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ゼロと波動 第7話




夜、学院の中庭で中空に拳を放ち続けるリュウ。
リュウの放つ拳が風を切る音だけが延々と続く。

近くの木に立てかけられたまま黙ってそれを見ていたデルフリンガーが痺れを切らして口を開く。
「なあ、相棒」
「なんだ?」
「おめえ、俺っちを使わねーの?」
寂しげに問いかけるデルフリンガー。
リュウは先ほどから蹴るだの殴るだのを延々と繰り返すだけで、一向にデルフリンガーを握るそぶりがないのだ。

「使わん」
短く一言答えるリュウ。
「え・・・?いや、あの・・・?もしもし??」
顎があれば地面まで落ちたであろうほどのショックを受けるデルフリンガー。

「・・・おめえ、なんで俺っちを買ったの?」
「アンタが買えと言ったからだな」
デルフリンガーの問いかけに悪戯っぽく笑いながら答えると、黙々と見えない相手を殴り続けるリュウ。

「いや、使わないんなら買うなよ・・・っていうかさ、せっかく買ったんだから普通は使おうとしねー?」
「俺は剣なんて握ったこともないからな。自分の拳が一番だ」
「相棒は”使い手”なんだからよ、使い方なんて知らなくても俺っちを構えさえすれば、ちゃあんと使えるんだよ」
「じゃあ、そのときはよろしく頼む」
「はぁ・・・俺っちが人間なら、溜息でもつきたいところだあね」

暖簾に腕押し。
まったく自分を使おうとしないリュウにデルフリンガーは諦めて再び黙り込んだ。



「なあ、相棒」
再びリュウに話しかける。

「なんだ?」
「おめえ、いつまでそうやってんの?」

結構な時間が経つというのにリュウは一向に止める気配がない。
今回の相棒はどういうスタミナをしているんだろうかと考えながら尋ねる。

「ルイズの部屋の明かりが消えるまでだ」
「なんで?」
「ルイズはおそらく今勉強している。そばにいられたんでは気が散るだろうからな」
「主人思いな使い魔だあね」
「そうでもないさ。俺は好きでやってるだけだからな。それに・・・」
「それに?」
「俺を見て稽古している者もいるようだしな。今止めると悪いだろ?」
「あれ?おめえも気づいてたの?」
「まあな」
小さく笑みを浮かべながら、リュウは黙々と拳を振り続けた。


「あれ?わたし、もしかして気づかれちゃってる??」
建物の陰からこっそりリュウを観察し、見よう見まねで自分も同じように手足を振り回していた少女は苦笑いを浮かべるのだった。





一方ルイズは魔法学の勉強が一区切りついたところで、本を閉じる。
「リュウってばいつもこんな夜中にどこに行ってるのかしら・・・」

前から気になっていたが、夜、ルイズがそろそろ勉強を始めようかという時間になると決まってリュウは
「散歩してくる」と言って部屋を出て行ってしまう。
どうやらルイズが寝た後に部屋には戻ってきているようだし、朝にはちゃんと起こしてくれるので問題はないのだが、ルイズ的には気になって仕方がない。
しばし考えた後、頭に浮かんだのはリュウにやたら懐いているあの巨乳のメイドだった。

「まままままさかあのメイドとっ!?」
ルイズの頭の中にメイドの胸に顔を埋めるリュウの姿が浮かぶ。

「ブチ殺すっ!!」
蹴破るように扉を開け、部屋を飛び出すルイズだった。



飛び出したはいいが、どこを探していいものか見当もつかないルイズはとりあえずそこらじゅうを走り回っていた。
アルヴィーズの食堂、厨房、馬小屋、とにかく走りまわった。

「ぜぇぜぇ・・・どこに・・・ぜぇ・・・いるのよ・・・ぜぇ・・・まったく・・・ぜぇ・・・」
フライなどの魔法が使えないので自分の脚で走るしかないルイズは息も絶え絶えに、それでも走るのを止めようとしない。

そして、ブリミルはそんな彼女を見捨てはしなかった。
やがて中庭で何やらやっているリュウをめでたく発見。
どうやら一人でいるようだ。

とりあえず、自分の頭の中にあった事態にはなっていなかったので一安心し、走るのを止めて呼吸を整えてからリュウに近づく。

「あんた、こんなところで何してんの?」
「ん?稽古してるんだが」
「夜になると毎日どこか行くけど、いつもこんな所でやってるの?」
「ああ、昼間やると目立つからな」

不思議そうにリュウを見つめるルイズ。
「そんなに強いのに練習なんて必要なの?あんたより強い相手なんてそうそういないと思うけど・・・」
「俺より強いヤツなんていくらでもいるさ」
謙遜した風でもなく、ごく当たり前のように答えるリュウ。

「それに、約束もあるしな・・・」
「約束?」
「ああ、俺のライバルたちだ。サボったりしていたのでは彼らに申し訳がたたない」
リュウは拳を握ると、二つの月を見上げて続けた。

「それに、彼らは強い。俺が元の世界に戻って、次に彼らにまみえたときにがっかりさせない為にも、な」
握った拳に力を込める。 

「元の・・・世界・・・?」
元の世界とはどういう意味だろう?思わず聞き返すルイズ。
「ああ、どうやら俺はこことは違う世界から来たようだ。俺がいた場所では、月はひとつしかない」

最初、リュウが自分をからかっているのかと思った。
だが、リュウの目は真剣でまっすぐを見ている。
別の世界があるなどという話は信じ難いし、まるで御伽噺だ。
だが、リュウが言うのならきっとそうなのだろう。
不思議とルイズにはそう思える。

「・・・戻っちゃうの・・・?」
「ああ、ライバルたちが待っているからな」
「そう・・・」

俯いて黙り込んでしまったルイズだったが、しばらくしてポツリと呟いた。
「わたし、また一人ぼっちになっちゃうのね・・・」

あからさまに落ち込んでしまったルイズの頭に無骨で大きな手を置く。
「戻ると言っても、別に急いでいるワケでもないしな。もうしばらくはいるつもりだ」

そして、キュルケがルイズに向ける慈愛に満ちた眼差しを思い出しながら優しく語り掛けるリュウ。
「それに、君は一人なんかじゃない」


ルイズは目に涙を浮かべたまましばらく黙ってリュウを見つめていたが、やがて横を向くと涙を拭い、近くの小石に向けて呪文を唱え始めた。
「あんたでも練習するんだもんね。わたしなんて、その何倍もやらなきゃ・・・」

その日、明け方近くまで爆発は続いた。



ルイズが眠い目をこすりながら授業を受けている間、中庭で座禅を組んでいたリュウに後ろから声がかかる。
「貴方がミスタ・リュウでよろしいかしら?」
緑色の美しい長髪に眼鏡をかけた、スラリと背の高い理知的な美女が事務的に告げた。

美女はリュウが本人であることを確認すると、そのまま続ける。
「私はここの学院長の秘書をしております、ロングビルと申します。学院長がお呼びですので、ご一緒にいらしていただけませんでしょうか」

一瞬、ほんの一瞬だが眼鏡の奥から刃物のような鋭さを持った視線がリュウに向けられる。
相手の次の行動を予測する手段として視線というものは重要なファクターであり、女が向けた視線にリュウが気づかないはずがなかった。
だがリュウは気づかなかったフリをすると「わかった」と言って座禅をやめ、
後ろの木に立てかけていたデルフリンガーを掴むとロングビルの後に着いていった。

――秘書・・・か・・・それにしては先ほどの視線は鋭すぎるな。注意しておくか――

――青銅のゴーレムを素手で殴り壊す男・・・ね・・・どの程度のものか探っとく必要があるわね・・・――

二人の思惑が交錯する。

「ミスタ・リュウはとてもお強いと伺いましたわ」
リュウの方を向くと笑顔で話しかける。

「そんなことはないさ」
こちらも笑顔で返すリュウ。

「私は見ることができなかったのですけど、素手でゴーレムを破壊したと聞きましたわ」
はっきり言って、ロングビル――その正体は巷で噂の”土くれのフーケ”に他ならない――には信じられなかった。

青銅製のゴーレムを素手で破壊するなど人間業ではない。
どうせ噂話にありがちな、尾ひれがついて話が大きくなっているだけだろうとは思ったが仕事を間近に控えているので不確定要素は極力なくしておきたい。
そのためにはこの風変わりな男の能力を見極めておく必要がある。

「たまたま上手くいっただけさ」
こともなげに答えるリュウ。

『たまたま上手くいった・・・?』
裏の世界を一人で生き残ってきたフーケである。人を見る目には自信がある。
この男は自分を大きく見せたり、誇張するようなことをいうような男ではないと断言できる。

――ってことは、信じられないけど素手で破壊したというのは本当ということか・・・やっかいね・・・。
杖を持っていないところを見るとメイジではないみたいだし、まともにやりあえばトライアング・ルメイジのわたしが負けるとは思わないけど、
素手でゴーレムを破壊できる腕力がどう絡んでくるかは未知数・・・か・・・
なら、”この男がいない”というのも仕事を決行するための要素の一つに入れておいたほうが良いわね――

表面上は他愛もない会話をしながら案内を続け、やがて学院長室の前へと辿り着いた。


「オールド・オスマン。ミスタ・リュウをお連れしました」
「よろしい、入りなさい」
決して大きくない、しかし威厳のある声が聞こえる。

「失礼します」
ロングビルが扉を開けると、中にはこの部屋の主であるオールド・オスマンと、その隣にコルベールが立っていた。

「おお、ミス・ロングビルではありませんか・・・」
コルベールの顔が頭まで紅くなる。

――そう、この男は女に抵抗力がない。
おかげであたしが少し優しくしてやっただけで宝物庫とお宝の情報をペラペラ喋ってくれた――
コルベールと目が合ったロングビルが微笑むと、コルベールはさらに頭を赤く染めた。

「さて、早速で悪いんじゃがミス・ロングビルは少し席を外してくれんかの?」
あからさまに残念な表情を浮かべるコルベールを完全無視するオスマン。

「かしこまりました。それでは失礼します」
ロングビルは恭しく頭を下げると、退出際にコルベールに向けてウィンクをする。
コルベールの頭はもはや赤を通り越して赤黒くなっていた。

「・・・君、そのうち女で痛い目にあうんじゃろうなぁ」
酒場でお尻を触っても怒らなかったという理由でロングビルを雇った自分のことは完全に棚にあげ、
赤黒くなったコルベールをジト目で見るオスマン。


「さて、ちょっと失敬するよ。ミス・ロングビルがいると健康に悪いとかなんとか五月蝿いからのう」
オスマンは改めてリュウに向き直ると、リュウに席を勧め、自分も席について引き出しから水キセルを取り出し、ふかし始めた。

「儂がこの学院の学院長を務めておる、オスマンじゃ。よろしくの。さて・・・リュウ殿と言ったかの。わざわざ来てもらって悪いの」
飄々とした顔と言葉だが、その目は鋭くリュウを射抜いている。
隣に控えるコルベールも、先ほどまでとは別人のような真剣な顔をしていた。



オスマンとコルベールはある決意をしていた。

――もし彼が学院に害なす存在だとすれば、全力で阻止しなければならい――

彼が伝説の使い魔であるかどうかはともかく、決闘の際に一瞬だけ放った殺気の禍々しさは只事ではなかった。
今でこそ教師をしているが、元軍属で”炎蛇”と呼ばれ恐れられていたコルベールにはその殺気がいかに常軌を逸したものであるかが判る。
それと同時に彼の戦闘能力が楽観的に見ても自分と同等か、あるいはそれ以上であることも・・・
そしてそれは、オスマンにしても同様だった。

”炎蛇”コルベールと、200年とも300年とも言われる年月を生きてきた最高峰のメイジであるオスマン。
場合によっては学院の最高戦力であるこの二人で、刺し違えてでも止めなければならない。
でなければ魔法学院が地獄になる。


「突然で悪いんじゃが、君にいくつか質問がある。良いかね?」
唐突に切り出すオスマン。視線が一層鋭さを増す。

「どうぞ。俺に判ることならお答えします。それに、俺もいくつか聞きたいことがあります」
オスマンの刺すような視線を正面から受けて答えるリュウ。

「かまわんよ、とりあえず儂から質問させていただこうかの。単刀直入に訊こう。君は何者じゃね?」
張り詰める緊張の中、オスマンが口を開く。

「ここの生徒の・・・ルイズ・フランソワーズの使い魔ということらしいです。実感はありませんが。」
自分よりもそっちの方が詳しいんじゃないのか?と戸惑いながら答えるリュウ。

「ああ、質問の仕方が悪かったのぅ。すまなんだ。では、こう訊こう。
儂とここにおるコルベール君は先日の君と、うちの馬鹿生徒との決闘騒ぎを観とった。
      • いや、決闘に関してどうこう言うつもりはないんじゃ。怪我人もおらんしの。
ただ、君はドットとはいえメイジにアッサリ勝ってしもうた。
その強さにも驚きだったんじゃが、最後に使った・・・あれは術か何かかの?あれがなんじゃったのかを知りたいんじゃ。
すまんが、儂とコルベール君はあの術に非常な危機感を感じておる」

リュウには二人が”殺意の波動”を警戒しているということがわかった。
なるほど、確かに”殺意の波動”は死んだ者を尚殺す忌わしき力。
二人から、いざとなったら自らの命を賭してでも自分を倒そうと、学院を守ろうという覚悟を感じ取った。
彼らの覚悟にはしっかり応えなければならない。
ルイズからは『異世界から来たなんて言ったら頭がおかしくなったと思われるから、東方から来たってことにしときなさい』と言い含められていたが、この二人には全てを話すことにした。

「信じてもらえるかどうかはわかりませんが・・・俺はこことは違う世界から来たようです」
リュウは全てを語った。

ジャングルで鏡のようなものを見つけ、手を触れるとこちらの世界にきていたこと
自分が暗殺拳を源流とした格闘技を使うこと、そしてその修練を積めばこの程度の戦闘力は身につくこと。
修行の過程で”殺意の波動”が自分の中に存在することを知ってしまったこと。
”殺意の波動”とは何か。
どうにかある程度までは”殺意の波動”を制御できるようになったが、基本的にはそれを使うつもりはないこと。
ギーシュを相手にしたときは「見せるべきだ」と判断した上で、敢えて”殺意の波動”を使ったこと・・・

「以上が、俺にわかる全てです」
しばらくの間、沈黙が部屋を支配したが、やがてオスマンが口を開いた。

「違う世界から来たとは驚きじゃな。まったく、驚きじゃ。じゃが、君が嘘を言っているようには思えん。
それに違う世界というのにも驚きじゃが、その格闘技とやらを使えば平民でも容易くメイジに勝てるようになるというのも驚きじゃ。まったく驚き尽くしじゃのう」
顎鬚をしごきながら呟くオスマン。

「ついでにもう一つ教えてくれんかの?その格闘技というのは、誰でも、たとえば、この学院の使用人たちでも修練させ積めば使えるようになるもんかの?」
「誰でもとは言いませんが、ある程度の素質さえあれば後は努力次第だと思います」
「これは・・・ボンクラ貴族どもの時代が終わるのも時間の問題かの・・・」

もっとも、現実はちょっとやそっとの素質ではリュウほどの領域に達しようはずもないのだが
そこまでは解らないオスマンはざまあみろといった風で再び顎鬚をしごく。
既に彼からは刺すような視線は消えていた。


「こちらの質問に真摯に答えてくれたことに感謝するぞい。
あまりに禍々しい殺気を見てしまったとはいえ、儂は君という人間を誤解していたようじゃ。
儂も長いこと生きとるしの、人を見る目はあるつもりなんじゃよ。短い時間じゃが話していて判った。君は信用に足る人物じゃ。
ただ、”サツイノハドウ”は儂らメイジから見てもあまりに危険なものなんじゃと確信しておる。そこだけは解っていただきたい」

「肝に銘じておきます」
長年”殺意の波動”と戦ってきたリュウは重々しく頷いた。

「そうじゃな、儂などより君の方がよほど”サツイノハドウ”の危険性を熟知しているはずじゃな。
余計なことを言ってしまったの。今の言葉は気にせんでくれ。
さて、儂の方の話は終わりじゃ。君も儂に聞きたいことがあるんじゃろ?」

先ほどまでのような命を賭した真剣さはなくなったものの、相変わらず真剣な表情のままのオスマン。


「はい、まず、さっきも言った通り、俺は召喚によって別の世界から来ました。
召喚で来た以上は、同じことをすれば戻れるのではないかと思ったのですが、ルイズは一度召喚したものを戻す方法はないと言っていました。
貴方がたから見ても、やはり戻る方法はないのでしょうか?」

「そうじゃのう・・・そういった話は聞いたことがないのう・・・
普通、使い魔の契約というのは一生もんじゃからの・・・じゃが、簡単ではないじゃろうが不可能かどうかは判らん。
時間はかかるじゃろうが、調べておこう」

「ありがとうございます。もう一つは、単なる俺の興味本位なんですが・・・」

「大丈夫じゃよ。儂は極力君の力になってやりたい。君は誠実じゃからな。
誠意には誠意で応えねばならんと、儂は思うとるからの」

「ありがとうございます。では尋ねます。
使い魔は召喚した者の属性によって決まると聞きました。火のメイジなら火に連なるもの、風のメイジなら風に連なるもの。
では、ルイズに召喚された俺は何なのでしょう?
自分にはそのようなものはありません。強いて言うなら”殺意の波動”でしょうが、それはどれにも属さないと思うのです」
リュウの好奇心からの質問を、オスマンとコルベールは思った以上に真剣な顔で聞いていた。

「今から言うことは、まだ確たる証拠がないことじゃ。じゃから、話半分程度に聞いてほしい」
コルベールの「いいのですか」という声を手で制し言葉を続ける。

「魔法には4つの系統がある。それはすなわち『火』『水』『風』『地』じゃ。
じゃが、伝説の中ではもう一つ、”失われた系統”があるとされとる。それが『虚無』じゃ。
文献などもほとんど残っとらんからの、『虚無』がどういった系統だったのかは謎じゃ。ただ・・・」

そこで一度区切ると、リュウに左手の篭手を外すように促す。
篭手を外したリュウの左手の甲に刻まれたルーンがあらわれる。


「『虚無』の担い手が使役したと言われておる伝説の使い魔に、”あらゆる武器を使いこなす”『ガンダールヴ』というのがおってな」
オスマンがリュウの左手を見やる。

「その『ガンダールヴ』の左手に刻まれたルーンと同じものが、君の左手にも刻まれとるんじゃ・・・」
言われ、自分の左手を見るリュウ。
『相棒は”使い手”なんだからよ、使い方なんて知らなくても俺っちを構えさえすれば、ちゃあんと使えるんだよ』
デルフリンガーの言葉を思い出す。

「で、じゃ。君を召喚したミス・ヴァリエールは今のところ、魔法がまったく使えん。じゃが、彼女がもし『虚無』の系統なら、それも納得できる。
もっとも、それにしても基礎であるコモン・マジックまで使えんのは説明がつかんがの。
まあ、つまるところ、ガンダールヴに虚無。辻褄は合っとるんじゃな、これが」

オスマンは再び水キセルを取り出すと一服してから続けた。

「ただ、君がガンダールヴの力を使えるのかどうかが判らんし、ミス・ヴァリエールにしても虚無魔法を使ったことが一度もない。
もっとも、教えてもらってもないものを使えるワケがないんじゃがな。じゃが教えようにも虚無の使い手なんぞおらんのだから、それもできん。
辻褄は合っても証明ができんのじゃ」

そして大きく溜息をついてから
「それにこの話自体、はっきり言って御伽噺のような話なのでのぅ。儂らからして信じられんというのが正直なところじゃ。こんな程度のことしか教えてやれんですまんの」
オスマンが申し訳なさそうに告げる。

「いえ、十分です。ありがとうございました。それでは俺は、これで」
礼をして学院長室を出て行こうとしたリュウにコルベールが声をかける。
「そこまでご一緒してもいいですかな?」



廊下を歩きながら語るコルベール。
「オールド・オスマンは貴方をとても高く評価なさっているようですな」
「俺はそんな大層なもんじゃ・・・」
否定しようとするリュウを遮って続けるコルベール。

「私もオールド・オスマンと同じ意見です。貴方からは誠実さと、思慮の深さを感じるのです」
そこで一度区切ると、改めて話しだす。

「ミス・ヴァリエールはこの学院にやってきて以来、とても熱心に勉強しています。図書館にも足げく通っていますし、虚無の曜日には一日中魔法の練習をしていることもざらです。
おそらく、教師の私たちも含めてこの学院で一番勤勉でしょうな。だというのに、どういうわけか魔法がまったく使えません。
私としては、彼女には魔法が使えるようになるだけでなく、偉大なメイジになっていただきたいのです。努力することは決して無駄ではないと、私は信じていますから。」
コルベールのルイズに対する、教師としての愛情がリュウにも伝わる。

「ミスタ・リュウが本当にガンダールヴなのかどうかは判りません。
ですが、ミス・ヴァリエールの使い魔としてミスタ・リュウが召喚されたのはブリミルの思し召しだと、私は思います。
ミス・ヴァリエールのこと、よろしく頼みますぞ」

リュウは力強く頷いた。







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