『2.石工一家所蔵、怪文書物の一項』
あの事故でこの世界にやってきて既に20回目の春を迎えた。
あの事故でこの世界にやってきて既に20回目の春を迎えた。
昨日は数年ぶりにタルブにやってきてジニー達と再会することができた。
なんとジニーは結婚して子供をもうけていた。旦那さんも優しい働き者で、村の中でも裕
福な家を建てていた。私は今日、ジニーの家の一室を借りて筆を取っている。
福な家を建てていた。私は今日、ジニーの家の一室を借りて筆を取っている。
長い長い20年だった。私が皆と別れてこの異世界を放浪する事を決めたのもこんなうらら
かな風の吹く日だったと思う。
かな風の吹く日だったと思う。
もう私は長くない。あてどなく国々を歩き回る内に、どうしようもないほどに身体を壊してしまったようだ。
アニマが湧き上がらず次第にしぼむように衰えていくのがわかるから。
だからここに私がこの20年を賭けて調べたこの世界の特異についてここに記し、友人に贈ろうと思う。
この世界にはいくつかの古くからある国があり、タルブもその一つの中にあるのだが、私はいくつかの手段でそれらの国が所蔵する資料を探し集め、私達のようにサンダイルからやってきた人間が居なかったのかを調べた。
特にゲルマニアという国は新興国だったが素性の知れない人間にも生活しやすく、たびたび滞在して情報を整理する為に立ち寄った。
そのゲルマニアの北部にあったある貴族公領で、私は不思議な形式で建てられた祠を見つけた。
その形式はこの世界に数多あった建設技法にも似ているような、似ていないような不思議なたたずまいをみせていた。祠の石柱を触れてアニマを感応させると、数千年単位で昔に
作られたものだというのがわかった。
作られたものだというのがわかった。
祠を暴き調査した結果、そこは古い支配者がその地の精霊を鎮めるために作ったものらしいと判明した。
しかし私を驚かせたのは、その精霊を鎮めるための祭壇のくみ上げ方や、祭壇に捧げられた壁画の図法が、まるで遺跡奥に作られたメガリスのようになっていたことだ。
この世界にメガリスが存在するはずがないのに。
(ここから紙が途切れ数ページに渡って腐食によって食い破られている)
私が長い時間をかけて分かった事はそれほど多くなかった。それはとてつもなく昔に私達の世界からこちらにやってきた何者かが居たということ。それも複数人が一度に。
メガリスの形式が古い遺跡に残されているのを見ると、私達よりもずっとメガリスに精通した人たちだったのかもしれない。
私が亡くなったあとでこの本を発見するだろうジニーへ。
私は貴方と一緒に冒険をしたことを少しも後悔していないわ。
一緒に飛ばされてきて、貴方と殆ど喧嘩別れしたようにタルブを出て行ったようなものだ
けど、数十年ぶりにやってきても温かく迎えてくれた事は、感謝してもしたりないわ。
けど、数十年ぶりにやってきても温かく迎えてくれた事は、感謝してもしたりないわ。
ありがとう
この数十年の放浪生活で、本当にいろいろなことがあったわ。字も文化も全然ちがう世界を歩き回るのは苦労と死がずっと付きまとっていたけど。
私は幸福ではなかったかもしれないけど、家を捨てて旅を始めた時からずっと、そんなものから逃げていたのかもしれない。
あなたは結婚して子供もいるんだから。私みたいに無理して早死にしちゃ駄目よ?
生きなさい。生きて、生きて、貴方はベッドの上でたくさんの親戚、息子娘の夫婦、孫達に看取られて死ぬの。そうじゃなきゃ許さないわ。
私達のアニマはあの懐かしい故郷に還ることも無いかもしれないけど、私は先に行ってあなたを待っているわ。
premiere de langford