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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-29


29.失われた歴史

「…何か、様子が変になったというかな。
 サハラから帰ってきた弟は大人しくなった。
 悪いことではない。むしろようやく王家としての自覚を持ったのか。
その時は皆そう思ったよ」

ふぅ。とジェームズはため息をつく。

「仕事の方もしっかりやるようになった。
 どこかへ勝手に出かけなくなったし、
 いい加減嫁でももらえと私は言ったのだが、
 何故かあやつはうんとは言わなかった。
 おそらく、君の母君がいたからだろう。
 分かってしまったらどうしようもなかったからな」

肩を落とし、ジェームズは続けた。

「四年前の事だ。ある日モードに仕えている使用人が、血相を変えて王宮に来た。
 モードがエルフの女と暮らしていて、子供を設けているとな…
 信じられなかった。まさかその様な事があるはずないとな」

ティファニアの体は自然と力がこもり、表情が無くなっていく。

「だが、そう言えばエルフと人は共に生きていける等と抜かしていた。
 それにもし本当なら、ロマリアとの関係にヒビが入るのは間違いなかった。
 だからモードを呼び出し、真意を聞こうとしたのだ」

つぅ、とジェームズの目から涙がこぼれ落ちた。
声も嘆きに歪み、次第に抑揚が大きくなっていく。

「あの時は、ただ事情を聞き、出来れば内密に、
そのエルフをサハラへ、送り返そうと思った。
 だが、モードは、モードは…!」

ジェームズは涙を流し、大声で叫んだ。

「モードは自ら命を絶った!遺書を残してな。
 その話は全て真だと。王家の責として己の命を支払う。
ただ、代わりにどうか二人を頼むと…」

ジェームズは咳をしてから、小さな声でとうとうと喋る。

「私は、サウスゴータから君たち二人を預かるよう近衛に頼んだ。
 優秀な兵達だったから、大丈夫だろうと思っていたのだ…
サウスゴータは勘違いしたのであろう。そのまま戦闘となり、
後は君が知る通りだ。近衛の記憶が曖昧になっていたのは、
先住の魔法かね?」

うなだれながらも、しわがれた肌の老人はティファニアを見る。
胸を押さえ辛そうに息を吐くが、ティファニアは答えた。

「いえ、『虚無』の魔法です。お父さんの血が、私を『虚無』の使い手にしたんだと思います」

ジェームズは呆然とした顔になり、次いで笑った。

「はは、はははは。何と、虚無と申すか!あの伝説の、
 始祖が使いし虚無の系統!…それが、それが分かっていたなら、
 ロマリアへの話もどうにでもなろうと言うのに…」


後の言葉は殆ど声になってはいなかった。
ジェームズは己の不運と無能ぶりを嘆きながら言った。

「水のスクウェアにフェイス・チェンジでも掛けさせれば、
 それで済む話だったと言うのに…私は、何の約束も守れなかった。
 どうか、頼む。この愚かな老人を楽にさせてくれんか?
 もはや、もはやどうしようにも無い。
 君にかけてしまった不幸は、私には償いようが無い。
 だから…どうか頼む。私を殺してくれぬかね?」

ティファニアはジェームズを睨み、心の底からの怒りをこもらせながら、
静かに言い始めた。ただ、ある一言を言うために。

「私は、あなたをどうしても許そうとは思えません。
ですが、父さんも母さんも、それにサウスゴータの皆も、
王様が死んで喜んだりはしないでしょう」

「だが、それでは君は?君は私を殺したがっている。
 君の思いのまま、わたしを――」

ティファニアは怒って叫んだ。ただ一言を。

「逃げるんですか!!」

ティファニアの声は、ギルドハウスから外にも聞こえた。
グレイ・フォックスが辺りを宥めて落ち着かせる。

「そんなの、責任を取るフリして逃げるだけです!
 父さんも母さんも、そんな事で死ぬなんて許しません!
 まず私が絶対に許しません!」

目をかっと開き、あらん限りの怒声でまくし立てる。
ジェームズは驚いた顔で、叫ぶティファニアを見ている。

「姉さんだって、マチルダ姉さんだって絶対に許しません!
 皆兵隊に殺されたんです…あなたが来させた兵隊で…
 みんな生きていたかったのに、あなたのせいで…
 なのに、逃げるんですか?逃げようっていうんですか!?」

「ならば、どうすれば良いというのだ!
 地獄の業火に身を焼かれろとでも言うのか!」

ティファニアはすぅ、と息を吸い自分を落ち着かせる。
そしてジェームズに言葉を返した。

「いいえ、生きて下さい。父さんや母さん。
 それに亡くなられたサウスゴータの皆さんの分を、
 しっかりと生きて下さい」

それが、罪滅ぼしの代わりです。そうティファニアは言った。

「この私に、生きろと言うのか。この老いぼれに、生きろと言うのか!」
「生きて下さい。もう、誰かが死ぬ所を見たくないんです…!」

肩を震わせ、ティファニアは泣きながらしゃべり始めた。

「母さんは、私を庇って死にました。争わないと言ったのに、
 兵隊が放った魔法で命を落としました。
 私は、呪文を使って生き延びる事が出来ました」


しゃくり声ではあったが、真剣な口調でテファは続けた。

「母さんの体は、酷い有様でした。顔は焼けて誰なのかすら分からなくなり、
足は凍っていて、お腹は貫かれて穴が開いていました。
 駆け寄って泣き出しそうになった時、マチルダ姉さんが私を連れて逃げました」

一生あの光景を忘れる事は出来ません。そう言ってティファニアは話を続けた。

「母さんは言っていました。いつか、きっと分かり合える日が来ると。
 私には本当にそれが来るかどうかなんて分かりません。
 けれど、憎しみで人を殺しても、何もならない事くらいは分かります。
 だから、私自身が嫌でも、私はあなたを許そうと思います」

ジェームズはティファニアをじっと見た。正確にはその目を。
若き頃、二人で遊んでいた時のモードの目がそこにあった。
気力に満ち溢れ、真っ直ぐに生きようとする弟の目が。

「勘違いしないで下さい。決して不条理を許そうなんて思ってません。
 けれど、何処かでこの流れを絶たないと、また新しい私が生まれます。
 もう、そんなのは嫌なんです」

テファは黙った。ジェームズは何ともなしに窓を見た。
夕日が眩しい。

「君の様な者が、私の側近に一人でもいてくれたなら、
 この様な事は起きなかっただろうな…」

「どうでしょうか?わかりません『叔父様』」

「私を、私を叔父と呼んでくれるか!私の様な男を…
 すまなんだ…本当に、すま、な、ん…う、うぅ」

話の途中から泣き出したジェームズはそのまま泣き続け、
テファも泣き出した。怒鳴り声が聞こえた辺りにここに来て、
中の事を聞いていたマチルダは、やれやれとため息を付いた。

「テファがそう言ったんだ。なら、仕方無いさね。
 父様も母様も、それで許してやっておくれよ…ね?」

静かに彼女は泣く。いつの間にやら何故かノクターナルが近くにいた。

「何だい?見せ物じゃあないよ」
『どこか痛むのか』

こいつの問答に付き合う気は無かったが、それでヘソを曲げられても色々困る。
率直に一言言った。

「ああ、心が痛いんだよ」
『そうか…定命の者は特に痛めやすいからな。我も良く痛める』

案外自分の性格気にしているのかね?そんな事を思いながら、
マチルダはノクターナルを見ていると、不意に彼女は近寄ってきた。

『これで良かろう?我が影がよくやるそうだな』

マチルダは抱きしめられた。ついでにいー子いー子もしてもらっている。
不意に、昔の事を思い出す。母親に抱きしめられた子供の頃の思い出を…


「何で、何で私の家族が死ななきゃいけなかったんだ!なんでだよぉおおお!」
『それが定め。受け入れろとは言わぬ。だが怒るな。怒りは全てを喰らう。お前が大切だと思っている物もな』

伊達に神様をしているだけある。それなりに深い事を言っているようだ。

「じゃあ、これはどうやって静めろっていうのさ!どうしようもないんだよ!
 あいつを見ていると魔法で引き裂いてやりたくなる!
 どうしたって殺したくなっちまう!だってのに、テファはあいつを許して…」

『知らぬ。お前が考えろ。我は夜の色を思い出せば怒りは自然と収まっていく』
「夜の色だって?ただ真っ暗じゃないか」

ぐずつきながらもマチルダは言った。
はぁ。とノクターナルは大きくため息を付いた。

『長く生きたエルフすらそう言って、我の妹へと信仰を変えた。
 ならば聞くが、何故夜の闇夜の中にも影が見えるのだ?』

「え…そりゃ、星とかたいまつとかの明かりがあるからじゃないのかい?」
『それをお前は「真っ暗」と言うのか?』

考えた事も無い。案外こいつは頭が良いのかもしれない。
回りすぎて駄目なのかね?そんな事を思いながら、
マチルダは問いを言い直した。

「ああ、何となくわかったよ。夜の色ってーのは、星々と明かりの色なんだね?」
『そうだ。よくぞ理解したな。褒美だ。くれてやる』

マチルダから腕を離し、ノクターナルはポケットを漁る。
変わったピックを取り出すと、それをマチルダに渡した。

『それは不壊のピック。我が、己の血肉より創りしアーティファクトなり』
「名前の通り壊れないって訳かい?」
『左様。そして持っているだけで解錠の腕が上がる』

どこまでも腕が上がらない彼女からしてみれば願ってもない事だ。
少々気分が晴れた事もあって、礼をして外に出ようとした時、
ノクターナルはマチルダの肩に手を置いた。

「えぇと、何かまだ用でもあるのかい?」
『そのエルフはな、夜空はアズラの領分などとほざいてだな』
「アズラって誰さ?」

『我こそが夜の女王なのだ!にも関わらずあれがいつの間にか夜空の女王等と言われている!
 生と死を意味する宵と暁から派生して月と星まで司り始めた!
 あれほどはらわたが煮えくりかえる思いをすることは稀ぞ』

「えーと?」
『渡した礼だ。我の話に少々付き合え』

結局この後3時間程、こんこんと困った妹についての愚痴をマチルダは聞くハメになった。
デイドラ達にも意識がある。当然好き嫌いもある。
そんな訳で、ノクターナルとアズラは敵対関係にある。といっても、
人間みたいに死んだりしないので、ある程度わきまえた敵対関係だ。


尚、ノクターナルはほとんどマトモな信者がいない上に、
彼女に協力的なデイドラ王子も主もいない。
アズラは、一部ではエイドラとして知られていたりする事もあって、
莫大な数の信者を持っている。その上ほぼ全てのデイドラ王子と主に繋がりがあり、
皆彼女に友好的である。こんな二人だが実力は二分と言うのだから、
ノクターナルはもっと真剣に信者を増やすべきなのだろう。

灰色のイージスを持たせて、アズラを信仰する闘技場(野蛮だから九大神が信仰出来ない)に、
魔法しか能の無いモヤシッ子を派遣するのではなく。


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