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絶望の街の魔王、降臨 - 07



 ジルが甲高いエンジン音と共に帰ってくると、怒髪天を突かんばかり形相のルイズが出迎えてくれた。
「ジルぅぅぅぅぅ……ご主人様に黙ってぇぇぇぇぇぇぇ……」
「ギーシュに伝言を頼んだ筈だけど」
「そういう意味じゃない!それに、その娘誰よ!?」
 ギャーギャー騒ぐルイズを軽くあしらい、コルベールの研究小屋へ向かう。
「話を聞けェェェェェェェェェェェェ!!」
「コルベール、いるかしら?」
 呼び捨てである。いつの間にそんなに親しくなったのか。しかし、ファミリーネームなのは何故だ。
「おお、ミス・ヴァレンタイン。どうでしたかな、その……Y2Kは?」
 夢溢るる少年の瞳輝く満面の笑顔で現れたコルベールは、真っ先にY2Kの心配をした。容姿以前に、これはもてない。ミス・ロングビルへの恋はブレイクアウト間違いなしだ。
「ガリアまで行ってみたけど、問題なかったわ。燃料が切れないのは魔法かしら?」
「はて?燃料ですか」
 首を傾げるコルベール。乗り物であることはジルに教えられたが、それに『燃料』が必要なのは知らなかった。
「軽油……といっても判らないわよね?」
「それが燃料ですかな?」
「そう。もしもの時のために、増産しておいてくれると嬉しいわ。暇な時は手伝うし……あ、それよりも」
 四次元サイドパックから、輸血パックを取り出す。
「これを複製して欲しいのよ。なるべく早く」
「これは……血の様にも見えますが」
「ご名答。中身は私の血。重傷の時、流れた血の補填に使うのだけど……」
 そこでジルは言葉を切り、小屋の外に出る。日陰でルイズと話していたエルザと、ついでにルイズを呼び込む。
「さて、ここから先は他言無用よ。いいかしら?」
 何がなんだか判らないまま連れてこられたルイズはともかく、コルベールは頷く。
「この娘、吸血鬼」
「…………」
 世界は、確かに止まった。
「便利そうだから従えてみたの」
 そして時は動き出す。
「ななななんあなななななななんあななんななあななん……」
 あまりの事に混乱し奇声をあげるルイズと、好奇心で冷静にエルザを眺めるコルベール。断じてロリータ・コンプレックスではない。
「成程、だから血が必要なのですな?」
「そうなの。血さえ定期的にあげれば基本的に無害だし、魔法を使えるし、外見は子供だし、とっても役に立ちそうだから」
「な、なんで吸血鬼を!?」
 やっとある程度頭の冷えたルイズが、人間語を話す。
「何でって、前述の通りよ。意志の疎通もできるし、なんら問題は無いわ」
「ありまくりよ!!よりにもよって、この世で最も忌むべき存在、吸血鬼を!!」
「ああもううるさいわね。エルザ、眠らせて」
「らーじゃーだっと!」
「なにをする!?」
 ジルの命で眠りの魔法を唱えるエルザ。その従順さに、コルベールは感心する。
「ほう……いったいどうやって従えたのですかな?」
「飴と鞭よ。言う事を聞いたら安全と血を保障する、だけど悪さをしたら殺す。それだけよ」
 静かに寝息を立てるルイズを負い、エルザの頭を撫でる。エルザは眼を細めて、嬉しそうに笑う。

「それに、マスターの血は美味しいの。人間が私を狩らないなら、殺す必要もないし、マスターの近くなら安全なの」
 確かに、これ以上安全な場所は無いだろう。
「それで、できるかしら?」
 コルベールは、渡されたそれがもたらす苦悩を、今はまだ知らない。



 その夜。
 ルイズはジルの真摯な『説得』により、エルザを部屋に置くことに消極的同意をせざるを得なかった。
「何か変な事したら、容赦なく爆殺すること!いいわね!」
 過程と手段はともかく、了承してしまったのだ。それを違えることは貴族としての沽券に関わる。
「じゃあ、明日からジルと一緒に仕事すること。いいわね?」
 ルイズの命に、エルザは反応しない。
「ねえ、聞いてる?」
「何故?ルイズはマスターじゃないのに、私に命令するの?」
 結論は簡単。ルイズはエルザにとってマスターか、それ以上の存在ではない。それだけだ。
「なっ……」
「エルザ、働かざる者食うべからず、よ。一応、普通の食事をくれるのはルイズなんだから」
 ルイズの堪忍袋の緒が切れる寸前に窘める。
「わかりました、マスター」
 これではっきりした。エルザは、ジルの言う事しか聞かない。
「わかればいいのよ」
「何故偉そうなの?ルイズ」
「ご主人様と呼びなさい!!」
「嫌よ。私のご主人様はマスターだけ」
「くぬう……」
 迂闊に文句を言って血を吸われてはかなわない。にらみつけるルイズとどうでもいいといった様子のエルザ。その状態は、意外なことで終了した。
「?」
 最初に気づいたのはジル。窓を開け、外を伺う。
「どうしたのよ……な!?」
 外で生徒と教師が何人か騒いでいる。彼らの視線の先には、三十メートルはあろうかという土人形、ゴーレムだった。

「もしかして……フーケ?」
「何?そのフーケってのは」
「泥棒よ!」
 ルイズがそう口にした瞬間、頭を押さえつけられる。
「何すんのよ!!」
「エルザ、耳を塞いで伏せて」
「はい!」
 既に手にはM134。非常識な連射速度を誇る、ガトリングガンである。
「ルイズも!」
「え?」
 戸惑っていたのが痛かった。瞬間、ルイズの視界は途切れぬマズルフラッシュで真っ白に染まり、鼓膜は爆音に叩かれる。反射的に眼と耳を塞ぐが、もう遅い。ズキズキと痛む眼と耳を押さえ、床を転げまわる。
「眼が!耳がぁ~」
「駄目ね。なら」
 最終手段、ロケットランチャー。バックブラストが部屋に吹くために使いたくなかったのだが、効果が確認できない以上、これで爆破するしかない。泥棒を逃がすくらいなら、これくらいの対価、安いものだ。
「You lose big guy!(貴方の負けよ、デカブツ)」
 同僚の妹の台詞を借りて、トリガーを引く。



「――――というわけです」
 翌日の学院長室での報告では、フーケの犯行現場を目撃したキュルケとタバサ、そしてゴーレムを破壊したジルとルイズ、役立たず共(教師達)が呼び出された。もっともルイズに関しては、部屋での小火騒ぎの件が大きい。
 バックブラストの煙を目撃した生徒が火事と勘違い。寮からの総員避難命令が出た。
「結果としては良かったの。あのゴーレムが暴れでもしたら事じゃったからな」
 学院長のオールド・オスマンが慰めるように言う。小火騒ぎの責任はルイズに無いと。
「しかし、破壊の杖は盗られたままです」
「当直は誰だ!?」
「ミス・シュヴルーズ!あんたって人は!」
「そんな……」
「よさんか!!」
 オスマンの一喝で、場は収まる。動じなかったのはジルくらいか。

「誰も真っ当に見回りなんぞやっとらんだろうに。ミス・シュヴルーズを責めるのはお門違いじゃ」
 その場の教師全員が、ばつの悪そうな顔をする。全てその通りでございます、と言わんばかりに。
「それよりも……ミス・ロングビルはどこかの。朝から姿が見えんのじゃが」
「そういえば……いつもなら真っ先にここに来そうなものですが」
 と、タイミングよく扉が開かれる。
「遅くなりました」
 何食わぬ顔で現れたのは、件の人物だった。
「おお、ミス・ロングビル。今までどこにおったんじゃ?」
「早朝から、周囲の聞き込みにいっておりました。近隣の村人から、森の奥の小屋にフーケらしき黒いローブの人物を見たという情報を入手しましたので、その報告を」
「なんと!?」
 再びざわざわと騒がしくなる学院長室。
「ええい、静まれ!」
 二度目のオスマンの一喝でまた静かになる。
「で、それは何処じゃ?」
「ここから馬で四時間ちょっとの場所です。……!?」
 ゾクリ。
 背筋に嫌な、冷たい汗が流れた。一瞬だが、絶対的な存在感を持つ殺意に似て非なるもの。恐らくそれは自分にのみピンポイントで放たれたらしく、他の者は気付いた風に見えない。そして、誰が放ったのかも判らない。
「どうしたのかね、ミス・ロングビル?」
「いえ、何でもありません……」
 すぐに平静を取り繕って、オスマンににこやかに返す。
「ふむ、そうかね。では……討伐隊を出す!我こそはと思うものは杖を掲げよ!」
「は!?王室に連絡して衛士隊に……」
 ギトーが『はぁ?何いってんのこのジジイ』という内心を押し隠して提案するが、
「バカモン!!間に合うものか。衛士隊が着くころには逃げられてしまうわ。それに、大恥を大々的に曝そうというのかね?」
「ぐぅ……」
 たかがコソ泥に振り回されて、王室に泣きつく。これほどの恥がどこにあろうか。
「さあ、誰かフーケを捕らえて名を上げようというものはおらんか?」
 しかし教師連中は微動だにしない。所詮彼らは魔法を使えるだけのチキンだ。一部例外はいるが。
 と、その並んだ役立たずの頭の上に、異形のものが掲げられる。
「は?」
「ちょ、ちょっとジル!?」
 杖の代わりになりそうなものを適当に掴んだらこれが出ただけで他意は無い。六銃身の回転式機関銃を掲げるのは、ゴーレムを爆破した女、ジルだった。
「泥棒を捕まえるのは警察の仕事よ。手段が過激であるなら尚更私の出番ね」
 その場の誰よりも誇り高く、貴族然とした態度に、しかし無能どもは口汚い。
「平民は黙っていろ!」
「貴族の決め事にしゃしゃり出るな!」
「平民ごときに何ができる?」
 ああ、こいつらがこうだから生徒もああなるのか、と納得したジルは、実力行使に出ることにした。
「レビテーション」
 最初に文句を言った教師、ギトーに、渾身の力を篭めたアッパーをぶちかます。
 それは確かにギトーを空中浮遊させた。ほんの一瞬、滞空した後、学院長室の天井に頭をめり込ませ、静止。そして瓦礫と共に落ちてきた。


 気絶している。生きているのが不思議だが、世界の鉄則、ファンタジーというものはそう簡単に人を死なせてはくれない。死亡フラグさえ立てなければ、エピローグまで生き残れるのだ。
「私の『魔法』、ご覧になったかしら?」
 地獄の『ぢ』の字も見たことの無い教師達は、ジルがいったい何をしたのか、それすら理解できなかった。ただ、『ギトーが飛んで、天井を破壊して、落ちてきた』、それだけ。
 得体の知れない、明らかに魔法じゃないその『力』に、恐れ戦くだけ。
「ま、まあよかろうて。フーケのゴーレムを破壊した彼女なら、全く問題ない」
 野郎が一人傷だらけになろうと、オスマンには関係ない。一見派手だが、命に別状はないのもスルーに拍車をかける。
「しかし、一人では……」
杖が、三本掲げられた。
「ミス・ヴァリエールに、ミス・ツェルプストー、それにミス・タバサまで……」
「貴方たちは生徒じゃないですか!?ここは彼女と我々に……」
「誰も上げないじゃないですか。それに、使い魔に先を越された上、使い魔だけ送り出すなんて真似、それこそ恥もいいところです」
「ヴぁリエールに負けられませんもの」
「心配」
 そこに、テルミットを注ぐようなジルの一言。
「役立たずで腰抜けの貴方たちよりよっぽど強そうだけど」
 ジルの言い放った一言で、その場の温度が一気に下がる。
「よろしい。ならば決闘だ!」
「だが断る。帰ってきてからにして。今は面倒だわ」
「貴族の誇りを賭けた決闘を……面倒だと?」
「あーあー。エルザ」
 ジルは面倒臭そうに――――本当に面倒臭そうに指を鳴らす。
「きしゃまは……」
 ジルに反抗的だった教師達が、バタバタと倒れる。残っていたのは、討伐隊候補の四人と、シュヴルーズとコルベールを含む数人の良識的(親ジル派)教師、そしてロングビルにオスマンだけだった。
「あー、ミス・ヴァレンタイン。いったい何を……」
 オスマンが恐る恐る訊いてくる。
「どうせこうなると思ったので、少し仕掛けを。『スリープ・クラウド』の亜式だと思ってくだされば結構よ」
「そ、そうかね。ならばいいが……」
 数百年の軌跡をここで途切れさせたくないオスマンは、追及をやめる。あと百年は、まだ見ぬ美女とキャッキャウフフしたいのだ。このエロジジイ。
「……ま、まあ、ミス・ツェルプストーは優秀な軍人を輩出している家系での出で、彼女自身の炎の魔法も優秀と聞いておる。ミス・ タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士じゃ。ミス・ヴァリエールは……」
 言葉に詰まるオスマン。褒めるべき箇所を必死で探している。
「あの爆発の威力は素晴らしいわ。少なくとも、狙われて避けられる者なんていない。対人戦闘で右に出るものはそういないはずよ」
「そうじゃ!それにミス・ヴァレンタインという優秀な使い魔を召喚したのじゃ、文句はなかろう!」
 苦しいが、ジルのフォローに乗る。
「よし、では……魔法学院は、諸君の努力に期待する」
「杖に賭けて!」
 メイジの三人は直立し唱和。ジルは無言で敬礼した。




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