あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのアトリエ-18


その夜。ヴィオラートは一人、部屋のベランダで月を眺めていた。
ギーシュたちは一階の酒場で大いに盛り上がっているらしい。
キュルケが誘いに来たが、断った。どうにも飲む気分じゃなかった。

「ヴィオラート」
振り向くと、ルイズが立っていた。
「今日の、手抜きの理由について聞きたいの。」
ルイズは真剣な眼差しでヴィオラートを見つめる。
「そうだね。」
ヴィオラートはいつもどおりの微笑で答える。
「あの人に、あんまりはっきりと手の内を見られたくないんだ。」
その答えを聞いたルイズは、哀愁を帯びた顔でヴィオラートに問う。
「ワルドを疑ってるの?」
ヴィオラートは少し迷った後、小さく、しかしはっきりとした声で答えた。
「…うん。」
その答えに、ルイズは何を思うのか。
「ワルドと結婚するわ。」
ヴィオラートをしっかりと見据えたまま、そう言い放った。


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師18~


思わず口を突いて出た言葉を、ルイズは後悔していた。
後を押して欲しかった。考えすぎだよって言って欲しかった。
あの夢。そして思い出とは違う、ワルドの不自然に積極的な態度。
自分でも、何となく不安に思っていたのだ。

ヴィオラートの言う事はいつも正しい。
正しいヴィオラートに、この不安を打ち消して欲しかったのに。

「あたしは…結婚したこともないし、あの人のことを知ってるわけでもないけど。」
やめてほしい。その後に続く言葉は決まりきっている。言われなくてもわかっている。
「最後に会ったのは何年前かな?その間のワルドさんのこと、何か知ってる?」
正しくて優しいヴィオラートの言葉が、ルイズの逃げ道を塞いでいく。
「あの人は…ルイズちゃんを見てないよ。」
哀しげな目で告げるヴィオラートの言葉に、ルイズは何も反論できない。その通りだから。

重苦しい沈黙がベランダに流れる。

「ヴィオラート…」
とにかく何か言わなければ。そう考え顔を上げたルイズの眼に、
月を背負い、腕を振り上げる巨大な影の輪郭が飛び込んでくる。
それは、岩で作られたゴーレムだった。こんなものを作るのは…
「フーケ!」
ルイズが叫び、ヴィオラートが振り返ると、
ゴーレムの肩に乗った人物が、嬉しそうな声で言った。
「感激だわ。覚えててくれたのね。」
「あなた、牢屋に入ってたんじゃあ…」
「親切な人がいてね。出してくれたのよ。世の中の為になることをしなさい、ってね!」
フーケが叫び、巨大ゴーレムが拳を振り上げて、
「危ない!」
ベランダが粉砕される直前、ヴィオラートはルイズの手をつかんで部屋の中へと転がり込む。
「合流しよう!」
ルイズの返事を待たずヴィオラートはそのまま駆け出し、空いた手でデルフリンガーをつかむと、
部屋を抜け、一階への階段を駆け下りた。

降りた先の一階も、修羅場だった。
いきなり現れた傭兵の一隊が、一回の酒場で飲んでいたワルドたちを襲ったらしい。
魔法で応戦しているが、多勢に無勢。
どうやらラ・ロシェール中の傭兵が束になってかかってきているらしく、手に負えないようだ。

キュルケたちはテーブルを盾に傭兵達に応戦していた。
メイジとの戦いに慣れた歴戦の傭兵達は、まず、魔法の届かない遠くから矢を射掛けてきた。
闇にまぎれた傭兵達に地の利があり、屋内の一行は分が悪い。
魔法を唱えようと立ち上がると、矢が雨のように飛んでくる。
ようやく合流したヴィオラートがフーケの存在を伝えようとするが…
吹きさらしからゴーレムの足が見えていたので、やめた。

「参ったね」
ワルドの言葉に、キュルケが頷く。
「精神力が切れるまで魔法を使わせて、安全になったところで突撃…ってとこかしら。」
「そ、そうなったらぼくのワルキューレが何とかする!」
ギーシュがちょっと青ざめながら言った。しかし、タバサがあくまでも淡々と宣告する。
「無理」
「やってみなくちゃわからない!」
「そんなことは無理」
重ねて宣告する。
その知ったような顔にか、あるいは小さな女の子に軽く見られたという事実に対してか。
「僕はグラモン元帥の息子だぞ!卑しき傭兵ごときに遅れは取らない!」
ギーシュが激昂し、立ち上がって呪文を唱えようとした。
それをワルドが、シャツのすそを引っ張って倒し、押さえつける。
「いいか諸君」
ワルドは低い声で話し始める。一行は黙ってワルドの話を聞いた。
「このような任務は、半数が目的地にたどりつければ成功とされる。」
ワルドがそう言うと、こんなときも優雅に本を広げていたタバサが本を閉じて、ワルドの方を向く。
自分と、ギーシュと、キュルケを杖で指して「囮」とだけ言う。
それからタバサは、ワルドとルイズとヴィオラートを指して「桟橋へ」と呟いた。
「時間は?」ワルドがタバサに尋ねた。
「今すぐ」とタバサが答える。
「聞いての通りだ。裏口に回るぞ。」
「え?え?」
ルイズは驚いた声を上げた。

「彼女達が敵を引きつける。囮だ。その隙に僕らは桟橋に向かう。以上だ。」
「で、でも…」
ルイズはキュルケたちを見た。
キュルケが魅力的な赤髪をかきあげ、つまらなそうに言った。
「ま、仕方ないわね。あたし達は何も知らないんだし、あんたが行くしかないのよ。」
ギーシュは薔薇の造花、のように見える杖を確かめ始めた。
「うむむ、ここで死ぬのかな。死なないのかな。死ぬ、死なない、死ぬ、死なない…」
タバサはルイズに向かって頷いた。
「行って」
「でも…」
ワルドとヴィオラートの双方がこっちにいるのは、バランスに欠けているのではないか?
ルイズはそう考え、自分の言葉で意見を表明しようとするが…
「それじゃ、あたしの道具をいくつか渡しておくね。」
ヴィオラートは先手を打ったかのように、何かの道具を用意していた。
「キュルケさんにはこれ。一見効果なさそうに見えても叩き続けてね。」
そう言って、キュルケに太鼓のようなものを手渡す。
「タバサちゃんにはこれ。」
タバサに手渡したのは三叉音叉。その威力は折り紙つきである。
「ギーシュくんは…魔法のパン。怪我した人に食べさせてあげてね。」
日持ちしそうなデニッシュをむっつ、籠ごと受け取るギーシュ。

ルイズの考えは、宙に浮いた。ヴィオラートはちゃんと考えていたのだ。
「さあ、早く行こう。遅くなればこちらが不利だ。」
ワルドがルイズを促す。全くその通りだった。

ルイズは、何もしなくて良かった。

酒場から厨房に出て、ワルドたちが勝手口にたどりつくと、
酒場の方から規則正しい太鼓の音が聞こえてきた。
「始まったようだな。」
ワルドはぴたりとドアに身を寄せ、向こうの様子を探る。
「誰もいないようだ。」
ドアを開け、三人は夜のラ・ロシェールの街へと躍り出た。
「桟橋はこっちだ。」
ワルドが先頭を行く。ルイズが続く。ヴィオラートがしんがりを受け持った。
月が照らす中、三人の影法師が遠く、低く伸びた。


新着情報

取得中です。