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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-30


30.2nd lover

突然だが、アンリエッタ・ド・トリステインはトリステイン王国の姫殿下である。
そしてご存じの用に、色々と問題の多い姫殿下である。
人によっては、彼女を美しいだけの無能と捉えるかもしれないし、
また人によっては、どうしようもない暗君と捉えてしまうかもしれない。

だが、少し考えて欲しい。彼女は本当にそんな存在なのだろうか?

と、いうのも彼女は王宮暮らしである。
故に世間知らずなのは致し方無い。
この時代、貴族の娘というのはとかく世間に疎い物。
ルイズですらそうなのだ。更に俗世から離れた彼女に、
国を知れ等と言うのはお門違いにも程がある。

では、知恵が無いと思われるか?
まさか、それこそあり得ない。
王家に生まれると言うことは、
どの様な者であれ、国の運営に携わる可能性が出てくる。
故に彼女は幼い頃から家庭教師によって、
魔法はもちろん様々な事を厳しく学んでいるはずである。

このハルケギニアの文化レベルの中で、
最高の教育機関を出た、専属家庭教師達からの知を得ている彼女に、
知恵が無い等と言おう物なら、打ち首で済んだら良いね。
と牢屋で衛兵に言われたって仕方ないだろう。
タムリエルなら即刻切り捨て御免である。

時には授業をサボタージュして城を抜け出し、
トリスタニアで一日を過ごしていたかもしれないが、
人と言う生き物は息抜きが必要なのだ、仕方ない。
それが週6日くらい(虚無の日を除く)あっても普通に仕方無いのだ。
むしろ捕まえない家庭教師がいけない。王様が捕まえたら分かってるね?
とニコニコ顔で家庭教師達を脅していたから、
アンリエッタ姫殿下は思う存分息抜きを満喫なされたのだ。

まぁ、諸悪の権現は親バカな王様だったと言うことだ。
彼女は決して悪くない。悪いなんて言ってはいけない。
マザリーニは王が亡くなられた後、本格的に彼女の教育に苦労する。
鳥の骨の異名を頂いた辺りでようやくマトモに教育ができたが、
それはまた別のお話である。


「ハクチュッ!」
「アンリエッタ大丈夫?風邪かしら」

可愛らしくクシャミをするのは、皆大好きトリステインの可憐なる一輪の華、
アンリエッタ・ド・トリステイン。通称アン。

「いえ、大丈夫よルイズ…けれど、ウェールズさまは大丈夫なのかしら?
あんなに飲まれると明日に響くでしょうに…」

あなたがフッたからああなったんじゃないの?とルイズが聞くと、
アンリエッタは、意味深なアルカイックスマイルを浮かべた。

「そうですわね。そう『取られる』風には言いましたわ。でも、
 嫌いなんて言葉は一切使ってはいなくてよ?」


ルイズはアンリエッタがこういう時、無駄に悪知恵が働いていることを良く知っている。
遊び仲間だったからこそ、本当に悪知恵が働く時の顔を良く覚えている。
王家に生まれし者の職務は「わがまま」であること。そう父王は言ったらしい。
なのでアンリエッタはわがままだ。

彼女はウェールズが「生きてさえいてくれれば」それで良いとは言った。
しかし、それは一般人が理解するには少々言葉が足りなすぎる。
「私の好きな時に会えて、好きな時に触れる様に一声掛ければどこからともなく現れる所で生きてさえいてくれれば」、
の意味なのだ。わがままにも程がある。

幼少時の王宮での姫様の二つ名は「悪魔以上の小悪魔」だったそうな。
ただし、お母様とお父様の前だけは大人しい女の子を演じていた。
また、特につまらない神学を担当していたマザリーニの時間はもっとも出席率が悪かった。
ちなみに、マザリーニは王様の親ばかっぷりを唯一諫められる貴重な人材だった。

「ねぇ、アンリエッタ。まさかウェールズ様の事、恨んでるとか?」

あそこまで落ちぶらせる様なフリ方した上で、
まだこの女はあの人を愛していると言うのね。
いえ、言えるのね。あらゆる意味でそれって凄いわ。
そこまで深く愛していると言うことなのかしら?

本来なら、今の段階でそれなりにサイトへの思いを募らせかけつつあるが、
その当人が夢の国で、悪夢の神様といちゃいちゃやってるのである。
彼女はアンリエッタの行動の真意を測りかねた。

「ええ。わたくしが何度あの人にお手紙を出したか。
 にも関わらず、あの人ったら一度も返事を寄越さなかったのですよ。
 この寂しい気持ちを、一度はあの人にも味あわせておかないと」

ふふん、と笑ってアンリエッタは言った。ウェールズの方を見ていたルイズは少々顔を青くする。

「ねぇ、アン。なら、そろそろ止めに行くべきだと思うけど…」
「え?」

ウェールズが酒を飲んでいた辺りが、何やら騒がしくなっていた。


「離せ!もう嫌だ!何も信じられない…もう何もかもが嫌なんだ!」
「落ち着けよ王子さまよぉ!こんな所で死んだって、何にもならねーよ!」

すっとんきょうな声でウェールズは叫びだした。どうやらハイになりすぎたらしい。
手には割れたワインボトルのかけらを持っている。
黒い頭巾を被った男と太っちょが、二人がかりでそれを首に刺すのを止めている。

「もう嫌だ!アンリエッタを守る為にこそ死に行こうとしたら彼女に止められ、
 愛を誓えばその場でフラれ!私の人生は一体何だと言うのか!!」

「だから落ち着けってよウェールズの若旦那さんよぉ!もっと美人な女なんていくらでもいるだろう?
 また探せばいいじゃねーか?なぁ」

太っちょの男の説得が功を奏したか、それとももう疲れたのか。
ウェールズは割れたワインボトルを手から落として、そのまま座り込んだ。
彼は目に涙を溜めてさめざめと泣いている。呂律も怪しくなってきた。

「うるしゃい。かのひょ以外のおんな何て皆どうしようもなひんだ…
 かのひょじゃなきゃらめなんだ…」


「そうですか、そうですか。わたくし以外はおいやなのですね?」

ニッコリ笑顔で近づくアンリエッタは、その場にいる全員にとって悪魔の様に見えた。
フッた男の前なのに何であんな至福の笑みを湛えていやがるんだ。
いや、それ以前に傷を広げに来たのかもしれねぇ。
盗賊達がこそこそ話している内に、アンリエッタは座り込むウェールズの隣に座った。

「いまひゃ、いまひゃらなんのよーらい。あーりえった。君は、ぼひゅを。…ひっく」
「愛していると言いましたわ。ウェールズさま」

いたずらっ子の様に笑って言う。ウェールズは泣き出した。

「ぼひゅの事を、ぼひゅの事を思ひてにするといったひゃないか」

もう酔っぱらい過ぎて何を言っているのかアンリエッタ以外には分からない。
何故アンリエッタには分かるのか?それが『愛』の力というものなのだ。

「ええ。ラグドリアン湖の事は思い出にせねばなりませんわ。
 そしてまた新しく作り直すのです。愛していますわウェールズさま」

アンリエッタはそっとウェールズの手を握ろうとしたが、
彼はその手を払いのけた。少々冷たくし過ぎた様だ。

「け、けっこんしゅるって」
「はい。しますわね。しなければお国が潰れてしまいますからね」

またウェールズは泣き出した。

「ひゃあどうひようもないじゃないか!君はぼひゅの事をばぁにして!」
「何を言っているのです?『二号さん』になればよろしいではないですか」

瞬間、辺りの空気が冷たくなった。いや、何言ってやがんだこのアンアンは。
もうちょっと常識と言う物を知れと。盗賊も、ルイズも、
近くでフォックスとシロディールの事について、懐かしく話をしているマーティンも含め、
ほぼ全員が生暖かい目でアンリエッタを見た。
彼女は純粋にそれで良いと思っている。
乙女の愛は、彼女の目を曇らせすぎているようだ。

シルフィード(掴むのが面倒なので布きれを体に巻いた人間状態)
はただ食べ続け、キュルケはえ、普通じゃないの?といった顔だった。
タバサはまだキュルケに抱きしめられている。そして今も料理を口にしていない。

「あ、あんりえった?…二号さんってなんらい?」

あまりそういう事に詳しくないウェールズはアンリエッタに聞いた。

「二号さんは二号さんですわ。本当は婚姻した男性の側室の事をそう言うのですけれどね。
アルが別に構わないと言ってくれましたので」

「あるってだれらい?あんりえっら」

「ゲルマニア皇帝のアルブレヒト三世ですわ。なかなか逞しい御方なのに紳士でしたの…
 先に言っておきますけど、婚前交渉なんてはしたない真似はしていませんからね」

二号さん言う奴は、はしたなくないのか?皆の意見は一致した。


今回の事件の発端はゲルマニアからの帰りに、
アンリエッタが手はず通りに雲隠れした事から始まっていた。
では、その前はどうなっていたのか?少々話をしないといけない。

貴族同士が、利害関係の一致で寄り集まってできた国ゲルマニア。
その首府であるヴィンドボナにあるアルブレヒトの宮殿は、
ツェルプストー家の内装に勝るとも劣らないごちゃ混ぜっぷりだった。

ガリア調の廊下の造りかと思いながら皇帝の下へと歩く中、
飾られてある調度品が目に入る。へんてこな長い棒っきれやら、
黄金色の趣味の悪い剣やらが飾られている中を進む。
右に道が続く廊下の正面、壁に何かを置くスペースがあるそこには、
二つの像が飾られていた。

そこに置かれた神像は全く見たことのない品だ。
恰幅の良い男が片手にジョッキを持ち、しゃれこうべを踏んでいる。
その隣には、ダガーを持った四つの腕の女性らしき神像も飾られていた。
おそらく東方由来の神なのでしょう。彼の地には荒神という、
不思議な神の概念があると聞いた事がありますし。
アンリエッタは、そう思いながらデイドラの神像を後にした。


デイドラ王子であれ、エイドラの九大神であれ、
またはその他のエイドラであれ、もしくは未だ無名のデイドラとエイドラであれ、
そう言ったいわゆる神的存在は信仰の力を己の力に加算できる。

元々力を持って生まれたたデイドラとエイドラは、優先的に高い権力を身につけられる。
どこの世界でもそれは同じだが、だからと言って必ずしも下っ端からはい上がれない訳でもない。
この事は今回の話とは違うので置いておく。いつかまた語る日が来るだろう。

先ほどメファーラは、自力で姿を現すことが出来ずにシシスによって姿を現したと言った。
それは真である。彼女の信奉者はトリステインで一切活動を行っていないからだ。
タムリエルでもそうだが、自身の信仰の拠点が最も力を出せる場所である。
それ故、彼女はゲルマニアでは自力で姿を現すことが出来ても、
トリステインではその様な事が出来ない。
ノクターナルも、アルビオンとトリステインにのみ自力で現れる事が出来るようだ。
そこから歩くなり何なりして通常移動は出来るだろうが。

ちなみに、どちらの方がより強い力を出せるかというと、
現在だとトリステインの方が大いなる山脈効果で、
通常の8割増しになるそうな。脅威の胸力である。

尚、通常はどの程度かと言えば、信仰されていない地域の王国を、
自身が創った灰色頭巾の裏効果で、常に闇に包ませたり出来る。
しかも無意識の内にである。さらに言えば原因は人間への恋煩いらしい。
詳しくは闘技場地区に住むブランウェンから『フローミルの歌』
を借りて読むことをオススメする。夜の女王の思考について、
理解の幅が広がる事だろう。

また、デイドラ王子達の神像が持つ重要性について詳しく知りたければ、
自分の神像が天変地異で神殿ごと破壊されてしまった、
ボエシアというデイドラの王子に聞くと良い。
雄々しいその王子は、たまたま海に沈んだ神殿跡にやってきた後の英雄を捕まえて、

「凄い秘宝をあげるから俺の大きな神像造って。腕の良い職人はそこの街にいるから。
 あ、後像はでかい石で造ってくんない?」(意訳)


とバラバラになり、顔だけになった像から頼み込んだりしている。
それからオークの芸術家に立派な神像を造らせた褒美として、
現モロウウインドの英雄は黄金の火炎剣をもらったとか。
何故そんなに必死こいて造らせたかというと、
信奉者の減少は、デイドラ王子の暇つぶしに深刻な問題を与えてしまうからだ。

ノクターナルの様に、バカみたいに強い力を持っているため、
そんなに信者とか集める気の無いデイドラもいる事はいる。


けれど、これはこれで悪くないかもしれませんね。
そうアンリエッタは思った。彼女は格式ばった物があまり好きではなく、
むしろこうして自由に無秩序な配置の調度品に囲まれている方が、
毎日おもしろく過ごせるだろう、と考えることが出来る人間だった。

ウェールズさまがここにいてくだされれば良いのに。
どうかこの帰路に彼らと会って話し合い、
ウェールズさまを救ってくださるといいのだけれど。

そうこうしている内に、皇帝閣下の玉座に着く。
アルブレヒト三世はそう悪くも無い顔で、
年に比べて随分と若く見えた。
皇帝らしい立派な服の下はでっぷりとした脂肪ではなく、
がっちりした筋肉が詰まっていそうな体格だった。

噂によると政敵全てを消し去ったとも言われているが、
彼らは『事故』によって亡くなっている。
しかもご丁寧に証拠人までいてその時をしっかりと見ている。

にも関わらずそんな事が影で言われているなんて。
一枚岩でない国の皇帝は大変なのでしょうね。
と、そんな事をしそうにない外見の皇帝閣下を見てアンリエッタは思った。

案外仕込むのっておもしろいんだよー?また何かあったら言ってね。
とはメファーラの談である。著名人が死ぬことによって、
他の者達が混乱する様を見る事も、彼女の楽しみの一つだ。

同伴しているマザリーニが会話し、アンリエッタはにこやかに笑うだけである。
今日はこの宮殿に留まり、明日帰る手はずとなっていた。
なら、もうすこし見て回ってもよろしいのかしら。
残念ながら、その前に夕食会があった。

皇帝閣下と姫殿下の祝言前祝いとも言えるディナー・パーティは、
ゲルマニアであろうと、むしろゲルマニア「だからこそ」、
とても格式張っているパーティとなった。

ゲルマニア人にとって、格式に拘る事の意味は自身が持たず、
他の始祖よりの国の人々が持つ、主の祝福からくる何らかの安心感や、
安らぎを持ちたいからなのかもしれない。


歴史の浅いゲルマニアは、いわば寄せ集め文化である。
また、生まれが聖戦反対派によって造られたのが始まりであるこの国は、
一応ブリミル教を国教とはしている。しかし、
それはあくまでロマリアの顔を立てるためであり、
その教義はほとんど無視されている。

当然、そこに食いつかないデイドラ王子ではない。
いくらかのデイドラ王子はシシスの力でここに入り、
建国初期にこの帝国に多少の力添えをし、
いくつか彼らを崇める組織を作らせた。
デイドラ王子達は神としてではなく、
組織の創立者、または創立を助けた精霊としての地位から崇められている。

故にデイドラ王子の神像が「東方由来」の一言で済んでいる訳だ。
かの存在達も大っぴらにやり出すとロマリアに国ごと崩壊させられる為、
ゲルマニア内でもある程度「自重」しなければならない。
この地の人間が、デイドラを自力で召喚する事が出来ない為でもある。

その為メファーラの暗殺組合は、現在アルブレヒト子飼いの連中しかいないし、
彼はあんまりそう言うことが好きではない。
メファーラを崇拝している理由は、彼女が「性愛」も司っているからだ。
神像を普通に配置しているのはアルブレヒトの趣味だ。


招待された人々は男女合わせて40人ほどで、
何れもゲルマニアの中では名門として名高い家柄か、
最近羽振りを利かせている新進気鋭の若手貴族だった。
非メイジは一人もいない。つまりそういうことだ。

大きなダイニング・ルームに入る前に、
アンリエッタとアルブレヒトは応接間で客人が来るのを待つ。
料理の準備が出来るまで、ここで執事に連れてこられる客人と談話するのがしきたりだ。
応接間に入る前に、客人はそのすぐ側にある待合室で待機し、
執事に名前を呼ばれ、ようやく入る事が許される。

応接間に入った彼らは、まず未来の「皇后」であるアンリエッタに一礼をする。
そして他の応接間にやって来た人々と会話を始めるのだ。

「おお、これは麗しきトリステインが一輪の白き百合の花!
 あなたに会える事が出来て光栄です。アンリエッタ姫殿下。
私、『高名なる』シュペーと申します。お近づきの印にこれを」

若々しい伊達男はそう言って、呪文を唱えて杖を振る。
美しい百合の花を模した銀のブローチが、降って現れたかの様にアンリエッタの手に渡る。
実際のところ、くず鉄を礼服にいくつか仕込んでいるだけなのだが、それは言わない方が美しい。

「まぁ。ありがとうシュペー卿。あなたの事はトリステインでも時折耳にしますわ。
 何でも素晴らしい土のスクウェアメイジであるのに、
錬金の魔法だけでなく、ご自身で武具を鍛えたりするのだとか」

二つ名は、なかなか決めることが難しい物である。
まず、被ると困るから独創的な名前にしないといけない。
勝手に付けられた名が定着すると困りものである。
かと言ってあまりに独創的過ぎると名前負けしてしまう。
そして最後の問題が「~『の』~」である。


『の』。この『の』はハッキリ言ってカッコ悪い。
あまり二つ名に執着しない者なら特にそうでもないが、
格好良さを気にする連中はそうもいかない。
特にここゲルマニアの伊達男や艶女は、『の』をあまり付けたくないのだ。

キュルケも最初は『の』が嫌だったのだが、
上手く「微熱」と絡ませることが出来なかったので、仕方なく実用性を取った。
尚、トリステインで一番『の』を嫌ったのは皆さんご存じ『烈風』カリンである。
体言止めで響きも格好良く、本人も気に入っているようだ。

「いやはやご存じだとは真に光栄にございます。武具製造業を営む傍ら、
この様な服飾製作も行っているのです。おおっと、失礼しましたポートマン子爵。では姫殿下。また後ほど」

新進気鋭の若手は去り、また新たな客人が入る。
40人への挨拶が終わってしばらくした頃、
食事の準備ができたので、皆ダイニング・ルームへと移動した。

椅子への座り方は男女交互の決まりがあり、
それに従って皆座っていく。先ほどくじ引きで決まった席順は、
女性達にとって、その日の夕食会を楽しめるかどうかを決定させるものだ。

話しの上手い男なら良し。騎士道精神に則った質実剛健な男でも、自慢話でなければばまぁ良し。
皇帝に招かれたのだから、そこまでひどいはずれはいないだろう。と皆踏んでいた。
つまらない話を聞きながらの食事は、一人で食べる時より憂鬱になる。
実際のところ、ひどいはずれはいなかった。

「いやはや、レコンキスタの気風は素晴らしいじゃないか。
 彼らの合い言葉は『聖地を我らに』だったかい?『死地を我らに』の間違いじゃあないのかね」

ちょっとしたブラックジョークを話す貴族の周りがクスリと笑った。
アンリエッタも笑ってしまう。マザリーニは少々苦い顔だった。
そのジョークに割ってはいる男がいた。少々太ましいどこかの伯爵だった。

「一度貿易でサハラのエルフ達に売り込みに行った事があるが、
 あそこは楽園だぞ?なんていったってそりゃ、あのエルフ達の膨らみの豊かさといったら…」

女性達の目が鋭くなる。特に身体的特徴においてエレオノール女史との類似点のある女性達が。

「あー、いや、申し訳ない。つい熱くなってしまって。
 決してそういう意味で言った訳ではないのです。
 私はちいちゃいのも好き――」

どこからともなくマジックアローが飛ぶ。男は吹っ飛ばされた。
アンリエッタはおかしくなって口を開けて笑った。
マザリーニに諫められるが、アルブレヒトが更に大きな声で笑った。

「いやはや愉快愉快。されどご婦人方、男は大いなる物をどうしても愛しく思ってしまうもの。
 どうか余に免じて、先ほどの者を許してやってはくれぬか?」

閣下が言うなら。と、とりあえず場は収まる。
吹っ飛ばされた男がそそくさと席に戻り、夕食会は続けられる。


「その、やはり大きい方が良いのでしょうか?」

アルブレヒトの隣に座るアンリエッタが、
隣で神に祈りを捧げるマザリーニが聞こえないように小さく言った。
ロマリアから離れたとはいえ、彼は今も敬虔なブリミル教の信者である。
普通なら少し感謝の言葉を述べてから食事をするが、
彼はいまだに昔の癖というか、数十分かけて祈りを捧げてから食べる。
宗教観の薄い人々が見ると、何故そんな事を?
と思うような事をする人はどこにでもいるものだ。

アルブレヒトはキラリと白い歯を見せて笑った。

「いやいや、大きい物には夢が。小さい物には希望が詰まっているのです。
 どちらが良いか、などそんな事はありませんぞ。
 私なぞは、姫殿下くらいが丁度よろしいのですがな。ハッハッハッハ!」

アンリエッタは顔を真っ赤にして、そ、そうですか。光栄ですわ。
と、何とかしどろもどろに言うだけだった。


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