あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-16a



暑くなってきた、夏真っ盛りの時期。
トリステイン魔法学院は二ヵ月半に及ぶ、長い夏期休暇に入っており、
学院内には学院長のオスマン氏や教師、給仕の平民が居るだけで、生徒達は一人としていなかった。
静まり返った魔法学院に強い日差しが照りつける中、ジャンガは本塔の屋根の上に座り込んでいた。
立てた膝の上に肩肘を付き、何をするでもなく、ボーッとしている。
彼はここ最近の出来事を思い返していた…。

アンリエッタ姫からのお呼び出しを受け、『街での貴族の横暴な振る舞いを調べて欲しい』と
密命を言い渡されたのは、フーケを捕まえた日から幾日も経たない日だった。
平民に雑ざっての御忍びの任務であるにも拘らず、高級な物に拘るルイズは、
アンリエッタ姫に貰った活動資金をアッサリと使い果たし、途方に暮れる二人はスカロンと言う男に誘いを受ける。
宿を営む彼は、同じく経営している『魅惑の妖精』亭という酒場の手伝いをすれば部屋を提供すると言うのだ。
その提案に最初は乗り気で無かったルイズだが、「またお姫様に不幸を届けるのか~?」と言うジャンガの言葉に憤慨。
働く事を決意したのだが、そこはそれ…何不自由なく生活してきた貴族の娘。
平民の仕事…ましてや酒場でのご奉仕などした事など当然無く、キレて酒をぶちまけたり、
平手や蹴りを食らわせたりなど大暴れの連続だった。
そんなこんなで、とてもじゃないが任務など果たせそうに無かったのだが、世の中は都合良く出来てるらしく…、
偶然に近い形で任務は(一応)果たされる事となった。
店で恒例のチップレースの最終日に店を訪れた徴税官のチュレンヌとか言う貴族。
噂の横暴な振る舞いをする貴族を指しているかは定かではなかったが、その立場を利用しているのは間違いなかった。
”空気を読めない”ルイズは最初、チップ目当てでご奉仕するも、胸を触られそうになり、顔面に蹴りを放つ。
周りの部下は杖を抜くも、ジャンガにあっさりと叩きのめされた。
怯えるチュレンヌにルイズは身分を明かし、アンリエッタの許可証を持ち出し、
今回ここで起きた事を忘れて大人しく帰るようにと命じた。
必死の形相でチュレンヌは頭を縦に何度も振り、ほうほうの態で逃げて行った。
そうして、チュレンヌを追い返した事により、ルイズはスカロンや店で働く他の女の子から賞賛を浴び、
チュレンヌとその部下達が去り際に財布ごと置いて行った金貨でチップレースの優勝も得たのだ。

(…余談だが、ルイズは一応優勝商品である『魅惑の妖精のビスチェ』を纏ったが、
ジャンガにはまるで効果が無かった事を付け加えておく。)

成り行きとは言え、正体がばれた事で任務継続が不可能となったルイズとジャンガは、『魅惑の妖精』亭の皆と別れた。
そして、姫様に報告をして任務は終了となり、二人は学院へと帰還した。


「ッたく…あれは疲れたゼ…」
ジャンガは大きく伸びをする。
「そういや、あんな事もあったな?」
そう呟き、別の日の事を思い返す。

それはまた別の日の事。
その日の朝の授業はミスタ・コルベールが嬉しそうに、珍妙な物体を教卓の上に、でんっ!と置いた事から始まった。
円筒状の金属の筒やパイプ、ふいご、車輪、扉がついた箱などが組み合わされた、
一見しただけでは何に使うのか解らない物だった。おそらくは何かの装置だろうと、ジャンガはあたりをつけた。
その物体=装置を生徒達は興味心身に見つめた。
コルベールは自分の持ってきた装置に生徒達が興味を示したのに満足した様子を見せると、
『火』系統の開帳を生徒達に促す。
生徒達の視線が『微熱』のキュルケに集まる。『火』と言えばゲルマニア貴族であり、
更にキュルケのツェルプストー家はその中でも名門であったがゆえの事だった。
事実、彼女は『火』系統が得意であった。
授業中だというのに爪の手入れを続けていたキュルケは「情熱と破壊が『火』の本領」と、気だるそうに答える。
そんな彼女の答えにコルベールは「破壊だけが『火』の司るものでは寂しい」という。
そしてキュルケに、それは何か?と聞かれ、装置の説明を始める。
曰く”油と火の魔法で動力を得る装置”だそうだ。その言葉に、ジャンガは装置が何であるのか検討がついた。
(なるほどな…エンジンかよ)
装置を動かしながら説明を続けるコルベールを見ながら、ジャンガは思った。
”向こう”では飛行機械や船、バイクなど様々な物に動力源として組み込まれている。
『魔法』が発達し、『科学』という概念その物が無いようなハルケギニアでは動力と言えば、
人か、馬か、魔法もしくはそれに等しい力を持った物しかなかった。
そう考えると、彼の作った装置はまだ魔法を使う必要があるとはいえ、画期的であると言えるだろう。
装置の働きで、扉の箱から『愉快なヘビくん』なる人形が飛び出すのを見ながら、説明をするコルベール。
それを、それがどうした?とばかりに、無関心な表情で見ている生徒達を見ながら、ジャンガは思った。
(まァ…魔法に染まりまくった貴族が、それもガキ共が理解できるはずねェか…)
魔法で動かせばいい、と言う者もいた。その意見にジャンガは笑った。
(精神力が尽きたらどうするんだよ?そもそも、物動かし続けるだけの奇特な貴族がいるのかよ?キキキ)
結局、コルベールの装置や”『火』は破壊だけではない”という彼の考えは生徒に最後まで理解されなかった。
(破壊以外の『火』の活躍ねェ…。そんな物あるかよ…、破壊を生むのが『火』だろうによ…)
皮肉な事を言うジャンガもコルベールの考えを理解しなかった。

…いや、受け入れなかったと言うべきだろうか?


「くわぁぁぁ~~」
唐突に欠伸が出た。くだらない事を思い返していたから、眠気が出てきたのかもしれない。
ジャンガはコートの裾で目を擦る……と、視界に映りこんだ物に眠気が失せた。
「ありゃ…」
眼下に本塔の入り口近くに停まる一台の馬車、それに見覚えのある赤髪と青髪の人影が乗りこむのが見えた。
もう誰一人としていないかと思っていたが、まだ残っているのが居たとは驚きだ。
二人が乗り込むと馬車は走り出し、正門を抜けていった。
「何処へ行くんだ?」
興味があるとばかりにジャンガは去り行く馬車を見据える。
すると、巨大な何かが空へと飛び上がった。…シルフィードだ。
ニヤリと笑い、ジャンガは本塔の屋根を蹴り、大きく跳躍する。
そして、寸分違わぬ正確さで、シルフィードの背中へと着陸した。
「きゅっ、きゅい!?」
「俺だ」
突然の事に驚き叫ぶシルフィードは、ジャンガの言葉にあからさまに嫌な表情を浮かべる。
「なんなのね!?いきなりシルフィの背中に飛び乗ってきて!!」
「これからご主人様とご旅行だろ?俺も連れてけ。なァに問題無ェだろ?この火トカゲだっているんだしよ」
そう言いながら、低い唸り声で威嚇するフレイムを見る。
「ふざけないでほしいのね!シルフィは誰でも乗せたりはしないのね!直ぐに降りるのね!」
「…いいのかよ、そんな事ほざいて?」
低い声でジャンガは脅しをかける。その言葉と発せられる殺気にシルフィードは身体を震わす。
「考えてみれば、空の上で竜の”解体ショー”ってのも中々楽しそうだなァ~?…キキキ」
シルフィードの中の何かが伝える、――こいつは冗談は言わない――と。
「この際だ……やってみるか?」
「解ったのね!!好きにするのね!!!」
シルフィードは半ば自棄になって叫んだ。その言葉にジャンガはニヤリと笑う。
「話が解ってもらえて嬉しいゼ。キキキ、なら後は頼んだゼ」
「きゅい~…」
元気の無い返事を返すシルフィード。
ジャンガは適当な背鰭を背凭れにし、大きく伸びをした。
「……」
シルフィードは考えた。このまま眠ってくれれば、隙を見て落とす事も出来ると――

「言っておくが、落としたら容赦しねえぞ?」

――釘を刺され、シルフィードはため息混じりに悲しげな泣き声を上げた。





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