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ゼロと波動 第9話



翌朝、学院は上を下への大騒ぎだった。
メイジの巣窟という一見難攻不落の魔法学院の宝物庫があっさり荒らされたのである。

学院長室は異様な緊張感に包まれていた。
昨晩の当直だったシュヴルーズがギトーを筆頭とする他の教師たちから吊るし上げられていたのだ。
「ミス・シュヴルーズが昨日の当直だったはずですな。どう責任をとるつもりなんですかね?」
「いや・・・まさか・・・学院が盗賊に狙われるなんて・・・」
「その怠慢がこの結果なんですぞ!?」
「そ・・・それはその通りなんですけど・・・」

シュヴルーズがしどろもどろになりながら必死で弁解しようとする。
そこにオスマンが現れた。
「ミス・シュヴルーズを虐めるのもそのぐらいにしておきなさい」
決して大きくはないが、威厳ある声にその場が静まる。

「皆してミス・シュヴルーズを責めているようじゃが、この中で夜の当直をキチンとこなしておる者がおるのかね?」
オスマンが一同を見回す中、誰もオスマンと視線を合わせようとしない。
皆が皆、魔法学院が襲われるなど夢にも思っていなかったのだ。

大半が少年少女からなるメイジの卵とは言え、魔法学院にいる者はそのほとんどがメイジである。
複数人のスクウェアクラスメイジによる、『固定化』をはじめとした魔法技術を駆使したその堅牢さは生半可なものではない。
守りの厳重さだけで言えば王宮に匹敵すると言っても過言ではない鉄壁の砦。
それがトリステイン魔法学院だった。
そんな魔法学院に賊が入るなど思ってもいなかったので、まともに当直をこなしている者など誰もいなかった。

「今回の件、もし責任があるとしたら儂を含めた全員じゃろうな。そもそも儂からして、まさか学院が襲われるなど露ほども思わなかったからの。儂ら全員の怠慢じゃ」
そう言いながらこっそりシュヴルーズの尻を撫でる。
が、当のシュヴルーズはオスマンが自分を庇ってくれたことに感動してしまい、自分の尻を撫でられていることに気づいていない。

ひとしきり尻を撫で回したオスマンは満足すると、再び口を開いた。
「問題は誰の責任なんぞとくだらんことを言い合うことではなく、これからどうするかと言う事じゃ」
オスマンが言い終わったのと同時に扉が開く。

「昨夜、現場に居合わせた者達を連れてまいりました」
頭を光らせながら現れたのはコルベール。
その後ろからルイズ、キュルケ、タバサ、リュウ、そしてシエスタが続けて部屋に入る。

「彼女らが昨晩の犯行を目撃したそうです」
言うと、コルベール自身は教師陣の中に混じってオスマンの言葉を待つ。

「ほう、君らか。で、どんな状況じゃった?」
オスマンの問いかけにルイズが答えようとしたが、キュルケがそれを制する。
ルイズが喋ると余計なこと、リュウの暴走まで喋る気がしたからだった。
今、ここで学院にリュウが危険人物だと判断されるのはよろしくない。
当然ルイズは文句を言おうとしたが、キュルケのいつにない真剣な顔におとなしく従った。
キュルケはルイズがおとなしく下がったのを確認すると、自分の見たことを正直に、ただしリュウのただならぬ様子だけは伏せて答える。

が、それに異を唱えたのはミスタ・ギトーだった。
「平民が30メイルのゴーレムを倒した?そんな馬鹿げた話があるかね」
周りの、コルベール以外の教師たちも一様に頷く。

「でも!本当なんです!本当にリュウが倒したんです!」
リュウはとんでもなく強い。きっと、ここにいる誰よりも。
圧倒的な強さでもって巨大なゴーレムを粉砕したリュウが今でも鮮明にルイズの瞼には残っている。
それなのにリュウは誰よりも優しい。
魔法の使えない自分を馬鹿にするでもなく、いつも優しい目を向けてくれる。
何々をしろなどとは言わないが、やるべきことをそれとなく教えてくれる。
最初こそ平民を召喚してしまったことに不満しか感じなかったが、今ではリュウは最高の使い魔だった。

自分にだって分かっている。平民がゴーレムを倒したなどと、にわかには信じられるはずがない。
かくいうルイズ自身も最初、まさかリュウがギーシュに勝てるなど思いもしなかった。
だから、先生たちがリュウの強さを信じられないのは当然だ。
それでも、リュウを否定された気がしたルイズは我慢できずに反論した。そして、それを援護したのがオスマンだった。

「儂は信じるよ。生徒の言葉を信じられんようでは教師も終わりじゃて。のう?ミスタ・コルベール?」
そっけなく言うオスマン。

「そうですな。まずは生徒を信じる。そこから教育の道は進むんだと私は思いますな。
それに、ミスタ・リュウは遥か東方の”ブドー”なる術を使うと聞いています。彼ならそれぐらいはやってのけても不思議はないと思いますぞ」
コルベールも相槌を打つ。

オスマンとコルベールは先日リュウと話し合った末、リュウが違う世界から来たなどと本当のことを言うわけにもいかないので
リュウの使う技を東方の術ということで皆に納得させることにしていた。

「が・・・学院長がそう仰るなら・・・」
役に立つとも思えない研究ばかりしている冴えない偏屈教師であるコルベールの発言はともかく、
学院の長たるオスマンの発言では無碍に否定するわけにもいかず、教師陣は仕方なく押し黙る。

「さて、では話を戻そうかの。改めて諸君に問おう。今後、儂らはどうすれば良いと思うかね?」
オスマンはこっそりシュヴルーズの隣に移動すると、再び尻を撫でながら皆の意見を求める。

「そ・・・早急に王宮に連絡して騎士を派遣してもらわなければ・・・」
今度はセクハラに気づいたシュヴルーズが飛び跳ねて逃げながら答えた。

「カーーッ!!」
オスマンは意外なほどの迫力で目をむくとシュヴルーズを一喝した。
「わざわざ自分らの無能っぷりを晒すというのか!嘆かわしい!儂らはメイジじゃぞ!
自分の尻ぐらい自分で拭えんでどうする!儂ら自身で犯人を捕まえるんじゃ!」

教師陣がざわつく中、コルベールが口を開いた。
「我々自身で犯人を捕まえると言う意見には賛成ですが・・・」

「何か言いたいことでもあるのかね?」
オスマンが鋭い目でコルベールを睨む。

「今、明らかにセクハラを誤魔化そうとしましたね・・・?」
オスマンにジト目を向けるコルベール。

「オ・・・オホン!前々から思っとったんじゃが、君はホント、空気が読めんヤツじゃのう・・・」
オスマンはばつが悪そうに小声で言うと、気を取り直したようにしっかりした声で告げる。
「それでじゃ。この中に、自分が”土くれのフーケ”を捕まえようという勇気あるものはおるかね?」
オスマンが一同を見渡す。

  「・・・私が行きます」
静かにコルベールが杖を掲げた。

「学院の秘宝を盗んだことも許せませんが、生徒を危険な目に合わせたことが何よりも許せません」
志願するコルベール。
生徒想いのコルベールは、生徒を殺しかけたフーケに静かな、しかし激しい怒りを燃え滾らせる。
だが、非情にもコルベールの想いが届くことはなかった。
オスマンが首を横に振ったのだ。

「いや、ミスタ・コルベールにはここに残って、宝物庫の警備をして欲しいのじゃ。なんせ、今は壁に穴が開いて行け行けじゃからのう。『炎蛇』を学院から離すワケにはいかん」
オスマンの言葉にコルベールは渋々納得すると、杖を下げた。

「で、他におらんのかの?」
見渡すが他の教師たちからは誰も杖が揚がらない。

「わ・・・わたしが行きます!!」
しばらくの沈黙の後、ルイズが震えながら杖を揚げた。
「わたしもー」
ルイズを見たキュルケものほほんと杖を揚げる。

「ちょっと!なんであんたまで杖を揚げるのよ!」
ルイズがキュルケにくってかかる。
「ヴァリエール家にばっかりカッコイイことさせるワケにもいかないでしょ。それにわたしだってその場にいたんだから」
キュルケがウィンクしながら答えた。

その横でタバサも無言で杖を揚げる。
「あなたはいいのよ」
キュルケが言うと、タバサは「心配」とだけ言った。
「ありがと」
小さな親友の言葉に胸を熱くして答えるキュルケ。

「俺も行く」
リュウも短く、しかし力強く宣言する。

「わ・・・わたしも行きます!」
大勢の貴族の中に混じってガチガチに緊張しているシエスタもオドオドしながら手を揚げる。

「君たちは生徒ではないかね!やめたまえ!危険過ぎる!」
教師の一人が声をあげる。シエスタは生徒ではないが、平民なので教師にとってはどうなろうと知ったことではない。

「だって、先生方、誰も杖を揚げないじゃないですか!わたしだって貴族です!逃げたくないんです!」
ルイズが反論する。
自分たちが杖を揚げない以上、言い返すこともできずに黙る教師たち。

「そうじゃな、武勇の誉れ高いツェルプストー家にヴァリエール家、それにシュヴァリエのミス・タバサまでおるんじゃ。任せるとするかの」
オスマンも太鼓判を押す。

「それに、遥か東方の”ブドー”の使い手までおるんじゃ。心配いらんじゃろ」
フォッフォッフォと笑いながらオスマンは顎鬚をしごいた。

「で、この肝心なときにミス・ロングビルはどこ行ったんじゃろうのう?」
皆が首をかしげる中、タイミングよく扉が開く。

「失礼します!明け方から”土くれのフーケ”の情報を集めていましたので遅くなりました」
入室したロングビルはルイズを見て一瞬驚いた表情をしたが、すぐに平静を装って言葉を続ける。
「近隣の農民が”土くれのフーケ”と思われるフードを被った人物を見たと申しています。馬車で4時間ほどの距離だそうです」

「流石です!お手柄ですぞ!ミス・ロングビル!」
コルベールが頭まで真っ赤にして必要以上にロングビルを褒め称える。
この男、本当に美女に弱かった。

こやつ、本当に”炎蛇”なんかいな・・・
オスマンは疲れた顔で、だらしなく緩んだ顔のコルベールを一瞥するとロングビルに告げた。

「でかした、ミス・ロングビル。では諸君には早速行ってもらうとするかの。スマンがミス・ロングビルも同行してやってくれんかの」
ロングビルはメガネを人差し指で持ち上げると、整った唇の端を僅かに上げて答えた。
「元よりそのつもりですわ。案内も必要でしょうから」

かくして、”土くれのフーケ討伐隊”が結成された。

「では、これで解散じゃ。あ、そうそう、ミスタ・リュウはちと残ってくれんかの」
オスマンの言葉と共に、教師陣は各々教室に
リュウ以外のフーケ討伐対は準備の為に部屋を出て行った。





皆が退出したのを確認してから、オスマンが口を開く。
「さて、昨晩はどうやら大変だったようじゃの。何か相談があればのるぞい」
そう言うと引き出しから水キセルを取り出し、ふかしだした。

「昨晩、俺の意思に関わらず”殺意の波動”が暴れだしました」
リュウが静かに告白した。
「やっぱりのう。相当離れとったのにあまりに強烈な殺気だったもんで儂、ビビってしもうたわい」
笑いながら言うオスマンに「すみません」と素直に頭を下げるリュウ。

「なに、謝るようなことじゃない、儂が不甲斐ないだけじゃ。それより、原因に心当たりはないんかの?」
「”殺意の波動”を克服して以来、こんなことはありませんでした。ルイズが死んだと思った瞬間、左手の紋章が光って、勝手に”殺意の波動”が暴れだしました」

「なるほどの・・・”ガンダールヴ”とその”サツイノハドウ”が何かしら関与しとるのかも知れんの」

「ああ、思い出した」
それまでリュウに握られたまま黙っていたデルフリンガーが鞘から飛び出し、突然口(?)を開いた。
「ガンダールヴってのはなー、心の震えでその力を発揮するんだあよ」

「なんじゃ、それ、インテリジェンスソードか、ボロっちいのう」
突然喋りだした剣を見てオスマンが漏らした感想にデルフリンガーが噛み付く。
「おめえだって大概ボロっちいじゃねーか!人のこと言えるかってーの!」
「フォッフォッフォ、そりゃそうじゃの。こりゃすまんかった」
オスマンが笑いながらデルフリンガーに謝る。

「で、だ」
デルフリンガーが気を取り直して続ける。
「さっきも言ったよーに、ガンダールヴってのは武器を持つと心の震えに応じてその力を発揮するんだけども、
相棒ってばなかなか心が震えねえから、基本的にガンダールヴの力も発現しねーんじゃねーかな」
オスマンが興味深そうにデルフリンガーの話に耳を傾ける。

「相棒、試しに俺っちを構えてみ?」
言われた通り抜き身のデルフリンガーを構えてみる。

「どーだ?別段、身体が軽く感じたりしねーんじゃねーか?」
デルフリンガーの言うとおり、いたって普段どおりである。
「そうだな、特に変わった感じはしないが・・・」

「普通のヤツなら普段から多少は心が震えてんだよ。『怖ぇー』と思うのも心の震えだし、『このヤロー』って思うのも心の震えだ。
だから武器を持つだけでガンダールヴが反応して身体能力が跳ね上がる。
そもそも武器を持つような場合ってのは平静でいられる状況じゃねーから能力の上がり幅もでけーんだ。
ところが相棒ときたら普段から、特に戦闘体制に入ったりしたら極端に冷静沈着ときたもんだ。
だもんだから、基本的にガンダールヴがほとんど反応しねーんだ。
それが貴族の娘っ子が死んだと勘違いした相棒は珍しく心が震えちまったんだな。『よくも殺したな!』ってよ。
その結果、何が”武器”と判断されたのかは解かんねーけど、とにかく、ガンダールヴがその震えに反応したんだと思うぜー。
で、それにその”サツイノハドウ”ってのが反応したんじゃねーかなー?
ん?いや、待てよ・・・逆かもなー。
”サツイノハドウ”がガンダールヴにとって”武器”なのかもしんねー。
まあ、どっちにしろ、”サツイノハドウ”ってのとガンダールヴがややこしく絡んでんじゃねーかな・・・
相棒、昨日のなんかエネルギーみたいなのを飛ばすヤツ撃つとき、いつもより強かったんじゃね?」

確かにデルフリンガーの言う通り”殺意の波動”を使っているという前提でも、昨晩の波動拳はかつて見たことのない威力だった。
「ああ、今まで、あんな強力な波動拳は撃ったことがない」
リュウが頷く。

「やっぱなー。だとしたら、確実にガンダールヴの力だわな。ガンダールヴと”サツイノハドウ”ってのが反応して相棒を支配するとしたら、
武器持ってねーのにガンダールヴが発動した挙句、それで相棒が正気を失っちまうってのは問題だあね。しかも相棒、やたら強ぇーし」

「そうかも知れんな・・・」
確かにルイズに大木が直撃したと思った瞬間、冷静ではいられなくなった。
もちろん、リュウとて人の子である以上、人の死には冷静ではいられない。
ただ、ルイズが死んだと思ったときはそれを差し引いても普通ではなかった。

自分の師匠である剛拳が”拳を極めし者”豪鬼と闘って死んだとき。
現場を目の当たりにしたリュウは当然冷静ではいられなかったが、それでも今回とは違っていた。
今回の心の高ぶりは異常だった。
そして、その心の高ぶりを喰らうかの如く”殺意の波動”が暴走を始めた。

「不思議なんだ。確かにルイズが死んだと思ったとき、俺の心は冷静ではなくなったと思う。
だが、あの心の変動は異常だった。俺が親しくしてきた人たちの死に立ち会ったときの、どれとも違う。無理やり魂が揺さぶられたような感覚だった・・・」
蒼い顔で思い返すリュウ。

「そうじゃのう・・・」
オスマンがゆっくり口を開く。

「思うに、”使い魔”である以上、主であるミス・ヴァリエールに対しては通常とは違う思考回路が組み込まれとるのかもしれんの。
滅多に人に懐かん幻獣でも使い魔になれば家族同然なんじゃからの。
つまり、ガンダールヴのルーンがお前さんの心をある程度コントロールしとると考えるのが自然だし、納得がいく」

「いつ・・・また暴走してもおかしくないってことか・・・」
オスマンの言葉に俯き、考え込むリュウ。

「ふむ・・・」
オスマンが再び口を開く。

「今までの話を聞いたところ、お前さん、多少のことでは動じんのじゃろ?それこそ、主であるミス・ヴァリエールが死ぬぐらいのことにならんとな」
だったら簡単と言わんばかりに言葉を続ける

「主が死ぬと使い魔の契約は解除されるんじゃ。つまり、お前さんが勘違いさえせんかったらそうそう簡単に暴走はせんということじゃないかの。
もし本当にミス・ヴァリエールが死んでしもうたらそれと同時にガンダールヴじゃなくなるんじゃからのう。
まあ、そんなことになってもらっては困るがの。
とりあえず、そう思っておけば多少は気が楽じゃろ?」

ことはそんなに簡単なことではないが、オスマンはリュウを気遣って軽いことであるかのように言う。

「お心遣い、痛み入ります。これも俺の修行不足がいたすところ。精進します」
リュウはオスマンの意図を汲み取って頭を下げる。

「お前さん、ちょっと真面目過ぎるところがあるのう。多少は肩の力を抜くのも大事じゃと思うよ」
オスマンが手をひらひらさせながら諭す。
リュウはもう一度頭を下げると、学院長室を後にした。









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