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お前の使い魔 8話



決闘の日の翌日、わたしは暇な時間を使って図書館に来ていた。

「お前、こんな所で何をするんですか?」

 ダネットが露骨に嫌そうな顔をして尋ねる。
 どうやら本という物事態に拒絶反応を示しているようだ。

「あんたの住んでた場所を調べに来たのよ。もしかしたら、セプー族っていう種族が住んでる場所の載ってる本があるかもしれないでしょ。」

 それを聞いたダネットは嬉しそうな顔をして、その後に寂しそうな顔をした。

「どうしたのよ?住んでた場所が判れば、あんただって帰ったりできるでしょ?」
「それはそうですが……そうなったら、こことも、お前ともお別れだと思って。」

 全く、こいつは何を言ってるんだ。
 使い魔の契約とは、一生を共に生きるということ。
 第一、わたしはダネットの住む場所がわかったとしても、素直に帰すつもりはない。
 わたしだってダネットの住んでた場所を見てみたいし、ダネットの知り合いに事情を話して、今後も使い魔として一緒に過ごす許可ぐらい取りたい。
 別に寂しいからとかじゃないよの? 単に使い魔に逃げられたとあっては、ヴァリエール家の名折れというか、ほら、まあアレだ。うん。

「言っとくけど、住んでた場所がわかったって、あんたとの使い魔の契約は一生消えないのよ? たまーに帰ることを許すっていうだけよ?」
「え!? 一生って言いましたか今!? わ、私聞いてません!!」

 あ、そう言えば言ってなかったっけ。

「諦めなさい。何なら、あんたの友達とかこっちに呼んで暮らせばいいじゃない。土地は……うん、わたしがどうにかするわよ。」
「むー……、でもこっちはホタポタありませんし……」
「そのホタポタって何なのよ? あんたが言うには食べ物みたいだけど?」
「えっとですね、ホタポタっていうのは……」

 そこから、ホタポタについての講釈が始まった。
 話をまとめると、どうやら、ダネットが住んでる土地特有の果物らしく、凄く美味しいとの事だ。
 うーむ。ここまで力説されると一度食べてみたいわねホタポタ。
 一通りの説明が終わった後、ダネットはポンと手を叩いて、さも名案が閃いた様に言った。

「そうだ!! お前も私の住んでる所にくればいいのです!! そうすればお前とも一緒だし、私もホタポタが食べられます!!」
「うーん……確かに食べてはみたいけど、わたしはその……」

 言いよどむわたしを見て、ダネットは何かに気が付いたかのようにハッとなる。

「そう言えばお前には家族がいましたね……。すいません。」
「べ、別に謝る事じゃないわよ。うん。あ、でも一度は行ってみたいわね。その時は案内してよねダネット?」
「はい!! 案内は任せとくのです。きっとお前も何度も行きたくなるのです。」

 満足したのか、ダネットはふらふらと図書館を回り始め、わたしも土地の事が書かれた書物を中心に調べ始めた。
 わたしが、適当に目星を付けて何冊かの本を机に持っていった頃、図書室のドアがガラリと開く。



「あら、あんた」
「あー!! お前はちび女!!」

 図書室に入ってきたのはタバサだった。
 タバサはちらりとわたしとダネットを見ると、興味が無さそうに移動し、自分の持ってきた本を机に置いた後読み始めた。
 うーむ……こいつ、何を考えてるかよくわかんないから苦手なのよね。
 ダネットはそんなタバサの所にずんずん突き進み、机をバンと叩いた。

「ちび女!! あの時はよくもやってくれましたね!!」

 あの時とは決闘の時かしら? 確かダネットの頭を杖でぶん殴ったのよねタバサ。
 わたしが止めようと席を立つと、タバサはダネットを見て、眼鏡をくいっと持ち上げ行った。

「タバサ。」
「きゅ、急になんですかちび女!!」
「タバサ。」
「う……」
「タバサ。」
「た…たばさ?」

 満足したのか、タバサは頷いた後に目を本に戻し、また読み始める。
 わたしはそれを見て驚いていた。
 あのダネットに名前をちゃんと呼ばせるつわものがいたなんて……なんか負けた気がする。
 ちょっとわたしも実戦してみよう。

「ダネット、ちょっといい?」
「何ですかお前。今は忙しいのです。」
「いいから。ちょっといらっしゃい。」

 しぶしぶわたしの所に来たダネットに、すぅっと息を吸い込んで言う。

「ルイズ様。」
「急に何ですかお前。お腹でも痛いんですか?」
「ルイズ様。」
「お前、熱でもあるんですか?」
「る、ルイズ様!」
「大丈夫ですかお前?」
「ルイズ様って言ってんでしょこのダメット!!」
「何で急に怒るんですか!! お前は訳がわかりません!!」
「何!? わたしが悪いの!? ほら言いなさいよ!! ルイズ様!!」
「嫌です!!」

 そんな感じで喧嘩を始めだしたわたし達を見て、タバサが笑った気がするのは気のせいだきっと。うん。



 結局、その日はろくに調べ物が出来ず、そのまま一日を終えた。
 そして虚無の曜日、わたしとダネットは学院の前から動くことが出来なかった。

「あんた、馬に乗ったことが無いならまだしも、馬を見たことが無いってどこの田舎物よ?」
「ば、馬鹿にしないで下さい!! こんな動物ぐらいあっさり乗りこなしてみせます!!」

 ダネットは馬に乗れなかったのだ。
 そんな訳で、わたし達は予定を少しずらし、乗馬の訓練をしていた。

「お、お前!! こいつ今、私を噛もうとしました!!」
「あんたが顔を触ろうとするからでしょ!!」

 結果は、今のところ芳しくない。
 わたしが今日の予定を乗馬の訓練で終えてしまうかもしれないと考え始めた頃、学院から見知った顔の二人が出てきた。

「何やってんのあんた達?」
「あ!!乳でかとタバサ!!」

 ダネットの言葉を聞いて、目を丸くするキュルケ。
 そしてタバサの方を見て、興味深そうに聞く。

「タバサ、どんな魔法使ったのよ?」
「ち、乳でか!! お前は私を馬鹿に……うわあ!! お前!! こいつまた私を噛もうとしました!!」

 溜め息をついたわたしを見て、キュルケがニヤリと笑いながら言った。

「もしかして出かけるつもりだったのルイズ?」
「そうよ。でも、今日は一日これかもね。」

 キュルケのニヤケ顔にむっとしつつ、後ろで四苦八苦しているダネットを見てまた溜め息をつく。
 するとキュルケが、更に顔をニヤつかせて言った。

「だったらさ」




「お前!! 気持ちいいですね!!」
「そうね。だからじっとしてなさいダネット。」

 わたし達は今、タバサの風竜に乗ってトリスタニアを目指している。
 ダネットは子供のようにはしゃぎ、目を離すと落ちてしまうんじゃないかと気が気ではない。
 まあ……竜に乗って空を飛ぶのは気持ちいいから、その気持ちもわからないでもない。
 わたしだってちょっと羨まし……いや、何でもない。
 気分を変えるために、風竜を始めて見たダネットの反応を思い出す。

「凄く食いでがありそうです!!」

 うん。思い出すんじゃなかった。
 いつかこいつは、他のメイジの使い魔を食べつくすんじゃないかしら。
 美味しそうにバグベアーを食べるダネットを想像し、溜め息を付いた後、心に引っかかっていた事をキュルケに尋ねる。

「それでキュルケ、交換条件は何?」

 この風竜はタバサの使い魔ではあるのだが、キュルケが許可を貰ってわたしとダネットが乗せてもらっている。
 どうも二人もトリスタニアまで行く用事があったらしいから、ついでと言えばついでなのだけれど、交換条件も無しに、あのキュルケがわざわざわたし達まで乗せるようにとタバサに頼むわけが無い。
 だからこそのあのニヤケ顔だ。

「あら失礼ねルイズ。あたしは親切心からタバサに頼んだのよー? 別に、最近美味しいって評判のクックベリーパイのお店がトリスタニアに出来たとか全くこれっぽっちも関係ないのよ?」
「あーそーですか。」

 そういう事かコノヤロウ。
 でもまあ、クックベリーパイぐらいなら別にいいか。わたしも好きだから一緒に食べようかしら。

「美味しい!? 私もそのクックなんとか食べたいです!!」
「わかった!! わかったから暴れないで!! お、落ちる!! 落ちちゃう!!」
「ちょっとルイズ!! 危ないわよ!!」

 そんな、空の上でまで騒がしいわたし達をチラっと見て、タバサが一言呟いたのが聞こえた。

「騒々しい。」



 風竜のお陰で予想以上に早くトリスタニアに到着したわたし達一行は、別に行くところがあるというキュルケとタバサに集合場所を言った後、別行動となった。
 取り合えず、わたしとダネットは、最初の目的である服屋へと行くことにする。

「本当は財布を持たせようかと思ったけど、ダネットに持たせるのは自殺行為よね……」
「ん? お前、何か言いましたか?」
「何でもないわよ。それより早く行きましょう。寝具も注文しないといけないんだから。」

 てくてく歩いている間、ダネットはキョロキョロと周りを見ていた。
 危なっかしいことこの上ない。
 いい加減わたしが注意しようと後ろを振り向くと。

「ダネット!! あまり余所見してると……っていないし!!」

 ちょっと目を離した隙に、ダネットはどこかに消えていた。
 あのダメット、一回痛い目見ないとわからないらしいわね。
 わたしがそんな事を考えていると、わたしを呼ぶダネットの声が聞こえた。

「お前、はいこれ。」
「あんたどこに……って、これ何?」
「これ美味しいです。さっき食べた私が言うんだから保証付きです。」

 手渡されたのは、平民が好みそうな串焼きだった。
 いい香りがして、確かに美味しそうだ。しかし。しかしだ。

「あんた……これ、どこから持ってきたのよ?」
「あそこのオッサンからですよ? 『お嬢ちゃん、食ってきな!!』って言って渡してくれました。」
「それは売りつけられたって言うのよこの馬鹿!! ダメット!!」

 串焼き代を店主に払い、本日何度目かの溜め息を付く。
 今更だけど、ダネットは大きな子供みたいなものだ。
 興味を引けば、それが何であろうと手にとってみたり、騒いだりする。
 貴族に対しての恐れすらなく、誰彼構わず感情だけで物を言う。
 学院だから許されるようなものの、本来なら貴族に対して『お前』なんて言おうものなら、場合によっては侮辱したと罪にすら取られる。
 でも不思議なことに、わたしはダネットから『お前』と呼ばれる事に、最初よりも不快感を抱いていなかった。
 今更『ルイズ様』何て呼ばれたら、逆にむず痒くなりそうだ。
 今はとても楽しい。それでいいじゃないか。
 そんな事を考え、何となくダネットに声を掛けてみる。

「ねえ、ダネット。あんたって本当に……って、またいないし!!」
「お前ー!! これ!! これ美味しいです!!」

 前言撤回。
 あのダメットには、一回きっちり常識っていうものを教えなきゃいけない。と、わたしは誓うのだった。


「やっと付いた……何かいつもの数倍疲れた気がするわ。」
「お前、運動不足ですね。」
「誰のせいよ!!」

 ようやく服屋に着いたわたし達は、早速選び始める。
 とは言っても、ダネットは服に無頓着なのか、どれが良くてどれが変というのがわからないらしい。

「お前、これ!! これがいいです!!」
「それ男物でしょうが!! いいから適当に見てなさい。わたしが選ぶから。」

 手に持っていたタキシードをしぶしぶ戻し、またふらふらと店内を見回り始めるダネット。

「うん。これなんかどうかしら。ダネット、試着してみなさいよ。」
「これですか……? ヒラヒラしてて動きづらそうです。」
「試しよ試し。ほら、着てみなさい。」
「わかりました……うー。」

 ぶつくさ文句を言いながらも、ダネットはわたしが選んだワンピースを持ち、試着室で着替えた後、ひょこっと顔だけ出して恥ずかしそうにわたしに聞いてきた。

「お前、これはやっぱりやめましょう。スースーします。」
「いいから出てきなさい。」
「うー……」
「あら、結構いいじゃない。」

 ダネットに派手な物は似合わないだろうと考え、薄い桃色のワンピースを渡したのだが、なかなかどうして似合っている。
 まあ、長い耳や角や、足の毛や蹄があるので、よーく見ると亜人だとわかってしまうのだが、パッと見では年頃の女性に見える。

「じゃあ今度はこっち着てみなさい。」
「またヒラヒラ……お前、なんか楽しんでませんか?」
「気のせいよ。ほら、早くしなさい。」
「うー……」

 その後も何着か試着してみたのだが、結局ダネットが選んだのは、シンプルな藍色のシャツとズボンだった。
 本人曰く、スカートは動きづらいから嫌だそうな。
 他にも、何着か下着を買って店を出た後、寝具の発注をしに行く。
 こちらはあっさりと決まり(最初、ダネットは寝袋を選ぼうとしたのだが、わたしが止めた。)集合場所の広場へと向かう。

「遅いわよルイズ。」
「文句ならダネットに言ってよね。」
「わ、私が悪いって言うんですか!? お前の足が遅いのが悪いんです!」
「どう考えてもあんたが原因でしょうが!」

 そのまま四人でクックベリーパイを食べに、新しく出来たお店とやらに向かった。


「これがクックなんとかですか!! 気に入りました!!」
「はいはい。わかったから、もっとゆっくり食べなさい。クックベリーパイは逃げないわよ……って、あんた!! それわたしのパイよ!」
「賑やかねえ。」
「騒々しい。」

 その後、パイを平らげ、紅茶をすすりながら今後の予定を話し合う。

「それで、この後は何か予定あるのルイズ?」
「特に無いわね。あんた達はどうなのよキュルケ?」
「あたし達も欲しかった物は買ったし、パイも食べられたから、特に予定は無いわよ。」

 どうしたものかと考えるわたしとキュルケに、タバサが割って入ってきた。

「これを読みたい。」
「お前、本ばかり読んでますね。いつか本になっちゃいますよ?」

 タバサの言葉に、ダネットが反応する。
 ん?どこかで笑い声が聞こえたような……気のせいか。

「じゃあ、ちょっと早いけど帰りましょうか。キュルケもそれでいい?」
「そうね。じゃあタバサ、お願いできる?」

 キュルケの問いにタバサは頷き、わたし達はトリスタニアを後にしたのだった。
 そして、その日から一週間が過ぎた時、事件は起きた。
 わたしとダネットにとって、とても大きな事件が。





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