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狂蛇の使い魔-10



第十話


「仮面……ライダー?」
ルイズの纏った白虎の鎧をまじまじと見つめながら、キュルケが言った
その横にいるタバサも、じっとルイズの身につけた鎧を観察している。
「……ええい、この際なんだっていいわ! あのゴーレムには魔法が効かないみたいだし、これを使ってダーリンを助けてきなさい」
そういって渡されたのは、キュルケが買ってきたという豪華な装飾が施された大剣であった。
重そうな見た目とは裏腹に、片手で難なく持ち上げることができた。
「……よし!」
タイガは苦戦している王蛇の方を見やると、一直線に駆け出した。



「はっ!!」
右腕から繰り出される一撃を、王蛇は横っ飛びでかわす。
直後、王蛇が元いた地面が剛腕によって抉られた。
「埒があかんな……」
ゴーレムから距離を置き、何か手立てはないものか、と考える。
すると、後ろから何者かが掛け声とともに近づいてきた。
「やああああああ!!」
王蛇が何事かと振り向くと同時に、声の主がその横をものすごい勢いで通り抜けていった。
その姿は、紛れもないライダーであった。

「あれは……」
ゴーレムに向かっていく後ろ姿を見ながら、王蛇は呟いた。



「たああああああ!!!」
ゴーレムの元にたどり着いたタイガは、両手で持った大剣を頭上に構えると、勢いよく振り降ろした。
土でできた右足を、大剣が一刀のもとに両断する。



……ことはできなかった。
バキンという鈍い音とともに大剣の刀身が真っ二つに折れ、吹き飛ぶ。
「お、折れたぁ!?」
半分から先がなくなってしまった剣を見て、タイガは思わず叫んだ。
「なによコレ! 全然役に……んぐわっ!!」
文句を言おうとしたタイガを、ゴーレムはその巨大な手のひらで容赦なくなぎはらう。
弾き飛ばされたタイガは、一瞬空中を舞った後、様子を見ていた王蛇の前まで転がっていった。

「い、いててて……」
「馬鹿か? お前は」
足元でうずくまるタイガを見ながら、王蛇が呟く。
その時、ふといい考えが浮かんだ。
「まあいい。……それより」
「? なに?」
立ち上がりながら、タイガは応える。
見に纏った鎧のおかげで、それほどダメージを受けなかったようだ。
「お前、あいつの動きを止めろ」
「えっ!? ど、どうやって……」
「カードを使うに決まっているだろう!!」
そう言い残すと、王蛇は再びゴーレムに向かって走り出した。



一人残されたタイガは、王蛇の残した言葉に困惑していた。
「カードを使え、って言われても……」
以前彼が戦っていた姿を思い出す。
確か、紫色をした蛇の杖にカードを入れて効果を発動していたはずだが……。
(そんなもの、一体どこにあるのよ……)
ルイズが心の中で呟く。
と、その瞬間、左手に何かが触れた。

突然の感触に驚きつつ、左に顔を向ける。
するとそこには、己の背丈ほどもある巨大な斧が転がっていた。
柄は青色で、中央にある黒い持ち手の部分が周りよりも一回り細くなっている。
牙を剥き出しにした白虎の顔が、斧の刃の根本を覆っている。
デストバイザーと呼ばれる、タイガの主要武器であった。

「これは……斧?」
タイガが両手で柄を掴み、持ち上げる。
この奇妙な形をした斧をしばらく眺めた後、柄の先を地面に真っ直ぐ突き立てた。
すると、カチャリという音とともに白虎の顔が上に押し上げられ、覆われていた青く四角い中身が姿を現した。
カードを差し込むらしい隙間も存在している。

(そうか、これを使って……)
タイガは右手をカードデッキにあてると、ゆっくりとカードを引き抜いた。



引き当てたのは、美しい結晶が描かれた一枚のカード。
タイガはそれをデストバイザーに差し込むと、白虎の顔を右手で押し戻した。
それと同時に、バイザーが音声を発する。

『FREEZE VENT』



「やっとか……役立たずめ」
眼前で止まっているゴーレムの拳を見ながら、王蛇は呆れたように呟いた。
タイガの発動したカードの効果により、ゴーレムは今や完全にその動きを止めていた。
その身は凍っているかのように、うっすらと青みを帯びている。
「相棒、これは一体……のわぁぁぁっ!!」
持っていたデルフリンガーを横に投げ捨てた王蛇は、紫の杖を取り出すとデッキからカードを引き、杖に装填した。

『UNITE VENT』

杖から音声が鳴るとともに手鏡から現れる、蛇、サイ、エイの三体の怪物。
「うわっ!!」
側にいたキュルケとタバサは、突然の怪物の出現に目を丸めながら、その異形の者たちから遠退くように後ずさりした。
三体の怪物たちは、互いの身を一ヵ所に集めると、まばゆい光を放ちながら一体の巨大な怪獣へと変貌していく。



光の中から現れた怪獣―獣帝ジェノサイダー―は、雄叫びとともにその赤い羽を広げた。



「フン、そろそろ人形遊びもおしまいだ……」
王蛇はそう言うとデッキからカードを引き、再び紫の杖に装填した。

『FINAL VENT』

先ほど出現した怪獣が、唸り声とともに自らの胸部を食い破る。
すると、食い破られた胸部から風を切るような音が鳴り出し、辺りの空気を吸い込み始めた。
シルフィードに乗って避難したキュルケとタバサ、そして王蛇のすぐ後ろにいるタイガの三人は、その光景をただ茫然と眺めていた。

準備が整ったのを確認した王蛇は、未だ微動だにしないゴーレムに向かって走り出した。
「ウオオオオ!! ハァッ!!」
助走をつけて勢いよく跳躍し、ゴーレムの目の前まで飛び上がると、体を回転させながらの飛び蹴りを繰り出した。
「ダアァァァァッ!!」
ゴーレムの顔面に直撃すると、その凍りついた巨体が傾き始める。
そして、後ろにいるジェノサイダーに倒れかかった瞬間、ゴーレムの体がぐにゃりと歪むと、みるみるうちにジェノサイダーの胸部の穴へと吸い込まれていく。

しばらくすると、跡形もなく消滅してしまった。



「ふぅ……」
タイガがため息をつくと同時に変身が解除され、ルイズの姿に戻る。
前方では王蛇も変身を解き、浅倉の姿に戻っていた。
未知の力が引き起こす驚きの連続に、ルイズの頭は少々混乱気味であった。
「ルイズ、大丈夫? 一体何がなんだか……」
手鏡とデルフリンガーを回収する浅倉の後ろ姿を見ながら、ルイズが物思いに耽っていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、キュルケとタバサがこちらに向かって歩いてくるのが見える。
こちらも困惑していることを伝えようとしたが、それは予想外の人物によって妨げられた。

「皆さん、ご苦労様でした」
「ミス・ロングビル!?」
ルイズたちのすぐ横にある木の陰から、緑の髪をした理知的な女性、ロングビルが姿を現した。
突然の登場に驚くルイズたち。
ルイズたちのもとへ戻ってきた浅倉も、彼女を怪しむように目を細めた。
それらに構うことなく、ロングビルは続ける。
「破滅の箱は無事だったのかしら?」
「え? あ、はい。無事です」
そういうと、ルイズは手にしていたタイガのデッキをロングビルに手渡す。

手渡した後で、なぜロングビルが破滅の箱の所在を知っているのか、という疑問がルイズの頭に浮かび上がった。



「ミス・ロングビル。なぜ、私が破滅の箱を持っていることを知っているのですか? もし見ていたのなら、なぜ助けて下さらなかったのですか?」
タイガのデッキを手にとり眺めていたロングビルは、ルイズの問を聞くや否や、ニヤリと口元を吊り上げこう答えた。
「それはね……私が『土くれ』のフーケだからさ! 全員、杖を捨てなっ!!」
フーケが素早く杖を取り出すと、その先をルイズたちに向けた。
ルイズたちは状況を理解すると、渋々と杖を目の前に投げ出す。
浅倉は杖の代わりにデルフリンガーを投げ出した。

「そこにいるヴァリエール家の末っ子のおかげで、このお宝の使い方から安全性まで何もかも確かめることができたよ……ご苦労だったわねぇ」
嘲るような笑いをルイズに向けた後、そこから少し離れた位置にいる浅倉に視線を移す。
「さてと……そこの使い魔! 手に持ってる手鏡をこっちに寄越しな! 歯向かったら容赦しないよ!!」
浅倉はフーケの命令に不気味な笑顔で返すと、ちょうど浅倉とフーケの間に位置するように、手鏡を放り投げた。
同時に、王蛇のデッキを鏡に向かってかざす。

「貴様から指図を受ける筋合いはないが……戦いたいなら歓迎するぜ? 変身!!」
フーケが反応するよりも早く、ベルトにデッキを差し込んだ。



ガラスの割れるような音とともに、浅倉の体が再び蛇の鎧に包まれる。
(くっ! こいつに人質なんて意味ないし……こっちが不利になっちまったじゃないか!)
フーケは思わず顔を歪ませた。
この劣勢な状況をどう覆すか、或いはどうすれば無事に逃げ切れるのか。
目の前にある二つの選択肢のどちらが最善策なのか、頭をフル回転させて考える。
対するルイズたち三人も、杖が使えない現状を打破しようと必死に思考を張り巡らせていた。

お互い睨みあったまま、硬直状態が続く。



しかし、終わりは突然訪れた。
「……ッ!!」
突如として強烈な耳鳴りがルイズとフーケの二人に襲い掛かったのである。
ルイズは両手で頭を押さえ込む。
「なっ……!! これは一体……!?」
一方のフーケは、慣れない感覚に思わず頭を抱え、地面にへたりこんだ。
その隙を逃さず、タバサは杖を拾い上げると素早く呪文を詠唱する。
「エアハンマー」

見えない空気の塊がタバサの杖から放たれ、フーケを後ろへ一直線に押し飛ばす。
そのまま後ろにあった一本の木に叩きつけられ、どうやら頭を打ったのか、地面に崩れ落ちると突っ伏したまま動かなくなった。



「またあいつらか……。おい、お前」
王蛇は手鏡からルイズの方へと視線をずらし、ルイズも顔を上げて王蛇の方を振り向いた。
「お前もライダーになったんなら……わかるな?」
それだけ言うと、王蛇は手鏡に向かって歩き出し、鏡面に飛び込んだ。

ルイズは以前聞いた、怪物との契約の話を思い出す。
(餌をあげなければ、殺される……)
タイガのデッキが破滅の箱と呼ばれていた理由。
それはおそらく、この契約が正常に履行されていなかったためだろう。
このデッキの持ち主、すなわち契約者がきちんと餌を与えなかったため、怪物に補食されてしまったのだ。

ルイズはフーケのすぐ側に放り出されているデッキを見つけると、耳鳴りに頭を押さえながら駆け寄り、拾い上げる。
そして手鏡の方を振り返ると、手に持ったデッキをかざした。
ベルトが腰に装着される。

「変身!!」

掛け声とともにデッキをベルトに差し込むと、ガラスの割れるような音とともに白虎の鎧がルイズの体を包み込んだ。



心配と困惑が入り交じった表情でこちらを見つめるキュルケと、相変わらず無愛想だが若干心配の色が表れているタバサ。
二人に向かって一度頷くと、タイガは王蛇の後を追い、鏡の世界へと飛び込んでいったのだった。




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