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毒の爪の使い魔-17b


ジャンガは何の感情も表さないまま、タバサを見つめる。
「どうしたってんだ?…別に今更、驚くような事じゃねェだろうが」
そう言って、自嘲気味に笑う。
「他人を蔑み、傷つけ、嘲り笑う俺だゼ?一人や二人殺していたところで、驚くような事じゃねェだろうが」
言われずとも解っている。彼が”善人”ではない…”悪党”であるのは承知の上だ。
だいたい、自分の覚悟を”バカらしい”、”無駄”と言ったのだ。これはどうあっても許せない…。
――なのに、何故かジャンガが誰かを殺していたと知った時、胸が痛んだ。
注意しなければ気付かないほど、指の先を針で軽く刺した程度の痛みだったが…。
ジャンガは黙ったままのタバサの碧眼を見つめながら言葉を続ける。
「まァ、そういう訳だ…。俺はそのガキの銃で胸を撃たれ、月のクレバス…地面の裂け目に落ちた。
当然その時、死んだと思ったが…こんな所に召喚されて生き残るたァ…夢にも思わなかったゼ」
そこで一旦言葉を切る。
すると、タバサが口を開いた。
「…それで?」
「ン?」
「私が”ガキ”だから復讐を果たせない…。貴方の言ったその事が、今のその話とどういう風に関係するの?」
タバサの言葉にジャンガは、ふぅっと息を吐く。
「…そのガキは一人で戦っていた。お前も今は一人で戦っている。…一人で戦っていた、あのガキは俺には勝てなかった。
お前も、一人で戦っているから俺にすら勝てない。…解るな?」
タバサは静かに頷く。
ジャンガは遠くを見るように虚空を見つめ、目を細めた。
「…あのガキは途中から仲間を得た」
「仲間?」
「親友…相棒…まァ、言い方は色々在るがな…。ともかく、そのガキは仲間を得たんだ…解り合える仲間をよ。
何があったのかは知らねェさ…、だが…あのガキは仲間を得て、強くなりやがった」
「…仲間…強くなる」
「そして俺は負けた…、完膚なきまでに…、ボロクソに…」
そこでジャンガは目を閉じる。
悔しさに歯を噛み締めるのかと思いきや…、そんな様子は微塵も見えない。
ただ目を閉じ、静かに立ち尽くすのみ。
やがて、ジャンガは目を開き、タバサを見つめる。
「解るか?…別に俺も、今更解りたいとも思わないが……ようはそういう事だ。
一人で何もかも背負って、鉄砲玉のように飛び続ける奴は、誰にも勝てず…、何も成し遂げられない…。
ましてや……力が無く、意志も弱い奴がな…。そして、あと一つ…お前とあのガキの共通点がある」
「……何?」
「…親の思いを踏み躙った事だ」
「…ッ!?」
「詳しい事情は知らねェさ…。だが、少なくともそいつが自分の無念を…、
愛する子供に晴らしてほしいと考えるかどうか…、それ位は解るつもりだ。
…お前の親は、お前に復讐を望んだか?」

――何も言えなかった…、ただの一言も口に出来なかった。

タバサの碧眼が僅かに揺らめくのをジャンガは認めた。
そして、彼女の胸倉を掴み挙げる爪を放す。華奢な身体が力無く床に転がる。
床に落ちた際の痛みに顔を僅かに顰めつつも、タバサは顔を上げる。



そして…、タバサはその碧眼を大きく見開く事になる。…余りにも信じられない物を見たからだ。

――目の前の亜人は……ジャンガは泣いていた。



「何で……テメェは、テメェのような奴は…復讐を考えるんだよ?命をわざわざ捨てようとするんだよ?
大体…復讐を果たして何を得られる?満足感、充実感、達成感、…それがあるのか?それとも別の何かを得られるのかよ?
――何も残らねェし…得られねェ…。残るのは空しさと空虚な心だけだ…。
そんな結果しか待ってないのは……テメェの頭なら解ってるんじゃねェのか?」
静かに涙を流しジャンガは語る。

「それによ……テメェには、まだ親が……母ちゃんがいるじゃねェか」

その言葉に、ついに堪えきれず、タバサも目から涙を溢れさせる。
「何で傍に居てやろうとしなかったんだ?何で復讐に…、母ちゃんを一人残す事になるかもしんねェ道を選んだ?」
タバサは何も言えない、何も考えられない。ただただ、涙を流すだけだった。
「くだらねェ…、くだらねェ…、本当にくだらねェ…。テメェはバカだ、救いようの無いバカだ!俺以上にな!!
…もしかすれば、元に戻るかもしれない親が居るだけ…テメェは幸せなんじゃないのかよ!!?」

その時…、先程の『ウィンディ・アイシクル』が突き刺さった扉が開き、キュルケが部屋に飛び込んできた。

「タバサ、どうしたの!?この扉の有様は――ッ、貴方は!!?」
床に座り込むタバサ、その目の前に立ち尽くすジャンガの姿を認めるや、キュルケは叫び、杖を向ける。
ジャンガは顔を袖で覆い隠し、開け放たれた窓から外へと飛び出していった。
それをタバサは呆然と見送るしかなかった。そんな彼女をキュルケが抱きすくめる。
「タバサ、怪我は無い?…泣いたりしてどうしたの?あいつに何かされたのね!?
何か大声や音が聞こえてきたから、気になって来たんだけれど――どうしたの、タバサ?」
キュルケは様子のおかしい親友を見る。
タバサは、キュルケの身体に顔を押し付け、嗚咽を漏らしていた。

――薄々…考えていた。復讐の道を選んだ事の愚かさ、空しさを。
それを…今、ハッキリと言われた……、認めようとしなかった事を…ハッキリと自覚させられた。

味わった事の無い無力感と悲しみに、彼女の心を覆う氷は融け、涙として流れていく。

そんな、泣き続ける友人を…キュルケは優しく抱きしめた。



森の木が一斉に切り倒され、岩が切り裂かれ、地面が踏み砕かれる。
鳥が、獣が、悲鳴を上げて逃げ惑う。
そんな周囲の騒ぎには目もくれず、ジャンガは息を荒くする。
「ガアアアアアァァァァァーーー!!!」
獣のような雄たけびを上げる。
そして、また暴れる。
雄たけびを上げる。
暴れる。
――それの繰り返しだった。
何をしているのか……自分でも理解できない。ただ、暴れていなければ気がすまない。
そんな彼の左袖からはルーンの毒々しい紫色の輝きが漏れていた。

「ハァ…、ハァ…、ハァ…」
時間にして約10分、ジャンガは暴れ続けた。
その結果、森は半径一リーグに渡って、まるで戦場の跡地であるかのような有様になっていた。
暫く肩で息をしていたが、やがて唾を吐き捨て、歩き出す。
歩きながらジャンガは思った…。
(結局……俺の関わる奴は皆、不幸の固まりか…。俺がそういう奴と会いやすいのか…それとも俺が原因で出てくるのか…。
どっちにしろ……いい加減ウンザリだゼ…)
「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソッ!」
「お、おい…」
背中に背負ったデルフリンガーが恐る恐るといった感じで声を掛ける。
「相棒…大丈――」
「ウルセェ…」
地獄の底から響き渡るかのような、低い声で威圧する。
一瞬で全身に震えがきたデルフリンガーは慌てて鞘の中に引っ込む。聞きたい事があったのによ…、と言い残して。

「クソッ…。くだらねェし…、つまらねェし…、アアアアアアァァァァァァーーーーー!!!クソがッ!!」



そんな風に荒れ狂うジャンガを、ジョーカーは空の上から見下ろしていた。
「ジャンガちゃん……荒れてますネ~?まァ…色々とあるようですし、疲れているだけでしょう」
ジョーカーはそんな独り言を呟きながら、ベッドの上に寝そべるように、空の上で仰向けの姿勢になる。
「それにしても、最近のジャンガちゃんは少々らしくないような…?――環境の所為でしょうか?」
考えてみれば、”向こう”では魔法学院のような賑やかな場所に彼は身を置いてはいなかった。
自分と出会う以前も、陽の当たらない場所で生活していたようだし…。
今の状況は彼にとっては悪影響以外の何物でもないだろう。
何とかしなければ……。
「むむむむむ…」
暫し考え込み…、ポンッと手を打つ。
「そうですね……少々予定は早いですが、ジャンガちゃんのリハビリにはうってつけでしょう。
のほほ、そうとなれば善は急げ。…ワタクシ善人ではありませんがネ~♪」



――その後、学院に戻ったジャンガと屋敷のタバサの二人に手紙が届けられた。
前者は招待状、後者は指令書の形で…。




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