスマンは思案深げにあごに手をやる。
「ふ~む、平民の使い魔など、前例がないな」
「問題は、そんなことよりも……。その者が表した使い魔のルーンに見覚えがないので、調べましたところ……これに酷似しておりまして」
コルベールの広げた古文書には、やはり見慣れないルーン文字が刻まれている。並みのものでは、この意味には気付かないであろう。
しかし、オールド・オスマンには分かった。このルーン文字の意味するところが。そして、それがいかに重要なものであるかも。
オスマンはちらりと机の横に立つ秘書、ミス・ロングビルの方へと目配せをする。彼女に聞かせるべき話ではない。
「ほお、これは。……ミス・ロングビル、すまないが」
「分かりました」
有能な秘書はオスマンの目配せにいち早く応え、退室した。
トリステイン学園の教師、コルベールは自らの発見を伝えるべく、学院長室を訪れていた。
彼の報告を受けた学院長、オールド・オスマンは思案深げにあごに手をやる。
「ふ~む、平民の使い魔など、前例がないな」
「問題は、そんなことよりも……。その者が表した使い魔のルーンに見覚えがないので、調べましたところ……これに酷似しておりまして」
コルベールの広げた古文書には、やはり見慣れないルーン文字が刻まれている。並みのものでは、この意味には気付かないであろう。
しかし、オールド・オスマンには分かった。このルーン文字の意味するところが。そして、それがいかに重要なものであるかも。
オスマンはちらりと机の横に立つ秘書、ミス・ロングビルの方へと目配せをする。彼女に聞かせるべき話ではない。
「ほお、これは。……ミス・ロングビル、すまないが」
「分かりました」
有能な秘書はオスマンの目配せにいち早く応え、退室した。
ロングビルが退室したのを確認したオスマンは、おもむろに説明を始める。
「これは伝説にのみ存在する、使い魔のルーンじゃぞ。まして、あのヴァリエールの三女が召喚するとは
これは失われしペンタゴンの一角にかかわることじゃ」
「ま、まさか!」
「ことの真相はどうあれ、この件は一切口外してはならん」
予想を超える重大な事態だった。コルベールは緊張を抑えきれず、震える声で答えた。
「しょ、承知しました!」
「これは伝説にのみ存在する、使い魔のルーンじゃぞ。まして、あのヴァリエールの三女が召喚するとは
これは失われしペンタゴンの一角にかかわることじゃ」
「ま、まさか!」
「ことの真相はどうあれ、この件は一切口外してはならん」
予想を超える重大な事態だった。コルベールは緊張を抑えきれず、震える声で答えた。
「しょ、承知しました!」
「ところで、身元は? 彼は何か身元の分かるような物は持っていなかったのかね?」
突然の話題転換。オスマンの意図がつかめず、コルベールは慌てたまま答える。
「ああ、はい。貧相な鉄の馬と、見慣れない食べ物を持っておりましたが、あいにくどこの出身かまでは」
「それは?」
「はい、鉄の馬は馬小屋に。食べ物は毒がないのを確認してから、料理長に渡しました」
「ほぉ~、少し食べてみたかったのぉ」
「あと、ことあるごとに名門ディスカビル家がどうとか言ってますけど」
「……そんな名前の貴族、いたかのぉ?」
突然の話題転換。オスマンの意図がつかめず、コルベールは慌てたまま答える。
「ああ、はい。貧相な鉄の馬と、見慣れない食べ物を持っておりましたが、あいにくどこの出身かまでは」
「それは?」
「はい、鉄の馬は馬小屋に。食べ物は毒がないのを確認してから、料理長に渡しました」
「ほぉ~、少し食べてみたかったのぉ」
「あと、ことあるごとに名門ディスカビル家がどうとか言ってますけど」
「……そんな名前の貴族、いたかのぉ?」
予想外のツルギの反撃に、場は沸いている。
ギーシュは慌ててバラの花を振り、六体のワルキューレを出現させた。
それに対し、ツルギはフェンシングスタイルで剣を構える。重い大剣を構えているとは思えないほどの、優美な構えだ。
ギーシュは慌ててバラの花を振り、六体のワルキューレを出現させた。
それに対し、ツルギはフェンシングスタイルで剣を構える。重い大剣を構えているとは思えないほどの、優美な構えだ。
この剣、なかなかに使い易い。よほどの名剣と見た。
まるで我がディスカビル家に代々伝わる家宝、ディスカリバーのように、手によく馴染む。
ツルギは気付いていなかった。あいている左手、その甲に刻まれたルーン文字が輝いていることを。
それが、彼に力を与えていることを。
「うおぉーっ!」
襲い掛かってくるワルキューレ四体に対し、ツルギは怯むどころか真っ向から向かっていく。
そして、青銅の戦士四体すべて、すれ違いざまに、一瞬にして切り伏せた。
それらが土に還るのを見て、ツルギはやっと「ああ、ワームではないのか」と納得した。
自慢のゴーレムたちが次々と屠られるのを見たギーシュは焦り、自分の防御のために残していた二体までも突撃させる。
その二体も、胴を裂かれ、首を切られ、地面に転がる。
さらにツルギは剣を一閃させ、ギーシュのバラを弾き飛ばす。バラの花はしばらく宙を舞い、やがてツルギの左手の上に舞い落ちた。
そして、ツルギは左手に持ったバラの花を、ギーシュに差し出した。
「な、何のマネだ!?」
「じいやが言っていた。高貴な振る舞いには、高貴な振る舞いで返せ、とな。それが俺の、ノブレス・オブリージュだ」
その言葉に、ギーシュは膝を落とし、地に手を着く。
「く……、平民にそんなことを言われるなんて……」
ギーシュの敗北。誰も予想できなかった事態に、場は騒然となった。
その中央で、ツルギは高らかに宣言した。
「当然だ。俺は、神に代わって剣を振るう男なのだからな」
まるで我がディスカビル家に代々伝わる家宝、ディスカリバーのように、手によく馴染む。
ツルギは気付いていなかった。あいている左手、その甲に刻まれたルーン文字が輝いていることを。
それが、彼に力を与えていることを。
「うおぉーっ!」
襲い掛かってくるワルキューレ四体に対し、ツルギは怯むどころか真っ向から向かっていく。
そして、青銅の戦士四体すべて、すれ違いざまに、一瞬にして切り伏せた。
それらが土に還るのを見て、ツルギはやっと「ああ、ワームではないのか」と納得した。
自慢のゴーレムたちが次々と屠られるのを見たギーシュは焦り、自分の防御のために残していた二体までも突撃させる。
その二体も、胴を裂かれ、首を切られ、地面に転がる。
さらにツルギは剣を一閃させ、ギーシュのバラを弾き飛ばす。バラの花はしばらく宙を舞い、やがてツルギの左手の上に舞い落ちた。
そして、ツルギは左手に持ったバラの花を、ギーシュに差し出した。
「な、何のマネだ!?」
「じいやが言っていた。高貴な振る舞いには、高貴な振る舞いで返せ、とな。それが俺の、ノブレス・オブリージュだ」
その言葉に、ギーシュは膝を落とし、地に手を着く。
「く……、平民にそんなことを言われるなんて……」
ギーシュの敗北。誰も予想できなかった事態に、場は騒然となった。
その中央で、ツルギは高らかに宣言した。
「当然だ。俺は、神に代わって剣を振るう男なのだからな」