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お前の使い魔 10話



 わたし達はミス・ロングビルが手綱を握る馬車に乗り、土くれのフーケの隠れ家に向かっていた。
 その道中で、ミス・ロングビルがダネットに質問してきた。

「あの、ダネットさんで宜しかったでしょうか?」
「そうですけど? 何ですか眼鏡のお姉さん。」
「その耳……エルフではないのですよね?」

 あの後、何とかダネットに呼び方を変えさせることに成功し、二人は一見自然に話している。
 少-しだけミス・ロングビルのダネットを見る目が鋭いようなのは気のせいだと思いたい。

「えるふ? 前にも言われたんですが、そのえるふって何なんですか?」

 あ、そう言えばダネットに話してなかった。
 エルフを知らないダネットに驚いた顔をしたミス・ロングビルを横目に、ダネットにエルフについて説明する。
 ある程度理解したのか、ダネットは眉を吊り上げながら怒り始めた。

「そのえるふって奴は悪い奴なんですね。もし会ったら首根っこへし折ってやります!」

 ダネットの言葉に、ミス・ロングビルが一瞬だけ悲しそうな顔をした……気がする。

「でも、もしかしたらエルフにもいいエルフがいるのかもしれませんよ?」

 すぐに明るい表情になったミス・ロングビルがそんな事を言い出した。
 いいエルフ? そんなものいる訳が無い。
 わたしはそう考えていたが、ダネットは違ったようだ。

「そうかもしれませんね。じゃあ、えるふに会ったら、いいえるふか悪いえるふか聞いて、悪いえるふなら首根っこへし折ることにします。」

 その答えに何を思ったのか、ミス・ロングビルはちょっとだけ優しい顔になって言った。

「ええ。ぜひそうして下さい。」



 馬車に揺られて数時間、わたし達はようやく目指す場所の近くまで来ていた。

「あそこがフーケの隠れ家と思われる小屋です。」

 ミス・ロングビルの言葉に、全員が身体に緊張を走らせる。
 そんな中、ダメットは弾かれた様に走り出そうとした。

「ちょ、ちょっとダネット! 待ちなさい! 落ち着きなさい!!」
「お前!! 邪魔をしないでください!! あそこに泥んこが」
「はいストーップ。」

 キュルケのげんこつがダネットの頭に打ち下ろされ、頭を抱えたダネットはようやく静かになる。

「うう、最近、私は叩かれてばかりのような気がします……」
「あんたが落ち着きがないから悪いんでしょ? さてと、じゃあ皆、どうする?」

 キュルケがぐるりと全員を見渡すと、ダネットは頭を押さえていた手を振り上げ、ぴょこぴょこ飛びながらまた騒ぎ出した。

「決まってます! 突撃あるのみです!!」
「はい却下。タバサ、何か案はある?」

 あっさり自分の案を却下されたダネットが、唸りながらタバサを睨み付ける。
 そんなダネットの視線を流し、タバサは簡潔に作戦を説明した。
 作戦の内容はいたって簡単。
 誰かが偵察兼、囮となって小屋を覗き、中を確認する。
 中にフーケがいるようならおびき出し、もし留守のようなら他の誰かと一緒に小屋の中を調べる。

「じゃあ、偵察と囮役だけど……」
「はい! はい! 私やります!!」

 そんな、キュルケの言葉に元気良く返事をするダネットを見て、一同が顔を合わせる。
 表情は全員が『不安だ』というもので、取り合えず別の誰かを立てようという結論に至った。 

「じゃあ、いざって時は風竜で逃げれそうなタバサっていう事で。」

 キュルケの提案に全員が頷き、わたしはダネットと報告待ちの役になる。

「じゃあダネット、わたしから離れないで……っていないし!!」

 忽然と消えたダネットを探して、わたしがキョロキョロと辺りを見渡すと、タバサがちょんちょんとわたしをつついて、小屋の方を指差しながら言った。

「あっち。」

 嫌な予感がして小屋を見ると、いつの間にか小屋まで移動していたダネットがぶんぶん手を振りながら、わたしに向かって大声で叫んだ。

「お前ー! 中には誰もいませんよー!!」



 もうやだこの使い魔……。
 キュルケも同じ思いだったのか、溜め息を付き、疲れた声でわたしに言った。

「まあ結果オーライって事で。ルイズ、タバサと一緒に様子を見てきてくれる? 今の声でフーケに気付かれた可能性もあるから、くれぐれも油断しないでね?」

 その言葉にわたしとタバサは頷き、小屋の方へと移動する。
 どうやらキュルケは小屋の近くを見張り、ミス・ロングビルは周囲にフーケがいないか捜索するつもりのようだ。
 移動の途中、わたしはタバサに気になった事を聞いてみる。

「キュルケの性格だと、わたしとタバサじゃなくて、自分とタバサで小屋に行きそうなもんだけど、珍しいわね。」

 するとタバサは、小屋の方で今も元気に手を振るダネットを指差し「あの使い魔を止められるのはあなただけ。」と言った。
 確かに言わんとすることはわかる。わかるけど、いつからわたしは猛獣使いになったんだろう?
 そんな事を考えていると、いつの間にやら小屋の前まで来ていた。

「確かに中には誰もいないわね。」
「だから誰もいないと言ったでしょう。じゃあ行きますよ。」

 ダネットはそう言って、何の注意も払わず小屋のドアをがちゃりと開けた。

「ば、バカ!! 罠があったらどうするのよ!!」
「はっ!! 言われてみればそうですね。お前、頭いいです。」

 ああもう好きにしてちょうだい。
 運がいい事に罠は無かったものの、幾分疲れた表情で小屋の中をわたし達三人が探索すると、タバサが小屋の隅で錆びた長剣を見つけた。

「何これ? まさかこれが『破壊の剣』?」

 その剣は鞘に入れられており、試しにタバサが抜いてみると、錆だらけの片刃があらわになる。

「何ですかこのボロ剣は?」
「わかんないわよ。でも、取り合えずもって行きましょうか。」

 わたしが言って、その剣をタバサから受け取り、小屋のドアをダネットが開けた。その瞬間。

「みんな!! 早く逃げなさい!!」

 キュルケの切羽詰った声が聞こえた。


 そこからはまるで時間が緩やかになったように、ゆっくりと壊れる小屋と、石で出来た巨大な腕と、わたしとタバサに飛びつくダネットが見えた。
 遅れて大きな音が聞こえた時、わたしの顔に何かが滴り落ちてきた。
 それが何なのかわからず、目をつぶったまま拭ってみると、ソレは生暖かく、ぬるりとし、続いて嫌な臭いがする。
 この臭い、いつか嗅いだ事がある。
 確か、小さな頃に魔法を失敗させ、大怪我をしてしまった時だ。
 思い出したくない。この臭いが何の匂いなのか。誰がコレを流しているか。
 その思いを杞憂だと知る為に、わたしはゆっくりと目を開いた。
 そこにあったのは赤い色。
 わたしとタバサを庇い、代わりに自分の緑の髪を血に塗らしたダネットの姿。

「ちょっと……ダネット? あんた何やってんのよ……?」

 わたしの質問にダネットは答えない。

「ダネット!? ダネット!?」

 ふざけるな。こんな事があってたまるか。
 ついさっきまでダネットは笑っていた。
 馬鹿な事をやって、わたし達が頭を抱え、反省しないダネットがまた馬鹿をやる。
 きっとこのフーケから破壊の剣を奪取するという任務も、ドタバタ騒ぎながら笑って怒って騒いで終わり。
 そうよねダネット? ねえダネット?

「答えなさいよ……返事しなさいよダネット……」

 ダネットの頭からは、今も真っ赤な血が流れて、ダネットは答えなくて。
 ぼんやりと顔を上げると、そこにはゴーレムの大きな手があって。
 向こうには真っ青な顔で叫ぶキュルケがいて。
 隣には、わたしとダネットを逃がそうとしているタバサがいて。

「あ……ああああ……あああああっ!!!!」

 誰? この獣のような声を出しているのは?

「うあ……ああああああああああっ!!!!」

 静かにしてよ。ダネットが目を覚ましちゃうじゃない。いや、目を覚まさせないとね。うん。

「あああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」

 あ、叫んでるのわたしだ。
 それを理解した時、わたしの横でガレキの下敷きになっていた何かが……目を覚ました。

「カカ……カカカカカカ!!!!」

 その耳障りな声が聞こえた瞬間、わたしは暗い場所にいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ここどこ?

『よお人間。』

 あんた誰?

『そんな事はどーでもいい。それよりお前、助かりたいか?』

 助かりたい? 何から?

『チッ! じゃあ質問を変えてやるよ。お前、あのセプー雌の敵を討ちてえか?』

 セプー雌? セプーって何だっけ? ああ、ダネットの事か。

『そうそいつだ。お前、敵を取りてえだろ?』

 敵……そうだ、ダネットはあのゴーレムに……。

「…………たい。」
『ああ? 聞こえねえよ。ハッキリ言えよ弱っちいに・ん・げ・ん』
「敵を……敵を討ちたい。いえ、殺してやる!! 許さない!! 絶対に許さない!!」
『上等だ人間。じゃあお前の力をちょーっとだけ分けてくれよ。』
「力? 力って何? わたしにはそんなものは無いわ。」
『あるじゃねえか。上等な力がよぉ。ソレは生かすことも殺すことも出来る力だぜ?』
「信じられない……でも、もしそんなモノがわたしにあるというのなら……」
『ああ。言ってみな……人間。いや、相棒よぉ……』
「力を貸すわ。だから、あいつをぶっ殺しなさい!!」
『任せな。ああそうだ、お前は大人しく見てな。終わったら……きっとスッキリしてるはずだからよ……クク……』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 闇が晴れ、目の前には血で汚れたセプー雌。
 邪魔なので横に放り投げる。
 横を見ると、青い髪のゴミむしが、呆然とした顔でこちらを見ている。安心して。あのデカブツを壊したら、お前も殺してあげる。

「こいつはいい。よく馴染むぜ相棒……クク……」

 思わず口から笑みと言葉がこぼれる。
 取りあえずはっと、そうだ。この目の前のデカい石の塊をブッ壊さないとね。

「よっと。やっぱコレがないとねわたしは。」

 そう言って、先程まで忌々しい錆びた剣だった『黒い両刃の剣』を手に取る。

「それじゃあ始めましょうか?」

 跳ねるようにわたしは身体を前にやり、邪魔な石の腕を数回斬り付ける。
 そんなわたしの姿を見て、赤い髪のゴミむしが叫ぶ。

「ルイズ!! 何やって……って……あんた……誰よ?」

 失礼なゴミむしだ。
 わたしは『赤い』髪をかき上げ、優雅に答えてやる。

「誰って、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様に決まってるじゃない?」

 それを聞いた赤髪のゴミむしは、真っ青な顔になり、唇を震わせる。何となくムカついたから、コイツ先に殺しちゃおうかしら?
 おっといけない。先にこっちを壊しとかないとね。

「ゴーレムの後に相手してあげる。せいぜい逃げなさい? 逃げても無駄だけどね。あはっ。」

 そうそう。その目を見開いた表情のゴミむしが最高なのよね。っと、油断してたらゴーレムが再生しちゃってるじゃない。いけないいけない。

「何回耐えられるか試してあげるわ。」

 そこそこの速さでわたしを狙いにきた腕を斬り飛ばす。あら? 案外脆いのね。
 じゃあ足はどうかしら?あら、こっちも脆い。

「じゃあ次は……うん、胴体ね。」

 足を斬られた衝撃で、すっかりトロくなったゴーレムの懐に飛び込んで、何度も斬りつける。
 他と同じように脆いけれど、広くて分厚い分斬り応えがあるわ。なかなかいい感じじゃない。

「あは、あははは、あははははははははは!!!!」

 いけないいけない。思わず笑ってしまった。貴族ともあろうものが下品だったわ。よし、胴体はこんなものかしらね。
 ん? 少しずつ再生してるのコイツ?
 じゃあ、一気にブッ壊しちゃいましょう。そうしましょう。


「ちょっと距離を取って……よし、この辺りね。」

 足場を固め、全身に力を溜める。

「砕け散れ。」

 一気に距離を詰め、斜めに斬りつけ、続いて上段へ。
 貫いて斬りつけ、また貫く。
 力を込めて斬り付けるというよりも吹き飛ばすような斬撃を加た後、溜め込んでいた力を剣に流し込む。

「もっと……もっとチカラを引き出しなさい!」

 剣に流れ込んだ力は黒い光となり、溢れ出し、振るった瞬間に標的へと流れ込む。
 一際大きな光が標的を包んだ瞬間、また距離を詰め、今度は先程とは比べ物にならない量の斬撃を叩き込み、貫き、削り取る。
 最後に吹き飛ばした後、この黒い剣のもう一つの姿を思い出させる。
 それは真っ赤な刃を持つ巨大な鎌。
 今まで、何匹もゴミむし共を殺してきた力の塊。
 それを振りかぶり、最早、元の形がわからなくなってしまった標的に向かって振り下ろす。

「邪魔なのよあんた。」

 その声が先か、斬りつけたのが先か、標的が崩れ落ちたのが先か。
 まあどっちでもいっか。

「ね? そう思うでしょ?」

 土の山と化したゴーレムを背に、いつの間にか二匹で寄り添っていた赤髪と青髪のゴミむしに尋ねてみる。
 今や赤髪の方はぶるぶると震え、怯えきっている。
 青髪の方は、意外にもわたしを睨みつけ、どうにか打開策を見つけようとしているのか、眉間に皴を寄せて何かを考えているようだ。
 よし、青髪の方は楽しめそうだから、赤髪にしておこう。デザートは最後にってね。
 一歩わたしが近寄ると、二匹はビクンと身体を震わせた。

「み、皆さんご無事でしたか!?」

 誰よ? わたしの楽しみを邪魔する馬鹿は?

「み、ミス・ロングビル!! 逃げて!! 早く!!」

 赤髪の叫びが聞こえる。だけど残念、もう遅いのよね。
 わたしにとっては軽く近づいただけだけれど、この緑の髪のゴミむしには早すぎたみたい。


「ヒッ!! み、ミス・ヴァリエール……?」

 喉もとの剣が見えたのか、怯えた表情をする緑髪。よし、殺っちゃおう。

「クッ!! させないよ!!」

 おや? この緑髪のゴミむし、この距離から飛びのいた?
 ゴミむしにしちゃあなかなかやるじゃない。楽しめそうだ。

「どこで気付いたんだい?」

 緑髪の言っている事の意味がわからず、首を傾げて聞いてみる。

「何をよ? あんたを殺そうとしてるってとこ? もしそうなら今さっきかしら?」
「ふ、ふざけるんじゃないよ! チッ!! ガキかと思って油断したわ。」

 あー、そう言えば、ここに来る前に誰かが何か言ってたような気がするわ。確かアレでしょ? アレを捕まえにとか何とか。

「あー、土くれのなんちゃらだっけ? あんたもしかしてそれ?」
「なっ!! お前、気付かずにあたしを……? クソッ! 予定外もいいとこだよ!!」
「あー、わかったわかった。取り合えずさ」

 面倒くさい奴だなこのゴミむし。弱っちいのにウゼエ。

「死んでよ?」
「なっ!!」

 逃げようとした緑髪に一瞬で近付いて首を掴み、ギリギリと持ち上げる。ミシミシ音をたてる首の骨の音が心地いい。

「かっ……!! ゲッ!!」

 あはは。蛙みたい。あ、でもわたしって蛙嫌いなのよね。

「あら? 気絶しちゃったの? つまんないわね。」

 余計な事を考えすぎたのか、緑髪は手足をだらりとし、目には光が無かった。


「じゃあ一思いに」
「やめなさい!!」

 また邪魔? いい加減にしてよね。温厚なわたしでも流石に怒るわよ?

「お前、やめなさい。」
「何よ? 死に掛けのセプー雌じゃない。」

 わたしを止めたのは、最初に放り投げた血だらけのセプー雌だった。なんだ、死んでなかったんだ。ラッキー。
 死に掛けのセプー雌は、わたしの言葉に驚いたのか、目を丸くしたが、すぐ表情を硬くして言葉を続けた。

「お前、その剣をいつどこで手に入れたんですか?」
「剣? 剣ってこれ? いつってさっきよ。ほら、あの錆びててきったない剣あったでしょ? あれの中に閉じ込められてたのよ。」

 わたしが手に持っていた黒い剣をひょいと上げると、セプー雌の目がまた驚きで丸くなる。
 さっきから何だというんだこのセプー雌は。っつうか、何だか見てるとイライラしてくる。ウゼエ。

「その剣を仕舞いなさい。」
「はあ? お前が何でわたしに命令するの?」

 あーもうウゼエ。こいつ先に殺そう。
 ほーら、ふらふらしてるから一瞬で近づけた。後は剣でバッサリと。あれ? バッサリ……あれえ?

「何で動かないのよ! ほら! さっさとこのセプー雌殺すのよ!!」
「お前……なのですか?」
「あぁ!? 何よそれ!? 意味わかんないわよ!!」
「聞きなさい!! お前の中のお前、殺したら……駄目です。」
「うるせえ! 俺様に命令すんな!!」
「駄目です! もう……もう絶対に殺させません!! 目を覚ましなさいお前!! いえ、ルイズ!!」
「う…うるせえ!! ウゼエ!! ウゼエ!!」
「ルイズ!!」
「うあ……あ……」

 こんなセプー雌一匹にわたしは何で?
 そこまで考えた後、わたしの意識はゆっくりと闇に落ちていった。



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