あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと波動 第4話



「行け!ワルキューレ!!」
ギーシュが薔薇の造花を振るとともに、ワルキューレがリュウに飛び掛る。
青銅製の右の拳がリュウを襲う。

「ふんっ!」
襲い掛かるワルキューレの右の肘の辺りを左手で内側に払いのける。
力の方向を変えられたワルキューレの拳は虚しく空を切り、その勢いで身体も内側に半回転する。
リュウが左足を半歩前にずらし、重心を前に移すだけでワルキューレはリュウに対して完全に横を向いた状態になってしまった。

リュウはすかさず右の拳でワルキューレの腹を、弧を描くように打ち据える。

ボゴンッ!!
尋常でない大きな音と共にワルキューレの腹にめり込む拳。
目にも留まらぬ速さで拳を引き抜くと、続けざまに左の拳を、同じく弧を描くようにワルキューレの背中に打ち込む。

ドゴンッ!!
再び大音響と共に背中にめり込む拳。
左手も引き抜くと、右手でワルキューレを押して距離を作りながら右の爪先を軸にして踵を前に出す。

「ふんっ!!」
左足が大きな円を描きながらワルキューレの首を背後から捉える。

ギチャッ!!
激しい音と共にワルキューレがもんどりうって倒れる。

一連の動作が終わるまでに一呼吸の間さえなかった。
目で追うことすらままならない雷光の攻撃。

先ほどまで口々に騒いでいた野次馬たちは一瞬で静まり返り、倒れたゴーレムに視線を落とす。

倒れて動かなくなったゴーレムを見てみると腹と背中が大きくへこんでいるし、首から上もおかしな方向に曲がっている。

「嘘だろ・・・いくら青銅が硬くはないとはいえ、金属には違いないんだ・・・殴っただけでこんなになるものなのか?」
野次馬の誰かが呟いた。

中が空洞のゴーレムとはいえ、装甲自体もそれなりに厚さはある。
人間が殴ったところで、へこむはずがないのだ。

静寂の中、リュウが告げる。
「もう一度言う。本気でかかってきたほうがいい」

リュウは拳を握り締めた。




「何よ、メチャクチャ強いじゃない・・・」
拍子抜けしたように杖をしまうキュルケ。

リュウが本格的に危なくなったら援護しようと思い、親友のタバサを無理やり引き連れて身構えていたのだが、どうやら徒労だったようだ。

「全然本気だしてない・・・」
タバサが呟く。
先ほどまでは本から一切目を離さなかったタバサだが、リュウが身構えてからはずっとリュウを凝視している。

「あなたが本以外に興味を示すなんて珍しいわね」
ルイズよりも更に小柄な青い髪に青い瞳の少女――タバサは決闘が始まってからじっとリュウを観察していた。

「あの人・・・強い・・・」






「くっ!」
あっさりと倒されたワルキューレを見て、慌てて次のワルキューレを練成するための呪文を唱える。
「ならば、これでどうだっ!」

今度のワルキューレは2体。それも、それぞれ手に青銅製の長剣を携えている。
「続けっ!ワルキューレ!!」
号令と共に同時に襲いかかる。

自分の頭めがけて長剣を振り下ろしてくるワルキューレの懐に一瞬で潜り込むと、振り下ろされる剣を持つ腕を掴むリュウ。

太い腕が更に膨れ上がり、血管が浮かびあがる。
同時にミチミチッという鈍い音と共に指が青銅に食い込んでいく。
ワルキューレは腕を振りほどこうともがくがリュウの腕は微動だにしない。

リュウは身を沈めると、腕を掴んだまま自分の肘をワルキューレの脇の下にあてがい、背中に担いでもう一方のワルキューレに向けて投げつけた。

ガチィンッ!!
青銅同士がぶつかる激しい音と共に、2体のワルキューレは互いを潰しあう形になり、またもや動かなくなってしまった。

リュウは静かに構え直すと、再びギーシュを見据える。
ギーシュを射抜くその瞳には、激しく、熱く、眩しいほどに強い光が浮かんでいた。




「そんな・・・馬鹿な・・・」
がっくりうなだれるギーシュ。
力なく降ろされる杖。
目の前で起こったことが信じられなかった。

青銅製のゴーレム3体を苦戦すらせずに、それも素手であっさり破壊するという信じられない光景にギーシュは取り乱しそうになる。
が、なんとか正気を保ち必死で思考を巡らした。

相手は魔法も使えない、ただの平民じゃないか・・・
その平民相手に何で貴族の僕が苦戦しなければならないんだ。

 ・・・いや、違う。
貴族とか平民とか、そんなことは関係ないな。
間違いない、彼は強い。
それも、信じられない程に、強い。

多分、自分が何体ワルキューレを練成しようとも、正面からでは彼には勝てない。
しかも、今の僕の実力で練成できるワルキューレは後4体だけ。
4体だけで勝てるか?
いや、勝てるワケがない。

ならば降参するか?

 ・・・いや、諦めるな。
僕は軍人の家系、グラモン家の人間なんだ・・・
負ける訳にはいかない。
勝たなければならない。

それは相手が平民だからではない。
僕がグラモン家の人間だから・・・いや、それすら違うな・・・
一人の男として、あの尋常ではなく強い男に出来得る限りの力をぶつけてみたい。
そして、勝ちたい。
いや、勝ってみせる・・・!!

この4体であの化け物のような男をなんとかするんだ。
なんとかしなければならない。
ならば考えるんだ。
きっと策はある。

 ・・・考えろ・・・考えるんだ僕・・・




ギーシュの顔つきが変わった。
瞳にはこれまでとは違う、強い意志の光が浮かぶ。

それは今までのような相手を小馬鹿にした、見下ろすような目ではなく、
自分よりも遥かに巨大なものに挑む者の目。
挑戦者の目だった。

一度は力なく降ろした杖を再び構え直すと、油断なくリュウを睨みすえる。




 ・・・良い面構えじゃないか・・・
リュウは穏やかな気持ちでギーシュの変化を見つめていた。

甘やかされて育った、傲慢で我侭な子供だった顔はそこにはもうない。
一人の戦士の顔が、そこにあった。

そういえばオロの爺さんが言ってたが・・・
俺には、相手に知らず知らずのうちに100%以上の力を引き出させる力があるんだっけな・・・

リュウは決めた。

「手加減はせんぞ」
真紅のハチマキを締め直すと宣言する。

本物の戦士相手に手加減するなど、侮辱以外の何物でもない。
一方ギーシュはそんなリュウの一挙手一投足を細かに観察し、必死に考えていた。

なんでもいい、とにかく、少しでも情報を得て、戦果に繋げてやる。
そして、認められたい。
この途轍もなく大きくて強い男に、認めてもらいたい・・・


「この俺を、倒してみろ」

新たに構え直すと、リュウの雰囲気がこれまでと明らかに変わった。
全身から目に見えない圧力――プレッシャー――のようなものが溢れ出し、ギーシュを圧倒する。
ともすれば押し潰され、気を失いそうになる。

ギーシュはその途方もないプレッシャーに必死で耐え、リュウを中心にじりじりと円を描くように回る。
リュウを中心に半円ほど回ったあと、突如ギーシュがリュウに向かって走り出した。
どんどんリュウに近づく。

リュウから発せられるただならぬ圧力と、それにも関わらずリュウに向かって走っていくギーシュに
周りの野次馬たちから「やめるんだ!」とか「殺されるぞ!」と静止の声が飛ぶ。
だがギーシュは止まらない。
もうあの男の射程圏内かも知れない。

今あの男が青銅すら軽く粉砕する拳を振れば、僕の身体には簡単に風穴が開くだろう。
顔を殴られたらあまりいい死に顔ではなくなるな・・・
いや、それ以前に首から上が消し飛ぶかな。

まるで他人事のようなことを考えながらリュウに向かってただひたすら走る。
まだ止まらない。
もう少し・・・もう少しなんだ・・・
ギーシュは必死に走る。

そして、走りながら呪文を唱えるとリュウの目の前でついに薔薇の造花を振った。
「ワルキューレよ!!」



 ・・・・・・

だが、リュウの目の前には何も現れない。
ギーシュの杖が、ただリュウを指すだけ。
「そんな・・・走りながらで呪文を間違えたのか!?」
愕然とするギーシュ。

「闘いの最中に慌てるのは良くないな・・・」
リュウが拳を固め、ギーシュに狙いを定める。

そのとき、リュウの背後から青銅の剣が振り下ろされた。
ワルキューレは練成できていたのだ。
ただし、リュウの真後ろに。

ギーシュは自分の作戦が成功したと悟った。
リュウの視界の中にいたのではワルキューレに勝ち目はない。
だが、後ろからならば流石にかわせまい。

後ろから不意に切りかかるなど多少卑怯な気がしないでもないが、今の自分にこれ以上の策は思いつかない。

ただ、その為にはリュウに近づかなければならなかった。
錬金は自分の目の前でしかできないのだ。
そのために、まず自分の足元に花びらを1枚落としてからリュウの反対側まで移動した。
そしてリュウに近づく。
リュウの後ろにワルキューレを練成できるギリギリの距離まで走った。

桁外れた殺傷能力を誇る上にただならぬ圧力を撒き散らすリュウに近づくのは正直生きた心地がしなかったが、
勝てる可能性があるのはこの方法だけに思えた。

もし失敗して死んでしまったとしても、まあ仕方ないか。
ぐらいにまで覚悟はできていた。
だが、その覚悟は功を奏し、今、リュウ目掛けて剣が振り下ろされている。

しかし、リュウはまるで最初から解っていたかのように身体をずらして剣を避けると後ろに向かって蹴りを放った。

――ギーシュが造花を振るとき、俺の目の前ではなく、俺の背後を見ていた。
先ほどの3体は常にギーシュの視線の先に出現していた。
つまり、次に出現するのは自分の後ろ。――

そしてギーシュの瞳に歓喜の色が浮かぶ。
今、まさに銅像は自分を襲っているはずだ。
そこに右の足刀を叩き込む。

ガボンッ!!
大音響と共に右足がワルキューレの胴体を貫く。

が、ワルキューレは自分の胴体が貫かれたまま自分の両腕両脚を使ってリュウにしがみつく。
「今だ!!行け!!ワルキューレたち!!」
ギーシュは叫ぶと再び杖を振った。
杖に残っていた3枚の花びらが、リュウの目の前でワルキューレとなり出現する。
しがみつかれて咄嗟に身動きの取れないリュウに襲い掛かる3体のワルキューレ。

2段構えの策だった。
最悪、後ろからの攻撃を避けられてもその1体でなんとかリュウの動きを封じることさえできれば、残り3体のワルキューレで一斉攻撃ができる。

そしてリュウは都合よくワルキューレを足でぶち抜いてくれたのだ。
ここまで密着してくれれば、いくら人間離れした力とはいえ、ほんの少しの間ぐらいなら動きを封じることも不可能ではない。



「勝った!!あの男に勝ったぞ!!」

ワルキューレたちの剣が今まさにリュウに届かんとした刹那・・・





―――― 滅 ――――

突如、リュウの身体からこれまでとは比較にならないほどのプレッシャーが噴き出した。

それはあまりにも明確な殺気。
遍く全てを死に至らしめる負の波動。

自分が目指す”真の格闘家”への道の上で、最大の壁であった
”拳を極めし者”がその身に纏っていた”殺意の波動”と呼ばれるもの。
その入り口程度までならなんとか飼いならせるようになった、悪鬼羅刹のごとき力。

あまりにも濃厚な禍々しい殺気にリュウの周りが一瞬暗くなったような錯覚を覚える。
自由に身動きできなかったはずのリュウが、しがみついているワルキューレを何事もなかったかのように自分の身体から剥ぎ取る。

紙のように簡単に破り裂かれる青銅製のゴーレム。
そして、迫りくる3体のワルキューレに向けて刹那の間に放たれる無数の拳。

――― 一瞬千撃 ―――

何十とも何百とも知れない無数の拳を受けた3体のワルキューレは最早人形の形すらしていなかった。

そして最後の一発がギーシュの目の前、鼻先1サントで止められる。
と、同時に辺りを支配していた暴風雨の如き殺気も霧散する。



「おおおおおっっ!!」
静まり返っていたギャラリーたちから大歓声が起こる。

「平民が勝ちやがった!!」
「ギーシュ!情けないぞ!」
「じゃあお前ならあの平民に勝てるのか?」
「勝てるに決まってるだろ!相手は平民だぞ!」
「そうかな?僕には勝てる気がしないなぁ」

平民に負けたギーシュを非難するものもいれば、
多少理性のあるものはギーシュでなくともあの平民に勝つのは至難の技だと知り、ギーシュを庇う者もいる。

キュルケやタバサも後者だった。
もっとも、ギーシュを庇うようなことは言わないし、思いもしないが。

「タバサ・・・今の最後の見た?」
「見た」
「貴女ならあれが何か解る?」
「・・・解らない」

ふるふると首を振るタバサ。
幼くして数多の死線を乗り越えてきたタバサにも、今しがた何が起こったのか理解できなかった。
ただ、尋常ではない殺気が突然あの男から膨れ上がった。
あの殺気は常軌を逸したものである。
解ったのはそれだけ。

「気になる・・・」
誰ともなく呟いたタバサはしばしリュウを見つめたあと、再び本に視線を落とした。
再び本を読みふけりだしたタバサを見て、これ以上何を聞いても無駄だと思ったキュルケは肩をすくめるのだった。



本当に一瞬の出来事だった。
ギーシュには何がおこったのか全く解らない。
ただ自分の作戦はまったく通用しなかったのだということは理解できた。

「ま・・・参った・・・降参だ・・・」
花びらを全て失った杖を手放し、がっくりと項垂れるギーシュ。

真剣だった。
生まれて初めて、心の底から勝ちたいと願い、その為ならどんな犠牲を払っても、
たとえ死んでも構わないとまで思った。

だけど・・・

「ここまで次元が違うと、もう悔しくもないね・・・」
顔を上げると、笑顔で努めて明るい口調で語った。だが顔は蒼いし、目には涙が滲んでいる。

「いや、そんなことはない。いい勝負だった
”殺意の波動”を使わなければ危なかったかもしれないしな。あれはいい作戦だった。」
優しく声をかけるリュウ。

”かも”ね・・・
苦笑いしながらそれを聞き、同時に疑問も浮かぶ。
「サツイノハドウ??」
まだ蒼い顔をしたまま首をかしげるギーシュ。

「ああ、最後に使ったやつのことだ。俺の取って置きの技みたいなもんだ。
使うつもりはなかったんだがな、そうも言っていられなかった」

「そうか・・・僕は君・・・いや、貴方にほんの少しぐらいは本気を出させることができたんだね・・・」
リュウの言葉が自分を思いやってのものだとは判っていたが、それでも多少は救われる。
きっと、本当は”サツイノハドウ”など使わなくとも勝てたのだろう。

死ぬことすら覚悟して戦ってみて実感した。
この男の強さは常軌を逸している。
自分がドットメイジだからとか、そういう問題ではない。
なんというか、人間の範疇を超えているとしか表現のしようがないのだ。

それほどまでの強さを持ちながら、それでもわざわざ”サツイノハドウ”とやらを使ってくれたのだ。
リュウの心遣いが嬉しかった。

「今はまだ俺の方が強いかもしれないが、君は若いし、それに戦う男の顔をしている。そのうち追いつくさ」
リュウは笑顔で右手を差し出し、付け加えた。

「少しずつ強くなっていく、それがいいんだ」

ギーシュも右手を出そうとして・・・汗でドロドロの自分の右手に気づくと、自分のド派手なシャツが汚れることも気にせずゴシゴシと拭いてからリュウの右手を握った。

そして、全てを包み込むようなリュウの右手に、ギーシュは一生かかっても
強さ共々、この男の大きさには追いつけないと思うのだった。



「ちょっと!!どういうこと!?」
ルイズが半べそで叫びながらリュウに駆け寄る。

「何がだ?」
「ドットとはいえ、ギーシュはメイジなのよ?それなのにあんなにアッサリ勝っちゃうなんて、アンタ何者なの!?」

先ほどまではちょっと変わったただの平民だと思っていた。
だからギーシュに殺されると思い、本気で心配したのだ。

いざとなったら無理矢理にでも間に入って決闘を阻止するつもりだった。
それが蓋を開けてみればどうだ、あの強さは・・・戦う様などまるで鬼神ではないか。

「ただの格闘家さ」
涼しい顔で答えるリュウ。
「答えになってないわよ!!」

「ええと・・・ちょっといいかな」
ギーシュが遠慮がちに二人の間に割って入る。

「何よ!?まだなんか文句あるわけ!?」
「文句だなんて滅相もない、キミのことをゼロと罵ったことを謝ろうと思ってね・・・」
「え?」
「それに、君の使い魔をみすぼらしい物乞いだなどと蔑んでしまった。心底、自分を恥ずかしいと思うよ。本当にすまなかった。この通りだ」
「え?え?」
深々と頭を下げるギーシュに困惑するルイズ。

いつまでも頭を下げているギーシュ。
それにどう声をかけていいのかわからないでいるルイズだったが、リュウに背中を優しく押されて慌てて口を開く。
「べ・・・別にいいわよ。そんなこと。今度からは気をつけてよね!」

「そうかい、ありがとう。早々だけどこれで失礼するよ。あと3人に謝らないといけないからね」
恥ずかしそうに告げるとギーシュはその場を後にした



滅多に見れない一大イベントも終わり、野次馬たちも徐々に去っていく。
貴族の前に出ることなど出来るはずもなく、それまで後ろの方でハラハラしながら見ていたシエスタはようやくリュウのそばに辿り着くと、そのまま抱きついた。

「リュウさん!すごい!!すごい!リュウさん!!」
満面の笑顔でリュウの胸板に顔を擦り付けるシエスタ。
彼女の大きな胸も否応なしにリュウに押し付けられる。
どうしていいかわからず、苦笑いを浮かべるリュウ。

「なっ!?」
ルイズの額に青筋が浮かぶ。

「ちょぉぉぉっっっとぉぉぉっ!何してんのよっっ!」
リュウからシエスタを引き剥がそうとするがびくともしない。

「だって!リュウさんが無事で嬉しいんですもんっ!」
怪力メイドパワー全開のシエスタを引き剥がすには、ルイズはあまりに非力過ぎた。

さっきも思ったけど、何?使用人って皆こんなに力が強いものなの!?
毎日肉体労働やってるのは伊達じゃないってわけね・・・
そもそもコイツ、わたしがさっきから引き剥がそうとしてることに気づいてるのかしら?

 ・・・行動で解らないなら言って解らすまで。
「アンタ!!貴族に逆らう気っ!?」

貴族という言葉を聞いて「はっ」とするシエスタ。
慌ててリュウから離れる。

「も・・・申し訳ありません!!その・・・あまりに嬉しくてつい・・・」
ひたすら頭を下げるシエスタ。

「まあ、リュウを心配してくれてたみたいだから、今回は見逃してあげるわ。でも、次はないから覚えときなさい」
ゼェゼェと肩で息をしながら告げる。
シエスタは「ありがとうございます!」と嬉しそうに言うと、深くお辞儀をしてからパタパタと走り去っていった。

あ・・・今あのメイド、スキップした・・・
ルイズはなんとも複雑な気持ちでメイドを見送るのだった。




騒動も一段落し、授業を受けるため、教室に向かうリュウとルイズ。
「あのメイドとはどういう関係なの!?やけに仲良さそうじゃない!っていうか、いつ知り合ったのよ!」

「ああ、洗濯する場所を教えてもらったり、飯を都合つけてくれたりな。
彼女にはいろいろと世話になりっぱなしだ。何か、彼女の力になれればいいんだけどな」

飯の都合・・・思い出した!
決闘騒ぎで完全に頭から離れていたが、自分はリュウを怒らせたのだった。
謝らなければ・・・でも本人も怒ってないみたいだし、何もなかったように振舞っても・・・
いや、それはダメだ。
これはケジメなんだ、ちゃんと謝らないと。

「ちょ・・・ちょっと、リュウ?」
「なんだ?」
爽やかな笑顔を向けるリュウ。

うう・・・謝りづらい・・・

元々人に頭を下げるなど殆どしたことのないルイズにとって、謝るという作業はなかなかに難しいものだった。
「あ・・・あのね!ご・・・ご・・・ごごごごめごめごめゴメ」

ダメだ・・・たった一言ゴメンナサイと言うだけなのに、言葉が出ない。

「ん?」
ルイズの発する謎の呪文にいぶかしむリュウ。

「ご・・・ゴメス!!」
「誰だよ・・・」

何言ってるんだわたし!?リュウが気味悪がってるじゃない!

「じゃなくて!ご・・・ごご・・・合格よ」
「ん?」
「わわわわたしの使い魔として、ごごご合格って言ってるの。ご主人様を守るには、十分ってことよ!」

だあああああっ!違う!言いたいのはそんなことじゃない!!
心の中でブンブンブンと頭を振る。

「そうか。それは何よりだ」
リュウは優しい。メイジをものともしないほど強いのに怒るでもなく、わたしを受け入れてくれる。
わたしもそれに応えなければ・・・

ルイズは意を決した。

「・・・それと・・・めん・・・さい・・・」
消え入りそうなルイズの声。
「ん?」
聞き返すリュウ。
「ごめんなさい・・・次からは、食事のとき、ちゃんと私の隣に席を用意するから・・・」
下を向いて弱々しく謝るルイズ。

「そうか」
リュウは笑顔でルイズの頭に手をおき、桃色の髪をクシャクシャと撫で回した。
先ほどの恐ろしいまでの破壊力を秘めた手と同じとはとても思えない、大きくて暖かな手だった。



新着情報

取得中です。