あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-28


28.見捨てられし白の国の王子

外に出たルイズは、とりあえず杖を取り出して精神統一を計る。
何も考えず目を閉じて、呪文を紡ぐ。

「ユビキタス・デル・ウインデ…」

呪文を唱え終わり、目を開けると――。

「えぇえええええええ!?」

20人を超える桃色髪の女の子がそこにいた。平賀才人がいたら夢みたいな状態だろう。
吉夢か悪夢か?後者じゃないだろうか。ルイズならどれが本物!?等と彼に聞くと思われる。
マーティンは、おそらくオリジナルだろう慌てているルイズの方を見た。
他のルイズも慌てている。

「まずおめでとうルイズ。ところで、体の方に何か異変はあるかい?」
「えーとえーと、あ、ありがとうマーティン。いい異常はないわね」

ふむ。とマーティンはルイズに魔法の解除を頼んだ。
慌てているたくさんのルイズが消えていく。
全て消えて後、マーティンはルイズに近づいた。

「私の言った通りだったね」
「え、えーと…」

ああ、忘れてしまったか。そうマーティンは笑って言った。

「ほら、あのペンタゴンを変えてスクウェアの真ん中に点を入れた形の」

ああ、とルイズはいつだったか、マーティンが結構適当気味に作った仮説を思い出した。
つまり魔法の関係図はペンタゴンではなく、本当は四系統の上位として『虚無』が存在する。とする理論だ。

「となると…ルイズ。たしか火系統の『着火』だったかな?
何か簡単な魔法を一つ、『出来るだけ家から離れて』 やってみてくれないか?」

コクリと頷き駆けていく。十分離れたところで簡単な火の呪文を唱えると、いつもの様に爆発が起こった。
黒こげのルイズの元へマーティンが走る。

「なるほど。グレイ・フォックスはこれを警戒したのか」
「ね、ねぇマーティン。何か今、凄くわたし実験体みたいな気がするんだけど」

咳き込みながらルイズは言った。いや、そんな事は無いよ。とマーティンは笑った。

「やはり、精神力のコントロールが非常に難しいという訳だな」
「どういうこと?」

うん。まずは家に戻ろう。マーティンはそう言ってルイズを促した。

「どうでしたかな?ミス・ヴァリエール」

変わった灰色の頭巾。紫色のルーン文字だか何だかの紋様が入ったそれがトレードマークの男。
グレイ・フォックスは二人が帰って来るなりそう言った。
彼は元伯爵なので、公爵家令嬢への対応法について、
ある程度、ちゃんとしないといけない事は分かっている。
スタップ(stop!)は慌てたから言ってしまったのだ。


「上手くいったわ。そうね。とても嬉しいわね」

黒こげで髪の毛が一部チリチリになっているが、ルイズは笑顔だった。
これで立派なメイジになれる。心からそう思えた。
今まで後ろ向きになりつつあった思考が、
ようやく前向きに動き出した。

「おめでとうルイズさん」

大いなるコブを持つ妖精が笑顔で言った。ルイズの目に禁忌が映る。
ぐぁし。

「ひぃ」

やっぱこれ変よね。何でこんなのあるのかしら。
おかしいわよ。やっぱり。おかしいと思わない?

あう、ひう、へぅ。マーティンが止めようとするなか、
やはり他は誰も止めない盗賊ギルドのメンバーだった。
後に彼らは言う。巨乳も虚乳も偉大だったと。


ルイズが爆発を起こす少し前、ギルドハウスの二階。
アンリエッタが、まだ目を覚まさないウェールズの側でじっとしている。
王とは異なる部屋で寝かされていた。
マチルダの狙いはあくまで王のみであるため、
フォックスはそちらの扉番をしていた。

「ウェールズさま…よかった。本当によかった…」

生きてくれている。本当にそれだけで嬉しい。
アンリエッタの愛は、もはや好きとか愛してるとかの度合いではなく、
純粋な崇拝にも似た、とても清らかな乙女の愛になっていた。

初めてラグドリアン湖で出会ってから、
ずっと彼以外の男なんて目にも入らなかった。
ゲルマニア皇帝の件もいつの間にか決まっていた。
だけど、この人が生きてさえいてくれたなら、
もうそれだけで――

眠っているウェールズの顔にキスをする。
その時、ルイズが外で爆発を起こした。
ビクっとアンリエッタが震えた時、
わずかにウェールズが動いた。
はっとしてアンリエッタは最愛の人を見る。
ゆっくりと目を開け、彼はアンリエッタを見た。

「ア…アンリエッタ?どうして君が――」
「ウェエルズさまぁあああ!」

寝ているウェールズの上に乗って、強く強く抱きしめる。

「いや、ちょっと」

アンリエッタは泣いている。こんな時男はどうすればいい?
彼女の頭を撫でるしか策はない。ウェールズは、ふぅと息を吐いた。


「つまり、私の力が強すぎるから、それのせいで普通の魔法が使えなかったって事?」

マーティンが出した仮説は、『虚無』の力の過多な精神力による、魔法の使用不可状態という物だった。

「君は今、虚無の系統のドットにして、他の系統のスクウェアのみマスターしているという、
とても変わった状態なんだと思う」

問題はこれだ。とマーティンは言った。

「『虚無』の魔法は、おそらく莫大な精神力を使うのだろう。
だから、消費の激しいスクウェアスペルはどうにか扱えるけれど、
 それ以下の呪文となると、多分今の君ではいつものように爆発が起こってしまうんだ。
 大きな滝から流れる水を、どうにかしてせき止めようとする様なものさ。
 相当な修練が無いと、スクウェアクラス以下の呪文は使えない。
 かと言ってスクウェアスペルを扱うのも難しい。
 私の世界でも魔法使いの素人が、簡単な火の魔法で大やけどを負ったりするからね」

急な力の増幅と、その力の行使は危険な事故に繋がる。
その事をマーティンはメイジギルド員だった事もあって良く理解している。
あくまで身の丈にあった魔法を使う事が、定命の存在として最も長生きできる秘訣なのだ。

「それじゃ、どうすれば良いのかしら…」

「ううむ。慣れて行けばいいのだけれど難しいな。
リコードがどれくらい精神力を消費するのかよく分からないし。
 なぁデルフ。ここら辺は教えてくれても構わないかい?」

鞘からデルフが出てきた。どうやら構わないらしい。

「ああ。えーとな…なんだっけな。ちょ、娘っ子。そんな目で見るなよ。
 虚無の呪文はともかく、他の系統魔法ならどれだけ使っても一晩寝たら回復する程度だよ。
 リコードも一日二、三回なら一晩で元通りに戻る…と思う」

「いい加減ねぇ」

ルイズは笑った。それでも大丈夫。私はメイジになれたから。
肩の荷が大いに降りた気がする。ふらっと足の力が抜け、
そのままルイズは倒れ込んだ。

「ルイズ!?」
「大丈夫。何か色々有りすぎたから、眠くなってきて――」

くぅくぅ。途中からルイズは眠ってしまった。
そう言えば、ここ数日はなかなか凄い日々だったな。
マーティンは手紙を届ける日からの出来事を思い出していく。

これほどまでに危険に満ちた冒険なんて、
友が聞いたら羨ましがるだろう。かの勇者は紛れもなく冒険家だった。
エイドラになった暁には、礼を言いたいから会えると良いが。
そう思いながらルイズを抱えてソファに横にさせて、
上から彼女のマントを被せるマーティンだった。


「落ち着いたかい?アンリエッタ」

まだ目に涙を溜めながらも、アンリエッタはウェールズから離れた。

「ああ、ウェールズさま…ご無事で良かった」
「…何が、良かったと言うのだい?」
「え?」

ウェールズは死ぬつもりだった。
愛する者を守るために。何もかもを捨ててでも守り抜く為に。

「君は僕を救ってしまった!私があの地で死んでいたら君の国にはレコンキスタが――」
「何を言っているのです!かの者達の言葉をよく思い出してくださいまし!」

レコンキスタの目的。それは王国を統一し、一つの国となって聖地を取り戻す事。
そんな話は正に夢幻の如き理想論。しかも終わりへと続く破滅を伴っている。
そもそも彼らは、エルフとの戦力差がどれほど開いているのか、さっぱり分かっていないのだろう。

「あの者達は終末をもたらそうとしているのです!この国にもいずれやってきますわ。
 あなたがいてもいなくても変わりません…」

「アンリエッタ…」

彼女はウェールズの胸の中で震えている。ああ、そうか。僕は勘違いしていた。
彼女を守りたかったのではない。死んで終わらせたかっただけだ。
逃げたかっだけなんだ。そしてそれは今も変わっていない。
嫌な男だ。そうウェールズは自嘲した。

「ウェールズさま…」

おそらく彼女も。自分をすがるような目で見る彼女は、
僕と同じく逃げてしまいたいと思っているのだろう。
ならば、ならばせめて共に行くべきだろう。
何処でも良い。争いの無い世界でひっそり暮らそう。
ウェールズがそう言おうとしたとき、先にアンリエッタが口を開いた。

「あの日、湖で言ってくださらなかった言葉を言って下さいまし」

ああそうだ。あの時は確かに言っていなかった。
気恥ずかしさもあって愛を誓えなかった。
だが、今なら言える。王家も何も関係ない。
彼女の為だけに生きよう。

「愛してるよアンリエッタ。ウェールズは君に永遠の愛を誓うよ」

テューダー王家の名を捨て、ただのウェールズとして生きよう。
そして彼女と。そのまま勢いでキスをする。とても長く、熱いキスを。
どれほどの時間が経ったのだろう?二人の唇が離れた。
アンリエッタは幸せそうな顔で言った。

「これで、やっと貴方様の事を思い出に出来ますわ」
「え?」

いや、え、え?とウェールズの頭が混乱する中、アンリエッタは言った。

そもそも、彼女はウェールズと添い遂げたいだとか、
いつまでも一緒にいたいなんて一言も言っていない。
ただ、「生きていてほしい」のだ。


「ウェールズ様。私はゲルマニアのアルブレヒトの下に嫁がなければならないのです」

今回のレコンキスタの牽制として、トリステインとゲルマニアは、
二国間の軍事同盟をする手はずになっている。
トリステインに戦力を、ゲルマニアへの見返りがアンリエッタの身柄だった。

「だから、あなた様のお心が聞きたかった。最後にそれだけは聞かなければ、
 この先、生きて行くことすら叶わなかったでしょう…」

いや、ちょっとアンリエッタ?何自己陶酔モードに入ってるんだい?
ウェールズは頭の中が混乱し過ぎて、何が何だかよく分からなくなっていた。

「愛していますわウェールズ様。けれどそれは必ずしも実るとは限らぬ物…
 どうか生きてくださいまし。それだけが私からのお願いですわ。どうか、どうか…」

アンリエッタは笑いながら泣いていた。ようやく理解したウェールズは男として、
女性に振られてしまった漢として、ちゃんと笑おうとした。
しかしどうしても涙が出てしまうので、大声で泣く事にした。


「で、結局お姫さんは何がしたかったのかねぇ?」
「あー…あれだ。気合い入れたかったんだろ」

そんなもんかねぇ。とマチルダはフォックスに問い直し、
そんなもんなんじゃないのかね?雅な考えってもんは理解出来ん。
と彼は答える。もう随分と雅さから離れた二人には、
姫殿下の思考を理解するということは、
ノクターナルの真理を解き明かすくらい難しい事だった。

アンリエッタのさようなら初恋の人。が終わって少し時間が経った。
宴の準備が整い、ただいまそれの真っ最中である。
少々昼を過ぎた空は、暑くもなく寒くもなく丁度良い塩梅の天気で、
皆は外で酒やらオレンジやら料理やらを食べながら盛り上がっていた。

その一角で、ウェールズが思いっきりヤケになって飲んでいる。
あそこまで迫ってそれかい。それなのかいアンリエッタ!
タルブ産のワインボトルを、男泣きしながらガブガブ飲み続けるウェールズ。
その周りには、先ほどの二大山脈の脈動を、その目でしかと見た男共が寄り集まっていた。

「まー気にすんなや王子様!女は星の数程って言うじゃねえか」
「そうそう。だからまぁ今日は飲め。飲んで忘れちまえ」

ポンポンと上物のワインが机に置かれていく。
ウェールズはさっきから何も言わずに、ただ泣いてガブガブ飲み続けている。

「大丈夫かしら?ウェールズさまったらあんなにお飲みになって」
「…えーと、大丈夫ではないでしょうか姫さま」

ルイズは起きた後、どうも調子が変なウェールズの事を辺りの盗賊から聞いた。
この姫さまに思い切り振られたらしい。振り回されて可哀想に。
けれど、姫さまを愛したのならそのくらいの覚悟、ちゃんとしとかないとね。

「ええ、ルイズ。あなたには謝らないといけませんわね…」
「へ?あ、えーと。良いです。何か、色々得られた物もありましたから」
「そう?ならこれからも私のおともだちでいてくれるかしら?」


ルイズはにこやかに笑った。

「もちろんですわ。ひめ…いいえ、アン」
「うふふ。ありがとうルイズ」

ワイングラスを手に二人は乾杯を交わす。
何というか、姫様も人なのかしらね。
神様も姫様も、案外考えていることは…。
いえ、分からないわ。分からない方がいいわ。
同類では無いと思いたいルイズであった。
ルイズも結構似たものだと思われるのは仕方ない。
だってそうなのだから。


「盛況な様だな」
「はい。王様も参加できれば良かったんですけど」

ティファニアは今、王が横になっている部屋にいる。
ローブは取っていた。王は、彼女の長い耳を何とも言えない顔で眺めた。

「変ですか?やっぱり」
「いや、目がな。モードの目にそっくりでな」

そう言ってごまかした。だが、目が弟にそっくりなのは本当だった。

「教えていただいてもよろしいでしょうか?その、私の家族の事について」
「…ああ。話さねばならん。墓まで持っていくつもりだったのだがな」

ふぅ。とジェームズは息を吐き、口から言葉を紡ぎ出す。

「モードは何というか昔から、その、冒険家気質というか、
 危ない所に自ら率先して行っていた。無論家臣達は、
 危ないからやめてくれと言っていたのだがね。
 顔立ちも良く頭も回る。私よりも王に相応しいのでは、
 とあの頃は思っていたよ。ずっと昔のことだ」

ジェームズは遠い日を見ている。
遙か昔。よくよく弟の暴れっぷりを諫めた物だ。と言って笑った。

今ここにいるのはジェームズ・テューダー一世ではなく、
若い頃を思い出す老人ジェームズだ。だから朕等という言葉は使わない。
もう、王である必要が無いからだ。

「ある日、サハラに行くと置き手紙を置いて出かけていった。
家臣達はそれはそれは驚いてな。だが、まぁいつもの事というかな。
よくそういう事をしていたのだ。サウスゴータにも苦労をかけてしまったな。
あやつはいつも自分の仕事をサウスゴータの者に任せていたのだ」

「だから、私の事も…」

うむ。そう言ってジェームズは力無く笑う。


「帰ってきた時、モードは何と言ったと思う?
 エルフと人は共に生きる事が出来るのだと、出会い頭に叫ばれたよ。
 あの頃の私は、熱心ではなかったがブリミル教の教えで頭の中を固めていた。
 だから、あやつの言葉を世迷い言として捨て置いてしまったのだ」

少しの間沈黙が漂う。ジェームズは叫んだ。

「それが引き起こしてしまったのだ!あの様な事を!君の母君と君の事だ…」

咳き込んでから、疲れた老人は悲しそうに呟き出した。



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