あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-15a



ジャンガとルイズの二人が、他の生徒に混ざり優雅にダンスを楽しんでいる一方…、
そんな周囲の空気とは全く無縁の存在がホールの一角に居た。…タバサである。
普段、キュルケ以外の者とは人付き合いが皆無な彼女は、これまでもこのようなパーティの席では、
只管に料理と格闘して過ごしてきたのだ。
そして、今回もその例に漏れなかった訳であり、明るい緑色のパーティドレスに身を包んだ彼女は、
今も現在進行形で料理を平らげ続けていた。

「貴方、踊らないの?」
魅力的な肢体を豪華なドレスに包み、発せられる魅了のオーラに釣り合う男子生徒を引き連れ、
キュルケがタバサの元へとやって来た。
タバサは料理から視線を逸らさず、こくりと頷く。
「この祝賀際の主役は、フーケを捕まえたあたし達なのよ。今日は少し位、貴方も楽しんだらいいじゃない」
しかし、タバサはキュルケのそんな誘いの言葉にも無関心。ふぅ、とキュルケはため息を吐く。
「まったく…貴方はいつも通りと言うか。あたし達はこの場に居る誰よりも、楽しむ権利があるって言うのに…。
見なさいよ、あのルイズだって踊っているのよ?…相手はあのいけ好かない化け猫だけど」
そう言ってキュルケが指差した先では、ルイズとジャンガが踊っている。
華麗なステップを踏みながらジャンガは優雅に踊り、ルイズはそんな彼を見上げながら頬を微かに染めている。
「ルイズったら、あいつを踊りの相手に選ぶなんて…、酔狂どころの話じゃないわね。
まぁ、あいつがあんなに踊りが上手なのは意外だったけれど」
ジャンガの優雅な踊りにキュルケは少なからず驚いていた。だからといって彼に対する認識が変わるわけではないが…。
キュルケはタバサに向き直ると、目を細めて肩に腕を回す。
「いいこと?これは親友としての命令よ。たまには貴方も料理を食べてばかりでなく、こういう場を楽しみなさい。
今貴方のパートナーを見つけてきてあげるから、待ってなさいな」
そう言ってタバサの頬にキスをすると、キュルケは人込みの中へと消えていった。取り巻きの男子生徒も後を追う。

彼女達を見送った後、再び一人になったタバサは再び料理へと向き直り、サラダの皿へと手を伸ばす。
その時…、祝賀際の喧騒の中、窓から何かが飛び込んできた。
それは踊りや恋の駆け引きで盛り上がる生徒達の真上を飛び、タバサの元へと辿り着くと、その肩へと留まった。
肩に留まった物を見てタバサは顔を僅かに顰める。――それは一匹の幻獣だった。
緑色の丸くずんぐりとした身体に鳥類を思わせる足、付け根がオレンジで先端が緑色ののトゲトゲした羽、
ウサギのような耳を持っており、とても特長的な姿をしている。
その足に括り付けられた書簡を見つけ、タバサの表情は僅かに硬くなった。
幻獣の足から書簡を取り上げ、その内容を確認する。そこには短く、こう書かれていた。
『出頭せよ』
ぼんやりとしていた目に強い光が宿る。肩に留まっていた幻獣が羽ばたき、肩から飛び上がる。
タバサはそのまま幻獣を伴い、人気の無いバルコニーへと向かった。


「ン?」
ジャンガは視界の端に、パーティ会場から離れていく小柄な人影を見つけた。タバサだ。
明るい緑色のパーティドレスに身を包んだその姿は、見ようによってはそれなりの美しさを感じさせる。
だが、ジャンガにはそんな事はどうでも良かった。問題なのは、彼女の隣に並ぶようにして飛んでいる幻獣だ。
――あいつか…。
瞬時にジャンガは自分の長年の付き合いである、相方のピエロを思い浮かべた。
逡巡し、踊りの相手を見下ろす。
「オイ…」
「ん…何?」
唐突に掛けられた言葉に顔を上げるルイズ。
ルイズの目を見つめ、ジャンガはニヤリと笑う。
「悪いな、急用が出来たんでよ…」
ルイズの片手を掴み、高々と上げると、物凄い勢いで回し始めた。
「ちょっ、ちょっ、ちょっとぉぉぉぉーーー!!?」
突然の回転運動にルイズは悲鳴を上げる。物凄い勢いで回る周囲の景色に目が、脳がついていかない。
脳がミキサーに掛けられたようにシェイクされ、目があっと言う間に回っていく。
「後は一人で踊っときな」
十分に勢いがつき、ジャンガはルイズの手を放す。
コマのように回り続けるルイズを尻目に、デルフリンガーを背に挿したジャンガはその場を離れていった。

暫く回転運動を続けていたルイズは、ようやく回転が止まった後も目が回ったままだ。
目を渦巻きのようにし、酔っ払いの千鳥足のようにフラフラとした足取りで覚束ない。
「ま、まひなひゃい~~……、ひょの…ばひゃねひょぉぉぉ~~……」
呂律の回らない口調でジャンガを罵倒しつつ、ルイズは耐え切れずに床へ仰向けに倒れた。

余談だが…目を回し、あられもない姿で倒れるルイズを見て、彼女に対する評価が一気に落ちたのは言うまでも無い。

「ハァ~…、何であんな事をしたんだ?」
タバサが消えた方へと向かいながら、ジャンガはため息混じりに呟く。無論、原因は先程の踊りだ。
ジャンガにも何故、ルイズの誘いに付き合ったのか解らなかった。
「左手も痛むし…、ああ~ったくよ。調子狂うゼ…」
ぶつぶつと文句を言いながらも、ジャンガは頭の中身を切り替え、タバサと幻獣を探した。
人気の無いバルコニーへと近づいた時、口笛がジャンガの耳に聞こえた。
その口笛は前に聞いた事がある物である事に気付き、駆け出すジャンガ。
バルコニーへと出るが、誰の姿もそこには無かった。手すりから乗り出し、辺りを見回す。
すると、夜空の向こうに少女を乗せた竜の後姿が見えた。
「何処かへお出かけか~?キキキ」
ニヤリと笑い、ジャンガは手すりを乗り越える。地面へと降りたつや、疾風の如く駆け出した。


トリステインの南西に位置するハルケギニア一の大国であるガリア。
その首都リュティスの郊外…、そこに築かれている壮麗なヴェルサルテイル宮殿の一角に、
プチ・トロワと呼ばれる桃色の壁の小奇麗な小宮殿があった。
…その中では今、小宮殿の主である少女が首を長くして訪問者を待ちわびていた。
腰まで伸びた長く青い髪、透き通るような碧眼と一目見た限りではとても美しい少女であった。
ガリア王ジョゼフの娘イザベラである。
イザベラは巨大な赤いクッションに寄り掛りながら大きく欠伸をした。…その仕草には品の欠片も無かった。
「ああ退屈ね……、あの人形娘はまだなの?」
不機嫌なのを隠そうともしない声で、イザベラは傍に控える召使の少女に尋ねた。
そんな不機嫌な姫に恐れをなし、召使はぶるぶると震える。
「もう、そろそろかと…」
そんな召使の様子にイザベラは、実に意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだね…、退屈しのぎに、賭けでもしようか」
「ひっ!?」
そんな何気ない言葉にも、召使の少女は恐怖に怯える。
イザベラは、そんな召使の反応がたまらないと言った感じで笑い、その頬を杖で撫で上げる。
「あと十分以内に、あの人形娘が来たら、お前の勝ち。来なかったら私の勝ち。どう?
私が負けたら、お前を貴族にしてやるよ。なぁに、爵位の一つや二つ、どうとでもなるわ」
召使の少女の身体の震えは、いよいよ地震にあっているかのような物になった。
「でも、もしお前が負けたら――」

パンッ!パンッ!

その場の雰囲気にそぐわぬ、軽い調子で手が叩かれる音が部屋に響いた。
続けて、イザベラと召使の少女の顔の前に、白い手袋をしたような手が現れる。
「はいはいはい、そこまで」
そんな事を言いながら、ピエロを思わせる姿の幻獣が二人の間に割って入った。…ジョーカーだ。
ジョーカーを認め、イザベラは不機嫌に表情を歪ませる。
「お前…一体何のつもりだい!?」
「まァまァ、そんなに怒らないでください、イザベラさん?折角のカワユイ顔が台無しですよ」
「うるさい!」
怒鳴るイザベラ。しかし、ジョーカーは何処吹く風、全く変わらない表情で召使の少女へと向き直る。
「あ~、メイドさん?ここはもういいですから、向こうの方で手の足りていない、掃除を手伝ってあげてください」
「え、は、はぁ…。…ですが…」
召使の少女はジョーカーの言葉に困惑しながら、イザベラを恐る恐る見る。
イザベラは変わらず不機嫌そうだった。
「宜しいですよネ、イザベラさん?」
のほほんとしたジョーカーの言葉に、イザベラはイライラしながらも召使の少女に、退室を促すように手を動かした。
召使の少女はまだ震えていたが、一礼をして部屋から出て行った。

「お前は…相変わらず私をイライラさせてくれるね?」
「おやおや?これは異な事を…、ワタクシは貴方の忠実な使い魔の積もりですがネ~」
イザベラの言葉にジョーカーは、やはりいつもと変わらぬ調子で答える。
「全く…私が気まぐれにやったサモンサーヴァントで召喚したから、アンタは助かったんだよ?」
「勿論、その事に関しては感謝していますよ…。いや、もう本当に。のほほほほ♪」
そう言ってジョーカーは笑った。イザベラはそんな彼の態度に鼻を鳴らし、そっぽを向く。


聞けば、この自分の使い魔は、こことは全く違う異世界から来たのだと言う。
”ぼるくのろけっときち”と言う場所での戦いに敗れ、ハッタリをかまして逃げた。
その際に自分のサモンサーヴァントによってこちら側へと呼ばれたらしい。
(異世界ね…、最初は信じられなかったさ…)
だが、彼はこのハルケギニアに生息する数多くの幻獣の、どれにも当て嵌まらない。それに――
(まぁ、こんなのも召喚するんだからね…、信じるほか無いじゃないか?)
そう言ってイザベラは自らが身を預ける、赤い巨大なクッションを撫でた。否、それはクッションではなかった。
――それは赤い巨大な幻獣だった。大きさは三メイルはあろうかという巨体だった。
クッションと思われたのは、丁度その幻獣の腹に当たる部分である。
イザベラはその幻獣の腹に身体を擦りつける。
「はぁ…相変わらず、お前のお腹は心地よいよ、ビッグ」
「ムゥ」
ビッグと呼ばれたクッション代わりの巨大な幻獣は、その巨体に似つかわしくない可愛らしい声で鳴く。
すると、その巨大な幻獣の影からもう一匹、巨大な幻獣をそのまま小さくしたかのような、幻獣が現れた。
寄り添うように歩み寄って来たその幻獣を、イザベラはいとおしそうに抱き上げ、頬擦りする。
「あぁ…お前の身体もまた、良い感触だよ…リトル」
「ムゥ」
その幻獣もまた、巨大な幻獣と変わらぬ可愛らしい声で鳴く。
小柄なのはモット伯の屋敷でも使役されていた『ムゥ』であり、
巨体はそのムゥが巨大化した『ジャイアントムゥ』と呼ばれる種類だ。
巨体なだけあり、ムゥと比べてタフであり、その爪による攻撃も数段強力になっている。
ジョーカーが用事などで自分が居ない際、寂しがらないようにとペット代わりに召喚した物であり、
リトル、ビッグという名前は彼女が二匹に対して付けた名前である。
(本当に…こいつは、私に良く尽くしてくれるよ。…相変わらず、イライラはするけどね)
そんな事を思いながら、イザベラは横に控える使い魔を見る。
変わらぬ慇懃無礼な態度にはイライラするが、その一方で自分に良く尽くしているのも事実だ。
彼に怒鳴りつけ、それをのらりくらりとやり過ごされるのも、最早一つの習慣となっている。

そんな毎日を過ごしているので、イザベラの高慢な態度も、少しずつ和らいで……いるのだろうか?


その時、呼び出しの衛士がイザベラに駆け寄り、何事かを耳打ちする。
イザベラはそれに顔を歪め、鼻を鳴らす。
緞子の影からタバサが顔を見せ、彼女へ書簡を届けた幻獣も姿を現した。
パタパタと羽ばたきながらイザベラの元へと真っ直ぐに飛び、イザベラが差し出した腕に留まった。
この幻獣もジョーカーが召喚した物であり、翼が生えて飛行能力を有するムゥ…『フラムゥ』である。
「ご苦労だったね、フェザー。ほら、ご褒美だ」
「ムゥ~♪」
そう言い、イザベラは傍らの皿に入っているナッツを手に取り、フェザーと呼んだフラムゥの口元へ運ぶ。
フェザーはそれを嬉しそうに頬張る。
その様子を満足げに見つめていたイザベラは、ベッドの傍に控えたタバサへと視線を移す。
「珍しく着飾っているじゃないの」
しかし、タバサは答えない…彫像のように立ち尽くし、命令を待っている。
その様子にイザベラは舌打ちをする。相変わらず、何を考えているのか解らない。
「フン、今回の任務を特別に、私の口から直々に説明してやるよ」
そう言ってイザベラは、寄り掛っていたビッグの腹から身体を起こし、ベッドから立ち上がる。
そして、タバサの元へと歩み寄った。
「今回はラグドリアン湖さ。…そこがゆっくりとだけれど増水しててね、村が一つ水没してしまったのさ。
勿論…このまま増え続けたら、村一つじゃすまない。そこでお前の出番って訳さ。
増水の原因を調べ、それを止めるんだ。増水に水の精霊が関与してるんなら、そいつも何とかするんだよ」
「……」
「今回はいつものオーク鬼なんかのような、軽い気持ちで相手が出来る雑魚とは勝手が違うからね?
本気で掛からないと、どうなるか解ったもんじゃないよ?」
しかし、タバサは表情を変えない。イザベラは舌打をし、ジョーカーを見るや顎をしゃくる。
ジョーカーは頷き(?)タバサの元へと歩み寄る。
「今回の任務は内容が内容ですので、ワタクシもご同行させてもらいますよ。
宜しくお願いしますネ~シャルロットさん、のほほほ♪」
笑うジョーカーをイザベラは睨む。目の前の人形娘を本名で呼んだのが気に喰わないのだ。
しかし、ジョーカーはそれに気付かず…いや、敢えて無視し、イザベラへと向き直る。
「では、行って参りますネ~、イザベラさん」
「…せいぜい、頑張ってくるんだね」
「はいな~♪」
そうして、タバサとジョーカーは部屋から出て行った。

二人が出て行くのを見届けるとイザベラはベッドに戻り、ビッグのお腹に寄り掛り、リトルを抱く。
「はぁ…」
イザベラはため息を吐いた。その表情は先程までと打って変わり、疲れきった物だった。
「…いつまでこんなのが続くんだろうね、なぁ…リトル?」
「ムゥ?」
心配そうな声で主人を見上げる小さな幻獣。
そんな、いとおしいペットにイザベラは(普段の彼女らしからぬ)寂しげな笑顔を向ける。
そしてイザベラはリトルの身体に顔を埋めると目を閉じた。




新着情報

取得中です。