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ゼロの社長-15


「それは、どう言う意味だ?」
「言葉どおりの意味よ。この村で起きている吸血鬼事件は私が原因じゃないわ。」

目の前の少女…いや、少女の姿をした吸血鬼、エルザははっきりとそういった。
暗闇の部屋の中、思いも寄らぬ答えを口にしたエルザはそのままこう続けた。

「さて、貴方の質問には答えた。次は私の番ね。」
「待て、ちゃんと説明を―――」
「貴方のその左手のもの…どこで手に入れたの?」

エルザは言葉と同時に、恐ろしい殺気を放った。
まるで海馬のデュエルディスクこそが、世界でもっとも憎むべきものであるかのように。
だが、海馬はその殺気に臆することなく答えた。

「どこでも何も、これは俺が開発したものだ。そして俺の世界では、これは一般的に広まっている。
デュエリストであれば誰でも持っているものだ。」
「…そう。じゃあ、あれは…」

そう言うとエルザは、少し考えるように目を伏せた。

「……俺のターンだな。先にこっちを聞いておこうか。なぜ、このデュエルディスクについて聞いてきた?」
「……」
「これは俺の知っている限り、このハルケギニアには俺のものともう一つしか存在しないはず。
にもかかわらず、貴様はこれの存在を知っている。
俺のもっているこれは数日前にこの世界に来た。そしてもう一つは30年前に1度使われて以来倉庫にしまわれていた。
貴様が知るタイミングは皆無のはずだ。」
「…………」

エルザはゆっくりと瞳を開き、遠い過去を…忘れられない過去を語りだした。

「50年前、私はそれに良く似たものを見たわ。あなたのよりもけばけばしく、蝙蝠の羽のような特徴があったわ。
それを持った女の姿を、私は決して忘れないわ。
…いいわ。少し、昔話に付き合ってもらえる?」



50年前、ゲルマニアの南の方に大きくはないけれどそこそこの領土を貴族が治めていた。
領主は人望もあり領民から慕われ、妻と一人娘の3人で幸せな生活を送っていたし、それが永遠に続くものと思っていた。
しかしある日、領内のある家が吸血鬼に襲われた。
しっかりと施錠されているはずのその家に、どうやってかその吸血鬼は忍び込み、そこの家の娘の血を吸い尽くした。
当然領主は村人を集めて討伐隊を編成して吸血鬼狩りをした。
しかし、全く手がかりのないまま日にちが過ぎ、その間にも一人…また一人と犠牲者が増えていった。
領民たちは恐怖と疲労に負け、次々とその地を離れていった。
そしてある日、領主が自分の城に残った住人達を集め、今後について話し合っていた夜に、本当の悲劇は起こった。
その吸血鬼は堂々と、城の正門から入ってきて、従えていた獣人や巨大な蝙蝠を操り、
その城にいたほぼ全ての人間を皆殺しにした上に、城に火を放った。
もちろん、村人達も抵抗をしたけれど、モンスターたちには敵わずに殺され、城は一面血の色で染まった。
そして、両親が目の前で殺された後、娘も自分の死を覚悟した。
しかし、吸血鬼は娘を殺さなかった。
吸血鬼は娘をかかえ上げると、その血を吸いつつ自らの血を送り込み吸血鬼へと変えた。
そして、その歪んだ笑顔で娘に「お前は吸血鬼となったのだ」と告げたのだった。
娘は絶望した。
自分だけ生かされた事に。
日の光を恐れて生きなければならないことに。
何より、自分の家族を、友人を、周りの全てを奪ったものと同じモノに変えられてしまった事に。
いつのまにか吸血鬼は姿を消し、後には娘と炎に包まれた城があるだけだった。
そして娘は燃え盛る自分の家を眺めただ涙するしかできなかった。





「それが、貴様の過去と言うわけか。」
「……私は呪ったわ、あの吸血鬼を…。そして恐れたわ、自分自身を…。
もし他人から血を吸ってしまったら、私もあれと同じモノになってしまうんじゃないか。
人をただの食料としか見れない、悪魔のような生き物に。
だから、私は…今まで一度も血を吸った事は無いわ。
吸血鬼って言っても、普通の食べ物でも案外生きられるものらしいわ。」


と、いってエルザは自重気味に笑った。

「そして…1年前、私はアイツに遭遇した。
私が村長に拾われた数時間前、森の中で出会ってしまった。
いや、アイツが意図して私の前に現れたの。
私は怒りに任せて吸血鬼に襲い掛かったわ。
でも、体格の差もあるし、何よりも血を吸わずに生きてきた私には、吸血鬼らしい力は残っていなくて、結果は惨敗。
ボロボロに痛めつけられた上に、また生かされて捨てられていたわ。
そして、アイツはまた、歪んだ笑顔でこう言ったわ。」

『貴方のその憎悪はとても愉快。貴方を生かしたかいがあったわ。
不死である私には、ここでの永遠はとても退屈。
だからね、貴方が私を憎悪するその感覚はとてもいい退屈しのぎ。
まぁ、そうするために貴方を吸血鬼にしたんだけどね。
でも少し興ざめ。何で血を吸わないの?血を吸って吸血鬼の力をもって私に挑みなさい。
こんな弱さじゃ退屈。それとも、私に対する憎悪がまだ足りない?』

それはエルザにとって耐えられない悔しさだった。
自分が吸血鬼にされたのも、領地全ての人間を殺されたのも、全ては吸血鬼の退屈しのぎだった。
そんな事のために…私は…家族は…そう思っているうちにまた、吸血鬼は姿を消していた。
そして森の中に吸血鬼の声が響いた。

『そういえば、自己紹介がまだだったわね。私の名はヴァンパイア・カミューラ
私の名、忘れない事ね、エルザちゃん。私の退屈しのぎのためにも』

そしてカミューラの笑い声が森に響いた。
エルザはその声を、涙を流し歯を食いしばりながらただ聞く事しかできなかった。


「あとはさっき村長が言ってた通り、通りがかった村長に拾われて今に至るわ。」

一通り過去の説明を終え、エルザはまたベッドに腰掛けた。

「このデュエルディスクに似たものを持ち、多くのモンスターを従えた吸血鬼…
なるほど、おそらくそのカミューラとか言うヴァンパイアは、認めたくはないが俺のいた世界から来た様だな。
この世界と俺の世界には、何か因縁めいたものでもあるのだろうか…?」
「…なにそれ?あなた、異世界から来たとでも言うの?」


危ないものでも見るような視線で海馬を見るエルザ。
いくら吸血鬼といえど、異世界などと言うものが存在するなど考えた事もなかったのだろう。
が、そんな質問を無視し海馬は続けた。

「……そう考えると、この吸血鬼騒ぎも、貴様を苦しめるためだけに50年前の事件の形を小規模に再現しているように見えるな。」
「おそらくそうでしょうね…悔しいけど、直接目の前に現れない限り、私にはどうする事もできない。
このまま黙ってみているしか…」

ギッと唇をかむエルザ。
だが、海馬はそれに異を唱えた。

「奴が同じシナリオを繰り返すと言うのなら、それをこちらで加速させてやればいい。」
「……まさか!?」
「そうだ、村人をこの屋敷に集めて、奴が姿を現したところで叩く。むらに複数の標的があるからこそ、相手の位置をつかめないのだ。
1点に絞ってやれば奴はそこを狙わざるを得ない。」

だがそれは、同時に危険な一手でもある。
カミューラが過去のシナリオどおりに集まった村長の屋敷を襲うとすれば、それは過去の惨劇の最終幕と同じ。
敗北すれば、一夜にして村全てが全滅する危険な一手である。

「…それは…駄目。悔しいけれど、私にはカミューラに勝てるほどの力は―――」
「そいつの相手は俺がする。」

はっきりと通る声で、海馬は宣言した。
エルザは、一瞬驚いたが、すぐに怒りの表情を見せて声を荒げた。

「馬鹿にしているの!?あいつはたかが人間のメイジが闘って勝てる程度の相手じゃない!」

とても外見からは想像できないような怒りの声が、部屋に響いた。
だが、その声を真正面から受け止めた上で、海馬は答えた。

「吸血鬼だろうがヴァンパイアだろうが、デュエルディスクを持っている以上はデュエリストだ。
そして、デュエリストを相手に、俺が負けることなどありえん!」

はっきりと、堂々と勝利を信じゆるぎない海馬の瞳。
その瞳と言葉に、エルザの心は動かされた。
エルザには全く根拠のない言葉のはずだが、その言葉には、そしてその海馬の態度には、なぜか信頼できるような力強さがあった。


「……わかったわ。お願い、カミューラを倒して。」
「当然だ。俺は俺の進むロードのために、こんなところで敗北するわけにはいかん!」

バッとエルザに背を向け、扉の方へと向かっていく海馬。
エルザにはまぶしく敵対するはずの日光を受けた海馬の姿が、とても神々しく見えたのだった。





海馬は、情報収集に行っていたタバサ達が戻ってきてすぐ、作戦を提案した。
その内容は
『村長を通じて村の若い娘、及びその家族をできるだけ集め屋敷に匿い、そこを狙ってきた吸血鬼を逆に撃退する』
と言うものだった。
どうやらタバサも、おおむね同じ作戦を考えていたようだった。
村長にも早速話をし、客間の方に村の若い娘達を集めておく事にした。
そして、その家族達も村長の屋敷に集まり、屋敷はまるでパーティー会場のように人であふれていた。
タバサは、戦闘に備えるためにと早々に眠りにつく事を提案し、そそくさと布団に入ってしまった。
タバサが眠りについた頃、海馬はシルフィードを部屋の外へと呼び出した。

「村の様子はどうだった?」
「…ぎすぎすしてたのね。次は誰が襲われるのかって言う恐怖と不安でみんな疑心暗鬼になっていたのね。
これじゃ、エルザだけじゃなく村のみんなが笑顔になれないのね。」

寂しそうにシルフィードは呟いた。
明るい性格のシルフィードにとって、この街の重い空気は、気持ちを沈ませてしまうものだった。

「だろうな。だが、それも今夜までだ。全ての決着は今日つける。」
「……」

このとき、シルフィードは全てを知っていた。
強い聴力のおかげか、偶然聞こえてしまったのだ、エルザと海馬の会話が。
普段ならおしゃべりなシルフィードはすぐにでもタバサに話していただろう。
だが、内容を聞いているうちに、話していいものか迷っていた。
今回のタバサの受けた命令は『吸血鬼退治』だった。
真犯人ではないとはいえ、エルザも立派な吸血鬼である。
もしタバサに話したら…あの小さな主人はどうするだろうか。
そんなことをたくさん考えていた。
その時、海馬のほうから口を開いた。

「聞いていたんだろう?俺とエルザの会話を。」


シルフィードは動揺した。それはもうわかりやすいくらいに。

「しっ…知らないのね。エルザのことなんか何も―――」
「お前がどこまで知っていようとも構わん。…だが、この事件が片付くまで、邪魔をするな。」
「…え?どういうことなのね?」

それだけ言うと、海馬は部屋に戻ってしまった。
一人取り残されたシルフィードは、余計に頭を抱える事となってしまった。




夕方、タバサが目を醒まし部屋の外に出てみると、不思議な格好をしながらう~んう~んと唸って頭を抱えているシルフィードが、中庭にいた。
シルフィードはタバサの視線に気づくと、慌てて視線をそらした。
タバサはシルフィードに近づき、声をかけた。

「どうしたの?」
「………」

シルフィードは両手で口をふさいだ。
そうでもしないと、エルザのことを喋ってしまいそうだったからだ。
いや、そもそも喋っちゃいけないのか?
しかし…
などとまた考えはじめて、もう頭がパンク寸前だった。

「……今夜は朝まで徹夜になるから、早く寝ておくべき。」
「……あのままじゃ、寝ようと思っても眠れないのね」

そういって、シルフィードは口を開いた。
そしてシルフィードはそのままタバサに、聞いてしまったエルザと海馬の会話の内容を伝えた。

「……」
「おねえさま、どうするの?そもそもあのエルザって子が吸血鬼かどうかだって本当かわからないのね。
でも、メイジ…って思われてるセトに、自分が吸血鬼だなんて言うはずないし…」
「その答えは、今夜出る。もしエルザが不意打ちを狙って彼に嘘をついているのなら、そのときは私の出番。
でも、本当にその『カミューラ』と言う吸血鬼がいるのなら…」

タバサは、ギーシュと海馬の学院の中庭での決闘を思い出していた。
常識を覆すようなドラゴンたちを巧みに操る海馬。
そして、あの白竜の力。
もしも『カミューラ』が彼と同じような力を持っていたとしたら…。
不安要素は残る。
だが、始まってみなければわからない。

「……………」

タバサはふと空を見上げ、沈み行く太陽をじっと眺めていた。




その数時間後。
日はすっかり沈み夜となっていた。村長の屋敷では、ちょっとしたパーティーのような状態になっていた。
不安と恐怖により笑顔が消えていた村人達が、少しでも元気になれるようにと、村長が取り計らったのだ。
食事や酒のおかげか、少しづつ人々に笑顔が戻ってきて、いつしか笑い声が漏れるようにもなっていた。
海馬やタバサ、シルフィードもそのなかで食事をとっていた。
その時、扉が開き村長が入ってきた。

「みんな、少し聞いてくれんか。」

村長が声を上げると、いっせいに視線が村長の方に集まった。

「今村では、吸血鬼騒ぎで大変な事になっている。だが、こうして騎士様がたが来て下さっている。
だが…わしが気がかりなのは、それだけではなく別の事もなのじゃ。
姿が見えない吸血鬼のせいで、村中が疑心暗鬼になっている。
わしはそれがどうしても嫌だったのじゃ。……入ってください。」

村長に促されて部屋へと入ってきたのは、車椅子に座った体が細く老いた老婆と、屈強な大男の青年だった。
室内は一転して、不穏な空気に包まれた。
それもそうだろう。その老人達こそが、今村の中で吸血鬼と噂になっている、マゼンダ婆さんとその息子アレクサンドルだった。

「吸血鬼がなんのようだ!」
「でていけ!この化け物!」

といった罵声があたりから飛び交った。
海馬がふと目線を変えると、エルザが悲しそうに目を伏せていた。

「黙らんか!!!」

いつも温和な村長の口から、思いがけない大声が出たので、辺りはしんとなった。
村長はマゼンダ婆さんに謝ると、もう一度村人の向きなおり、言葉を繋げた。

「マゼンダさんとアレクサンドルは吸血鬼などではない。それは騎士様にも確認していただいた。
今村で恐ろしい事件がおきているのに、なぜ村人同士で疑心暗鬼にならねばならんのだ。」
「でも、その婆さんは昼間は出てこねぇし…」
「その思い込みのせいで、二人がどんなに辛い気持ちだったか…。
いや、それを放置していたわしにも責任がある。
しかし、このままではいかんと、そう思ったのじゃ。
今夜のこの集まりも、それを無くしたいと思ってのことなのじゃ。」

村人は下を向いて黙った。



村長はこの集まりの前に、海馬たちとともにマゼンダ婆さんの家に行き、この集まりの話をした。
海馬の見立てで吸血鬼ではない事も証明されたことだし、なによりも村人同士として一緒に暮らしていきたいと、
そのためにも、一緒にきて欲しいと頼んだのである。
始めは嫌がったアレクサンドルだが、村長の必死の訴えにより、提案を受ける事にしたのだ。

「おっかあは大きな声が出せねぇから、俺が…。
この村は、おっかあの生まれた村なんだ。いっしょに旅をしてきたけど、最後は生まれた村に帰りたい、おっかあはいつもそう言ってた。
おっかあはこの村の事がずっと好きだったんだ。なのに、そんなおっかあを捕まえて吸血鬼だの化け物だの…。
俺はこんな村、さっさと出ていこうって何度もいったんだ。
でも、おっかあいつも、『大丈夫だから…信じよう。』って言ってた。
だから…俺は…」

そこまで言いかけたときに、一人の青年がアレクサンドルの前に出て土下座をした。
薬草師のレオンだった。

「すまなかった!俺が悪かった!俺が軽軽しく吸血鬼だなんていいだしたせいで…。どうかゆるしてくれ!」
「おれもだ!」
「おれも!本当にすまなかった!」

と、そこにいたみんながアレクサンドル達の方へと駆け寄った。

「お前ら…。」
「マゼンダさん、アレクサンドル、彼らを…いや、わしらを許して欲しい。
そして、この村で、一緒に暮らしてはくれないか。」
「……許すも何もありませんよ。」

その時、小さな、でも誰も聞き漏らさなかった声がした。
声の主はマゼンダ婆さんだった。

「おっかあ…」
「私は、この村に帰ってこれただけで幸せです。そして今、こんな多くの人たちに囲まれている。
こんなに嬉しい事はないですよ。」

ごほっごほっと咳き込みながらも、マゼンダ婆さんは笑顔で言葉を紡いだ。


それから程無くして、マゼンダ婆さんとアレクサンドルは村人達と打ち解けていた。
村長は海馬たちの元へ来てこう言った。

「騎士様方、ありがとうございます。おかげで村が今ひとつにまとまりました。
本当にありがとうございます。」
「俺は何もしていない。俺がしたのはあの婆さんの潔白を証明しただけだ。
それだけでは、この問題の解決にはならなかった。
結局は村人同士の問題だったのだ。俺たちがしなければいけないことはむしろこのあとだ。」

そう、まだ吸血鬼は退治されてはいない。
それでも、村長は礼を言わずにはいられなかった。

「村人が一つにまとまれば…恐ろしい事はありません。
結束は何者にも負けることのない力です。」

そう言うと村長はまた人々の輪の中に戻っていった。

(結束は力…か。以前に奴に教えられた事だったな。異世界でもそれは変わらない…。そうだろう、遊戯[アテム])

双月が輝く空を眺めながら、それを教えた強敵のことを海馬は思い出していた。
そして……夜はふけていく。



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