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ゼロと波動 第6話




「おお!”我らの拳”よ!よく来た!さあ、じゃんじゃん食ってくれ!」
厨房に入ったリュウを、マルトーを筆頭に皆が迎える。
特にマルトーなど超のつく上機嫌だ。

「リュウさん!」

ドオオォンッ!!
奥にいたシエスタもリュウに気づき、満面の笑みを浮かべながら飛びついてきた。

「おおっ!シエスタのハグを受け止めたぞ!」
「俺たちなら数メイルは吹っ飛ぶのにな!」
「流石は”我らの拳”だ!」

ルイズは一緒にアルヴィーズの食堂で食べるように薦めたのだが、
堅苦しい場所が苦手なリュウはそれをやんわり断り、厨房で食べることにした。
それで昼食をとりに厨房に来たところ、この大歓迎である。

「何だこの騒ぎは?」
ギシギシとリュウの胴を締め上げながら顔と胸を擦り付けてくるシエスタを困惑しつつ引き剥がして席に着く。
リュウの前に次々と運び込まれる、明らかに賄いとは思えない豪華な料理たち。

「なあに、祝勝会みたいなもんさ!まさかお前さん、貴族に勝っちまうとはな!」
「俺も見てたぞー!なんて強さだ!惚れ惚れしたぜ!!」
「よっ!我ら平民の希望!!」
貴族嫌いで有名なマルトーを中心に次々と囃し立てる。

「よしてくれ・・・」
ああだこうだと奉りたてられて辟易するリュウ。
こんなことならルイズと一緒に食堂で食べた方がマシだったと後悔するがもう遅い。

「シエスタに聞いたぜ、”ブドー”ってヤツを使ったんだろ?」
「まあ、そんなところだ」
一刻も早く開放してもらえることを祈りながら答えるリュウ。

「シエスタの爺さんも”ブドー”ってのをやってたらしいが、”ブドー”ってのはすげえんだな。あっさりメイジに勝っちまうんだもんなぁ!」
「そんなことはない、彼は強敵だった」
「おお!やはり達人は言うことが違う!達人は謙虚だ!あれだけ実力の違いを見せていながら決して偉そうにしない!」
「いや、別にそういうことでは・・・」
これはもうダメだと諦めるリュウ。

散々騒ぎ立てたあと、マルトーが急に真面目な顔になった。
「なんでも馬鹿貴族からシエスタを庇ってくれたんだってな。俺からも礼を言うぜ」
と言って頭を下げる。
隣でシエスタもそれに倣う。

「よしてくれ。そんなんじゃないんだ。俺はおかしいと思ったからそう言っただけだ」
「やっぱり達人は言うことが違う!!」
再び大喝采。

「ルイズ・・・助けてくれ・・・」
リュウの魂の呟きは喧騒に掻き消され誰の耳にも届かなかった。





ようやく開放されたリュウは中庭で一人立っていた。
足を肩幅に、肩と平行に開いて爪先を若干内側に向け、膝を軽く曲げて左の拳を前に、右の拳を腰に据える。
「ふんっ!」
パアンッと言う風を切り裂く鋭い音と共に凄まじい速度で突き出される拳。
一瞬、拳の先の空気が揺らぐ。
あまりに速いため、拳の先の気圧が跳ね上がって蜃気楼のような現象がおこる。

そこに近づく一人の少女。
碧い髪に碧い瞳でルイズよりも一回りほど小さい身体に、自分の身の丈ほどもある大きな杖を持っている。
確かキュルケと一緒にいた少女だ。

「君は・・・」
「タバサ・・・」
「そうか、で、どうしたんだ?タバサ」
「聞きたいことがある・・・」

年齢に似つかわしくない、全てを見透かすような瞳でリュウを見つめるタバサ。
顔には一切の表情がない。この齢にして、きっと幾つもの辛い思いや修羅場を経験したのであろう。
そしてまた、この少女が強さを求めるあまり、自ら修羅の道に進もうとしていることをもリュウは感じ取っていた。

「なんだい?」
「あなたは決闘のとき手加減はしないと言った」
「ああ、手加減はしなかった」
「でもあなたはまったく本気じゃなかった。なぜ?」
表情の無い顔のまま問うタバサ。

「本気じゃなかったワケじゃない。あれは俺の求める答えなんだ」
「答え?」
タバサが繰り返す。

―― 一撃必殺 風の拳 ――
この少女には伝えてやりたい。
そう思い、リュウは静かに語り始めた。

「俺は”真の格闘家”を目指して生きてきた。
そして、その道の中で俺の前に立ちはだかったのは”拳を極めし者”と呼ばれる男だった」
黙って耳を傾けるタバサ。

「彼は無類の強さで全てを破壊しつくした。”殺意の波動”と共に。
ひとたび拳を振るえば全てが終わる。正に”一撃必殺”を具現した男だ。
その強さといい、生き様といい、確かに彼は”真の格闘家”だった」

「サツイノ・・・ハドウ・・・」
タバサが尋ねる。

「ああ、彼や・・・俺の中にもいる。あまねく全てを破壊しつくす、魂の化け物みたいなものだ。
それに取り込まれると・・・まあ、一言で言えば修羅になる。」

「修羅・・・」
タバサが繰り返す。

「そう、修羅だ。だがそれは俺の求める強さとは違った。」
自分の拳を見つめながら続けるリュウ。

「最初、俺は”殺意の波動”を俺の中から追い出そうと思った。
だが、それはできなかった。
”殺意の波動”は俺の中に流れているんだ。それを消し去ることはできない。
だったら飼い慣らすしかないだろう?
暴走する力を抑えつけるのもまた修行だな・・・
おかげでほんの入り口程度なら、なんとか理性を保ったまま扱えるようになった。
もっとも、あまり好き好んで使うような力ではないがな。
ただ、残念ながら単純な破壊力として”殺意の波動”を上回るモノが今の俺にはまだない。
だから、使うべきときには使う」
そう言いつつ複雑な表情で自分の拳を見つめるリュウ。

「だが、破壊することが全てではない。現に俺の暴走した”殺意の波動”によって一度倒れた男は、再び俺の前に立ちはだかってくれた。
”殺意の波動”では『倒す』ことはできても『勝つ』ことはできないんだ」

リュウの話に引き込まれていくタバサ。

「そして、俺は真の強さとは何かを考えるようになった。
それを教えてくれたのが一本の大木だった」

「大木・・・」
タバサが呟く。

「風には色も形もない。
じゃあ風はどうすれば自分の存在を知らしめることができると思う?
大木をなぎ倒せばいいのか・・・?全てを吹き飛ばせばいいのか?」

タバサは首をかしげ、しばらく考え込む。

「ほんの少し、ほんの少し木の葉を揺らしてやればいい。それで十分だ」
リュウの言葉を聞いてタバサの顔が、何かに気づいたようにはっとする。

「それが俺の一撃必殺”風の拳”なんだ」
改めて自分の拳を握り締めるリュウ。

「ただ、魔法を相手に闘うのは初めてだったから上手くいかなかったけどな。
だから、俺が未熟だっただけで手加減してたワケではないんだ」
笑いながらタバサの頭をクシャクシャと撫でる。

その大きな手に、タバサは自分の中にある氷のようなものが溶けていくような気がした。






タバサがリュウに対して心を開き始めていた頃、その一部始終を建物の陰から見ていた人影があった。

「何の話をしてるのかしら?ま、それはいいとして、ええと・・・確か・・・」
足を肩幅に開き膝を軽く曲げ、左手を前に、右手を腰に据える。

「こう・・・だったかしら・・・?見よう見まねで・・・」
腰を回転させ、同時に握り締めた右手を思いっきり突き出してみる。

「えいっ!」
グボンッ!
可愛らしい掛け声とは対照的に響き渡る轟音。

「ひっ!?」
驚いた人影は慌ててその場を離れた。
スカートの両端を指で摘み上げ、一目散に逃げる。

「なんだ!?今の音は?」
急いで音のした方へ向かうリュウとタバサ。

そこで見たものは、驚異的な速さで走り去っていくメイドの後姿と
建物の壁に開いた大きな穴だった。

後日談としては、固定化の魔法がかかった壁に穴を穿つなどという常識外れなことができるのはリュウぐらいしかいないとルイズに疑われたが、
同席していたタバサが彼の無実を証明してくれてほっと胸を撫でおろすリュウであった。





その日の晩のルイズの部屋

「・・・やっぱりわたしと一緒にアルヴィーズの食堂で食べれば良かったじゃない」
一通り話を聞いてふてくされたように言うルイズ。

「まったくルイズの言う通りだ」
厨房での扱いを思い出して苦笑いを浮かべるリュウ。

「それにしても・・・その服をまずなんとかしたいわね」
リュウの全身を見渡す。

「服もボロ布だし、だいたい裸足だなんて平民云々以前に蛮人よ・・・
ホント、物乞いと言われても仕方ない格好ね。どれだけ貧乏人だったのよ」
歯に衣着せぬ物言いのルイズ。

「これは道着と言ってな、これを着てると気が引き締まる。ボロなのは俺と一緒に修行の日々を過ごしてきたからだ。本当にダメになったら新調するさ。
それに、靴は好きで履かないんだ。買えない訳じゃない」

「ダメ。とにかく、そんなんじゃヴァリエール家の使い魔として相応しくないわ。
今度の虚無の曜日は授業がないから、町にアンタの服を買いに行くわよ」

「いや、だから、これは道着でだな・・・」

「ダメったらダメ!!買いに行くの!!ついでにアンタの剣も買いたいしね」

「剣?それはいらん。俺は剣の使い方なんて知らんしな」
リュウが困惑気味に答える。

「え?アンタ、それだけ強いのに剣の扱い方も知らないの?」
驚くルイズ。

「ああ、握ったこともない」

「へぇ・・・もったいないわねぇ・・・せっかくなんだしこの際、剣も覚えたら?」

――ううむ・・・ルイズはどうしても俺に剣を持たせたいらしい――
確かに何も知らない少女に格闘家のなんたるかを説明しても理解してもらえるとは思えない。
どうしたものかと考えた末、良い言い訳を思いついた。

「それにな、自分で言うのもなんだが、俺は割りと力が強い。俺が振り回したら剣の方が折れると思うんだが・・・」
青銅製のゴーレムをまるで紙細工のように扱っていたことを思い出し、ルイズも渋々納得する。

「確かにそうかもね・・・でも、やっぱり剣は買うわ。使わなくてもいいから持ってなさい」
結局、見た目を優先するルイズなのだった。





ルイズとリュウの二人はトリステインの城下町を歩いていた。
すれ違う人々がマントを羽織ったルイズを見て、貴族に絡まれてはたまらないと道を空け
その斜め後ろを歩くリュウを見てその肉体の見事さに溜息をつく。

「ここがブルドンネ街よ。トリステインで一番の大通りなの」
自慢気にルイズが説明する。

「なるほど、確かに賑やかだな」
確かに人通りは多いがリュウの感覚としてはどちらかと言うと狭い通りだ。
機械技術など皆無のこの国でそれほど大掛かりな都市整備はできないのだろう。
だが一応、ルイズの機嫌を損ねないように話を合わせておく。
普段は学院内で生活している上、必要なものは全て揃っているので街まで来ることは滅多にないのだろう、ルイズも楽しそうにしている。

っていうか、これってデートってヤツなんじゃない周りからはわたしたちってカップルに見えてるのかしら平民のクセに貴族とデートできるなんて生意気ね
などと思いながら頬が緩みっぱなしのルイズ。
冷静に見てみると結構気持ち悪い。
幸いリュウはルイズの斜め後ろについているので、ルイズのニヤけた顔が見えていなかったが。

「じゃあまず、服屋さんね、アンタの服を見繕うわ」
「だから、何度も言うがこれは大事な服で、これ以外の・・・」
「しつこい!ダメ!買うの!」
がっくりと項垂れるリュウを連れてご機嫌で服屋に入るルイズ。

「いやぁ・・・旦那の体型に合う服なんてちょっと置いてませんねぇ・・・」
規格外の筋肉質であるリュウに合う服など置いているはずもない。

「じゃあ、仕立てて頂戴。デザインは・・・そうねぇ」
チラリとリュウの方を見る。
「今着てるのと同じデザインのでお願いするわ。できる限り頑丈な素材で作って頂戴」

どうやら道着を作ってくれるらしい
ほっと胸をなでおろし、「ゆったりと作ってくれれば、後は適当でいい」と言いながら店の主人の採寸に応じるリュウ。

採寸するために道着の上を脱ぐと、そこから現れたのは改めて主人の度肝を抜くような盛り上がった筋肉と
そしてルイズの度肝を抜くような大きな傷跡だった。

「ちょ・・・ちょっとリュウ?何、この傷跡・・・」
胸の辺り、ギリギリ道着で隠れるか隠れないかという辺りと、その丁度裏側にあたる背中の大きな傷跡。
どうみても身体を貫通しているようにしか見えない。
「ああ、ちょっと前にな」
こともなげに言うリュウ。

身体のこんな場所を貫かれても、人間は死なないものなのだろうか?
それ以前に、何をしたらこの途轍もなく強い男にこれだけの傷を負わせることができるのだろう。

ルイズのリュウに対する疑問、興味は増す一方だった。
そしてその興味と畏敬の念が、年頃の少女の例の漏れず恋愛感情を加速させつつある。
もっとも本人はそれを認めようとしなかったが。





次にルイズが目指したのは武器屋だった。
小さな路地裏に入り、どんどん奥の方に進んでいく。
ゴミや汚物が道端に転がり、すえた臭いが鼻をつく。
リュウは辺りに気を配りながらルイズの後をついていった。

物陰から手にナイフやら手斧やらを持った目つきの悪い男たちがルイズの頭から爪先までを舐めるように値踏みする。
「ありゃあ、どこぞの貴族の娘だな。あれだけの上玉だ、相当な額になるぜ。笑いが止まんねぇな・・・」
下卑た笑いを浮かべ、目配せし合う男たち。

それに気づいたリュウはルイズに危険が及ばないように、わざと抜き身の剣のような気迫を、それでもルイズでは気づかない程度に漂わせる。
それだけで危険に対しては鼻の利くゴロツキ共には十分に効果があった。
獲物のすぐ後ろにいるリュウの身体つきやそこから発せられる猛者の放つ気迫に諦め、舌打ちしながら去っていく。

「あまりいい場所とは言えんな」
「ホントはあまり来たくないのよ・・・」
苦い顔をしたルイズが辺りを見回す。

「確か・・・ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺りのはずなんだけど・・・」
それから剣を模した看板を見つけ、嬉しそうにつぶやいた。
「あったあった」

リュウとルイズは扉を開けて中に入った。

「らっしゃい・・・ととと!?お、お貴族さまがなんの御用で?うちはマットウな商売やってますぜ」
カウンターに肘をつき、気だるげにしていた店主は入ってきたのが貴族だと判るや否や背筋を伸ばして揉手し、冷や汗をかきながら愛想を振りまく。

「客よ。剣が欲しいの」
愛想を振りまく店主とは対照的に無愛想に応じるルイズ。
難癖つけられてはたまらないとペコペコしていた店主は相手が客と聞いて素早く商売モードに切り替えた。

面倒くさい相手ではあるが、何しろ貴族は金を持っている。
しかも、金を持っている上に世間の常識に欠けている。
相場の2倍3倍・・・いや、上手くすれば桁ひとつ増やしたところで買っていく貴族もいる。
こんな葱を背負った鴨を見逃す手はない。

「ああ・・・なるほど、後ろの従者の方に持たせるんですね。最近、”土くれのフーケ”やなんやで物騒ですからねェ」
後ろに控えるリュウの身体を見て納得したように頷く店主。

「土くれのフーケ?」
首をかしげるルイズに答える店主。
「へぇ、最近巷を賑わしてる盗人でさぁ。金持ちの貴族しか狙わないってんで、平民の間ではちょっとしたヒーローでさあね。ちょいとお待ちくだせぇ」
そう言って店主は奥に引っ込んだ。

「盗人がヒーローだなんて不謹慎だわ!!リュウもそう思うでしょ!?」
プリプリと怒りながらリュウに同意を求めるルイズ。

「人間は権力に抑圧されると、その権力に歯向かう者を応援するもんだ。
街の人々が如何に貴族という権力に抑圧されているかということだ。とはいえ、確かに盗人とは褒められたもんではないな。」
尚プリプリ怒っているルイズをリュウが諌めていると、店主がゴソゴソと1本の剣を持って出てきた。

「こいつぁ、かの有名なシュペー卿が鍛えた逸品ものでさぁ。
並の人間じゃあとても扱いきれやせんが、そちらの従者の方にはお似合いの剣ですぜ」

2メイルはあろうかという刀身に宝石などで飾り立てられた煌びやかな剣を得意げに説明する。
「魔法がかかってますからね、鉄だって切れますぜ」

剣を見た瞬間、ルイズは魔法云々よりも見た目の豪華さに心打たれた。
「ねぇ、リュウ、これなんか良くない?」
一発で気に入り、すっかり買う気になっているルイズ。

「俺としてはもっと飾り気の無いものの方がいいんだが」
『質実剛健』や『実直』などの言葉をそのまま人間にしたようなリュウの趣味嗜好からは遠くかけ離れている剣を見て思わず呟く。

「却下。わたしが気に入ったから、これに決めた」
どうやらリュウの意見など端から聞く気は無かったらしい。
勝手に決める。

「これ、おいくら?」
「へぇエキュー金貨で2000でさぁ」
「高いわねぇ・・・それだけあれば森付きのお屋敷が買えるじゃない・・・」
剣の相場など知らないルイズは絶句する。
もっとも、相場を知っていればその金額が桁一つ多いことに気づけたのだが。

「命を預けるのが剣ですからね、命は金では買えませんや。しかも、名工シュペー卿の作ですから、これぐらいはしますやね」
言って愛想笑いを浮かべる店主。

「困ったわね。今日はエキュー金貨で100しか持ってきてないわ」
アッサリ所持金を白状する。

ルイズは自分で買い物をすることなどない大貴族なので、こういう交渉はしたことがない。
そして、ハルケギニアの相場を知らない上に交渉が下手ということに関しては、リュウも一緒だった。
ただ、剣一本に森付きの屋敷という値段には違和感を覚えたが、魔法が関わってくると全く見当がつかないので、そういうものなのかと納得せざるをえない。

「それじゃあ碌な剣は買えませんやねぇ・・・」
困った顔をした店主はそういうと再び奥に入っていく。
後ろを向いた店主の顔はニヤニヤしていた。
「せいぜいカモらせてもらうか・・・」誰にも聞こえないように呟くと、奥から別の一本を持ってきた。

「それでしたら、これなんかどうですかい?本当は120エキューなんですが、100にまけときますぜ」
ルイズの前に差し出されたのは1メイルほどの刀身の、何の意匠も凝らされていない細身の剣だった。

「なんか貧相ね・・・」
先ほどの剣が頭から離れず、あからさまに落胆の色が見えるルイズ。

「いや、俺はむしろこっちの方がいいと思うがな」
リュウが感想を漏らすと、背後から声が聞こえた。

「けっ。おめえみてーなド素人が剣なんざ持ったところで死ぬだけだ、やめとけ」

思わず振り返るリュウとルイズ。
だが、そこには誰もいない。あるのは所狭しと並べられた剣や槍などの武器。

「やいデル公!お客様になんて口利きやがる!!」
誰もいない場所に向かって文句を言う店主。
リュウとルイズの二人が頭に「?」を浮かべていると、またしても誰もいない場所から声が聞こえた。

「な~にがお客様だ!そんなカスみてーな剣売りつけやがって!どーみたって金貨10枚もしねーよーなガラクタじゃねーか」

目を凝らすが、やはり誰もいない。
しかし、姿は見えずとも声はしっかりと聞こえてくる。

「おめえもこんなガラクタ見せられて『こっちの方がいいと思う』とか言ってんじゃねー。
ガラクタかどうかの見分けもつかねーヤツが剣なんて持ったって早死にするだけだっつーの」

リュウは剣が並べられた一角に行くと、錆の浮いた一本の古い剣を取り出した。
「お前が・・・喋ってるのか・・・?」
驚きながら、手にした剣に話しかける。
傍から見れば危ない人に見えなくもないが、近くで見れば彼が精神的にも健康であることが判る。
なぜなら、彼が手にしている錆びてボロボロの剣が喋ったからだ。

「おうよ。俺っちが喋ってるのよ。判ったか、ド素人」
剣の柄の部分をカチカチ言わせながら喋る剣。

「イ・・・インテリジェンス・ソード・・・?」
ルイズは噂で聞いたことがあった。高位のメイジが剣に人格を付与することがあると。
そしてそれはインテリジェンス・ソードと呼ばれている。

「おうよ!俺っちがインテリジェンス・ソードのデルフリンガーさまだ!おきやがれ!!」
まくし立てるように喋る剣。

後ろから飛ぶ店主の怒り声。
「いい加減黙ってろデル公!!溶かして鉄くずにしちまうぞ!」

「ああ!やれるもんならやってみろってーの!
どーせ6000年も生きてきて飽き飽きしてたところだ!いっそ溶かしてくれた方がせいせいするってーの!」

「お前・・・6000年も生きてるのか?」
「おうよ!最近はとんとつまんねーしな!もうこの世に未練なんてねーっての・・・ってか、おい・・・」
「ん?どうしたんだ?」
突然押し黙っってしまった喋る剣に尋ねるリュウ。

「おでれーた・・・おめえ・・・”使い手”か・・・」
「使い手・・・?何の話だ?」
いぶかしむリュウ。

「よし、おめえ、俺っちを買え」
それには答えず自分を買えという剣。

「わかった。親父、この剣はいくらだい?」
リュウは躊躇い無く答えると、店主に尋ねた。

「へぇ、それでしたらエキュー金貨100で結構ですぜ。うちとしても厄介払いができてせいせいしやすからね。
煩いときは鞘に閉まっちまえば大人しくなりまさぁ」

「っというわけだ、ルイズ。俺はこの剣がいい」

あまりの急展開に目を白黒させるルイズ。
「ちょ・・・ちょっとリュウ!!もうちょっとちゃんと選びなさいよ!だいたい、そのボロ剣、錆びちゃってるじゃないの!」

「ああ、ちゃんと選んださ。この剣が買えと言ったからな。年長者の言うことは聞くもんだ」
ボロ剣とはなんだ!と文句を言うデルフリンガーを鞘に収め
リュウは笑いながら、ルイズから預かっている財布の中から100エキューを取り出し店主に支払った。







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