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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-25


25.Paradise[sahara & Carac Agaialor ]

あなたへ。機密なのですが王宮で少々困った事が起こりました。
ですのでしばらくそちらに帰れそうにありません。
追って手紙を出します。カリーヌ

今より少し前、カリーヌは王宮に戻って短い文章の手紙を鳩にくくりつけて飛ばした。
先ほど、暫定処置としてグリフォン隊の隊長に任命されたところである。
マザリーニの懐刀であるワルドが、裏切り者だとは誰も思っていなかった。
それ故今回の件は、王宮中で混乱が起こる事態となっている。
当然グリフォン隊の面々も驚きとまどっているが、
彼女が新しい隊長だと言われたら、はいとしか言えないだろう。

姫殿下がさらわれてしまったものの、影の中に消えたという証言から、
どこに行ったかなぞ分かるはずもない。
議会の中には目撃者であるカリーヌを疑わせようと画策する者もいたが、
かの『烈風』だと知ると、瞬時に黙り込んだ。
マザリーニは近衛三隊に首都近辺の探索を指示、そして現在に至っている。


「しかし、カリーヌ隊長。姫様が見つからなければ我らは一体どうすれば良いのでしょうか?」

グリフォン隊副隊長がカリーヌに問うた。彼らは現在トリステイン北西側を探索中である。

グリフォン隊は今回の件で一番面倒な事になった部隊である。
何せ隊長が姫殿下付きの女官を殺害し、アンリエッタ姫をさらってしまったのだ。
彼らに疑いがかかるのは仕方が無い。故に隊員の内の何人かが不穏な動きを見せるなら、
誘拐の阻止が出来なかった『烈風』が仕留めよ。
今回の暫定的な人事は、そうした意味も含まれている。

「貴族はただ王家に従うのみ。本来ならばマリアンヌ様に従うのが習わしだが、
 今はマザリーニ様に従う他無い。急ぎ姫殿下を見つけねばならぬ。
ゲルマニアとの同盟は歯がゆくて仕方が無いが」

古き貴族として、今回のゲルマニアとの婚姻はどうしても嫌な物である。
私がアルビオンを落としてきます。とマザリーニに言った所、
頼むからそれだけはどうかやめて下さいと、
念を押されて待機を命じられてしまった。昔王にも引退してから、
ゲルマニア取ってきますから行かせて下さいと願った所、
いや、いいからヴァリエール君と仲良くしといて。と言われた事があった。

彼女を下手に動かせば国の分け隔て無く総力戦が起こる可能性がある。
最近のガリアとロマリア、そしてその他の周辺国家の動きは不穏だ。
彼女は国にいてもらわないと困る。そうマザリーニは考えている。
一種の抑止力と言う奴だ。一方、王の方はただ面倒事になりかねないからやめてと言った。

「各員!北東へ向かうぞ。遅れるな!」

カリーヌのマンティコアが東へ進路を取り、疾風のごとく風を切って飛ぶ。
何故かグリフォンが追いつけない。使い魔も伝説級か。流石は烈風だ!
とまだ一度も彼女の訓練を受けていない隊員達は、
彼女の指揮下に入れた事をただ喜んでいた。
後にマンティコア隊の連中から、
訓練終了後はどの薬なら効果があるかを聞くことになるが、
それはまた別のお話。



所戻りタルブ。現在かなり気まずい状況下なのは家の二階と一階。
二階はマチルダとフォックス。一階はシエスタとルイズがその原因である。

「何もしやしないよ。ちょいとどいてくれないかい?マスター」
「その目じゃ信用できん。せめてテファが話してからにしろ」

ああ、そうかい!と毒づいてようやく彼女は下へ降りていった。
ふうと彼は息を吐く。

「俺は自分から。あいつはしたくもなく、か」

共に貴族でありながら盗賊となった二人。
そこに共通点も見え、単独で捕まらない様に色々と教えているが、
なりたくもなくこれをするというのは辛い事だ。
その原因となった野郎に殺意が沸くのも無理は無い。

「やれやれ、何でこんな所まで来てお家騒動に絡まねばいかんのだ」

思えばアンヴィルの街はそういうのに関して問題は無かったな。
港町として栄え、その気風からか街の雰囲気も悪くない。
教会が化け物に襲撃されたり、変な事叫び出す爺さんが突然現れたり、
幽霊屋敷として有名なベニラス邸や幽霊船があったりするのは、
日々の暮らしを彩るちょっとしたアクセントだ。特に問題無い。

帝都では珍しく腐敗しておらず、珍しく灰色狐が本当にいると信じ込む、
若き衛兵隊長ヒエロニムス・レックスも、
この街に計画的に左遷された事によって刺々しさが無くなったらしい。
むしろ灰色狐どころの騒ぎではないからだろうか?

「帰りたいなぁ。誰にも分かられなくてもあそこから海が見たい」

ボソリと誰に聞かれるでもなく呟く。そんな時下から騒々しい声が響いた。

「また何かやらかしたのか?」


「えーと、そのですねミス・ヴァリエール…」
「何も言わなくていいわシエスタ。あなた最初からそうだったのね?」

気まずい沈黙が流れる。マーティン他は見ているだけしか出来ない。
先ほど迎えに来た盗賊に着いて行った家の中に彼女がいた。
ルイズからしてみれば、学院に行ってから初めて普通に話せる仲になって、
友達だと思っていたのに裏切られた様な物で、酷く嫌な気分になった。

「まぁ、半分はそうです」
「なら残りの半分は?」

そうですねぇ。と考え込んでシエスタは明るく答えた。

「お友達になろうかと思って」
「…はい?」

面食らったルイズに畳みかけるようにシエスタは喋った。

「諦めず、前に進む意志を持つ人って少ないです。
 特にあそこの貴族様達って敬われて当然と思ってる人が殆どでした。
 ミス・ヴァリエールはその中で、私には輝いて見えてたんですよ?」

ルイズは真っ直ぐにシエスタの目を見た。嘘偽りの無い瞳で見つめ返される。
彼女は誉められるのに慣れていない。耐性が無いからとても弱い。
だからちょっとばかり嬉しくなってこう何というか、嬉しくなった。
でも裏切られたんだから誠意見せてもらわないと駄目よね。
うん駄目だわだからおだてられただけで調子のらせたら駄目なのよ。
数瞬の思考の内ルイズは答える。

「おおおだてにはのらないわよ?」

顔を赤くして言っても説得力ないですよーと頭で思いながら、
シエスタはルイズに近寄った。


「今まであなた様達に黙ってこちらの仕事を優先した事は謝ります。
 でもそれもちょっと事情があって…」

「事情って?」

公爵家だからお金持ってそうとか?とルイズが聞くとシエスタは首を横に振った。

「あなたが『虚無』かもしれないからです…その、本当かどうか調べようにも、
 ここに呼び出す訳にもいきませんし」

「…冗談ならもうちょっと楽しいのにしてよ」

そんな訳ないのは学院にいたシエスタなら良く分かっているでしょ?
そうルイズが言うが、シエスタはいいえとやはり首を横に振った。

「本当なら盗賊がそういうのには関わらないですし、
 実際フーケさんは気にしていませんでした。
 グレイ・フォックスの個人的な頼みというか。
 ティファニアさんが『虚無』なものですからね。
 彼女も魔法が使えなかったんです」

「え」

ルイズは驚き、シエスタをじっと見た。

「確かめる方法があります。今、ティファニアさんが持ってきてくれます。
 あ、ノクターナル様はしばらくお待ち下さい。今準備中ですから」

露骨に嫌そうな舌打ちをして、姫をそこら辺に置いてどこかへと消えた。
あれ本当に神様なのかしら?人間じゃないのは分かるけど。
ルイズはそんな事を思いながら「確かめる方法」とやらを聞いた。

「はい、今ティファニアさんが持ってきてくれます」

音もなく、いつの間にか彼女はそこにいた。

「お待たせしました。えと、初めまして。ヴァリエール様」

そこに現れるは夜の女王と同じ様なローブを纏いフードを外して現れた人は、
とても美しい女性だった。流れる金色の髪、透き通るように白い肌、
そして水晶の様な碧眼の目。これだけ聞けばハイエルフの様な高身長を思い出すが、
ダークエルフより少し小さく、ウッドエルフより大きいくらいの程よい背丈。
そして、

「え、エルフゥゥゥゥ!?」

エルフ特有の長い耳。最大の特徴はもう少し後になってからゆっくりと書き記したい。
できればそれだけで残りを終わらせたい。

「これが…エルフ?いや、本当に定命の存在なのか?」

マーティンは呟いた。彼の目から移った彼女の姿は、
九大神である美の女神ディベラに祝福され、愛の女神マーラがこの世の全てから愛されるように、
エセリウスに住み、竜の形をした主神アカトシュと婚姻を結んでいる彼の神が、
自身の芸術の才能を極限まで、惜しげもなく発揮させて創りだしたのではないか。
そう錯覚させる程の美貌を誇っていた。唯一この女性の美に敵うかもしれない相手は、
コロールの街で書店を経営しているレノア氏しか思い浮かばなかい。


尚、ある石碑の祝福を受けると「マーラの慈愛」と「マーラのミルク」という加護の力が使える様になる。
どちらとも一日一回しか使えないが、とても強力な回復の魔法である。
ミルクが自身に、慈愛が他者への回復を促し、それらは魔法力を使わずに使用できる。

「は、はい。ハーフエルフです」

フードを取った理由は、先に誤解を解いておく為である。
口が立たなくなるのは問題だが、これ以上騙していても、
何も良い事が無いのだ。なら、先に出せる情報は出しておこう。
そう決めて彼女はこの姿を晒した。もちろん、彼女に危害を加えようものなら、
近くの盗賊達は掟を無視して攻撃するだろう。

「人とエルフの子…?」

ルイズは驚いてティファニアをじっと見る。オカートを見た時もそうだけど、
エルフってそこまで怖くもないのね。怖いくらい綺麗だけど。顔から段々と視線を落とすと、
そこには何か不可思議な物があった。ちょうど胸部に積載されたそれは、
ローブの下からでもつんと上を向き、大きく自己主張をしている。

ぐぁし。ルイズは効果音を鳴らしながら、冷たい目で「それ」を掴んだ。
ローブ越しだったが、柔らかく形を変え、ルイズの手の中で一部が歪んだ。
ひぃとテファは呻いたが気にしない。慈愛?そんな気持ち皆無である。
なによこれ。ありえないわありえないわありえないわ
人様への冒涜よ。ていうよりこれが胸?ありえないわありえないわ

「何?これ」

ミシミシと鳴りそうなくらい強く掴んで、ルイズは氷点下の声で言った。
八つ当たりでしかないが、しかし誰も止められない。
というより盗賊達にとってその行為は本格的に、こう、いいね!と言える物だったから。

「あー、ルイズ。とりあえずおちつ」
「マーティンは黙ってて!これは何!?なんなのよ!!」
「む、胸です…」

尚更力が込められた。

「これが、これが胸ですってぇぇぇぇ!?」

フォックスが聞いた騒々しい声の正体はこれである。
ルイズは怒った。何故か?シエスタの件もある。『虚無』の件もある。
だが違う。正確にはアルビオンからそこら辺りまでで溜まったストレスが、
今ありえぬ存在を見たことにより爆発したのだ。
八つ当たりでも気にしない。おっきいにも限度がある。

「ルイズ…ごめんよ」

マーティンは魔法をかける。以前彼が話した『幻惑』の系統。
それに属する沈静化の呪文だ。
荒ぶる怒りを静め、落ち着かせるのに効果があるこの呪文は、
しかしルイズには全く効かない。怒りが強すぎたようだ。

頭の中のどこか冷静な部分で、これが何かを真剣に考える。
そう言えば砂漠にはラクダといわれる動物がいて、
それの背中には栄養をため込む貯蔵庫があると聞いた事があるわ。
そうかこれは胸ではなく「コブ」なのね。フタコブエルフとかそんな種族なんだわ。
でも柔らかいわねやわらかいコブなのね。段々冷静な部分も消えているようだった。
議題自体が冷静でないともいえる。


「みとめないわみとめられないわこれがむねだなんてありえないわちぃねえさまでもここまでいってないわよ」
「お母さんはこれより大きかったですよぉ。それが普通だって言われましたよ?」

涙目でテファは言ったが、それが尚更火を付けた。ルイズ、それといい顔で見ていた伯爵に。
マーティン以外誰も止めようとしない。美しい二人の女神と表す事が出来る二人が、
くんずほぐれつで争う。止めたいか?まさか、このままここで見るのが下々のやる事だ。
神様の争いを人が止めるなんて野暮な事してはいけない。
綺麗なものに目がない盗賊の思考なんてそんな物である。
シエスタはどうしたものかと場を静観していた。

「諸君。今の言葉は聞いたか?」

盗賊達に語りかけるようにモットは両手を上げて言った。
神聖なる儀式の中、天啓を得た教主の様に。
男達は皆首を縦に振る。皆アレ以上なのか。ならば、ならば。
そう思いながらモットの次の言葉に耳を傾ける。

「我らの命題が今天から与えられた。諸君、フネは私が用意しよう。我らは行かねばならぬ。サハラの砂漠…いや、「楽園」へ!」

その楽園が異世界でない事は間違いない。行っても自分の意志で帰る事ができる安全な楽園だ。

「ヌマンティア!自由!」
「我らの聖地へ!ガイアル・アレイタへ!」

誰かが叫んだ。皆口々に喜びの言葉を叫び出した。
一部どこかの赤装束集団の魂が乗り移ったのかもしれない。
何かを信仰するという点では同じだ。そしてこちらの方が絶対にずっと良い。

「伯爵様。頼みますから世迷い事は余所でやって下さい」

シエスタはあきれ顔で言った。ジュール・ド・モットはため息を付く。
まるで彼女の頭の出来に失望したかのように。

「シエスタ君。君は何も分かっていない。
初めての朝以来、我らが望む物は砂漠で輝いていたのだ。
理解できたであろう?サハラこそ我らが還るべき所なのだと」

いや、本当に何言ってるのか分かりません。
熱弁を止めようとしないモットの声は、勝手に耳から入ってくる。

「始祖にどうしてサハラが侵略できようか?彼はただ帰りたかったのだ。
彼が望む世界に、全能なる神が創りたもうた者達が住む「楽園」に。
自らに問うがいい!何故偉大になれなかったのか――」

コホンと咳をしたシエスタの拳が鳩尾を突き、モットはあっけなく倒れた。

「胸だけが全てじゃあないの!分かった?」

ギラっとシエスタは周りの男達を見る。盗賊達はこくこく頷いた。
ルイズは手を「胸の部分に付いたコブ」から離し、シエスタの方へ行った。

「そそそそうよね。むねだけじゃないわよね!」
「そうです。さぁ仲直りしましょうミス・ヴァリエール」

そんなこんなで握手を交えて休戦条約。後に彼女たちは名前で呼び合う仲になる。


フーケが下に降りてまた何かやらかしたのかい?
と、男共をたしなめた後になって、ようやく本題に入る事が出来た。
恐るべきは胸力。それは全ての存在を狂わせる偉大なる力なのだ。

「えーと、わ、悪かったわね」

ようやく冷静さを取り戻したルイズは、顔を真っ赤にして謝った。
彼女の顔だけをしっかりと見る。下は見ない。おそらくまた暴走してしまう。

「え、ええ。初めての経験だから驚いたけれど、いいんです。そんな事よりこれを」

取り出されたのは古ぼけたオルゴール。年代物なのか、
少々ほころびがあったり、黒ずんだりしている。

「これは、各々の王家とロマリアに伝わる四つの秘宝の一つ『始祖のオルゴール』です」

これから流れる音を耳にすると、魔法が使える様になりました。そう彼女は悲しげな笑みで言った。

「ええっ!?」

ルイズは驚き、もう一度そのオルゴールを見る。
ただ古ぼけているだけのそれが、6000年以上経って残る品だとは思えなかった。

「騙されたと思って曲を流してみて下さい。指輪を持っていますね?それを指に嵌めて」

大切に入れていた袋から水の指輪を取り出す。よく見れば彼女の指にも同じ様な物が見受けられた。

「これと風の指輪は盗ませてもらいました。元々、その、私の所の物でしたから」
「どういう意味なのかは、後で聞かせてもらってもかまわないかしら?」
「ええ。その前に、まずはこれを」

オルゴールを手渡される。指輪を嵌めたルイズは、息を吸って己を落ち着かせた。
マーティンははルイズの側で見守る事にした。

もし、私が前に言った通りなら、これらがキーとなるはず。
なら、彼女の不名誉なあだ名も今日で終わりになるだろう。
だが、この強力な力は一体何者が創りだしたのだろう?
魔法の神であるマグナスならば、我々の魔法も使える様に創るはず。
そもそも、エセリウスの加護無くして魔法を使っているということは、
エイドラではなくデイドラ由来。つまりここに住まう人々は――
いや、まさかな。マーティンはデイドラの性質を思い出した。
つまり、不死であるということを。

ルイズが何かを聞いているらしい仕草をする。
やはりマーティンには聞こえなかった。


「デイドロスなのだ!ハルケギニアはデイドロスなのだ!」

誰もいない部屋にて青いローブを纏ったウッドエルフと混血のハイエルフが叫ぶ。
本来、種族的な特徴は母親側に似るものだが、例外というのはいつの時代だってある。
己の声に恍惚としている様で、自分に酔いしれているのが良く分かる。

「この世界が、なぜ神格や不死身の存在が争う戦場でないのかわからんのだ?」

狂信的な様で一人演説を続ける。その名はマンカー・キャモラン
メエルーンズ・デイゴンの熱狂的信奉者にして、赤き装束を纏うカルト宗教団体、
「深遠の暁(Mythic Dawn)」の教祖である。また、タムリエル帝国の皇帝ユリエル7世を、
信者に暗殺させた張本人でもある。マーティンが死ぬ事になった件の、定命側の黒幕だ。
彼は、確かに古きタムリエルの英雄である、マーティンの友に敗れて死んだ。
だが、死とは必ずしも終わりではないのだ。だから彼はここにいる。

「真実は生まれて以来眼前にあり続けるというのに!デイドラこそがこの世の真の神々なのだというのに!」

何故分からんのだ!信者にすら完全には理解されなかった事を延々と叫び続ける。
場所はロマリアの一室。魔法で防音加工されているので、どれだけ声を張り上げても大丈夫だ。

「ブリミルだ!忌まわしき愚者め!この『暁の美石』を、ロル――」

コンコン、とドアをノックする音がした。まだ言い足りない事はあったのだろうが、
マンカーはとりあえず演説の練習をやめて扉を開いた。

「ああ、マンカー殿。お加減はいかがでしょうか?」

ドアの前にいたのは、やはり同じくらい熱狂的なブリミル教の教皇ヴィットーリオ。
またの名を聖エイジス三十二世だ。

「ええ、もうすっかり良くなりました。あなたに呼び出されてからというもの、
随分と良く扱っていただけ、まことに感謝しております」

何故、教皇がエルフに対しこの様に接するか?神聖なる召喚の儀式は、
すなわち神の思し召し。エルフであるといえども、この存在を我らが主から与えられた。
ならば、何故この方にその様な感情を抱けるのだろうか?
つまり簡単に言って、宗教関係者というものは天啓というものを都合良く考えるからだ。

「いえ、未だにあなた様の耳の事で眉をひそめる者がいます。
始祖が神より与えられし力によって呼び出されたのだというのに、
まことに今の信仰は地に墜ちていて。
あなた様には心苦しい生活を強いて本当に申し訳ありません」

ピクリと長身のエルフの耳が動く。彼が嫌いなのはエイドラといわれる、
彼曰く「神に成りすました何か」。そしてエイドラは先祖も含まれる。
即ち、ヴィットーリオが語る神とその代弁者であるブリミルも、
当然彼の敵となるわけだ。

「いえいえ何をおっしゃられます。こちらの読み書きを教えて頂き、
そしてさらにはこちらに流れ着いた様々な物を見せて頂けて、
これ以上何を望めと言うのですか?」

笑顔で答える。何らかの方法で通常、決して知り得ぬ事を知っているこのハイエルフは、
忍耐強い部分も当然ある。今ここで事を起こした所で何も出来まい。
あの神機があったのだ!しかも二つとも何故かある!動力源が無いのは悲しいが、
しかしタイバー・セプティムの部下は修復できたのだ。
かの腐敗した、神々を裏切りし何かを信ずる連中に出来て、私に出来ぬはずがない!


狂信者。それはいけない魔法使いなんて話で済む度合いの連中ではない。
ちょっとした勘違いで、タムリエル全土をメエルーンズ・デイゴンに献上しようとした男は、
この世界をオブリビオンと勝手に解釈した。だって彼の中ではエセリウスもオブリビオンなのだから。

ちゃんとした専門的機関で学習しなければこの様な事も起こりうる。
コールドハーバーはモラグ・バルの領域であり、
クアグマイヤーはヴァーミルナの領域だ。
そしてムーンシャドーはアズラの領域なのだ。
何故それを一々メリディア、ペライト、メファーラの物だと間違える事が出来るのか?
シロディールはアルケイン大学の生徒に対してそんな事を言ったら、
あらん限りの罵詈雑言で、祝福の言葉をもらえるだろう。

独学で学んだデイドラについての勘違いっぷりはもはや神の所業と言える。
何せ全てのデイドラ王子の領域と、そこを統べる主の名を間違って覚えているのだ。
下手をすると、その性質まで間違って覚えているのかもしれない。
デイゴンはその事について知っているが、おもしろいのであえて訂正しない。

「それは良かった。そろそろ昼食の時間です。運んできますので少々お待ち下さい」

丁寧に頭を下げて教皇は去った。
いずれ、いずれこの連中をまとめてデイゴン様へと献上しよう。
今はまだその時ではない。待たねばならん。

狂信者の体にはルーンが刻まれていない。腕にも頭にも、そして胸にも。
キスはたしかに行ったというのに。だが、マンカーは何故そうなのかを理解していた。
確かに痛みはあった。体のある部分に。

かのシャーマットと私は同じになった!だが、狂う訳にはいかぬ。私は選ばれたのだ!
この地に正しき導きを施す為に!力を使いこなせるようにならねば…

「いずれ必ずこの地に神デイゴンを!我らの楽園を築きあげるために!
AE!HERMA MORA!ALTADOON!PADOHOME!LKHAN!AE!AI!」

宗教団体が絡むとろくな事がない。神などという訳の分からぬ連中を信じるより、
大いなる二つの山脈を信奉する方がとても健全ではないだろうか。
勿論、美麗なる平らな平原を愛しても何の問題も無い。どっちが好きかは人それぞれだ。



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