あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

力を求める使い魔 Re-02


周りの声が煩わしい。

「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!
 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに応えなさい!」
――爆発。4回目の失敗。

聞きたくなくても、耳に入ってくるくすくす笑い。
魔法が使えないゼロのルイズという呼び名。召喚の詠唱のため言い返せないことが悔しい。

「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!
 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに応えなさい!」
――失敗、爆発。13回目の失敗。

魔法がつかえることが貴族の証。なのに魔法がつかえない自分が嫌だった。

「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ!強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!
 私は心より求め、訴えるわ!我が導きに応えなさい!」
――失敗、爆発。25回目の失敗。

皆に認められるだけでもいい。それだけでいいから魔法の力が欲しい。
自分がゼロなんかじゃないと証明して見せたい。

――失敗、爆発。 ――失敗、爆発。 ――失敗、爆発。 ――失敗、爆発。失敗回数、31回。

笑い声がやんでいた。どうせ次も出ないんだろ、という諦観がルイズの肌を刺す。
もはや、何も自分に対して期待してないのだろう。お前はそんなものなんだという声なき声。
手が震えているのが分かった。けど、今更やめられるはずもない。

「………っ! 宇宙のどこか果てにいる、私の下僕よ! 何よりも強く、生命力に溢れ……力をくれる使い魔よ!」

叫ぶ。自分が求めるものを。

「私は……私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに答えなさい――――!」

突然爆発とは全く異質な閃光が周囲を包む。爆風と違い、光から流れる涼やかな風。
そして、光が消えていくのとともに広場に現れたのは―――

「な……んだ?」

呼び出されたものが、そう呟いた。呼び出されたのは……平民だった。
育ちの悪そうな目つきの悪さ。薄汚れた気品がまったくないコートのような衣服。
眼鏡をかけてはいるが、それは知性というものをまったく感じさせなかった。
どう見ても、幻獣でもなければ、人間だとしても貴族でもない。どこからどう見ても、一風変わった格好の平民な平民だった。
「おい! 見ろよ! 平民だぜ!」
「さすがゼロのルイズ! サモン・サーヴァントで平民を呼び出すなんて!」
僅かな静寂ののち、火がついたように周りの生徒たちが好き勝手に囃し立てる。
「散々失敗してオチがこれとはさすがだな!」
その言葉でさらに声を大きくして笑い出す生徒たち。
ルイズは自分の使い魔を見て一瞬呆然としたのち、教師に言った。
「ミスタ・コルベール!もう一度召喚させて下さい!」
やっと呼び出したとはいえ、こんなことありえない。ただの……ただの『魔法も使えない』平民だなんて。
しかしコルベールは僅かな溜息とともにゆるゆると首を振り、
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。儀式を続けなさい」 
使い魔をルイズは眺める。先ほどと印象は何も変わらない。
礼儀も知らないのか、貴族に対して思いきり睨みつけ、悪い感情を示している。
しかも平民は、自分ではなくクラスの生徒たちを睨みつけ、拳を握りしめていた。
大きく息をして、大股に近づく。そして……つま先で立って平民の顔をこちらに寄せた。
突然何をするのかと不満に顔をゆがませる平民に契約を結ぶ。そして刻まれるルーン。使い魔と主の契約。

これが、初めてあいつと会った時だった。
召喚者に合わせて、召喚されるものが決まる。このときは、納得してなかった。なんで、こんな平民なのだろうと。
だけど……あとから私は知った。
きっとあいつは、私の誰かに認められたい、力が欲しい……そんな願いに合わせて呼ばれたんだと。


力を求める使い魔 Re2


「使い魔にしたいなら、俺に勝ってみろ。 ……力のない奴を相手にしてくれる奴なんて誰もいないぞ」

「―――!」

その声に咄嗟にルイズは杖をとった。 杖を取るルイズを見て、平民は挑発するように手招きして見せた。
「そうだ、来いよ、勝ち取って見せろよ」
さらにそう嘯く平民。流石に、使い魔相手にそんな態度をとられて平然としていられるような性格ではない。
短くルーンを呟く。しかし、いざ杖を振ろうとしたときに頭の片隅によぎる懸念。自分の、魔法は―――
「どうした?こないならこっちから行くぞ……!」
ドスの聞いた声で、平民は地面に水平にするように手を振り上げる。また、あの炎の魔法を使う気なのだろう。
(あああああああもう!)
ままよ、とルーンを短く詠唱し、杖を振り下ろす。 選択したのは『ウィンドブレイク』。
これなら、使い魔を傷つけることなく壁まで吹っ飛ばせるはず、という思惑だった。 ――もし、成功すれば。
しかし、起こったのは風ではなく当然爆発。しかも平民のいる場所ではなく、その横の壁。
―――やはり、失敗した。 自分の魔法は、成功したためしがない。
爆発して砕けた壁を見て、平民が目を丸くした。驚くような顔をして、壁を見つめている。
口笛を吹いている。――自分の失敗した魔法に対してまるで感心したような仕草。その態度が腹立たしい。
その態度がさらにルイズを煽る。
「次、行くわよ!」
もう胸の靄を振り切るように魔法を詠唱し続ける。何しろ、動きを止めれば炎の魔法が飛んでくるかもしれないのだ。
そのたびに、部屋の何処かが爆ぜ、爆風を起こす。こっちの動きを見た平民は短く舌打ちし、素早く部屋を動き回った。
場所を大まかにしか指定することができない以上、打ちまくるしかない。

こう着状態が一時続いたあと、突然平民がニヤリと笑った。
爆発が起こるのに悠然と部屋の真ん中に立ち、手を指揮者のようにゆっくり振り上げる。
  • 民の「アギ」という言葉と共に、先ほどの火炎弾が現れた。
慌てて避けようとするが、時、既に遅しで間に合わず。右肩に、火球の一つまっすぐに当たった。
その勢いで、体が後ろに飛ぶ。
「あぐッ……!」
あつい。いたい。 使い魔相手になす術がない。……体が……胸が苦しい。
それでも我慢して起き上がろうとしたとき、平民はもう目の前にいた。
拳を握っている。魔法ではない。単純な暴力で終わらせるつもりなのだろう。 ルイズが慌てて魔法を使おうと杖を振る。
その動作を、平然と平民は見送った。 爆発は見当違いの場所で起こる。
その爆発がやむまであえて平民は動かなかった。ルイズが、さらに魔法を撃とうとしたとき……ルイズの腹に拳がめり込んだ。
「狙いが一切つけられてねぇ。 魔法に幅もねぇ。威力悪くないが、一度に一つしか魔法が使えない。
しかも、その唯一自慢の魔法も満足に使えないんじゃねぇか。さんざん馬鹿に平民と何が違うんだよ」
腹を押さえ、うずくまりながらも平民の顔を見上げるルイズ。 まだ屈したつもりは毛頭ない。
しかし、その意志とは裏腹に意識が、白む。そのままルイズの体が前のめりに倒れる。
結局、平民を止めることは何一つできなかった。勝ちを確信し、背を向ける平民。平民が一歩踏み出し―――

平民のズボンを、ルイズがギュっと握った。

「まだ……よ……」
平民をルイズは、睨みつけた。まだ、まだ諦めるわけにはいかない。
自分は、貴族なのだ。貴族は、決して屈したりしない。使い魔に負けるなんて、あっちゃいけない。
ましてや、魔法で平民相手に。 キッと平民をにらむ。絶対に、あんたなんかに屈しないと意思を込めて。
猫のようなルイズの瞳が平民の瞳と一瞬合った。
「……ッ!」
「……、……え?」
何故か、体を僅かにこわばらせ、息をのむ平民。見間違えかとルイズが一度瞬きする。
だが平民の顔は、元の睨みつけるような顔に戻っていた。平民は足を振り、あっさりとルイズの手を振り解く。
「……力もないのに人にかみつくんじゃない。そんな力で、なにかできると思ってるのか?」
ルイズから視線をそらし、先ほどに比べて酷くトーンを落とした声で平民が言った。
「ま……だ……」
「力がなければ、誰も認めてくれない。誰もなれない。悔しいなら強くなるんだな」
平民は会話を打ち切り、
「ねてろ。ここの部屋はしばらく使わせてもらうぞ」
みぞおちに、足が食い込む。 結局、それまでだった。だから、ルイズには聞こえなかった。


「ったく……昔の俺と同じ目しやがって………気に入らないんだよ。きついだけだろ、そんなのは………」



一夜明けて。ルイズが目を覚ましたとき、もう時刻は朝になっていた。
ムクリと身を起こす。目に飛び込んでくるのは、バラバラになった家具、焼け焦げた衣服、滅茶苦茶になったベッド。
爆ぜたり焦げたりしているしてる壁。物取りあったとしても、こうはならないだろうという惨状。
昨夜、気を失う前にあったことを思い出す。
コモン・サーヴァントをして、呼び出した使い魔が魔法を使えて、それで戦って―――――

――――負けた。まるで相手にならなかった。

ズキリと右肩が痛む。肩を押さえたままフラフラとルイズは立ち上がった。 部屋の隅に、毛布がかたまっている場所がある。
ぼんやりとそこに近付き、毛布を手荒に剥ぎ取る。中には、何もなかった。もぬけの殻だ。しかし、わずかに温もりがある。
最後に、この部屋を使うとか言っていた気がする。つまり、ここで寝ていたのだろう。
自分に何も言わず、勝手に。自分の使い魔なのに。
「う……うぅ……あ……」
その、自分の使い魔に負けたのは誰だ?他でもない自分ではないか。 口を押さえても、嗚咽が漏れる。
力がなければ、誰も認めてくれない。何もできない………その通りだと思った。
力がない、何もできない、誰も認めてくれない、誰も見てくれない。だから、『ゼロのルイズ』。
それが、人からつけられた侮蔑の呼び名。他人からの冷やかしはいくらでも受け流せた。いつか見返してやると思えた。
力による屈服という、それ以上ない形で示された現実。こんなことは初めてだった。
でも、あの平民の言葉は、皮肉も嘲りもなかった。何も飾らない、直接的なそれはルイズの心へ突き刺さった。
魔法が使えない自分は、平民と同じ? 貴族足り得ない? もし、そんなことを認めてしまえば――――
もし、そんなことを認めてしまえば――――   もし、そんなことを認めてしまえば…………?
違う。違う、違う違う違う。 自分は貴族。自分は魔法が使える。自分は『ゼロ』なんかじゃあない!

ルイズの心にじわりと、力に対する渇望が広がる。
一日二日ではなく、今まで奥底にあった、力に対する渇望が広がる。
自分が自分であるための、力に対する渇望が広がる。

そう、誰かのように。

この一件が、引いては彼に出会ったことが彼女にとっての『きっかけ』となる。
それから、ルイズの生活に変化が訪れた。
周りの評価は相変わらず『ゼロのルイズ』のままだ。やっぱり相変わらず魔法を打てば失敗する。
しかし、爆発の回数は、今までの一日あたりの3倍近くになっていた。 授業が終わっても、図書館が閉っても……
前にもましてズタボロの自分の部屋で何度も何度も魔法の練習を繰り返した。
その全てが失敗。そのうち、手の皮が破け、血が出たり、破片で傷を負うこともあった。
それでもやめようとしなかった。 そして、一日の最後は、必ず平民と戦った。
こちらも、魔法と同じで、もちろん失敗続き――つまりは負け続き。でも、決してあきらめたりなんかしない。
何故か、平民も、夜になるとルイズの部屋に必ず戻ってきたし、その勝負を受けてくれた。 その中でも、平民は言い続けた。

―――――力がなければ、誰も認めてくれない。何もできない、と。

ふとしたとき、ルイズがその言葉が、決して侮蔑で言っているわけではないことを知った。
証拠に、一度も彼はその言葉を軽々しく使わなかったし、使うときはルイズを向いてまっすぐ言っていた。
しかも、その言葉はルイズに対して言っているだけでなく、平民自身にも投げかけている言葉だと気付いた。
平民にとって、その言葉は……いったい何なのだろうか?

平民がきてしばらく経った時だった。
彼が、自分たちが授業の間、図書館に忍び込んで初級の魔法を練習しているとコルベールから聞かされたのは。
図書館、とは言っても相当広い。しかも、フライなしでは、本とることすら一苦労だ。
自分には理由がある。目的がある。だが……いったい、彼がそこまで力を追い求めるのは何故だろうか?
ぼんやりとそんなことを考えながら、連日の戦いで疲れた顔で、食事を取っているときだった。

事件の、きっかけが起こったのは。



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