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ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-19


19.シヴァリング・ブルー

へー?何さそれ。ああ、もういい。もういいよ。魔法とか使わないから。
使わないからぶん殴って終わらせようじゃないか。死ね。とりあえず今すぐこの場で死んじまいなぁ!


イザベラの怒りは際限がなくなっていく。ノクターナルに言った。

「何なんだいあんた!あたしの邪魔ばかりしやがって!
そんなに死にたいなら、お望み通り殺してやるからそこをどきな!」

『常闇の父に創られし我は、何があろうと死ぬ事はない。あきらめよ、定命の者よ』

「すごぉい。すごぉい自信じゃあないか。そうかいそうかい。だからそんなに陰気なんだね?
あははははははははははははは。良いよ。今すぐ私が殺してやるよぉぉぉぉ!」

イザベラはノクターナルに詰め寄り、一撃を加えようと横っ面に殴りかかった。
しかし、それはスルリと影の女王の顔を抜け――イザベラは彼女の影の中に入る。
あまりに暗すぎて自分の色が変わってしまう影に。

『我が父を嘲るか?ならば逝け。シシスの元で許しを請い願うのだ』

淡々とノクターナルは言ったが、その周りにはいつも以上に暗くなっていた。
ノクターナルの影が彼女を包み込む――顔以外が影に浸かったイザベラは言った。

「これが、なんだってんだい…!」

力が解放され、影が弾けてイザベラが抜け出した。真っ赤な目のイザベラは、
今度こそノクターナルを殴りつけようと駆けた。
赤い目の光が、大気に残るほどの速さで音速の一撃を放つ。
早く、速く。このひどくいらだたしい相手を破砕するために。

ノクターナルは盾で拳を受け止めようと構える。
彼女は理解していなかった。確かに、これは素晴らしい魔法効果が付呪された盾だ。
おそらく世界で最も使いたくなる盾の一つと言えるだろう。

モロウウインド原産の、黒檀鉱石を使わずに、ここまで凄まじい武具を造り出せるデイドラは、
オブリビオン広しといえども、数えるほどしかいないだろう。かの鉱石が付呪に最も適しているのだ。
しかし、これを闘技場で使ったハイエルフは負けた。何故か?単純である。
闘技場では魔法より肉弾戦が好まれ、そしてこの盾は格闘戦においては、
ただの「鋼鉄の盾」だからである。タムリエルの武具は、
壊れたら魔法効果が発揮できなくなる。修理すれば大丈夫な話だが、
ノクターナルはアーティファクト(デイドラ王が素材から造ったマジックアイテム)
でもない品の修理の仕方なんて、当然ながら知らない。
やはり、どこまでも抜けているデイドラ王であった。

『な…』
「驚くところかいっ!?」

思わずフーケがツッコミを入れる。灰色のイージスは右腕の一撃で破砕され、
呆気にとられて実体化したままのノクターナルは、イザベラの左の一撃を受けて吹っ飛び船から落ちた。


「なぁ、船長」
「何だ?フーケ」
「今まで無茶聞いてくれてありがとさん。ちょっち逝ってくるよ」
「ああ、死に水はとってやれんがな」

笑って船長は見送る。いくら無謀でも何もせずに死ぬよりは何かして死んだ方が誇れるものだ。
精神力を全て使い、3メイルの鋼鉄製ゴーレムを20体程造りだす。

「へぇ、陰気女の次はお人形遊びかい――て、え…エレーヌ?」

イザベラの視界の片隅に、怯えた妹分の顔が見えた。
びくん、とタバサの心臓がはねた。何でよりによってガーゴイルでも北花壇騎士七号でもなく、
昔の呼び名で呼ぶのか。おそるおそる、キュルケに抱きかかえられたままタバサは見た。

「何であなたがここにいるの?学院にいないと変じゃない」

笑った。昔見た仲の良かった頃の微笑みだった。
タバサが無言なせいか、イザベラは悲しそうに床に座った。

「そうだよね。私お姉ちゃんなのにエレーヌに酷いことばっかりしたもんね。話してくれなくても仕方ないよね」

ひっく、と泣き出した。周りの連中はどうしたものかと様子を見守る事しか出来ない。
皆がおそらくそうなのだろう。キュルケに抱えられたタバサを見た。
キュルケが心配そうにタバサの顔をのぞき込む。怖がっていた。
だから代わりにキュルケが話す事にした。

「ええと、その――蒼い死神さん?」
「イザベラで良いよ。エレーヌのお友達なんでしょう?」

泣きながらイザベラは言った。キュルケはタバサを見る。まだ震えている。

「この子。学院じゃ『タバサ』って名乗っているの。その、イザベラはエレーヌのお姉さん?」
「従姉よ。駄目じゃないエレーヌ。ちゃんとガリア王家の留学生として名前を言わないと」

少し経って後。

「待てぇぇぇぇぇい!?」
『話を聞こうぞ。先ほどは見事なり』

一瞬の間の後、フーケ以下総動員でツッコミを入れる盗賊ギルドの面々と、
いつの間にやら戻って、怯える青い風韻竜の上に乗っかって欠伸をするノクターナルであった。

「あたし、精神力無駄使いかい?」
「ていうか姐御!早くゴーレム消して!テファ様の風石がなくなっちまうから!!」

格好良い見せ場が台無しのおマチさんであった。明日になるまで精神力は消え去ったままの様子である。


先ほどから通信が入らない事に不安を感じつつ、
グレイ・フォックスは空賊に見せかけた王党派の最後の船、
『イーグル』号で賊の真似事をしていた。

皇帝陛下以下三人は捕まって同じ所に入れられた様だ。
助ける――意味も無いか。その内あの桃色髪の少女と陛下がどうにかするだろう。
あの娘を見ると、妻の若い頃を思い出す。何事も決してあきらめようとしないあの高潔さは、
とても尊敬出来る物だ。誰もが出来ることではない。実力が伴えばもっと良い。
おそらくそろそろ目覚めるだろう。テファに会わせりゃ一発だが。
そんな事を考えながら、巡回しているフリをするグレイ・フォックスだった。


杖と隠していたナイフを取り上げられた三人は、
さてどうしたものかと船室を見渡した。
色々積んであるが、盗まれても良いのだろうか?
マーティンはそんな事を考えながら、荷物を物色し始めた。

「ねぇ、マーティン。鍵開けの呪文とか使えないの?」
「ん。あー使えない事はないけど、しない方が良いと思うな」

解錠の呪文も、物質の状態を魔法で変化させるという性質からか、
『変性』系統としてタムリエルでは認知されている。
しかし、この呪文は鍵のかけ直しが出来ないのだ。

「もし発見されたら私たちは終わりだからね。それに、どうも彼らが賊だとは思えないんだ」

いやいや、賊でしょどう見ても。そうルイズは思うが、マーティンはそうではないと真顔で言った。

「その割には統率が取れすぎているんだ。普通賊というのはもっと駄目な物だからね」

タムリエルの東に位置する、独立政府のモロウウインド。
そこは現在賊が乱れて、とても治安が悪い状態であるという。
ただでさえ、かの地で信仰されていた三人の現人神が死に、
自分達が信仰していた存在が消え失せているというのに、
異端な邪教として知られていた「ネレヴァル」だか、
「ネレヴァリン」だかの宗教団体が、大きく勢力を伸ばしているからだ。

彼の地は現人神の後見人として三人の「良いデイドラ」(人の話を聞くだけマシの『良い』)である、
アズラ(怒らせたら人生あきらめるしかない)・ボエシア(シロディール『では』極悪として知られる)
  • メファーラ(基本的に吐き気を催す邪悪)の三デイドラ王を奉っていたが、
今はそれの体制すらマトモに維持出来ないらしい。

マーティンがクヴァッチにて働いているとき、
以前なら、絶対に九大神教団には来ないであろう、
ダークエルフ(東の地方は彼らの故郷なのだ)が現れて、
エイドラの神々を信仰したいと言い出したのだ。

あの地で何が起こっているのか詳しくは知らないが、
そういう混乱期にこそ賊というのは現れるものだし、
しかもこの集団は統率が取れすぎている。
何かおかしいと、さっきから観察していてマーティンは思った。


「まぁ、あちらから何か行動を起こすだろう。おそらくは」
「本当にこういうとき、あなたって楽観で物を見るわね」

「いやいや。ルイズ。もし私たちを殺すならさっさと殺すさ。
彼らは身代金と言ったんだ。しばらくの間は命を保証されるよ」

「早く届けに行かないといけないのに…まぁ、いいわ。ところでマーティン。『ペリナルの歌』って知ってる?」

聞いた瞬間、マーティンは思いっきり咳き込んだ。

「ちょ、ちょっと。どうしたのよ?」
「い、いやぁ、その」

悪名高きペリナル。アイレイドに支配された人間を救うために、
神が遣わしたと言われる彼は、物語によると、
決闘と言いながら、最初からアイレイドの武器や、
魔法がほぼ効かない無敵の防具に身を包んで勝ったり、
ちょっとした癇癪で街どころか国一つ滅ぼしたり、
新しく仲間になったスカイリム人との宗教観の違いで、
そいつの足下に唾吐いたり…等々。
とりあえず、良い所より悪い所の方が探しやすい英雄なのだ。

ハッキリ言って、何処ぞの鬼畜王の名を持つ槍の人が、聖人に見える程の極悪人である。
尚、この存在が着ていた防具は未だにシロディールに残っているが、
まぁ、こんなのが着ていたんだ。あまり着ない方が良いのかもしれない。

「『誰か』に聞いたの。オカートと話していた人と多分同じよ。
深淵の暁期に、人間が反乱を起こして第1紀が始まったって」

なぁ、友よ。君はまた良からぬデイドラ王達とつるんでいるんだね?
ヴァーミルナかい?彼女の領域であるクアグマイヤーは危ないから、
さっさと逃げた方が良いと思うよ。私がデイドラの秘宝を持ってきてくれと、
言ったのが悪いと分かってはいるけれどね。
そしてここがどこか、夢枕にでも立って教えてくれると嬉しいんだが。

はぁ、と思いながらマーティンは、ルイズにちゃんとした歴史をかいつまんで教えるのだった。
まず、深淵の暁期の後に神話期があり、そしてそこからアイレイドが第1紀を始め、
途中から聖アレッシアを名乗る人間が代わりになる。そしてその後アレッシアの子孫、
レマン家がシロディールの中心となる。皇帝レマン三世の代の時に、
暗殺組織『モラグ・トング』が皇帝の暗殺を行い、東方のアカヴィリ人が帝都を支配。
そこから始まった時代が第2紀と呼ばれている。
しかしそれから約400年後、やはり『モラグ・トング』によってアカヴィリ人は暗殺される。
その息子が政治を続けたが、約100年後『闇の一党』(dark brother food)を名乗る組織に、
親族一同皆殺しにされ、その後400年間は群雄割拠の時代となった。

「…話が全然違う気がするけど」
「まぁ、あの人は結構いい加減だっただからね。そこが良いとも言えるのだけれども」

そしてその後ティンバー・セプティムが現れ、各地を制圧し、第3紀セプティム朝が来る――

「名前が同じですね。マーティンさん」
「ええ、まぁ親族ですし」

あははと笑い合う男二人。ルイズもついでに笑っといた。
冗談にしか聞こえない様にマーティンは言ったのだ。
当然ワルドにはジョークとして聞こえている。


『おー?竜の子は気付いたようだな。あの桃色にばれないように変えるのは苦労したぞ』

マーティンが思った通り、クアグマイヤー。『誰か』はヴァーミルナと共にいた。
ついでに、何故かパーカーを着た日本人までいる。
さらにいうと、さっきからバイアズーラバイアズーラと辺りがうるさい。

『しかし、お前も変な奴だなぁ。良いじゃないか。
デイドラになっても竜の子はお前を忘れる訳もないだろうに』

現在、ヴァーミルナは金髪ロングで白肌の小さい女の子の姿をしている。
決して吸血鬼ではないが、しかし、吸えない事もなさそうだ。
何故こんな姿をしているか。それはマーティンがここに来る少し前までさかのぼる。


平賀才人がノートパソコンを修理した帰り。
鏡を見つけて色々と試してみた後、ちょっと触ろうとした時だった。

『やめよ』

背後から声がするかと思えば、いつの間にやら暗い世界にいた。
あら?と思う間も無く、次々に怖い怪物達が現れる。
しかし――イマイチだった。

シロディールの英雄にして新入りのデイドラ王や竜神に頼まれ、
魔法のゲートの追跡を彼女は行った。
そのゲートにマーティンが入るように操作するために。

タムリエルの魔法の源に、
大きな関係のある彼女だからこそ出来る技だった。
ハルケギニアはそこではないが、
ある程度関係性が『何故か』あるのだ。

ヴァーミルナは、今回のルイズの魔法によって、
ムンダス世界の別の星に、生き物がいると初めて知った。

親父がぶらついていた虚無(宇宙)には、別の星が最初からあったのか。
そしてこの星は、おそらくエイドラでもデイドラでもない、
我々の知らない別の何かによって造られたのだろうと思った。

実際には、進化論に即して変わっていったのだが、
そんな事は考えた事もないのだから、分かるはずもない。

さて、剣と魔法の世界では、オブリビオン内のヴァーミルナの領域である、
夢世界「クアグマイヤー」は、この世で最も恐ろしいと評判である。
だが、それは全ての存在にとって、果たしてそうなのだろうか?

平賀才人は21世紀の人間であり、いわゆるB級ホラーというのも、
それなりに見慣れている。昨今のホラーの進化は目覚ましい勢いで、
はっきり言って、彼女の造る世界のそれは、
確かにリアリティこそあるものの、
どうもお化け屋敷という枠組み内でしか感じられず、
いわゆる心からの恐怖を味わう事ができなかった。


さて、質問がある。もしあなたが夢の国の王になったとして、
悪夢を基本的にそこで演出しなければいけないとする。
さらに、数分に一回ガラリと世界を変えなければならないとして、
果たして、どれほどのレパートリーを作る事ができるか?

彼女は、知的な定命の存在が世に現れてから、ずっと夢を見させている。
そして、必ず怖がらせる事を至上の命題としてきた。
だからこそ、何を見たかを起きたときに忘れさせて見せているのだ。
もちろん、6000年以上生きている彼女はある程度のレパートリーがあるが、
しかし、それまでである。リアルに即した恐怖ではあるが、
そういった物を才人は、怖いと言うより気持ち悪いと感じた。

「一体なんだよ。何がしたいんだ?怖くもないし。キモチワルイだけじゃねぇか」

ヴァーミルナは、体の全ての箇所に剣が突き刺さった気分になった。
彼女の命題は、悪夢の中で人を『怖がらせること』である。
拷問も管轄内なのは間違いないが、それよりこちらの方が重要なのだ。

生きている間、毎日人は必ず眠る。そして眠っている間に彼女は夢を見せて、
怖がっている定命の存在を見て楽しむのだ。拷問はその延長線上な為、
はるかにこちらに重きを置くのは当然だろう。

それを全否定された。しかも強がりとかではなく、本当に素の状態で。
存在の意味を初めて完全に否定された彼女は、少々消えてしまいそうになった。

タムリエルに存在する、いわゆる神といえる存在全ては、
信仰によってその力を増す。それは即ち己の自信の増幅である。
信仰によって己を鼓舞される事で、力を手に入れるのだ。

しかし、今それを完全に否定されてしまった。
ああ、とうなだれて姿を現すヴァーミルナ。幸運にも、
彼女はその時才人好みの乙女の姿だった。

「ええと、その、ここどこ?」
『もういい。すぐ返す』

いやいやいや。と才人は何かやる気の無い上に、
体が消えかかっている彼女を止めた。

「もうちょっとさ。こう、なんつーの?怖いっていうのはこういうのじゃないの?」

と、袋から取り出したのは、PCの修理と一緒に買ってきたDVD。静かな丘として知られるホラー映画だった。

『なんだそれは?』
「DVDだよ。知らないの?まぁいいや。帰って一緒に見よう。きっと参考になるからさ」

ヴァーミルナの領域から帰って後、才人は『恐怖』に関する書籍・映画・ゲーム等を、
彼女に見せてみた。彼女からしてみれば、この上なく新鮮な物ばかり。
まるで、一年に一度のハロウィンの演出に悩むカボチャの王が、
初めてクリスマスを知った時の様に情報を集めた。

元々定命の存在を怖がらせる為に、様々な事について熱心に学んでいたヴァーミルナである。
文字の壁は、そこまで難しい物でもなかった。偶然タムリエル公用語は英語と同一語でもあったし。


『しかし、ゾンビはいつでも使えるな』
「ですねー」

嗚呼、まさかまんま闇の福音にもなってくれるなんて。
軽いオタク気質の持ち主であった才人は、
この数奇な巡り合わせに感謝していた。
今度あの呪文教えてみよう。そんな事を考えながら。


『アカトシュとも仲が良いんだろ?タムリエル助けたんだから』

ふぁぁ、といきなり現れた虫食いのベッドに、ヴァーミルナは横になった。

「バイアズーラ!バイアズーラ!」

タマネギ頭の小さなエルフ種「ウッドエルフ」の青年が『誰か』に助けを求めている。
ショッピングモール内にいる、大量のゾンビに襲われていて、為す術なしの様だ。

「今更ですけど、助けにいかなくていいんですか?」

ウィラメッテのドリンクを飲みながら才人は言った。
その内生き返る。そう言って『オブリビオンについて』を読みふけるシロディールの勇者兼、
闘技場グランドチャンピオンであった。
それなりに、デイドラ王としての生活に楽しさを見いだしているようだ。

この存在がどのような存在なのか。それは人によって異なる。
もしかしたら戦士ギルドの長かもしれないし、メイジギルドのアークメイジかもしれない。
盗賊ギルドに所属していたかもしれないし、聞こえし者という謎の人物かもしれない。
実は悪名高きペリナルの生まれ変わりかもしれないし、いや、絶対違うからと否定するかもしれない。
もしかしたらそれら全てかもしれないし、全部違うかもしれない。
だが、それらは誰にも分からない。今の狂神が行ったのかも、その代わりに誰かがやったのかも。

『書いた本人に聞いてこいよ。というより教えてやろうか?新しいシェオゴラス』

遠慮しておく。というニュアンスの言葉を言って何かの呪文を唱えると、
シェオゴラスの体は、戦慄の島経由でシロディールへと戻った。

『…まぁいいが、従者置いていってるぞ?本当に駄目な奴だな。
ジャガラクも、何であんなのにシヴァリングアイルズを…いや、あんなのだからか』

「あはは…あのタマネギ頭って、何かこう変にむかつきません?」
『まぁ、アズラも困っているらしいからな』

才人は彼女らの存在の凄まじさを知ってから、多少敬語である。
二人はのほほんと、助ける訳でもなく眺める。彼女は夢をつかさどると共に、
拷問もつかさどっているのだ。だから自分の世界で、
苦しんでいる人間を見るのも大好きなのである。
そこら辺は、骨のジャックと大きく異なる点だった。
才人は、こういうもんなんだろうと思って見ていた。

「バイアズーラァァァァ!」

タマネギの悲鳴が聞こえる。クアグマイヤーは今日も平和に地獄だ。
彼は、この地で死んだ後に、いつものようにアズラの下へ行き、
蘇らせてもらえるだろう。何故そんな事が許されるのか?
それは誰にも分からない。知っているのはアズラだけだ。


「何か、英雄とか神様ってすごいけど、俺もなれんのかなぁ」
『覚悟はあるか?』

死体を処理していた闇の福音の目が変わった。全体が黒くなり、瞳が相対的に白く見えている。

「え?」

『覚悟だ。一度力を得て、それを使えば最後まで筋を通さないとならない。
それはデイドラであれエイドラであれ人であれ変わらない。お前はそれが出来るのか?
デイドラになりたいというなら、してやらんこともないが?』

才人は言葉が詰まった。吸血鬼の真祖なヴァーミルナは優しく微笑む。

『やめとけ。それで身の粉にして最後までやって、
結局気が狂って死んだ奴もいる。同じ轍(わだち)は踏むもんじゃないぞ?』

「…はい」

ふふんとヴァーミルナは笑う。地球の恐怖をキチンと才人的に理解してから自信を取り戻し、
タムリエル全土の夢事情は、以前以上に恐ろしげな悪夢が多くなったようだ。

『ところで、もう買ったのか?』
「勿論。いつもすいませんね軍資金もらっちゃって」

と、最新のゲームソフトを彼女に渡す。
駄賃として彼女が渡すのは、傷のない大きな宝石の類。
信者に頼んで持ってこさせた物だ。

『これか。深海のホラーミステリーは』
「うん。どんでん返しがおもしろくって――」
『言うな!楽しみが無くなる』

さて、と才人をちゃんと送り返してヴァーミルナは、
クアグマイヤーの一角に、焼けたホテルを造り出して、
そこのテレビに以前買ってきた、
いくつかのゲーム機の内一つを繋げる。
おお、おおお!?おお!おー…ラプチャーか。良いなこれ。

新しいネタ作りに余念の無いヴァーミルナであった。
最近の彼女のお気に入りは、赤い三角形頭の彼である。
拷問用にも丁度良いからだ。電気がどうやってくるか?
気にしてはいけない。基本的に領域内でのデイドラ王は万能なのだ。




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