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お前の使い魔 9話



街へ出かけた日から、一週間後の虚無の曜日、わたしとダネットは朝から図書館に来ていた。
 どうにかダネットの住んでいた場所のヒントだけでも知りたかったのだが、結局は徒労で終わり、ダネットは若干沈んだ顔になっていた。

「ダネット、まだ本は沢山あるわ。だから……」

 『元気を出して。』言葉には出さなかったけれど、それを察してくれたのか、ダネットは表情を明るする。

「そうですね。まだまだ時間は沢山あるはずです。」

 わたしは、そんなダネットの期待に答えなくちゃいけないと心の中で思う。
 気分を変える為か、ダネットはわたしに質問してきた。

「そうだ。お前の術は、狙った場所を撃つことはできますか?」

 ダネットの考えが読めないまま、取り合えず返事をする。

「試したことはないわ。だって、失敗魔法が操れたとしても、誇れる事でもないしね。」

 それを聞いたダネットは、暫し何かを考えて言った。

「だったら、少し試したいことがあります。」


 夕食が終わり、日が暮れた頃、わたしとダネットは広場に来ていた。

「それで? 何を試すのよダネット」
「特訓です。」

 こいつはまた意味の判らない事を……。

「特訓って何のよ?」
「私のくる鈴斬とお前の爆発を合わせたら、結構な威力になると思うんです。」
「はあ? ちょっと、何でそんな事しなきゃいけないのよ?」
「えっと、特に意味はないんですけどね。えへへ。」

 そう言って笑った後、ダネットは何かを準備し始めた。
 どうも標的の棒のようだ。
 でも、急にそんな事を言われても困るし、第一、意味の無いことをやらされるのは真っ平御免である。
 なので、わたしが断ろうとダネットに声を掛けようとしたら、ダネットはわたしに背を向けたまま、ぽつりと呟く様に言った。


「こうして身体を動かしてたら、あまり考え事もしなくなりますし。」

 その言葉で理解した。
 ダネットはダネットなりに悩んでいたのだ。
 急にこんな場所に呼ばれ、未だに自分の住んでいた場所の目星どころか、ヒントらしきものも見つからない。
 彼女は、こんな遠く離れているであろう場所で、一人ぼっちなのだ。

「しょうがないから付き合ってあげるわよ。でも、遅くなる前に止めるからね?」
「はい!! 頑張りましょう!!」

 こうして特訓とやらは開始された。が、それは思っても見ない事となった。

「凄いじゃないですか! これならキザ男ぐらいなら一瞬で首根っこへし折れますよ!!」
「いや、別にギーシュの首は折りたくないけど……確かに凄い威力ねこれ。」

 驚くことに、わたしとダネットの合体技とでも言うべき技はいい感じだった。
 わたしが最初に軽い爆発で目くらましをし、そこにダネットが突撃する。そして、ダネットが離れた瞬間にわたしがもう一発大きな爆発をお見舞いするという感じだ。
 単純ではあったが、ダネットの素早さに目くらましと止めも付いて、これって結構効果的なんじゃないだろうか?
 問題は、わたしの爆発に若干のムラがある点か。
 何度かやって、少しは制御できるようにはなったのだが、どうにもうまく定まらない。

「こういう時は、数をこなすしかありません! もういっちょいきますよお前!!」
「あ、待ってダネット。今日はこれで終わりにしない?」
「何を言って……って、もうこんな時間でしたか。」

 いつの間にか、特訓を始めた時から随分と時間は経ち、わたしも連続で失敗魔法を使ったことにより、結構疲れていた。
 そして、ダネットも納得し、じゃあこれで最後! という時に、招いてもいない客が二人現れた。

「ルイズ、あんた何やってんの?」
「何かの練習。」

 現れたのは、キュルケとタバサ。
 何でこんな時間に二人でふらふらと? と思ったが、よく考えてみれば、さっきからどっかんどっかんやっていたのだから、気になって見に来たという所だろう。

「タバサの言うとおり練習みたいなものよ。ほら、これで最後なんだから、邪魔しないであっち行ってて。」

 わたしが二人を部屋に戻るよう促すと、ダネットが横から割り込んできた。

「どうせなら乳でかとタバサにも見てもらいましょう。お前が凄いって所を見せてやるのです!」


 凄いって言っても、失敗魔法なんだけどね。
 でもまあ、凄いと言われて嫌な気はしない。

「へー、何か面白そうじゃない。これで最後みたいだし、ここに来たついでに見て行きましょうよタバサ。」

 タバサはこくんと頷き、眼鏡を上げてこちらを見つめる。
 う、見られるとやり辛いわね。

「では行きますよお前!!」

 ええい! こうなったらヤケだ!
 杖を振り標的の前の地面を爆発させると、もうもうと砂煙が上がった。
 そこへダネットが飛び込んでいく。
 この時、横から見ているキュルケ達にはわからないかもしれないが、わたしには砂煙しか見えていない。
 ならばどうやって次の爆発のタイミングを計るのか?
 それは音だ。
 詠唱をしつつ、耳を澄ませ、ダネットの振るう短剣の小気味良いリズムを注意して聞き取る。
 大きな音、そして小さな音が二回。また大きな音、少し間を置いてまた大きな音が二回!

「食らいなさい!!」

 言葉と共に、ありったけの精神力を込めて杖を振り下ろす。
 同時に起きる、大きな爆発音。
 横で見ていたキュルケとタバサがあんぐり口を開けて見つめている。
 ふっふっふ。どうだ。これが『ゼロ』と呼ばれてたわたしの真の実力というものよ!!

「これは凄いわ……」

 ふっふっふ。キュルケめ、もっと褒めろ褒めろ。

「威力だけならライン……いや、トライアングル以上かも。」

 はっはっは。タバサ、そんなに褒めるな褒めるな。

「そうね。威力『だけ』ならね。」

 うむうむ。キュルケ、明日からはもっとわたしを……って、何か様子が変ね。


「お前!! どこ狙ってるんですか!!」

 え? どういことよダネット? わたしはちゃんと標的に……あれ? 砂煙の向こうの棒は、ダネットの攻撃の後はあるけど、爆発を受けた様子は無い。
 という事は、わたしの失敗魔法はいずこへ?

「上よルイズ。あたし知ーらない。」
「ご愁傷様。」

 キュルケとタバサの言葉で、わたしの視線は上へと向かう。
 そこに見えたのは、もうもうと煙を上げる本塔の壁。
 確かあそこは……。

「ほ、宝物庫……」

 大変だ大変だ大変だ。
 あ、でもでも、宝物庫っていうぐらいだからきっと固形化の魔法とかかかってるはず!!

「ヒビ入ってますね。でも、ヒビだけならきっと許してくれますよ。お前、一緒に謝ってあげますから諦めましょう。」
「大丈夫な訳無いでしょ!! この能天気!! 馬鹿!!」
「どうして私が怒られるんですか!! お前の爆破が原因でしょう!!」
「う、うるさいっ!! こうなったらキュルケ! タバサ! あんた達も一緒に謝って……ん? どうしたのよキュルケ? 口パクパクさせて。下品よ?」

 キュルケだけじゃなく、タバサも様子がおかしい。あら? ダネットの様子も変ね。
 わたしの後ろの方を見て、何だか驚いている。
 後ろって本塔のある方よね。
 所で、さっきからうるさい地響きは何? 全く、こっちはそれどころじゃないってのに。ん? 地響き? 何で地響きがするのよ?

「る、ルイズ!! 後ろ!! 後ろよ!!」
「お前! 何をボサっとしてるんですか!! 走りなさい!!」
「危険。」

 えっとー、後ろ?
 振り向くとそこには、30メイルほどはあろうかというゴーレムの姿。

「な、な、な、何よこれ!!」
「踏み潰されたいんですかお前は!! ほら行きますよ!!」

 驚きで足がすくんでいたわたしを抱え、ダネットがキュルケ達の方へ駆け出す。


「何だって学院にあんなのがいるのよ!?」
「あたしが知る訳無いでしょ!!」

 確かにキュルケの言う通り、わたし達に理由なんかわかる訳が無かった。
 だが、その目的が何なのかは、ゴーレムが宝物庫の壁を殴り始めたことで判る。

「もしかして、宝物庫を破ろうとしてる?」
「お前、それ凄くまずいんじゃないですか?」

 ダネット、確かにマズいわよ。でも、あんたが言うと全然緊迫した感じがしないのは何故?

「ともかく、このまま放って置く訳にはいかないか。」

 そう言ってキュルケが杖から『ファイヤーボール』を撃ち出す。
 しかし、それは表面に小さな焦げ目を付ける事しか出来なかった。
 キュルケはそれを見て舌打ちし、肩をすくめ「これはダメね。」と言う。

「だ、駄目かどうかはやってみないとわかんないでしょ!! ダネット!!」
「ええ! 行きますよお前!!」

 声を掛けただけでわたしの言葉を理解したのか、ダネットはわたしと一緒に駆け出そうとした。が、キュルケに制服の襟を掴まれてつんのめる。

「ケホッケホッ! な、何すんのよあんた!!」
「それはこっちの台詞よ! あんたもダネットも何する気よ!!」
「決まってるじゃないですか! あのデカブツの首根っこへし折ってやるんです!!」

 わたしに代わり、ダネットがキュルケに怒鳴るように言った。
 いい事言ったわダネット! たまにはあんたもやるじゃない!
 しかし、その言葉はキュルケの怒声であっさりかき消される。

「常識的に考えなさい! あんな奴の首をどうやって折るのよ! それ所か、下手したら足元でぺしゃんこにされちゃうぐらいわかるでしょ!!」

 う……確かにそれはそうだ。わたしにもダネットにもそれぐらいはわかる。
 だが、今や宝物庫の壁を破壊し、後は中身を運ぶだけとなったゴーレムに、破壊させる機会を与えてしまったのはわたしだ。
 隣のダネットも同じ気持ちだったらしく、納得がいかない表情でキュルケを見つめる。

「逃げる。」

 ぽつりと呟かれたタバサの一言でわたしとダネットは我に返り、ゴーレムの方を見る。
 どうやら、先程までは見えなかったローブを着たメイジらしき人影が、宝物庫から何かを持ち出してゴーレムの肩に乗って逃げる所のようだ。


「もしかして、あれが『土くれのフーケ』かしら?」

 なす統べも無く、その逃走劇を見守ることしか出来ないわたし達の中で、キュルケが呟く。
 聞き覚えのない名前にわたしが首を傾げると、気付いたキュルケが『土くれのフーケ』について教えてくれた。
 何やら、最近街で噂になっている、錬金やゴーレムの召喚といった手で、土の魔法を使って盗みを働く盗賊だとか。この前行ったトリステインで噂を耳にしたらしい。

「その……泥んこ盗賊が犯人なんですね! 今日は逃がしましたが、必ず私が首根っこへし折ってやります!」
「盗賊って所以外、覚える気ないでしょダネット。」

 力強くこぶしを振り上げて宣言するダネットと、冷静にツッコミを入れるキュルケを横目に、今後の事や原因を作ってしまった事を思い出し、わたしは頭を抱えるのだった。


 翌日、学院の中は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。
 キュルケの予想通り、犯人はやはり土くれのフーケであったらしく、証拠に宝物庫の壁にはでかでかと『破壊の剣、確かに領収しました。土くれのフーケ』と刻まれていた。
 宝物庫には学院長であるオールド・オスマンや教師達が集まり、事件の成り行きや当直の教師についてもめている。
 目撃者であるわたし達も呼ばれ、この盗賊への対策というより、罪の押し付け合いのような会議とも呼べない話し合いを見て、先程からイライラしっぱなしのダネットをなだめつつ、自分達が見ていた事件の流れを説明した。
 そんな実の無い話し合いは、息を切らせながら事件現場である宝物庫に飛び込んできた、学院長の秘書であるミス・ロングビルの一言で更に大混乱となる。

「フーケの居場所がわかりました!」

 ミス・ロングビルによると、馬で四時間ほど行った先にある、森の中の廃墟が土くれのフーケの隠れ家ではないかとの事だ。
 こうして、居場所の判明した土くれのフーケを討伐する為、オールド・オスマンが志願を募った。
 しかし、土くれのフーケの噂を聞いていたのか、教師達は誰一人として杖を掲げようともしない。
 情けない。これでも貴族なのかあなた達は。こんなもの、わたしが目指す貴族ではない。
 残念そうなオールド・オスマンの表情と、情けない教師達の姿に業を煮やしたわたしが、杖を上げようとしたその時、オールド・オスマンの目がわたしの所でぴたりと止まった。
 あれ? わたしまだ杖を上げてないんですけど?

「君は確か……」

 驚きの混じったオールド・オスマンの声に、元気良く答える聞きなれた声。

「私に任せなさいヒゲのじいさん! 泥んこ盗賊なんて、私にかかればちょちょいのちょいです!!」
「ヒゲのじいさんじゃなくて、学院長でしょうがこのダメット!! あんたって奴は……あんたって奴は……今日という今日は、目上の人に対する口の利き方徹底的に教育してあげるわ!!」
「お、お前! 急に何を……ハッ! もしやお前、盗賊とグ」
「それはもういいわああああっ!!!!」


 ばっしんばっしんダネットを平手で叩くわたしを見て、学院長が「ふぅむ……」と言って考え込む。

「あ、あの、申し訳ありません学院長! この罰は後ほど必ず受けます。それと……土くれのフーケ討伐の志願者として、わたしが立候補しても宜しいでしょうか?」

 わたしが慌てて言うと、学院長は目元をピクンと震わせた。
 あーもう! 杖を掲げて、もっとかっこよく宣言するつもりだったのに!!
 しかも学院長、何だか怒ってる!? それとこれと言うのもダメット!! あんた……後で覚えときなさいよおお!!!!

「ミス・ヴァリエールと、その使い魔の他に志願者はいないかね?」

 わたしはハッとなって学院長を見た。
 そこにあったのは、怒りではなかった。
 そんな学院長の表情を見て察したのか、教師達が騒ぎ出す。
 しかし、学院長が「ならば君達が代わりに行くかね?」と聞くと、一様に黙り込んだ。
 その中で、他の教師達と黙りこんでいたミスタ・コルベールが驚いた声で言う。

「ツェルプストー! 君は生徒じゃないか!」

 わたしが振り向くと、キュルケが杖を掲げていた。

「ヴァリエールには負けられませんわ。それに、そこのダネットと一緒にいると、何をするかわかったもんじゃありませんもの。」

 うう、未だにあの特攻しようとした事を言うかこいつは。
 そんなキュルケの横にいたタバサも、同じように杖を掲げる。
 止めようとするキュルケの言葉に「心配」とだけ返し、わたしとダネットを見る。
 ううう、こいつ実はキュルケと同じぐらい性格悪いんじゃないだろうか。

「お前たち良く言いました! さあ眼鏡のおばさん! 私達を泥んこ盗賊の元へ案内しなさい!!」
「眼鏡のおばさんじゃなくてミス・ロングビルでしょ!! 第一、おばさんじゃなくて他に言い方があるでしょう!! 妙齢とか!!」

 ダネットとわたしの言葉に顔を硬直させ、全身を震わせたミス・ロングビルを横目で見つつ、学院長が遠慮がちに小さな声でわたしに言った。

「あー、ミス・ヴァリエール? あまりフォローになってないような気もするんじゃがのう……?」



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