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THE GUN OF ZERO-19


 ガリア王国、王女イザベラ。
 彼女は激しい気性で知られていて、それ故にあまり下からの人気はなかった。
 が、元より激しい気性の彼女は、今さらに不機嫌のただ中にあった。
 ここ一年、父王ジョゼフと話していない。
 元より親しい親子関係にはほど遠いではある。だからどちらかというと話さない事よりも、その話せない『原因』が、彼女を苛立たせていた。
 父の呼んだ使い魔、『ミョズニトニルン』。
 常に頭全体を覆う仮面を付けている男で、4年ほど前に呼び出されたらしい。
 その後ジョゼフとともに何かしているようだったが、詳しいことは何も判らずじまいで、そして一年前より、ジョゼフとは食事時に顔を合わせてもまともに話もしなくなった。
 側に置いていた愛妾、モリエールも同時期に宮殿から追い出されている。
 現状は不明だが、ジョゼフがミョズニトニルンの傀儡と化していることだけは、想像に難くない。
「おまけにあの使い魔……!」
 一ヶ月ほど前、北花壇騎士団であるタバサ、すなわちイザベラの従妹であるシャルロットをジョゼフ直属の地位にし、事実上己の部下として彼女を扱っていた。
 これまで従妹を死地へ向かわせることで鬱屈する気分を紛らわせていたイザベラにしてみれば、全くもって面白くない。
 そこでノックの音が部屋に響く。
「入りな!」
 イライラのまま、怒鳴りつけると、臆すような様子もなく扉が開き、入ってきたのはフルフェイスメットの男だった。
「失礼します。北花壇騎士団の7号欠番に伴い、派遣されてきました」
 ……それはまさに、先日ティファニアをさらったあの男だ。
(ちっ、ミョズニトニルンの手下か)
 フンとそっぽを向く。
「王女のあたしに会うんだから、仮面ぐらい取ったらどうだい!?」
「失礼しました」
 と頭を下げながら男がヘルメットを取ると、青いミディアムヘアが揺れた。
 その髪の色。一瞬血族かと思ったが、見覚えはない。
「アイン・バルシェムです」
 とその男――いや少年といってもいい背格好かも知れない。彼は告げた。
「ふん、名前なんてどうだって良いんだよ。お前は今日から北花壇騎士団の15号だ。いいね?」
「了解」
 アインが、こくりと頷いた。

 裏家業の伝手を使い、ティファニアを連れ去った仮面の男の足取りをマチルダ・オブ・サウスゴーダは突き止めていた。
 ガリア王国ヴェルサルテイル宮殿。その一角。
 見張りの目をかいくぐり、宮殿の深部へと向かう。
「……こいつだね」
 金を掴ませた衛兵より、無能王の呼び出した使い魔が間借りしている部屋の存在は掴んでいた。ティファニアらしき少女もここへ運び込まれたという。
 まずはどんな抗魔法が展開されているのか調べようと、杖を掲げた。ところへ
「よくぞ、ここまで入りこんだ」
 後ろからかけられた声にハッと振り向く。
 油断無く杖を構えながら、その男と相対する。
 顔は……判らない。連れ去った男とも違う、四つの目をあしらった仮面で頭全体が覆われている。
 体格は……判らない。全身が長いローブで覆われている。
「流石は怪盗、土くれのフーケと言ったところか」
 正体を言い当てられ、たらりと汗を流す。
(見破られていた……?いや、ここまで、おびき出された……?)
「お前の探し求めている人物は、まさにその扉の向こう側にいる。その扉の鍵には何も施していない。単なる機械的な錠前だ。トライアングルクラスの土のメイジであるお前ならば、容易く鍵を破壊して入ることが出来よう」
 仮面の男の、意図が読めない。
「何を……何を言ってる?何が狙いだい!?」
「フフフ……さしあたっての狙いは、お前達の再会だ。それで私の計画はまた一歩前進する」


 再会?自分と、テファの?
 ますますマチルダは混乱する。
「因みに、ここでの会話は、逐一中にいるお前の『妹』に聞こえるようにしてあるが……聞こえてこぬか?あのハーフエルフの娘の声が?」
 言われて、無意識のうちに耳を欹ててしまった。
『来ないで!姉さん!』
 聞こえた。確かに今、扉の向こうから聞き慣れた少女の声が。
「テファ!ティファニアなのかい!?」
『ダメ!お願いだから入ってこないで!』
 扉に耳を当てつけ、よりはっきりと声を聞く。
「フフフ……あの娘は会いたくないそうだが?このまま帰るか?ならば見逃すぞ?」
「大方、中で待ちぶせて居るんだろう!?やり方が古いんだよ悪党!」
「悪党、か……」
 一人呟く仮面の男などもはや気にも留めず、扉に向く。
「待っていなよ、テファ!今行くから!」
『やめて、お願い!やめて!』
 鍵のある辺りに目星を付け、そこを練金で単なる土くれと変えて扉を蹴破った。
「テファ!」
『いやぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁっぁああぁぁぁぁあああ!』
 マチルダが中に踏み込むと同時に、ティファニアの悲鳴が響いた。
「悪党は悪党でも、貴様程度の小悪党と一緒にするなよ、マチルダ・オブ・サウスゴーダ」
「あ……ああ……?」
 眼前の光景に、立ちすくんだマチルダの膝が頽れる。
「私はやがて、神ともなるほどの大悪党だぞ?」
『見ないで……姉さん……!』
 マチルダの目の前、ティファニアはガラスの筒のようなものに入っていた。
 ワイヤーに吊されているその身体に、異性が思わず引きつけられる程だったバストは無い。何度も繋いだ手も、無い。ともに森の中を歩いた足も、無い。
 四肢が失われ、首から下の皮膚は奪われ、内蔵の大半も消え、管だらけにされながらも生かされているティファニアがそこにいた。
「フハハハハハハハハハハハハ!この娘、そのような身体にされ、さぞや会いたくなかっただろうにな!願いを聞かなかったのは貴様だぞ?フハハハハハハハハハハハハ!」
 仮面の男、ユーゼス・ゴッツォの笑い声が辺りを支配する。
「こ、んな……こんなのは、単なる偽物だっ!本物のテファをどこにやった!」
 立ち上がりながら、ユーゼスに詰め寄るマチルダ。
「長年ともに生きてきた少女に対して酷いことを言う女だ。あれが偽物だと言うのならば、破壊してみてはどうだ?あの筒も、何ら魔法の保護はかけていない。お前の作り上げるゴーレムならば何の障害もなく破壊出来よう」
「何だと!?そんなの!」
 ユーゼスの言葉に、バッと振り返り、再び筒の中、泣き顔で目を伏せているティファニアと対峙する。
 そうだ。こんな筈はない。あの子はきっと、どこかでちゃんと五体満足に居る。こんなのは、あの何かたくらんでるらしい仮面の男が、自分を陥れようとして作っているだけのアルヴィーで……。
『姉さん……』
 目を伏せていたティファニアが、マチルダを見る。
『……お願い、殺して。こんな姿でまで、生きていたくなんて無い……』
「て、テファ……!」
 その目が、口調が、どうしようもなく見慣れたもので。
「フフフ……苦労したぞ?本来なら、そこにいるガリア王のように、脳だけでも良いのだがな」
 ユーゼスの視線が隣の筒に移る。そこには、脳と脊椎、目玉だけが浮いていた。
「実験のために、見知った人間ならばあれが明らかにティファニアであると判るようにしなければならなかった。顔を残し、顔を残すために頭は残し、声を残し、声を残すために気道は残し、電荷したLCLに……」
「お前ぇぇぇぇぇええええ!」
 ユーゼスの言葉を、マチルダは最後まで聞こうとはせずに、手近な壁を片っ端から土に練金してゴーレムの腕だけを仕立て上げ、ユーゼスを殴りつけた。
 ユーゼスの身体は軽く宙を舞い、壁に打ち付けられ、そこで、本性を明かした。


「スキルニル!影武者!?」
 気づいた時にはもう遅く、マチルダは背後からエア・ハンマーを後頭部に喰らい、昏倒した。
 ふらつく頭でどうにか下手人を見定めようと顔を起こす。
「ぐ……く……」
 居た。わんさか居た。これまでどこに隠れていたのか。全員が全員ティファニアをさらった奴と同じようなフルフェイスメットを付けていた。
 そしてそいつらの杖全てがマチルダに向けられている。
「フフフ……土のトライアングルメイジ、『土くれ』のフーケ。調度良いサンプルだ」
 本物のユーゼスが現れ、邪悪な笑いを響かせつつマチルダを見下ろした。
『姉さん!姉さん!』
「連れて行け」
『ねえさぁぁぁぁん!』
 フルフェイスメットの部下達に、衝撃で未だに立つことの出来ないマチルダを連れて行かせ、自身はその部屋にある機器に向かう。
「フフフ……やはりな。私の立てた推論は間違っていなかった。ティファニアの魔力量が増大している……」
 そこに表示されている数値に満足げに頷くと、側にいる一人に声をかける。
「ギメルは、未だに安寧か?」
「はっ。洗脳の可能性を考える者は居るようですが、皆、王そのものは本人だと信じております」
 ユーゼスの問いに、ダレット・バルシェムが答える。
「そうか……先頃の集団詠唱実験も成功……フフフ、全ては、私の計算通りだ」
 暗く、仮面の裏で笑った。
 今のジョゼフは、替え玉である。本物は先程のむき出しの脳だ。
 サンプル調整用の培養槽で『虚無』の魔法を解析するためにジョゼフの肉体を殺し、脳だけにしたのだ。
 一年前、ガリア王を唆し世界扉〈ワールド・ドアー〉を開いてネビーイームを手に入れたユーゼスは、ネビーイーム内部の施設全てをガリア王宮内に持ってくると共に、眠っていたアーレフ・バルシェムとヴェート・バルシェムを反乱の危険性があるため即刻処分。
 ギメル・バルシェムを建造し、ガリア王の真似をさせていた。
 そして今、周りにいるフルフェイスメットの者達も全て、バルシェムである。
 それも、この世界のメイジの遺伝子を研究した上で、全員が4系統全ての魔法を使えるスクウェア・メイジとして開発された者達であった。その軍勢はじきに百を超える。
 クォヴレーがその動向を察知出来ないのも無理はない。
 動くのなら機動兵器でと思っているクォヴレーである。メイジ化したバルシェムなど、想像の外であった。
「……あの男の動向は?」
「本日、シャルロット様からの報告があるはずです」

 元北花壇騎士団7号タバサ、彼女は今日王から……というかどう考えてもその使い魔であるミョズニトニルンからの命令による、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔クォヴレー・ゴードンの監視報告を行うべく王宮へ来ていた。
 王宮内の廊下を進む中、タバサの体が硬直する。
 そこにあり得ない物を見た気がしたからだ。
「うん?人形じゃないか……ふん、何やってんだいこんなところで」
 忌々しげに自分を睨む従妹。それはいい。それよりも問題なのは
「ふん、人形は王女さまに挨拶も無しかい。操り糸の切れた人形なんて何の意味も……あん?こいつかい?」
 完全に硬直しているタバサの視線が、自分の後ろにいる男に向いていると気づいてイザベラが話し出す。
「あんたの代わりに入った15号さ」
 その、男の顔が
「けど、あたしはあんたを戻すのを諦めた訳じゃないからね?いつ戻ってきてもすぐに使ってやれるように、7号の席は空けといてやるよ!」
 サディスティックな笑みを浮かべたまま通り過ぎていくイザベラ。
「…………」
 後に続いて無言のまま通り過ぎていく15号。その顔は
「……クォヴレー・ゴードン……」
 髪の色が違う。服装も違う。だが、あの顔だけは見間違えようがない。ここ最近、最も注視してきた男の顔だ。


 あの、悪魔使いの男と、全く同じ顔の男が、何故ここに?

「入ります」
 一声かけて、タバサが謁見の間に入る。
「報告を受けよう」
 一年ほど前から叔父の声は聞いていない。謁見の間に来るのも、全て仮面のミョズニトニルンだった。
 尋ねられるがまま、この一週間クォヴレー・ゴードンの身の回りに起きたことを話す。二体のゴーレムが現れたこと、そしてその主であるらしい二人の男。
「ご苦労だった。陛下もお前の働きに大層お喜びのようだ」
 白々しい言葉に反応するつもりはない。
「……そこで、だ。私から一つお前に良いことを教えてやろう」
 スッとミョズニトニルンが指を一本立てた。
「お前の母を狂わせた薬、あれはどうやらエルフに作らせた物らしい」
「!?」
 タバサは驚愕に目を見開いた。
「エルフであれば、解毒薬を作れるかも知れんな……?」
 どういうつもりだ?何故そんなことを自分に教える?
「フフフ……驚いているようだな」
「……何故?」
 短く疑問詞だけを口にするが、それで意図は通じたらしい。
「私の善意、といっても信じぬだろう」
 低く仮面の下で嗤う。
「確かに私は何かを企んでいる。そしてその計画のためには、お前にその事実を知ってもらう必要があった。それだけのことだ」
「……何を……企んでる?」
「フフフ……それを言っては企みになるまい。だが、少なくとも嘘は言っていない。そして、よしんばお前の母が治ろうと治るまいと、私にとっては至極どうでも良いことだ」
「…………」
 どうにか、真意を推し量ろうとするが、判らない。読めない。
「では、そうだな。こういうことにしておけ。私は今後、オルレアン公の旗の下でお前にこの国の実権が移ると予測し、今のうちに恩を売ろうとしているのだとな」
「…………」
 確かに、それならまだ、納得出来る、か……?
 だが、こいつはジョゼフの使い魔ではなかったのか?
 いやしかし、それならば主を傀儡と化していること自体が既に異常だ。本気で主のことはどうでも良いのかも知れない。
「まぁ最も、この事実を知ったところで簡単にはいかぬか。何しろあのエルフ共から素直に解毒薬がもらえるとも思えんからな」
 ミョズニトニルンのその言葉で、此度の報告の任は終わった。





ユーゼス=ガリア製量産型バルシェム

ネビーイームの設備全てをガリア王宮ヴェルサルテイル宮殿に運び込んだユーゼスが作り上げたバルシェム。
ユーゼスがこの世界で解析したメイジの遺伝情報を元に調整が施されており、土・火・水・風全ての属性を持つ。
普通のメイジが先天的に持つのは一属性のみで、生後に習得する属性も、単体で使うと先天的一属性に劣るため、先天属性と絡めて使うのが一般的である。
しかし、このバルシェム達は全属性を先天所持するため、各属性を有効に、かつスクウェアの詠唱速度で唱えることが可能。
……ただ、便利とはいえ、属性をばらけさせてしまっては、最大火力に置いて普通のメイジに劣ってしまう。ユーゼスも、それは理解しているはずなのだが……?

備考:ゼロ魔とタロットとバルシェムと

イザベラの下に配されたアイン・バルシェムが、北花壇騎士団15号の番号を付けられたことに、第三次αを知っている人は首をかしげるだろう。
α世界のアイン・バルシェムであるクォヴレーは、バルシェムの16号体であったのだ。それをモチーフとするのならば、16号の番号を振るのが普通だ。
だが、タロットにおいて、ヘブライ語で「アイン」の文字を振られている『悪魔』のカードは、カード番号は15が割り振られているのだ。
これは、タロットの一番始めのカードに付けられている番号が1番ではなく0番となっていることから起きているズレ込みだ。
つまり、タロットにおいて、「アイン」は15なのだ。
タバサの持つ北花壇騎士団7号という数字があるが、タロットの7番カードは『戦車』であり、ウェイト板タロットの解釈において、『戦車』は「復讐」を意味する点にも留意しておきたい。

……ここまでの説明で既に察している人も居るかも知れないが、タロットの一番始めのカード、0〈ゼロ〉番カードには「アーレフ」のヘブライ文字が宛てられており、ルイズがクォヴレーを呼び込んだことといい、浅からぬ因縁が感じられる。

なお、0番カードは『愚者』である。そこに並んでいる意味は、
正位置の意味
自由、型にはまらない、天才。
逆位置の意味
軽率、わがまま、落ちこぼれ。
正逆共にどこかの某貴族の三女、そのままである。




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