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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-26


26.ブリミルの詩

どうしてだろうか。ルイズは古ぼけたオルゴールから流れる声をとても懐かしく思った。

神の左手ガンダールブ――
マーティンのルーンだわ。確かに彼らしいわね。

神の右手がヴィンダールブ――
心優しく動物好き。まるでちぃ姉様みたい。

神の頭脳がミョズニトニルン――
ニルン。マーティンのいた世界の名前。
何か関係があるのかしら?

そして最後にかの邪神……。記すことすらはばかれる……
音は続くが、ノイズが酷くなって何を言っているのか分からない。

邪神?そんなの始祖ブリミルの話に出た事無いわよ?
ルイズの頭が混乱する中、それとは別に何か他の言葉が聞こえ始めた。

「ルイズ?」

急に杖を持ち、何かをルイズは呟き始めた。まるで悪い物に取り憑かれたかの様に。
マーティンはルイズを止めようとしたが、近寄ることすら出来なかった。
何らかの障壁で守られている。

三の僕を従えて、我らはこの地で戦った。

オルゴールの詩が終わる。それと同時にルイズは呪文を完成させた。

『リコード!』

ルイズの意識はオルゴールの記憶へ。追憶がある日の光景を映し出す――
ルイズの意識が消えた後、女性のすすり泣く様な声がオルゴールから流れた。
誰も聞く者はいない。ティファニアはあまりこの声が好きではなかった。

ブリミルどこ?ブリミルまたキスして欲しいのに


ルイズは気が付くと、どこかの部屋にいた。
何をしたのか自分でもよく思い出せない。確かオルゴールの歌を聴いて。
それからええと。と考えていると、目の前に何か動く物体があった。

「人かしら?」

辺りを良く見回す。以前の様な廃墟では無い。
粗末なテーブルと椅子が二つ。オルゴールは机の上にあった。
奥には、木製のちゃんとした二人サイズのベッドが見える。
動いていたのは可愛らしい赤ちゃんだ。

「だー」

一歳くらいだろうか?はいはいで近寄ってくる。どこかで見た事がある様な気がするが、
まぁいいか。と自分が倒れている事に気付き、起きあがって赤ん坊を見る。

「あぅ?」

不思議そうに赤ん坊はルイズを見る。しかし進軍を止めずそのままルイズの方へ。

「こらートール。どこ行ってるのー?」


奥の方から女性の声がした。ああ、あんな所に扉があったのね。
移動式のそれではなく定住のちゃんとした造りの家である事に、
このときルイズは初めて気が付いた。

開きっぱなしの扉から声の主がやって来る。長い耳を持ち、
お腹が膨らんだ美しい外見のエルフ。ルイズと目が合った。
両者共に驚く。エルフは何故我が家に知らない娘がいるのか。
ルイズは何故このエルフには胸部装甲板がないのか。
先に口を開いたのはルイズだった。

「…胸、ちっちゃい」

阿鼻叫喚の様でのたうち回りたい所を、どうにか子供が宿っていると念押しして耐える。
エルフの女は口を開いた。

「え、ええ。そうね。小さいわね。でも、それが何?
おかしいのはサハラの皆よ。ええ。おかしいのはあっちよ。
蛮人であんなに大きいの見たこと無いのだからこれくらいが普通なのよ。
ええ普通ですとも間違いなく小さくなんてないわ。
例え小さくてもこれがいいって言ってくれたもの。
小さい方がいいっていったものだから子供もいるんだもの」

開き直って口走る。ご先祖様もやはりこういう癖があったのだ。
まだそうだとはルイズは気付いていない。

「そうよね。おかしいのはあっちよね!」
「そうよ!おかしいのはあっちよ!」

いつの間にやら意気投合。ガシリと握手を交わす二人。

「うぅー」

そっちのけなので不服そうな、可愛いらしい赤ちゃんだった。


ルイズが目覚めそうにない。えらい事になったと皆が騒ぐ中、
夜の女王だけは冷静だった。

『落ち着け。さっさと宴をしろ』

訂正する。ルイズの命なんてどうでも良かった。
パァンとまたもやフーケのハリセンがノクターナルの頭を叩く。

『やめよ。それは痛い』
「ならもう少し空気を読んでおくれよ。今どうなってるか分かってるだろうに」
『記憶を覗いているのであろう?その秘宝が持つ記憶をな』

やはり理解はしているのだろうか?え、とマーティンはノクターナルを見た。

「記憶、とは?」

『物事を覚えているのは何も生きている物だけではない。
先ほどの呪文は風変わりなれど、我らの力に良く似ている…様な』

そこをぼかすなよ。とツッコミを入れたいところだが、
スネてどこかに行かれると困る。ただマーティンは聞き返した。


「つまり、ルイズは無事であると?」
『左様。その秘宝…エイドラ由来であろう。アカトシュの匂いがするそれの記憶を覗き見ているのだ』
「プリンス・ノクターナル。もしやこの秘宝はこの地の…」

ノクターナルは笑った。

『おそらくそうであろうな。ドラゴンファイアの代わりであろう。
アカトシュもおかしな神だ。形を変え、アヌイ=エルから名を変えて』

どういう事だ?初めて聞く話だが、デイドラ王子が言うからにはある程度の正確性はあるのだろう。

「と、申されますと?」
『問答ばかりは飽きた。我は宴が始まるまで何も喋らぬぞ』

ふふふと笑う。まぁ、実は謀って嘘言いましたとか言いそうだし、
気にしたところで仕方ない。そう思ってソファで横になっている、
ルイズと姫の隣にいる事にした。

「あ、あら?ここは一体どこ――ルイズ?」
「おお、お姫様の目が覚めちまったか」

ぱちくりと上半身を起こし、アンリエッタは辺りを見回す。

「ええ、ええと、ここは?」
「盗賊ギルドだよ。お探しの物は二階でぐっすりさ」

フーケが忌々しそうに言った。アンリエッタは何も言わずに階段を探し、それを見つけて駆け上がって行く。

「いいねぇ!恋する乙女ってなぁさ!」

怒りを吐き捨てて外へ出て行った。テファはうつむき、
悲しそうに小さな声でごめんなさいと謝った。


さて、そんな頃。と言っても時間軸が違うから全く違うのだろうが、
ルイズとエルフの女性、サーシャはお話をしていた。

「ハルケギニア?聞かないわね」
「ミッドガード?イグジスタンセア?」

両者の間にはやはり違う感覚があった。

「始祖ブリミルについて知ってますか?」
「始祖?ブリミルは私の夫だけど」

そんな大したのじゃないわよ。とまんざらでもなさそうに笑う。
サーシャに抱かれる赤ん坊は眠くなっているようだ。

「夫…?」

ええと、魔法は使えないけど杖は…あったわ!
とりあえず見せてみる。

「あら、それって杖よね。蛮人ってこれがないと魔法が使えないから不便よねぇ」


通じた!と言うことはここってまさか。
ルイズが6000年前の過去に来ているのだと理解するより早く、
他の部屋から泣き声が聞こえてきた。

「あらいけない。ちょっとこの子よろしく」

ルイズに眠っている赤ちゃんを手渡し、サーシャは他の部屋へと行った。

「えーと」

スヤスヤ眠っている。この位置で腕を固定させ、
とりあえず今の現状を考える。

「あのオルゴールを聞いて、何か気が付いたらここにいたのよね。
 魔法が使えたのかしら?」

試しに使ってみたい所だが、下手をすればこの赤ん坊が怪我をする。
いくら何でもそんな道に外れる気は無い。

「過去を見る魔法…?いえ、そんな物聞いた事無いわね。
 ありえるとしたら水の系統で頭を…でも…」

「おや、トール。可愛らしいお姉さんに抱いてもらって羨ましいな」

背後の扉辺りから声がした。振り返ってみると、
どこかウェールズ皇太子の面影があるような気がしないでもない男がいた。
しかしその顔は優しげで、彼の様な勇ましさは見受けられない。

「初めましてお嬢さん。僕はブリミル――」
「ブリミル!?その、ええと、ごめんなさい。つい取り乱しちゃって」

何かもうちょっとこう、格好良いのを想像していたのだけれど。
やっぱり神様っていうのはそんな物なのかしらね。
熱狂的信仰者ならともかく、彼女は最近神に対する認識を改めだしたので、
そこまで驚きもしなかった。

「いや、そりゃぁね。こう見えても結構有名人だしね」

よく見たらこの人オモロ顔ね。ああ、だから像には顔が無いんだわ。
自分のご先祖様に向かって酷い言いようである。

「ところで、君はどうしてここに?ここらじゃ見ない顔だけど」

いやそれが。とルイズは話を切り出した。

「いつの間にか、ここにいたんです。魔法を使ったのだと思うのですけど…」

何故だろうか。急に辺りが冷たくなった。悪寒と言うのだろうか?
ふと、ブリミルの後を見る。二人の赤ちゃんを持ったサーシャが鬼の目で立っていた。

「ねぇ、あなた」
「へ、いや、僕じゃないよ?」

何の話だろうか。二人の赤ちゃんをベッドに寝かせて、
ブリミルの方へ向き直った。

「魔法の実験で私を使わなくなったのは良いわ。誉めてあげる。でもね」
「違う!誤解だよサーシャ!ほら、トールもガルドもアールブヘイムも泣いてしまうよ!」


修羅場っている。誤解を解かないと。そう思ってルイズはサーシャに言った。

「違うんですサーシャさん。私は気が付いたらここにいたんです」
「そう。気絶させてここに運んで来たのね?」

火に油を注いでしまったらしい。目をランランと輝かせたサーシャは、
ブリミルの方を見た。

「ねぇ蛮人。ちいちゃいのが好きって言ったわね。この子とってもちいちゃいわね」
「何言ってるんだいサーシャ!僕が愛しているのは君だけだ!神にかけて誓うよ!」
「それ、何回目?」

う。とブリミルは言葉に詰まった。どうやら誓っては破っているらしい。

「そう。いいわ。最近育児で少し溜まっていたの」

パリパリ、と彼女の手に雷光が走る。ひぃ、とブリミルはおののいた。

「お腹の子に障るよサーシャ。だから…」
「大丈夫。足は使わないわ。一撃で仕留めるから」

言ったくせに言ったくせに、私が一番好きだって言ったくせに。
ちいちゃいのがいいって。そうね。たしかにそうだわ。

「わたしよりぃいいいいいい!ちいさなぁああああああああ!
 子ぉおおおおおおおおにぃいいいいいいいいい!」

雷光が飛ぶ。ブリミルは黒こげになって吹き飛んだ。
あれね。ブリミルは地雷と結婚したんだわ。
赤ん坊を庇ったルイズも吹き飛び、そして彼女は目を覚ました。


「こんなのを見てきた訳だけど。どう思う?」

もう一度オルゴールを聞き直し、「リコード」の呪文をルイズは正しく理解した。
そしてマーティンとティファニアに尋ねてみた。

「つまり、教会の教えが間違っていると言うことか?そこら辺どうなのかなデルフ」

デルフの反応が無い。訝しみ鞘から出す。

「デルフ?」
「知らね。覚えてねぇ」

テファはやっぱり。と言って話を始めた。

「私たちが聞いた時もそうだったんです。ガンダールブが来たら思いだすかもと言ったのですけど」
「思い出せねーな。忘れちまった」

言葉の節々に覚えていそうなトゲがある。敢えて言いたく無いのだろうか?

「オルゴールの最後の声はサーシャのだったわ。あれは一体どういう事かしら?」
「…悲しい事があったんだ」

デルフはそれだけ言って黙った。ルイズはデルフに強い口調で聞き返す。

「ちょっとあんた!覚えてるんでしょ!何で言わないのよ!」


「うるせぇ!忘れちまったもんは忘れたんだ!思い出したくねぇんだ!
 何があったか忘れたいんだ。忘れさせてくれよ…」

ルイズはデルフの気迫に何も言えなくなった。マーティンはそっとデルフを鞘に戻す。

「誰でも言いたく無い事はある。その、すまなかったねデルフ」
「わりぃ相棒。でも、言いたかねぇんだ」
「ああ。分かってるよ。昔の事を聞いてどうにかなる訳でもないしね」

さて、時刻はすっかり昼をまわっている。
何人かの盗賊やタルブの村人が宴の準備をする中、
アンリエッタはまだ目を覚ましていないウェールズの手をしっかと握っている。



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