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THE GUN OF ZERO-18



 この日は、なぜかやけに寒かった。
 朝。先日の健康ドリンクのおかげで完全に復調したマサキが、学院近くの草原にR-1と並んでおかれている愛機の中で目を覚ます。
 メイジ扱いされている上に、クォヴレーからの口利きでアンリエッタ王女に身柄を保証されているマサキが望めば、学院内に個室が与えられたかも知れないが、
同じく異世界人であるリュウセイがR-1で寝起きしているのに自分一人だけが安穏と部屋を貰う気にはなれなかったので、体調が改善してからはサイバスターで寝泊まりしている。
 クォヴレーは自分たちとは違い、きちんと使い魔の契約を結んで、なおかつそれに従っているのだから別だろうと認識していた。それでも床に寝てるらしいし。
 というか空調の働く機動兵器のコクピットの中の方が快適かも知れない。
 コクピットハッチを開いて外に出る。
「うわ、寒っ!」
 慌ててジャケットを羽織る。
「おう、おはようはん、マハキ」
 サバイバルパックに入っていた歯ブラシで歯を磨いているリュウセイが歯ブラシを口に銜えたまま放した右手をしゅたっと挙げる。
 こいつと初めてあった時、この学院の頭髪の薄い教師と一緒になって興味深そうにサイバスターのことを尋ねてきた。何でも大のロボットマニアらしい。なお、同じく教師がR-1のことを聞いてきた時には、嬉しそうに自慢たらしくR-1のことを語っていた。
 ちなみに、語っている最中、
『ふーん、こんなガンダムもあるんだな』と言ったところ、
『ガンダムって言うなぁぁぁ!』と全力で怒られた。気にしているらしい。
「ああ、おはよ……やけに今日は冷えるなぁ」
「ほだな……」
 リュウセイが手にしたコップで口をゆすいでペッと吐き出す。
「……ん?何だそのコンテナ」
 R-1の隣にあるコンテナを指さす。この世界ではついぞお目にかかれない大きさだ。
「ああ、昨日の夜クォヴレーが持ってきたんだ。戦闘時用の緊急リペアキットとカートリッジなんだと。サイバスターやディス・アストラナガンと違ってこいつは単なるロボットだからな。ちゃんとメンテしてやらないと……」
 ぽんぽんとR-1のボディを叩きながらリュウセイが言った。
「こんなもんどっから持ってきたんだ、あいつは」
「さぁ?まぁあのディス・アストラナガンてロボットは好き勝手世界間を移動出来るって言うし、どっかから貰ってきたんじゃないのか?顔広そうだもんな」
 暢気にそう返しながら、濡れたタオルでごしごしとリュウセイは顔を拭いていた。
 ディス・アストラナガン……毎晩自分たちの居る目の前のこの草原に現れ、いずこかへ飛んでいく悪魔王。シュウのネオ・グランゾン並みに底がしれねぇなと、ため息をつく。
 まぁ、少なくともパイロットの方はシュウほど底が知れ無くない分マシだが、それでも何だか悪戯好きな部分もあるような……と先日のドリンクの味を思い出して口を押さえた。

 朝食も終わって、厨房に今日の昼から明日の朝にかけての食材が届き始める。
「こいつはメニューも練り直さなきゃいかんなぁ」
 肌寒い冷たい風が吹くなか搬入される食材を見ながら、マルトーは唸る。
 やはり寒い時には野菜たっぷりのシチューか。
 だが、そうなると今普段よりも多めに運び込まれている肉が余ってしまいそうだ。
「……ま、たまには賄いに肉が多くても良いだろ」
 腐らせてしまうよりはずっと良かろう。と、後ろ頭を掻きながら結論づける。
「コック長ー、なんかいつもより肉多くありませんー?」
 食材の入った木箱を搬入しながらリュウセイが尋ねる。
「ああ。今日は肉料理にしようと思ってたからな。だが、この寒さだ。メニューは暖まるモンに変更して、俺たちで多めにいただくとしよう」
「お!コック長太っ腹ー!」
 いよっ!憎いよこの色男!などと囃し立てるリュウセイ。他の厨房の面々が苦笑いしながらそれを見る。
 こうしたその日の季候に合わせた料理への変更は、貴族を相手取る料理人としてはいたって普通の事であるし、良いことばかりでもない。
「世辞はいいんだよ!とっとと運べぇ!」
「へーい」
 気の抜けた返事をしながら、木箱を運び始める。が、それも二周したところでリュウセイがマルトーに声をかける。


「コック長コック長」
「何だ?」
「今日、肉多めなんすよね?……晩飯なんすけど、材料だけ貰って、俺が自分で作っていいっすか?」

 昼過ぎ。トリステイン魔法学院衛兵の詰め所近く。
「お前等情けねえぞ……」
 木剣を肩に担いだマサキ・アンドーが、周りでへばっている衛兵達を見て呟く。
「み、ミスタ・ゼノサキスは……何でメイジなのにこんなに剣が強いんですか……?」
「だぁから、俺はメイジじゃないっての。ちょっとばかし剣が使えるだけの、ただの人間だよ」
 腰に吊した剣の柄を叩きながらそう言う。
 そこでぱちぱちと、拍手が響く。
 何だと首を向けると、日に焼けた肌の赤毛の少女が居た。
「お見事ですわ、ランドールさん」
「誰だ、アンタ」
「あら、これは申し遅れましたわね、ごめんなさい。私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。その剣をクォヴレーに送らせて貰った者ですわ」
「ああ、アンタが。わりぃな、ちょっと借りてるぜ」
 今マサキが腰から下げているのは例のシュペー卿作という剣である。
 生身では何ら護身用の武器を持っていないというマサキに、今のところ行き場を無くしていたこの剣をクォヴレーが貸与していた。
「いいえ、お気になさらないで。それよりも、お強いんですね」
「こいつ等が弱すぎるんだよ。久しぶりに手合わせでもって思ったんだが……」
 確かに学院の衛兵の練度は低いが、そうでなくともマサキの相手を務めるのは無茶である。
 元々高校総体クラスのボクシングの腕を持つマサキが、僅か二年足らずとはいえ剣皇ゼオルート・ザン・ゼノサキスにより鍛えられたのだ。義妹や肉体派の方の妻との鍛錬も怠っておらず、そこらの剣持で敵う相手ではない。
 しかし、そこらへんの腕の差も承知した上でマサキは叱咤する。
「お前等な、そんなんでいざって時どうするんだよ!?衛兵なんだろう?この学院の!」
「め……面目次第もございません」
 ようやく復活した衛兵頭が立ち上がりながら頭を下げる。その態度にむしろ頭を抱える。
「あのな、俺に謝って済む問題じゃないだろうが。そんなんじゃあ、本当にやばい時に自分の身も守れやしねぇ。
 そりゃあ、ハルケギニアじゃあメイジの力が圧倒的で、こうした魔法学院てのは結構な戦力のたまり場になっててここを襲う奴なんざほぼいなくってアンタ達の力が必要になる事は無いのかもしれねぇ。けど、それで衛兵の質が落ちて良いって話にはならねぇだろ」
「仰るとおりで……」
「自分の仕事に誇りを持て。ここを守ってるのは自分たちなんだって、胸を張って言えるぐらいの腕もな」
「は……精進いたします」
 再び深々と頭を下げる衛兵頭に、ホントに判ってんのかなとマサキは頭を掻いた。
(変わってるわね、平民に誇りを持てだなんて)
 ハルケギニアでこうした言葉を口にするのは普通貴族のみである。
「ねぇランドールさん?あなたのお話、聞かせて貰っても宜しいですか?」
「あん?話って……?」
 わざと胸を強調させるポーズを取りながらキュルケが近づく。
「遠いところからいらしたメイジなのでしょう?是非お国の話など、賜りたく思いますわ」
「べ、別にそりゃ良いけどよ……」
 どうも嫌な空気を感じながらマサキが後ずさる。
 いつまで経っても自分になびくどころかルイズとすら関係に変化の見られないクォヴレーから目を逸らし、キュルケはその友人に目を向けていた。
「それではあちらのテラスにでも」
 それよりも深くキュルケが踏み込み、マサキの腕を抱きしめる。自然と、その胸がマサキの腕に当たる。
「だぁっ!ひっつくな!」
「あら、私のことお嫌いですか?」
 腕を放しながら悲しそうな顔をしてみせると、てきめんにうろたえる。


「いや、そうじゃなくてだな……!妻帯者なんだ、俺は!……身持ちは固くしねぇと」
 木の下で欠伸をしながらシロが言う。
「マサキは恐妻家だからにゃあ」
「うっせぇぞ、シロ!」
「あら、残念だわ」
 シロの言葉に、惜しそうに呟くキュルケ。マサキはようやく胸をなで下ろした。
「わかったかよ。だから、話をするのは別にいいけど、さっきみたいなのは……」
「でも、ここは遙か離れた異境の地。人肌恋しくありませんの?」
 再びぎゅうっと腕を捕まれる。
「だからくっつくなーっ!離れろ!頼むから!」
 照れではなく、本気での嫌悪すら混じり始めているその反応に、仕方なく再びキュルケは手を放す。
 先程までグロッキーになっていた衛兵達も呆れ気味である。
「もう、一途なんですのね」
「というか!赤毛の女に良い思い出がねぇんだよ俺は!」
 モニカは早々に裏切っていき、サフィーネは端からシュウの側にいて、テューディには危うくウェンディを奪われるところだった。
 ついでにキュルケの肌の色が、ある意味一番厄介な女。自分を玩具にしてからかうベッキーを連想させる。
 マサキ・アンドー、赤毛の女との相性は最悪であった。
「あら、それは偏見ですわ」
 流石に気分を害したように顔を不機嫌にさせるキュルケ。
「偏見なもんか!」
 現に今エライ目に遭っている。
「それでは、そんな思い違いを正すためにも、私と楽しい思い出を……」
「だから寄るなぁーっ!」
 馬鹿馬鹿しくて付き合っていられないと衛兵達が三々五々に散っていき、猫二匹にサラマンダー一匹が眺める追いかけっこは、リュウセイがマサキに声をかけに来るまで続いた。

 闇の中、声が響く。
『……イズ、……ルイズ・フランソワーズ……』
 誰だ?自分を呼ぶのは?
『俺の名は……ン。……よ、ルイ……』
 良く聞き取れない。声の主の姿も見えない。
『……ラ……ト……』
 なんだ?何が言いたい?
『……の……き……せま……』
「あぁーっもう!言いたいことがあるならはっきり言いなさいよっ!」
 自分の絶叫で、ルイズは飛び起きた。
 揺れる馬車の中。しばし目をしばたたかせていたクォヴレーが尋ねる。
「……夢でも見ていたのか?」
「う……そ、そうよ……」
 気恥ずかしくてそっぽを向く。
 朝早くから呼び出されて、王宮からの帰りの馬車。使い魔に無様な姿を晒してしまった自分を責める。
(うぅ~!なにやってるのよ私はぁ!)
「お、おかしな夢なのよ!誰かが私に話しかけてきてるんだけど、話は良く聞こえないし、姿も見えないの!」
 照れ隠しに夢の内容の理不尽さを訴えかける。
「そうか」
 だが使い魔の方は、いつものように淡泊な反応だった。
 ……何だか一々恥ずかしがってる自分の方が馬鹿馬鹿しくなってくる。はぁー、とため息をつきつつ額に手を当てて、コンと固い感触が触る。
 自身がシュヴァリエに叙せられた先の出来事。あれから、水のルビーはルイズの指に填ったままだ。
 今日はアンリエッタに直接呼ばれた機会だったので返却しようと思ったのだが、これは自分が持って然るべき報酬なでとそのままにしておくよう言われていた。
(でも……ウェールズ様は……)
「もうじき付くぞ、ルイズ」
 馬車のカーテンを開け、学院の建物を確認したクォヴレーが呼ぶ。


「ええ」
 ブルーになった気分を振り払うように一度首を振って意識を外に向けた。
「おう、クォヴレー。おかえりさーん」
 先に馬車から降り、ルイズが降りる際に手を取っていたクォヴレーが呼びかけに振り返る。
「リュウセイか。何か用か」
「ん、あのさ、買い物頼まれてくれないかな?」
「ちょっと、リュウセイとか言ったかしら?」
 ずいっとルイズがクォヴレーとリュウセイの間に割り込む。
「クォヴレーは、私の使い魔なの。勝手なことしないでくれる?」
「勝手な事って……別に俺はただ単に買い物を……」
「だから!使い魔であるクォヴレーの行動は私次第なの!友人だろうと私の命令が優先!」
「ちぇっ、なんでぇ、横暴な奴だなぁ」
「何ですってぇ!?」
「リュウセイ」
 喧嘩に発展しそうなのを見て取り、妥協を図る。
「その買い物は、すぐに必要な物か?」
「ん、いや、夜までになんとかしてくれりゃあいいんだけど」
「……夜になったら二時間ほど自由時間がもらえる。ルイズ達の夕食の後ぐらいになるが、それでも構わないか?」
「おう!全然平気!むしろ調度良い?」
「ルイズも、自由時間内なら、別に構わないな?」
「う……」
 心情としてはすっごく構う。自分以外のためにクォヴレーが動くだなんて……だが、まぁ、約束は約束な訳で。
「し、仕方ないわね……その代わり、私にも何か買ってきなさい!」
 どこをどう押したら、代わりに何か買ってくるという発想が出来たのかは判らないが、ともかく素直に頷く。
「構わない。何を買ってこよう」
「そうね、夕食後の時間でしょう……?デザートが欲しいわ」
「判った」
 そのやりとりに呆れ顔のリュウセイ。
「クォヴレー、甘やかし過ぎじゃねぇの?」
「ルイズは俺の主人だからな。俺は応えられる範囲でその命令に従うだけだ」
「ええ、全くだわ」
 満足げに頷くルイズ。
「ま、いいや。ところでクォヴレー、2時間もとれてるんだろ?だったら、今日は一緒に晩飯くわねぇか?」
「誘いなら乗るが。それでリュウセイ、俺は何を買ってくれば良いんだ?」
「おおっとそうだった!えっとだな……」

「リュウセイさん、何やってるの?」
 貴族達への料理が出し終わり、今度は務めている平民達がが食べる時間になって、リュウセイは賄いをもらいに行くこともなく、自分で切った肉と野菜を携えて厨房から出て行った。
 それを視界に捉えたシエスタが不思議そうに追ってくる。
「ああ、シエスタか。いやな、今日はほら肉が多めだろ。だからいっそのこと俺の郷土料理でも作ろうかな~?って思ってな」
「郷土料理?」
 そのままリュウセイはR-1やサイバスターの置かれている草原へと向かう。
「リュウセイ、鍋の方準備出来たぞ」
 石を積み上げて作った即席の竈のそばでマサキが呼んだ。
「おう、こっちも材料の準備が終わったとこだ」
 手にした材料を、これまた木の枝から削りだした即席の割り箸で竈に据えられた煮立った鍋に入れていく。
「これって……ヨシェナヴェ?」
 呆然とした様子でシエスタがつぶやく。
「え?いや、寄せ鍋じゃなくてスキヤキなんだけど……」
 少し情けない表情でぼやくリュウセイ。
「ま、味付けがまだ何も入ってないからな。今は似たようなモンだろ。ていうかアンタ、何で寄せ鍋なんて知ってんだ?」


 意外そうにマサキがシエスタに尋ねる。
「え?あ、その、東方の料理らしくて、私達の村に伝えられてるんです」
「へぇ~、やっぱ、この世界でも極東は日本的なんだなぁ」
「というかアジアンテイストって奴だろ?」
 シエスタ置いてけぼりで好き勝手言い合う男達。
「待たせたな……シエスタ、何故ここに」
「あ、クォヴレーさん」
 そこへLAWS○Nのロゴが入ったビニール袋をぶら下げ、パイロットスーツ姿のクォヴレーが現れた。
「お!待ってました!醤油と砂糖!」
 満面の笑みで中身を取り出し、ペットボトルの蓋を開ける。
「俺はキッ○ーマンじゃなく○大豆派なんだがな……ま、今回は立案者の顔を立ててやらぁ」
「へへ、悪いなマサキ。さて……」
 とくとくと醤油を注ぎ込み、今度は砂糖のビニール袋を破って入れ始める。
「皆さんが何かしてるみたいだったのでちょっと様子を見に来てたんです」
 シエスタがクォヴレーに事情を話す。
「ああ、そうか。何でもスキヤキを作るそうで、醤油や砂糖などの足りない材料の調達を俺が任されていたんだ」
「砂糖って……え?この真っ白いもの……こんな上質なお砂糖をクォヴレーさんが買ってきたんですか!?」
 リュウセイが側に置いた砂糖の袋を手に取ってみて驚愕の声を上げるシエスタ。さながら粉雪の如しだ。
「大した物ではないぞ。ハルケギニアの通貨換算で、50ドニエしない程度の代物だ」
「これで50ドニエかからない!?」
 口をあんぐりと開けてしまう。
「出来れば、全部ハルケギニアの材料でそろえたかったんだけどな」
「豆腐だとかは代わりの具材を入れるとしても、醤油がないのは痛いしな。砂糖もやたらめったら高くて、料理のついでにちょっと調味料借りますって雰囲気じゃないもんな」
 しみじみと頷く日本人二人。
「お、美味そうな匂いがしてきたぜ」
「やっぱ醤油を入れると違うよなぁ」
 ぐらぐら煮込まれる鍋の中で加熱されていく具材達。
 その後、シエスタに味見させてみたり、様子を見に来たマルトーが醤油の風味に感激してみせたりしながら、食事の時間は進んでいった。

 ある程度腹が満ちてくると、食べ物よりも酒の方が飲まれていくようになる。
 未成年であるリュウセイの飲酒にマサキはいい顔をしなかったが「日本地区じゃないんだぜ?俺ぐらいの奴で酒飲んでる奴なんざゴマンと居るぜ」と押し切られてしまった。
「それにしても敵さんこねえなぁ……」
 リキュールを飲みながらリュウセイがぼやく。
「何、馬鹿言ってやがる。来ないなら来ないで別に良いだろうが……そっち煮えてるぞ」
「ありがとう」
 マサキに指摘された箇所の肉を拾う。
「いや、こう敵がどばばーって来てさ。メイジでも太刀打ち出来ないロボットの登場に、どうしよう!?ってとこで俺たちがやっつけちまって。それでグイッと俺たちの評価が上がると思ってたんだけどねぇ……」
 やれやれとため息をつくリュウセイに、マサキは呆れ顔で言い返す。
「こっちがやれやれだぜ。あのな、それでどんだけ被害が出ると思ってんだ。確かにお前のいうとおり、こっちの魔法なんかじゃ到底太刀打ち出来ないようなロボットだったんだ。死者だって出かねないぜ?」
「だーい丈夫だって。俺たちがぱぱっとやっつけちまえば良いんだからさ。そうすりゃもう少し扱いも変わるってモンだ」
 ダメだこりゃ、と頭を抱えるマサキ。実に見事なリュウセイの増長っぷりであった。
「なんでーなんでー。自分はメイジ扱いされてるからってさー。しかも女の子にももててるし。羨ましいねぇ」
「別に好きこのんでメイジ扱いされてる訳じゃねぇよ。むしろ訂正して回ってる最中だ。って待て。誰がもててるって?」
 顔を歪めながらマサキが問う。


「さっき赤毛の女の子とおっかけっこしてたじゃねーか」
「んな平和なもんか!あれが!しつこく人にまとわりついて来やがって……」
「赤毛……キュルケか」
 肉を溶き卵に浸しつつクォヴレーが尋ねる。
「そうだよ。ったく、寄るなっつってるのに……」
「かぁーっ!これだよ、寄るなっていってもまとわりついてくる?もててる奴は自覚がねぇからなぁ」
 それはひょっとしてギャグで言ってるのか?とクォヴレーがリュウセイを見たが、このリュウセイにとっては間違いなく正しい言葉である。
 まぁ、性格の方に大きく難があるためなのだが。
「あのな……誤解すんなよ?いっとくけど俺は、妻帯者だからな?」
「そうだったのか」
 咀嚼した肉を飲み込んでから顔を上げ、笑いかけながらクォヴレーが尋ねる。
「それで、相手はどちらだ?リューネ・ゾルダークか、ウェンディ・ラスム・イクナートか?」
 マサキの顔が驚愕に染まる。
「な、何でお前がその名前を……!」
「俺の世界のお前とサイバスターのことを聞いたことがある。同世代の元気な女の子が一人と、10才ほど年上の優しい女性が一人居たと。そういえば、義理の妹も居たと聞いているが」
「元気っコに年上のお姉さんに義理の妹だとぉ!?お前それなんてエロゲだ!」
「誰がエロゲだ!」
 マサキがである。
「それで、妻は誰だ?」
 改めて、邪気のない問いにうっと詰まる。
 しばし箸を銜えたり唸ったりしていたが、やがて観念したようにぽつぽつと話し出す。
「ラングランでは、ミドルネームのザンってのは戦士階級を意味するんだよ」
「? ああ」
 突然何を言い出すんだと思うが、とりあえず黙って聞く。
「……で、この戦士階級の人間てのは、消防士だとか軍人だとか危険な職業の人間がなるもんなんだよ」
「ふんふん」
「その危険の代償として……」
 再び目一杯考え込むように溜めた後、マサキは口を開いた。
「……二人まで配偶者を持つことが認められてるんだよ」
 しばしの間があって、立ち上がったリュウセイがつかつかとマサキの背後に回り、ヘッドロックをかけた。
「死ね!世のもてない男達に死んで詫びろぉっ!」
「は、離せって!零れるだろうが!」
 取り皿を必死で押さえるマサキ。しばらくそれを黙って眺めていたクォヴレーは、一つため息をつくと再び箸と口を動かした。
「……ホントに平和だな」

「にしてもおかしなもんだよなぁ……」
 またしばらく経って、今度はラム酒をちびちびやりながらマサキがぼやく。
「こうしてロボットに乗ってる奴らが揃って異世界に召喚されてよ、スキヤキ囲んでんだから……肉追加すっぞー」
「ああ、ちょっと待て……ほんとだよな。偶然って恐ろしー」
 葉野菜を取り分けつつリュウセイがしきりに首を振る。
「いや、偶然ではないだろう」
「なに?」
「え?」
 新しい卵を割って取り皿に入れているクォヴレーに二人が視線を向けた。
「偶然じゃねぇって……それはつまり、俺たちを意図的にここに呼んだ奴がいるって事か?」
「ああ」
 ゴミ袋代わりとなっているコンビニの袋に卵の殻を入れつつ頷く。
「昨日までは全てが推測に過ぎなかったが、今日ルイズと城に呼ばれて判った事実で裏付けがとれた。アルビオンの王党派、レコン・キスタ両軍が黒い人型の機動兵器によって壊滅したらしい」


「黒い、ロボット?」
「だから今日お前が王宮に呼ばれたのか!」
「ああ。そして周りの連中はわからんが、少なくとも王女は俺がやったのではないと信じてくれているようだ」
 ひょいと肉を溶き卵に浸しながら言う。
「そりゃあな。お前が、アルビオンの王子さんとこっちのトリステインの王女さんと会わせた立役者なんだろ?それで王子さんを害するのが筋がとおらねぇぜ」
「だが、問題なのはその黒いロボットの方だ。生き残りから伝え聞く特徴を総合していくと、俺には一体しか思い浮かぶ機体が無く、そのパイロットにも一人しか心当たりがない」
 肉を口に運んで咀嚼して飲み込む。
「それじゃあ要するに、クォヴレーの想像してる奴もこの世界に呼ばれてるってこったろ?」
「そうなる。……そして確かに奴ならば、お前達二人がこの世界に呼び込まれるように仕向けられるし、仕向けるだけの理由もある」
「こんな世界に連れてきて、俺たちをどうしようってんだよ」
 ほうれん草を卵に浸しながら、リュウセイ。
「まず、マサキを呼んだ理由は、正確にはその搭乗機であるサイバスターが欲しかったんだろう。サイバスターに積まれているラプラスデモンタイプ・コンピュータがな」
「俺はおまけかよ!」
 面白く無さそうにカップの残りをあおる。
「何だ?その、ラブラブ天驚拳て」
「ラプラスデモンタイプ・コンピュータだって」
「そう、それそれ」
「簡単に言えば、未来予知の出来るコンピュータだ」
「へー、明日の天気でも知りたいのかね?」
 混ぜっ返すリュウセイを、今度は指さす。
「そしてリュウセイ。お前が呼ばれた理由はお前自身にある」
「え?俺?おいおい勘弁してくれよ~。お婿にいけなくなっちまうぜ~」
 身をくねらしながらニヤニヤとリュウセイが言う。
「……言っておくが、奴は男だ」
「うげー、冗談じゃねえ。ライじゃねぇんだ。そっちの趣味はねぇぜ」
「あってたまるか」
 憮然とした表情でマサキが呻く。
「……ライの方にもそんな趣味があるとは思えんが、ともかく奴の目的はお前の体ではなく、脳だ」
「脳?」
 自分の頭を指さして尋ねる。
「狙うほど頭が良いとも思えねえけどな」
「ひでぇなあ」
 二人の漫才はスルーして、説明を続ける。
「自分が、念動力者であることは認識しているな?」
「ああ。R-1のT-LINKナックルで使う念動フィールドも、俺の念動力があるから動いてるんだよな」
「何だ、念動力って?」
「元々人間が持ってたって言う脳みそを使った力で……まぁ、ちょっとしたエスパーみたいなモンだ」
「ふーん、ニュータイプみてぇなもんか」
 いや、それともちょっと違うんだけど、と話そうとするリュウセイを制する。話が進まない。
「ともかくその念動力と呼ばれる力は、リュウセイの持っている力のほんの一部が発現しているのに過ぎない」
「俺の持ってる力?」
「俺たちはそれをサイコドライバーと呼んでいる」
「サイコドライバー……」
「はぁ」
 どうにも気のない頷きを返す二人。
「サイコドライバーの力は強力だ。時として、因果律すら変えてしまう」
「因果律を変えるって……!おいおい、それじゃあリュウセイは、世界を思い通りに出来るって事か!?」
「思い通り、とまではいかないが、世界の大まかな流れを決定づけることぐらいは、サイコドライバーに覚醒すれば容易だろう」


「そりゃいい!んじゃ、そうだな……この世界にもっとスーパーロボットを呼び込んで……」
「何を考えているのかは大体判るが、今のお前ではまだ無理だ」
「あらら……」
 クォヴレーに掣肘され、がっくりと肩を落とす。
「とはいえ、リュウセイにそれだけの可能性があるのは事実だ。今後、その能力が成長してサイコドライバーとして力を振るえるようになれば出来るかもしれない」
「ちょっと待てクォヴレー!お前最初こう言ったよな?俺たちがこの世界に呼ばれるように『仕向けた』奴が居るって!」
「あ……!」
 二人の酔いが覚める。
「それじゃあつまり、そいつは力を発揮しているサイコドライバー……?」
「いや、あいつはサイコドライバーではない。ある程度因果律を操る術を持っているがあくまでも限定的なものだ。だからこそ奴は完全に力を発揮出来るサイコドライバーを、未来を見るラプラスデモンタイプ・コンピュータを求めている。
 自分の力をより強固にするためにな」
 クォヴレーの言葉に黙り込む二人。
「仮に、そいつの思い通りになったらどうなるんだ?」
「奴が因果律を握るために、もはや誰も逆らうことが出来なくなるだろう。ラプラスデモンタイプ・コンピュータで先の世界を見、自分の障害になるであろう事象は因果律を操作して発生しないようにすればすむわけだからな」
(俺は別だが)
 アストラナガン共々因果律より外れているクォヴレーは、因果律による影響を受けない存在だ。
「冗談じゃねぇ。そんなこと許す訳にはいかねぇぜ」
「ああ。だが奴は今、間違いなくその力を弱めている。でなければわざわざこんな書き割りの世界を使わないはずだ。限定的とはいえ、以前は宇宙一つそのものに干渉していたはずだからな」
「書き割りぃ?舞台の?」
「そうだ。
 ……これはあくまでも現在の状況をもとに、俺が推測したに過ぎないことを予め話しておく。
 俺の世界でロンド・ベルとの戦いに破れ、次元の狭間に落ち込んだ奴は再起の機会を伺っていた。
 そんなときに、俺たちを呼び出したようなメイジという魔法使いが居る世界を見つけ、目を付けた。使い魔の召喚時に、世界の壁すら越えてみせるメイジの力に引かれてな。
 出来れば直接その世界に干渉したかったが、奴の因果律を操るための機械、クロスゲート・パラダイム・システムは敗戦時の故障でそこまでの力が発揮出来ない状態だった。
 そこで奴は、自らの力が絶対的となりうるだけの小さな世界を作り上げ、そこにメイジ達の居るこの惑星を含んだ星系を転写した」
「しつもーん、転写って何?」
 リュウセイが手を挙げた。
「読んで字の如くコピーだ。世界の情報が全て記されているアカシック・レコードと呼ばれるデータがある。そこに記されていたこの星系のデータを、自身のまだ何もない小世界のアカシック・レコードに書き写すことにより、奴は星系をこの世界に取り込んだ。
 そしてまずは、因果地平の彼方に落ち込み虚ろな存在となっていた自分を、俺たちのように誰かにこの世界に召喚させることで、安定させた。
 その後……おそらくクロスゲート・パラダイム・システムが復調したか何かしたのだろう。
 お前達を襲った虫型のロボット達。イルメヤやメギロートといった機動兵力を内包した自動攻撃衛星ネビーイームをこの世界に取り込んで自身の手駒とし、準備を整えていった。」
「んー……つまり、宿題のレポートの提出が間に合いそうにねぇから、ネットで適当な文章を見繕ってコピペして、それにちょちょっと手を加えてさも自分が書いた文章ですとでも言いたげな奴って事か?」
 リュウセイの言葉にしばし二の句が継げない。
「……凄まじく乱暴な比喩だが、おおよそその認識で正しい」
「宿題ぐらい真面目にやれ」
「俺はちゃんとやってたって!お袋心配させる訳にはいかなかったんだから!……成績は低かったけど」


 マサキの突っ込みに必死に反論するリュウセイ。
「ともかく、そこから先はお前達も知っての通りだ。お前達二人もこの世界のメイジに呼び込ませ、ラプラスデモンタイプ・コンピュータを手に入れるためマサキを追い回し、サイコドライバーの力を手に入れるため召喚して間もないリュウセイを狙った」
 とはいえまだ、疑問は残る。王党派とレコン・キスタを壊滅させる際に、艦隊を使わずに自ら赴いた理由は判る。
 巨大な艦が戦列を成していれば目立ちすぎるだろうが、奴の機動兵器ジュデッカならば単体でしかも空間跳躍して目立たずに目的の場所まで行けるだろう。
 だが、なぜわざわざ両軍を壊滅させたのか?その理由が未だに不明だ。どちらかに肩入れしているのならば、壊滅するのはどちらか一方だけの筈だ。
(……あるいは、何か全く別の目的があるのか?)
「けどよ、最近全く手を出してこないのはどういう訳だ?」
 マサキの質問で思考から引き戻される。
「十中八九、奴は俺を恐れている。正面からやり合えば、9・1で俺の勝ちだろうからな」
「大した自信だ事で」
 やれやれと首を振って、またスキヤキに手を伸ばすリュウセイ。
「別に自惚れている訳ではない。冷静な戦力分析に基づく推測だ」
「待てよ、そういやお前は何で呼ばれたんだ?そいつにとっちゃ、お前は驚異なんだろう?」
「俺が呼ばれたのはおそらく奴にとってイレギュラーだ。俺がこの世界に来るとは想像だにしていなかっただろう」
 フッとクォヴレーが不敵に笑った。
「状況は大体判ってきたけどよ、それじゃあ俺達は帰る算段がついても無駄じゃねえのか?どうせまた召喚で呼び戻されちまう」
「そうなる。むしろ、再召喚されて気づかないうちに敵の手に落ちているよりは、俺の目の届く範囲にいてくれた方がありがたいからな。すまないが、この件が片づくまではここにいて欲しい」
「なーに、気にすんなよ。世界の調和を守るために戦うのが魔装機神とその操者だ。いざって時には手を貸すぜ」
「言われなくたって、俺はそのつもりだぜ?悪者を倒すのは、異世界から召喚された勇者ってのがお決まりだからな?」
 マサキが親指で自信を指さし、リュウセイが満面の笑みで応えた。
「ありがとう、二人とも……といかん、そろそろ時間だな」
 パイロットスーツの時計を見て、腰を上げるクォヴレー。
「そっか、二時間だけだっけ。大変だなぁ、使い魔も」
 しみじみとリュウセイが呟く。
「あ、ちょっと待った!」
 思い出して慌ててマサキが制止する。
「そういやまだ名前を聞いてないぜ。誰なんだ?この世界を作って、俺たちを引きずり込んだのは?」
「ユーゼス・ゴッツォだ」






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