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狂蛇の使い魔-12


第十二話



気絶したフーケを捕らえ、タバサとキュルケは元来た道を大急ぎで戻ると、意識を失ったルイズを学院に運び込んだ。
キュルケが強引に引っ張ってきたモンモランシーのおかげで大体の傷は治り、特に別状はないという。
それでも、ルイズは目を覚まさなかった。

結局、事の報告は後回しとなり、タバサとキュルケの二人はつきっきりでルイズの看病にあたることとなったのだった。



そして、その日の夜
「ぅ……ん……」
ルイズが目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋であった。
キュルケが上からこちらを覗き込んでくる。
その傍らにはタバサもいた。
「やっとお目覚めね。まったく、いつまで寝てるんだか」
おかげで舞踏会に行けなかったじゃない、とキュルケは腕を組みながら言った。
「……ごめんなさい」
ルイズがしょんぼりとした表情で謝る。
それを見て、キュルケは微笑んだ。
「ま、いいわ。それより、あのカメなんとか……」
「仮面ライダー」
タバサが突っ込む。
「そうそう、それそれ。あれって一体何だったの? 詳しく話してみなさいよ」
ルイズは一瞬顔を曇らせたが、しばらくすると体を起こし、ゆっくり口を開いた。


ミラーワールド、モンスター、仮面ライダー……
キュルケは、ルイズの口から語られる信じられないような話に目を丸くしていた。
一方のタバサは、表情一つ変えずに話を聞いている。

「……なるほど。だから、そのカードデッキは破滅の箱なんて呼ばれてたのね」
ルイズの話が一段落すると、キュルケがルイズの手元にあるタイガのデッキを指差しながら言った。
「多分、そうでしょうね。……それで、今日あったことだけど……」
ルイズがミラーワールドでの出来事を話そうとした時、突然部屋の扉が開かれた。

「ひっ! あ、アサクラ!?」
扉の前に立つ浅倉を見た途端、ルイズの顔から血の気が引き、青ざめる。
それを見ると、浅倉は笑いながら彼女がいるベッドへと近づいていった。
「いつもの偉そうな態度はどうした? 俺に叩きのめされたのが、そんなに怖かったのか?」
「い、いやっ! 来ないで、来ないでぇっ!!」
ミラーワールドでの恐ろしい体験が脳内に甦り、ガタガタとその身を震わせるルイズ。
そんな彼女と浅倉との間に、キュルケが割って入った。
「ちょっとアンタ! 一体ルイズに何をしたのよ!?」
キュルケがきっ、と浅倉を睨み付ける。


今まで浅倉をダーリンとよび、恋心を抱いていたキュルケであったが、今の彼女にそんな気持ちは微塵もない。
むしろ、友を傷つけたことへの怒りの感情の方が強くなっていた。

そんな彼女を浅倉はフン、と鼻で笑う。
「そのデッキを手にした今、こいつも一人のライダーだ。ライダー同士、戦うのは当たり前だろう?」
「なら、これからもルイズと戦い続けるとでもいうの?」
「いやっ!」
キュルケの問いかけにルイズが反応し、膝を抱えて体を縮こまらせた。
その目には涙が湛えられている。
「もう戦いたくない……! もう戦いたくなんかないよ……!」

浅倉はそんなルイズに冷めた目を向けると、再びキュルケの方へと視線を戻した。
「だとしたら、どうする?」
怒りの形相で睨み続けるキュルケに、浅倉は余裕の表情で問い返す。
「……なら、容赦しないわ!」
「ほう、やるか?」
そう言って、キュルケは杖を、浅倉はデッキをそれぞれ取り出した。
そんな二人を、ルイズは心配そうに見つめている。

「待って」
不意に聞こえてきたタバサの声に、皆の視線が彼女に集中する。
そして、タバサの口から思いがけない言葉が発せられた。
「……私が仮面ライダーになる」



「ダメよタバサ! 危険よ!!」
タイガのデッキに伸ばされたタバサの手を見て、ルイズはタバサに渡すまい、と両手でデッキを抱きしめた。
しかしタバサが杖を一振りすると、デッキはルイズの元を離れタバサの手に収まった。

「誰かがライダーにならないと、ルイズが食べられてしまう。でも、今のルイズに変身は無理」
タバサが淡々と理由を述べていく。
「それに、まだアサクラに助けてもらったお礼をしてない。私なら、相手をしてあげられる」
浅倉の方を向き、微笑みかけた。

「……本気なの? アサクラには摩訶不思議な怪物がいるし、下手したら死んじゃうのよ?」
納得のいかないキュルケがタバサに尋ねた。「こういうのには慣れてる」
「でも……」
「俺なら誰だって構わないぜ。」
尚も食い下がろうとするキュルケを、浅倉が邪魔をした。
「それに、こいつよりもよっぽど楽しめそうだしな」
そういうと、浅倉はルイズの方へ顔を向けた。



「情けない奴だ。周りの人間にまで迷惑をかけておいて、役立たずにもほどがある」
浅倉の放った言葉が、ルイズの胸にぐさりと突き刺さる。
「そのくせプライドだけは人一倍、か。笑わせるな。……少しは身の程を知ったらどうだ?」
ルイズは堪らず、目から涙をポロポロとこぼし始めた。
「私は……私は……」

「ルイズ! ……アサクラ、あんた何てこと言うのよ!! 誰のせいでこんなことになったと思ってんの!?」
キュルケが再び浅倉に食って掛かる。
「俺は事実を言ったまでだ。……寝るぜ?」
それだけ言うと、浅倉は部屋の隅まで歩いていき、床の上に寝転がる。
そして、キュルケが投げ掛けてくる憎しみのこもった視線をよそに、浅倉は深い眠りへと落ちていった。



翌日。
ルイズ、タバサ、キュルケの三人は、学院長室にてフーケ討伐の報告を行っていた。
しかし、いつも通り無口なタバサに加え、ルイズも終始沈んだ表情で黙りこんでいたため、報告はもっぱらキュルケによってなされていた。


「……というわけで、今回の成功はルイズとその使い魔の活躍があってこそのものなのです」
『ルイズ』の部分を特に強調して、キュルケが報告を終えた。
「なるほどのう。まさか、あのロングビルが……」
オスマンが残念そうに溜め息をつく。
「ともかく、ご苦労じゃった。……そうじゃ、王室にも報告しておこうぞ。きっと何かしらの褒美がもらえるじゃろうて」
先ほどの表情から180度変わって、ニッカリと笑いながらオスマンが言った。
キュルケとタバサの顔にも、それぞれ笑みが浮かぶ。
が、ルイズの表情は相変わらず沈んだままだった。

「ミス・ヴァリエール、どうかしたかの? 元気がないようじゃが……」
「え? あ、いえ。何でもありません。ありがとうございます」
「……そういえば、破滅の箱を君の使い魔殿に渡す約束じゃったな。約束通り自由にしてよいと伝えておいてくれ」
ルイズはそれを聞くと、コクリ、と力なく頷いた。
「それと、ついでじゃ。これも渡しておいてくれ」
そう言って、オスマンは一枚のカードを取り出した。

「これは……?」
「荒らされた宝物庫の整理をしてたら出てきたものでの。破滅の箱に入っていたものとそっくりじゃから、君の使い魔なら使えるじゃろう。
わしには無用の品じゃ。もっていくがいい」
「……ありがとうございます」
ルイズは小さな声でお礼を言いながら、手渡されたカードを懐にしまった。


「ルイズ。ちょっと」
「……なに?」
学院長室からそれぞれの部屋へと戻る途中、ルイズはキュルケに引き止められた。

――バチン!

振り返ったルイズの頬を、キュルケの手のひらが思い切りはたき、赤く染めた。
ルイズが驚いた顔で頬に手を当てる。
「アンタ、いつまでくよくよしてんのよ! らしくもない!」
キュルケが腰に手を当て、ルイズを見据えながら言った。
「いい? フーケに勝てたのはルイズが破滅の箱を使って、ゴーレムの動きを封じたからなの! ルイズのおかげ! わかる!?」
「でも、それは破滅の箱の力で……」
「破滅の箱を使って戦おうと勇気を出したのはアンタでしょう? もっといつもらしく誇りなさいよ!」
ルイズの反論を遮り、キュルケが続ける。
「例え魔法が使えなくても、諦めずに一生懸命頑張ってきたのが今までのアンタじゃない! そんなルイズはどこに行っちゃったのよ!?」

呆然と話を聞いていたルイズが、暗い表情のまま顔を下に向けた。

名門貴族に生まれながらも魔法を使えず、優秀な家族との落差に悩んだ日々。
失敗ばかりで散々ゼロのルイズと馬鹿にされ、劣等感に苛まれ続けた学院での毎日。
やっと成功したサモン・サーヴァントでも、呼び出した使い魔の扱いすら上手くいかず、逆に虐げられる始末。
それらの辛い記憶がルイズの頭の中を駆け巡り、涙となって目から溢れ出てきた。

「……何がわかるのよ」
俯いたまま、ルイズが震えた声をあげた。
「あなたに私の何がわかるのよぉっ!!」
顔をあげてその泣き腫らした表情をキュルケに向けると、ルイズは大声で言い放ち、自室に向かって勢いよく駆け出した。

「あっ、待ってルイズ!」
キュルケが止めようと手を伸ばしたが、走り出したルイズには届かず空を切る。

「ルイズ……」
自らの思いが友の心に届かなかったことを歯がゆく感じながら、キュルケはその場に立ち尽くすのだった。


同じ頃、ミラーワールドのとある森の中。
フーケとの戦いの最中に気配を気づかれた白い怪物のうち、王蛇の攻撃から免れた一体がそこにいた。

くねくねとした動きで怪物が森の中を歩いていくと、しばらくして広大な湖が目の前に現れた。
トリエステンとガリアに跨がる湖、ラグドリアン湖である。

水の精霊がいることで知られる湖だが、鏡の中の異世界では異様な光景が広がっていた。
今しがた辿り着いた白い怪物と同じ怪物があちこちから集まり、続々と湖へと向かって行ったのである。
不気味な唸り声をあげながら、無数の怪物がひたすら前に進んでいく。

たどり着いた怪物も湖に向かおうと動きだした、その時。
怪物が突然どさりと前のめりに倒れると、手足をピクピクと動かしながら体を丸め始めた。
そしてしばらくすると、背中がボコボコと盛り上がり、固い表皮にヒビが入る。
次の瞬間、白い怪物の体を破り、羽の生えた青い怪物が姿を現した。
青い怪物はすぐに頭に生えた羽を羽ばたかせ、湖の上を飛び始める。



それから、同じようにして数匹の青い怪物が現れ湖の上を舞うと、何処へともなく飛び去って行ったのだった……。



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