あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第五話 『ルイズとすこしふしぎな手紙』


「けっこんするからスキャンダルになりそうな手紙をとりかえしてこいって?
 そんなものベイカーがいのたんていにでもたのめばいいじゃないか。
 すくなくともぼくにはかんけいないね」
 アンリエッタ王女の話を聞いたドラえもんは、身も蓋もなくそう言い切った。
「あ、あんた! 姫さまに向かってなんて口の利き方…!」
 当然ルイズはそんなドラえもんに怒りをあらわにするが、
「いいのよルイズ。その通りだわ。……わたくし、自分の過去のあやまちの始末を
 他人に任せようとしているのだもの。責められても仕方ないわ」
「姫さまがそう言うのなら……」
 敬愛する姫さまにそういさめられ、しぶしぶ口をつぐむ。
 だが、こんなことで引き下がったワケではもちろんなかった。
「ドラえもん。この前の取り寄せバッグってやつを貸しなさい」
 あいかわらず、主人としての傲岸な態度でそう命じる。
「いやだね。きみもきぞくなんだったら、じぶんでなんとかすればいいだろ」
 当然のように拒否られるルイズ。しかし、それはルイズの予想の範疇だった。
 ――実は今回、ルイズには秘策があったのである。
 ドラえもんのどこだか分からない耳に口を寄せ、小声で交渉を始める。
「あんた、なんでもおかしに目がないらしいわね。
 ……どらやき、って食べてみたくない?」
 と、ルイズが口にした瞬間だった。

「ドラやきっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ドラえもんが、ネズミに驚いた時の二倍の高さ(約2.6メイル)まで飛び上がる。
 それからルイズにつかみかかると、そのえりをぐいぐいと揺さぶった。
「あるのか!? この世界に、ドラやきがっ!!!!!!!!!!!」
「ちょ、ちょっと、目が怖いわよ! 普段タヌキみたいな顔が
 今はヤクザなアライグマみたいになってるじゃない! いいから落ち着きなさいよ!」
 しかし、そんなことで止まるドラえもんではなかった。
「ええい! このさいクマでもタヌキでもなんでもいい!
 そ、それより、ドラ、ドラ、ドラやきっ!!!!!」
 ますます力を増してルイズを揺さぶるドラえもんにルイズもキレて、
「ああもう! いいかげんにしなさいこのバカダヌキ!」
 トスッ!
 ドラえもんの標準より大きな目に、ルイズの指が刺さる。
「ぎゃああああああ! 目が、目がぁ……!」
 地面をのた打ち回るドラえもん。
「……まったく。しつけがなってないんだから」
 えげつない技でドラえもんを轟沈させたルイズは、乱れた服を整えて話し始めた。
「それで、あんたもこの前会ったでしょ。あそこのメイドのシエ…シエ…シエ…」
 そういえば、結局名前を聞いていないことに気づいた。
「とにかくシエなんとかの家に、『どらやき』というめずらしいおかしの製法が
 代々伝わってるらしいのよ。作るのはちょっと面倒みたいだけど、
 そんなの貴族のわたしが手配すればすぐだわ」
 ルイズの言葉に、ドラえもんがごくりとつばを飲み込む。
「つまり、ぼくが手紙をとりかえせば……」
「どらやき食べ放題」
 ドン、とドラえもんは力強く胸をたたいた。

「やろうじゃないか! 国のいちだいじとあっては、ぼくも力をかさずにいられない!」
「よく言ったわ! それでこそわたしの使い魔!」

 まるで芝居の稽古のような光景に、唯一の観客であるアンリエッタ王女がぱちぱちと拍手をする。
 というか、傍から見れば怪しいことこの上ないやり取りだっただろうが、アンリエッタは
天然なのか、それともそれが王族の品格なのか、にこにこ笑って見守っていた。


「――アンリエッタ王女がウェールズ皇太子にあてた手紙!」
 ルイズはそう言って勇んで取り寄せバッグに手を突っ込むが、
「なによ、何も出てこないじゃない!」
 取り出したその手には何もつかんでいなかった。
「そんなばかな!」
 叫び、今度はドラえもんがバッグを使ってみるが、
「……ほんとだ。なにも出てこない」
 やはり効果はない。
 愕然とするドラえもんに、ここぞとばかりにルイズが噛みつく。
「やっぱりそれ、故障してるんじゃないの? ほんと、肝心な時に使えないんだから」
「そんなはずは……。ほかのものでちょっとためしてみよう」
 気を取り直したドラえもんは、
「ギーシュのばら!」
 と言いながらバッグに手をつっこむ。
 すると同時にドアの外で「うわっ」という声が聞こえて、
「ネコ君! 君はいったい何をしたんだ! 突然空中から君の手が降ってきて……あ」
 扉を開けて、ギーシュが部屋に飛び込んできた。
 それを見て、アンリエッタがまあ、と口を押さえ、ルイズが髪を逆立てる。
「さいってい! 盗み聞きしてたのね!」
「いや、その、これは……」
 ようやく今の状況のまずさを悟ってギーシュがうろたえるが、ルイズは当然容赦しない。
「あんた、運がよかったわね。本当なら処刑されても文句は言えないところだけど、
 今回のこと、きれいさっぱり忘れて部屋でおとなしくしてるって言うなら許してあげるわ。
 ……ドラえもん!」
「しようのないやつだなきみは」
 ため息をつきながらドラえもんはポケットを探る。
「ええと、こういうときはわすれろ草かワスレンボーか……いや、こっちのほうがいいか」

「さいみんメガネ~!」

 迷いに迷い、最終的にドラえもんが取り出したのはだっさいメガネだった。
 しかし、ドラえもんはそれを自慢気にかかげると、嬉々として説明を始める。
「このメガネをかけるとだれでもかんたんにさいみんじゅつを…」
「そんな説明はいいから、早く!」
 ルイズの声に急かされて、
「まったくきみはロボット使いがあらいなあ」
 ドラえもんはしかたなく説明もそこそこにメガネをかけ、ギーシュに向き直る。
「いいかいギーシュくん。きみはここでなにも見なかったし聞かなかった。
 というかここにはこなかった。王女なんてしらない。……わかったかい?」
「君は何を言って……はい。僕は何も見てないし聞いてません。
 王女なんて聞いたことないです、はい。…それ、食べ物かなんかですか?」
 これでいいか、とドラえもんがちらりとルイズを見ると、ルイズはうなずいた。
「よろしい。じゃあじぶんのへやにもどってあしたまでぐっすりねるんだ」
「はい。ぐっすり寝ます。明日までぜったい起きません」
 そう言うとギーシュはカクカクとした動きで部屋を出て行く。
 それを見届けると、廊下を見回して今度こそ誰もいないことを確かめて、
「まったく、バカのせいで無駄な時間を取ったわ」
 ルイズはあらためて取り寄せバッグが効かなかった理由を考える。


「道具の故障じゃないとなると、どういうことなのかしら?」
「もしかすると手紙がやぶかれたりもやされたりしているのかもしれないぞ。
 いくらとりよせバッグでも、なくなったものはとりだせないからなあ…」
 それは、いかにもありそうな意見だったのだが、
「そ、そんなはずはありません! あの人が、わたくしからの手紙を破るだなんて……」
 いつになく激しい口調でアンリエッタが反駁した。
 王女の言葉にうーん、とルイズは腕組みをして、
「こうなったら、直接会って話を聞くしかないわね」
 と言いながら、ドラえもんに視線を投げかけた。
「もういいじゃないか。手紙なんてどうせなくなったんだよ、だったら…」
 しかし当然ながらドラえもんは全く乗り気ではなく、だが、
そこでルイズはドラえもんにだけ聞こえるくらいの声で、ぼそっとつぶやいた。

「…どらやき」

「よし! ぼくがちょっと行って、はなしを聞いてくるよ!」
 ……それは実に、ドラえもんにとって魔法の言葉であった。
 すぐさまドラえもんはポケットを探り、
「どこでもドア~!」
 そこから大きなドアを取り出した。
「まあ、あんなに大きなものがポケットから……」
 アンリエッタはそれを見て驚くが、対してルイズの反応は冷淡だ。
「それ、最初に使おうとして失敗してたやつじゃないの。そんなのが役に立つの?」
 自慢の道具をバカにされ、ドラえもんが怒る。
「ば、ばかにするなよ! さいしょに使えなかったのはちがう世界に行こうとしたからだ!
 もうこのあたりの地図データは入れたし、となりの国までならすぐに行けるはずさ!」
「ふーん。どうかしらね」
「ぜったい使えるさ! いいかい、このどこでもドアは使うひとのあたまの中から
 もくてきちをよみとって、そのざひょうにドアをあけてくれる、べんりな道具なんだ」
「じゃ、やってみなさいよ」
「ふん。いわれなくてもやってやるさ。いざ、アルビオンへ!」
 ドラえもんはドアを開け、一歩を踏み出し――
「でもだいじょうぶかしら、ルイズ。だって、アルビオンって動いているじゃない?
 もしデータを取った時と違う場所にあったら…」
「な、なんだってー! ぎゃ、ぎゃああああああ!!」
 ――ドラえもんはそのまま虚空へと転がり落ちていった。


「ひどいめにあったよ。もし、タケコプターがなかったらぼくはいまごろ……ぶるるっ!」
 心底恐ろしい、と言いたげにドラえもんが体を震わせる。
 だが、ルイズの失敗魔法で粉々にされても次の話には平然と生き返っていたドラえもんだ。
 ルイズとしてはあまり心配するのも馬鹿らしいというのが本音だった。
「それよりどうするのよ? それ、使えないんでしょ。アルビオンまで歩いていくの?」
 ルイズの言葉に、ドラえもんは首を振った。
「いいや。やっぱりこれを使う。……ルイズ、ドアはきみがひらいてくれ」
「いいけど。でも、わたしだって今のアルビオンの正確な位置までは覚えてないわよ」
「もしずれていたらタケコプターで空をとんでいく」
 決然としたドラえもんの言葉に、アンリエッタが思わず口をはさんだ。
「そんな、危険ですわ! もし風で流されたりしたら……」
「ふほんいだがしかたない。ドラやきのためだ」
「……どらやき?」
 耳慣れぬ単語にアンリエッタは思わず聞き返し、
「ひ、姫さまが気になさるようなことではございませんわ。
 そ、その、やる気。そう、『ドラ』えもんは『や』る『き』になっている、
 と申しているんです。この使い魔は言葉足らずで、おほほほほ!」
 それを慌ててルイズがごまかす。
 かなり苦しい言い訳だが、アンリエッタは感心したように手を叩き、
「まあ、あなたはとても勇ましい使い魔さんなのね。
 ありがとう、勇敢なタヌキさん」
 チュ、とドラえもんのテカテカの頭にそっと口をつけた。
 やわらかい唇の感触に、ドラえもんの顔はふにゃっとふやけ、
「でへへ。それほどでも……ってぼくはタヌキじゃなぁーい!!」
 一転、王女相手でもお構いなしに怒り狂う。
 まあいつものことであり、ドラえもんの王女相手の暴言にも慣れたのか、ルイズは、
(こいつ、ノリツッコミまで出来るようになったのね)
 となんだかズレたことを考えながら、自らの使い魔を冷めた目で見ていた。

「アルビオンを思い浮かべながら、ノブを回せばいいのよね。
 でも、本当にだいじょうぶなの? 違う方法を考えた方が…」
 そうは言っても、いざ出発という段になると、さすがにルイズも心配そうにドラえもんを見る。
 だが、ドラえもんの決意は固かった。
「いいや、もうすぐそこまでドラやき…じゃなかった、国のききがせまっているんだ。
 これいじょうまてない! ……なむさんっ!!」
 止める暇もあればこそ、ドラえもんはどこでもドアを開けて、一気にドアをくぐってしまう。
 それを見送ったルイズとアンリエッタは、不安そうに顔を見合わせる。
「……本当に、だいじょうぶかしら?
 わたくし、まだウェールズ様に事情を説明する手紙も渡していないのに……」
 おかしなタヌキが一匹向かっただけで、王女からの使いだと信じてもらえるのだろうか。
 王女の瞳は、そう語っていた。
「そうですね…」
 アンリエッタの問いかけに、ルイズは少し首を傾け、
「ダメなんじゃないでしょうか」
 ……自分の使い魔には意外と容赦のないルイズであった。


「そういえばあの時は……」
「もう姫さまったら、あの時のことは忘れるって…!」

 ……ガチャ!

 三杯目のお茶を飲み終え、二人共すっかり当初の目的を忘れかけていた頃、
ようやくドラえもんが帰ってきた。
「あら、おかえり。遅かったわね…・・って、どうしたのよ! ひどい格好じゃない!」
 もどってきたドラえもんは、体中煤まみれでボロボロのひどい有様だった。
「たいへんだったんだぞ! いわれた場所にウェールズ王子はいないし、
 たずねびとステッキでさがしてたら、いろんなやつが魔法でおそってきて…」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! それって貴族派のメイジだったんでしょうね!?
 もし王党派のメイジたちだったら…」
「しるもんか! あいつらぼくのことを『あやしいタヌキだ』とかいって、
 いきなりおそいかかってきたんだぞ!
 むかついたからショックガンで気ぜつさせたあと、チャンバラ刀でくびをちょんぎってやったよ!」
 ちょっと過激なドラえもんの報復に、思わず絶句するルイズ。
「それで、あの方は!? ウェールズ皇太子にはお会いになれましたか?」
 代わりに尋ねてきたアンリエッタに、ドラえもんは気炎を撒き散らす。
「そうだ! ウェールズっていうのもとんでもないやつだぞ!
 空ぞくのまねごとをして、敵から宝をうばいとっていたんだ。
 ぼくもあやうくつかまりそうになって、おそってくる空ぞくたちをちぎってはなげ、ちぎっては…」
「そんなことより! 手紙は? 手紙は取り返したの?」
 ドラえもんの言葉を遮って、肝心なことをルイズは聞く。しかし、
「いや、じじょうを話したらなっとくしてくれたんだけど、もってないそうだよ。
 それでめんどうになったからもどってきたんだ」
「なんですって!」
「おお、始祖ブリミルよ! あなたの慈悲も罪深いわたくしには届かないのですね!」
 ドラえもんの報告に、ルイズが叫び、アンリエッタがよろめいて倒れそうになる。
「それで、誰に、一体何者に奪われたって言ってたの?」
 ルイズは慌てて王女を支えながら、ドラえもんに尋ねた。
「ええと『仮面をつけた賊に奪われた』っていってたなあ。
 しかもそいつは『風のせんざい』とかいうのを使うみょうなやつだったとか」
「仮面をつけた賊! きっとレコン・キスタだわ! ……でも、風の洗剤って何かしら?」
 首を傾げるルイズに、立ち直ったアンリエッタが耳打ちする。
「ルイズ、もしかすると、この使い魔さんが言っているのは風の偏在じゃないかしら?」
「風の偏在! 風系統の高等魔法じゃない!?」
 ごくり、とルイズは唾を飲み込む。相手はあのレコン・キスタ。それもウェールズ皇太子から手紙を奪ったほどの使い手だ。
 そんなやつの相手を、ドラえもん一人だけに任せていいものだろうか。
 ――迷っていたのは一瞬だった。
「しょうがない。わたしも行くわ!」
「なんだって、きみが?」
「だって、相手は強力なメイジなのよ。ドラえもん一人に任せてはおけないわ」
 怖いが、仕方ない。国のため、王族のために命を懸ける、それは貴族の義務なのだ。
 それにほんの少しだけ、ドラえもんだけを危険な場所に送り出すわけにはいかない、という気持ちもルイズの中にはあった。
「ルイズ、だったらわたしも…」
 それを見て、ルイズに続いてアンリエッタまでもが名乗りをあげるが、
「いいえ姫さま。姫さまはここで待っていて下さい」
 それはルイズが許さなかった。
「ルイズ! その扉を使えばわたくしでもすぐにアルビオンまで行けますわ!
 わたくしだって水の魔法の使い手。戦いともなれば…」
「お聞き分けください姫さま。姫さまの身に何かあったら、それこそ国の一大事ですわ」
 激していたアンリエッタが、ルイズの言葉にハッと息を飲んだ。
「……そうですわね。わがままを申しました。でもルイズ、気をつけてくださいね」
「もったいないお言葉にございます」
 ぺこりと貴族の礼をしてみせるルイズを見ながら、ドラえもんが毒づく。
「……きみがきても足手まといなだけだと思うけどなあ」
「なんか言った?」
「いいや、なんにも…」
 そうして、どうにもチームワークに不安が残る二人は、どこでもドアをくぐっていった。


「きみは…!」
 扉からやってきたルイズを見て、ウェールズが一瞬緊張した表情を見せるが、
「…いや、気のせいだな。どうやら私は気が立っているらしい。
 そのタヌ…いや、ネコくんと一緒に来たところを見ると、きみもアンリエッタの使いかな?」
「はい、殿下。ヴァリエール家の三女、ルイズと申します」
「そうか。知っているだろうが、私がウェールズ。滅び行く国の皇太子だ」
「そんな、滅び行くだなんて……」
 ルイズが思わず言葉を失うが、ウェールズは何でもないといった様子で今度はドラえもんに向き直り、
「ああ、ネコくん。さっきは悪かった。どうもこの前に見た賊と顔が似ているような気がしてね。
 よく見れば似ても似つかないのだが、突然の出会いだったので動転してしまったのだ。すまない」
 それだけでほれぼれするような仕種で頭を下げる。
 しかし、ルイズの心を射止めたのはもっと別のことだった。
「それ! それです! 失礼ですが殿下、姫さまの手紙を奪ったという賊について、
 詳しく説明していただけませんか? わたしたちはそのために来たのです!」
 ルイズのただならぬ剣幕に、ウェールズはうむ、とうなずいて、
「あれは実に不可思議な賊であった。風の偏在を使うようであったが、
 高等魔法ゆえ習得が不完全だったのか、現われた分身ひとつひとつの大きさは人の半分ほどだった。
 もしやあれは偏在ではなく、アルヴィーやガーゴイルなどの魔法人形か、ゴーレムであったのかもしれない。
 いや、しかし……。うむむ。なんとも言えないな。
 何しろ手紙を奪うとすぐ、まるでけむりのように消え去ってしまったのだから」
 それを聞き、ルイズはいよいよ覚悟を決めた。
「あの、殿下。殿下が手紙を奪われた時間を、正確に覚えていらっしゃいますか?」
「ああ。実に印象的な出来事だったからね。しっかりと覚えているが……」
 怪訝そうな顔をするウェールズの代わりに、ドラえもんが尋ねる。
「そんなこときいて、きみはいったいどうするつもりだい?」
「もちろん、ウェールズ皇太子が手紙を盗まれた時代まで戻って
 手紙を盗まれるのを阻止するのよ!
 そうしたらレコン・キスタの目的もわかって一石二鳥じゃない。
 あんた、そういう道具も持ってるでしょ! ほら、さっさと出す!」
 ルイズに急かされ、ポケットに手を突っ込みながらドラえもんがぼやく。
「……なんだかオチが見えたようなきがするなあ」
「なんか言った?」
「いいや、なんにも…」
 ドラえもんはさっと目を逸らし、やはりドラやき目当てなのか、
めずらしく従順に道具を取り出す。

「タイムベルトとスパイセット~!」

 ドラえもんが取り出した道具を受け取りながら、
「さあ、レコン・キスタの盗人の顔、おがんでやろうじゃないの!」
 ルイズはまるで野生の獣のような獰猛な笑顔を浮かべるのだった。


 過去に戻ったドラえもんたちは、近くの部屋からスパイセットで
ウェールズ皇太子の様子を見守っていたのだが。
「――もう、なんで来ないのよ!」
 せっかくウェールズが一人で手紙を読んでいる最大のチャンスなのに、
賊は一向にやってこなかった。
「そんなこと、ぼくにいってもしようがない。
 きっとちょくぜんでおなかでもいたくなったんだろ」
「そんなわけないでしょ! ……あ、読み終わっちゃったわ! しまっちゃう!」
 今にも小箱にカギをかけそうな皇太子の様子に、焦れたルイズがとうとう立ち上がる。
「しょうがないわ。こうなったら手紙だけでも持っていきましょう」
「でも、どうやってじじょうをせつめいするんだい?」
「……この際、少し乱暴にでも取っていっちゃいましょう。
 それを見たらレコン・キスタも動き出すかもしれないし」
 そう言って、ルイズはドアに向かう、と思いきや、なかなか動き出さない。
「……あの、やっぱりわたしがそのまま行くのも危険だし、バレるとまずいじゃない?
 なんかいい道具ないの?」
「そうくると思ったよ」
 もはや慣れたのか、ドラえもんは文句も言わずにごそごそとポケットを探り始める。

「クローンリキッドごくう~! …と、えんにちのお面」

 ドラえもんは取り出した物の内、まず薬品の方をルイズに渡す。
「これをかみにふりかけると、ぬいたかみの毛いっぽんいっぽんがじぶんの分身になるんだ。
 いくらきみでもなんにんもいれば、手紙をとることくらいできるだろ」
「……口の利き方は気にいらないけど、使い方はわかったわ。それで、こっちのお面は?」
「お祭りで売ってるただのお面だよ。かおがばれるとまずいんだろ?」
「ってこれ、あんたの顔じゃない! ……なんか異様に縦長で気持ち悪いんだけど」
「もんくいうなよ。それともそのまま出ていくかい?」
「……いい。これで我慢するわ」
 ルイズはドラえもんのお面をつけ、クローンリキッドごくうを頭に振りかける。
「これでよし。さて、それじゃ…」
「行ってらっしゃい」
 スパイセットのモニターから離れないまま、ドラえもんがパタパタと手を振った。
 それを見て、ルイズはムッとする。実はルイズ、一人では怖いのでついてきて欲しいのであった。
 しかしまさか、使い魔相手に、『怖いのでついてきて』などと言えるはずもない。
「いいわ! 一人で行ってくるわよ! レコン・キスタにやられたら、
 化けて出てあんたに一生付きまとってやるんだから!」
 そんな捨て台詞を吐きながら部屋を出て行く。
「そんなことにはならないと思うけどなあ」
 それでもドラえもんは全くこたえた様子もなく、そんなことを言いながらモニターを見続ける。
 やがて、

『な、なんだきみたちは…! こ、この手紙は……返せっ!』

 大量のお面をつけたルイズがウェールズから手紙を奪い、
「そろそろか…」
 ドラえもんがちょうどスパイセットをポケットにしまい終わった途端、
「ドラえもん! 早く! 元の時代にもどるわよ!」
「そうなるだろうと思ったよ」
 手紙を手に、逃げ出してきたルイズが部屋に飛び込んできた。
「では現代へ!」
「早く早く!」
 次の瞬間、二人は元の時代にもどり、
「この部屋か! 賊め、手紙を……消えた?」
 駆けつけたウェールズは、誰もいない部屋を前に、呆然と立ち尽くすしかなかった。


「それで? 『れんこんしすたー』とやらは出てきたかい?」
「レコン・キスタよ! ……出てこなかったわ。でも、手紙だけはばっちり」
 そう言って胸を張るルイズに、ドラえもんははあ、とため息をつく。
「やれやれ。やっぱりこうなったか。……どうりでとりよせバッグがきかないわけだ」
「なにそれ? どういうことよ」
 せっかくのいい気分に水を差され、険悪な声で聞くルイズに、
「どういうこともこういうことも。つまりきみがかこの世界から手紙をとったせいで、
 さっきの時代には手紙がなかったんだよ」
 その言葉に、ルイズはハッとする。
「そうか、わかったわ! わたしがウェールズ殿下から手紙をもらってから
 現代にもどるまで、手紙はこの世界からなくなってたのね!」
 しかし、そこでルイズはもう一つ大事なことに気づいた。
「で、でも待って! それじゃ、レコン・キスタはどこにいったの?
 最初にウェールズ皇太子さまから手紙を盗んだのは…」
 それを見て、呆れたようにドラえもんが言う。
「レコン・キスタ、なんて、そんなのさいしょからいなかったんだよ。
 ウェールズがぞくについて、なんていってたかおぼえているかい?」
「あんたの顔と、わたしの格好をした小人…。そうか! だからウェールズ殿下、
 わたしたちを見た時、あんなに警戒してたんだわ!
 だって手紙を取っていったのは、あんたのお面をつけたわたしの分身だったんだもの!」
 ドラえもんが『ようやくわかったか』とばかりにうんうんとうなずく。
 ルイズも『謎が解けたわ』と、にこにこ笑顔を見せ、

「って、ちょっと待ちなさいよ!!!!」

 とんでもないことに気づいたルイズは、城中に響きそうな大声を張り上げる。
「じゃ、じゃあ何?! 手紙を盗っていったのは、わたし自身だったってこと?」
「そういうことになるね。だからちゅうこくしたのに……」
「ちょっ!? あんたわかってたの?!」
「こういうのはのび太くんでなんども体けんしたからなあ…」
 あっけからんと、ドラえもんは言う。
 それで納得出来ないのはルイズである。
「なんで言ってくれなかったのよ!」
「きかれなかったし、せつめいするのもめんどうじゃないか。
 ぼくはにんむがおわってドラやきさえ食べられればいいんだ」
 衝撃の事実に、ルイズはがっくりとうなだれる。
「そんな……。ああ、姫さまになんてご報告すればいいのかしら」
「いいじゃないか。むねをはって帰れば。きみはにんむをはたしたんだから…」


「ううぅ…。こんな、こんなことって……」
 ルイズは一人でしばらくうんうんうなっていたが、ふと気づいて顔を上げた。
「ちょっと待って。……ねえドラえもん。わたしたち、
 取り寄せバッグで手紙が手に入らなかったから、過去に行くことになったのよね?」
「うん。そうだね」
「でも、わたしたちが取り寄せバッグで手紙を取れなかったのは、
 わたしたちより先に過去に行った未来のわたしたちがいたせいでしょ?」
「う、うむ。未来なのにかことかややこしいなあ」
「だけど、それだとおかしいじゃない?
 未来のわたしたちがわたしたちの時代の手紙を取ったのは、
 もっと未来のわたしたちが未来のわたしたちの手紙を取ったからだろうけど、
 じゃあ、そのもっと先、一番最初のわたしたちは?
 一番最初のわたしたちの手紙は、いったい誰が取ったのかしら?」
「ん? ううう? むむ…。むずかしいしつもんだなあ…」
 ドラえもんもひとしきりうなった後、
「でも、そういうときのために、いい手がある」
「へえ。さすが未来の『ろぼっと』ね。ま、未来も何もそもそも別の世界だけど。
 ……それで? どんな方法なの?」
 ドラえもんはとてもいい顔で言った。

「かんがえなければいいのさ!」

「……は?」
 目を点にするルイズを置いてけぼりに、
「さ、それよりはやく帰ってドラやきたべさせろよ。やくそくしたんだからな」
 さっさと歩き出してしまうドラえもんを見てため息をつき、
「わたし、最近あんたのことわかってきたような気がするわ…」
 ルイズは疲れた顔でドラえもんの後を追うのだった。


第五話『ルイズとすこしふしぎな手紙』HAPPY END……?



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