「……開けっ! 古より閉ざされた魔の扉よ…!!!」
1年前、大魔宮への扉を開いた場面と同じ言葉を呟き、いま1人の男が静かに魔界へと降り立った…はずだった。
しかし一歩足を踏み込もうとしたその時、目の前に突如として巨大な鏡のようなものが出現し、
次の瞬間には身をかわす暇も無くそのまま鏡の中に吸い込まれてしまった。
しかし一歩足を踏み込もうとしたその時、目の前に突如として巨大な鏡のようなものが出現し、
次の瞬間には身をかわす暇も無くそのまま鏡の中に吸い込まれてしまった。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!
私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」
私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!!!」
1年前、この学院の門を潜った時より今日まで、彼女が積んだ血の滲むような努力がいま実を結ぶ…はずだった。
しかし彼女が召喚魔法を唱えたその時、目の前の空間は突如として大爆発を起こし、
次の瞬間に発生した煙の中から1人の男が這い出してきた。
しかし彼女が召喚魔法を唱えたその時、目の前の空間は突如として大爆発を起こし、
次の瞬間に発生した煙の中から1人の男が這い出してきた。
(な…何事だ!? いきなり何かの『罠』にでも引っかかってしまったというのか? それともここが……)
(ど…どういうこと!? 折角召喚魔法が上手くいったと思ったのになんで平民風の男が出てくるわけ? それともこいつが……)
(ど…どういうこと!? 折角召喚魔法が上手くいったと思ったのになんで平民風の男が出てくるわけ? それともこいつが……)
二人は目を合わせると同時に口を開いた。
「…すみませんそこのお嬢さん、一体ここは何処ですかねぇ?」
「…ちょっとアンタ、一体何処の何者なわけ?」
「…すみませんそこのお嬢さん、一体ここは何処ですかねぇ?」
「…ちょっとアンタ、一体何処の何者なわけ?」
男は苦笑し、少女は眉を顰め、「では私から…」と男が請け負って立ち上がった。
「これは申し送れました。私…こーゆー者でございます」
”勇者の育成ならおまかせ!!” |
この道15年のベテラン |
『アバン・デ・ジニュアールⅢ世』 |
魔法使い・僧侶も一流に育てます |
”私に連絡くださいドゾヨロシク” |
「はあっ!? 何これ読めないんだけど?」
「アバン・デ・ジニュアールⅢ世、勇者育成業…ま、ひらたくいえば家庭教師ですな」
「家庭教師ィ!?」
「アバン・デ・ジニュアールⅢ世、勇者育成業…ま、ひらたくいえば家庭教師ですな」
「家庭教師ィ!?」
「おいおいルイズ~なんだその男、何処の平民だよw」
「もしかして…その平民がルイズの使い魔なのかしらww」
「こりゃ傑作だw『ゼロのルイズ』の名は伊達じゃないなwww」
「もしかして…その平民がルイズの使い魔なのかしらww」
「こりゃ傑作だw『ゼロのルイズ』の名は伊達じゃないなwww」
「うるさいわね!!! 外野は黙ってなさい!!!」
ギャラリーに向かってそう怒鳴った少女(勿論ご存知『ゼロのルイズ』である)は向き直り、改めて正面から男(ルイズにアバンと名乗った巻き毛メガネのおっさん)を一瞥した後、踵を返して後ろで静かに成り行きを見守る教師(奇人として知られるコルベール先生だ)に儀式のやり直しを訴えた。
「ミスタ・ゴルベール! お願いですからやり直しをお認めください!!」
「ミス・ヴァリエール、神聖なる儀式が正式な手続きの下行われた以上、それはできないのです」
「ですがこんなッ…こんな平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!!!」
必死に食い下がるルイズの要請もにべもなく却下され、ガクっとうな垂れるルイズ。
「ミス・ヴァリエール、神聖なる儀式が正式な手続きの下行われた以上、それはできないのです」
「ですがこんなッ…こんな平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!!!」
必死に食い下がるルイズの要請もにべもなく却下され、ガクっとうな垂れるルイズ。
「おんや~お嬢さん、大丈夫ですか? なにやらご気分が優れないようですねぇ…」
「アンタのせいよアンタの! あ~~~もう! アンタ…アバンって言ったっけ?」
「そう! 正義を守り悪を砕く平和の使徒! 勇sh」
「あ~そういうの要らないから、さっきから意味わかんないから!」
こんな状況でも何故か飄々と余裕綽々のアバンに対し、イライラが頂点に近づきつつあったルイズは若干理不尽に当り散らす。
「アンタのせいよアンタの! あ~~~もう! アンタ…アバンって言ったっけ?」
「そう! 正義を守り悪を砕く平和の使徒! 勇sh」
「あ~そういうの要らないから、さっきから意味わかんないから!」
こんな状況でも何故か飄々と余裕綽々のアバンに対し、イライラが頂点に近づきつつあったルイズは若干理不尽に当り散らす。
「とにかく、アンタと契約することにしたから。…感謝しなさいよね!!! 本来なら平民にこんなこと…一生ないんだからね!!!」
そういって契約の呪文を唱え始めたルイズに対し、
「契約、ですか? ああ~家庭教師の件で? それなら…」
この契約書にハンコを、あサインでも結構ですよ、と続けようとしたアバンの両エリをむんずと掴んだルイズは、そのまま強引に口付けを交わそうとして、巴投げの要領で投げ飛ばされた。
そういって契約の呪文を唱え始めたルイズに対し、
「契約、ですか? ああ~家庭教師の件で? それなら…」
この契約書にハンコを、あサインでも結構ですよ、と続けようとしたアバンの両エリをむんずと掴んだルイズは、そのまま強引に口付けを交わそうとして、巴投げの要領で投げ飛ばされた。
そのまま背中から落ちてもんどりうって悶えるルイズに爆笑する一同、慌てて駆け寄るアバンとコルベール。
「~~~ッッッッ!!!!!!」
「す、すみませんつい…しかしいきなり襲い掛かってくるものですから…」
「ミス・ヴァリエール! 大丈夫かね!?」
砕けた態度に見えても見知らぬ場所で警戒を怠っていなかったのが災いし、
か弱い少女を反射的に投げ飛ばすという自己の醜態に流石に狼狽するアバン。
「~~~ッッッッ!!!!!!」
「す、すみませんつい…しかしいきなり襲い掛かってくるものですから…」
「ミス・ヴァリエール! 大丈夫かね!?」
砕けた態度に見えても見知らぬ場所で警戒を怠っていなかったのが災いし、
か弱い少女を反射的に投げ飛ばすという自己の醜態に流石に狼狽するアバン。
「ア…アンタねッ! もッ…ホントッ…覚えときなさいよッ…! このバカ!!!」
息も絶え絶えに悪態をつきながら、ルイズは自分を助け起こしつつ会話を交わすアバンとコルベールの会話を聞き取ろうとした。
息も絶え絶えに悪態をつきながら、ルイズは自分を助け起こしつつ会話を交わすアバンとコルベールの会話を聞き取ろうとした。
「君は一体……トリステイン魔法学院……彼女は使い魔の契約を……できなければ退学…不可能……」
「…私はアバン……ここは……一体何をしようと……使い魔? …他に方法……やむを得ない……」
「…私はアバン……ここは……一体何をしようと……使い魔? …他に方法……やむを得ない……」
痛みが酷くてあまり聞き取れなかったが、最後にアバンはため息を一つつくと、
「わかりました、こうなっては致し方ありません。覚悟を決めましょう」
そう呟いてそっと唇を合わせ、契約は完了し、お気楽なギャラリー共は揶揄を多分に含んだ歓声を挙げた。
今や屈辱感ではち切れんばかりに傷ついたルイズの心を癒してくれるのは、左手にはしった痛みに「うひょ~~」と悲鳴を上げるアバンの姿だけだった…
「わかりました、こうなっては致し方ありません。覚悟を決めましょう」
そう呟いてそっと唇を合わせ、契約は完了し、お気楽なギャラリー共は揶揄を多分に含んだ歓声を挙げた。
今や屈辱感ではち切れんばかりに傷ついたルイズの心を癒してくれるのは、左手にはしった痛みに「うひょ~~」と悲鳴を上げるアバンの姿だけだった…
「(珍しいルーンだったな)…良し、皆契約は完了したね。では解散」
そうコルベ-ルが宣言し、生徒達も次の予定のために皆空中に浮かび上がった。
そうコルベ-ルが宣言し、生徒達も次の予定のために皆空中に浮かび上がった。
「ルイズ~お前は歩いてこいよ~w」
「というかその前にまず保健室ねww」
「『フライ』も『レビテーション』も使えないんだ、精々その使い魔にオブってもらうんだなwww」
「というかその前にまず保健室ねww」
「『フライ』も『レビテーション』も使えないんだ、精々その使い魔にオブってもらうんだなwww」
はっきりいって殺意すら覚えるが、痛みが酷くて満足に言い返すこともできない。
「うおぉぉお~」とか「ぐおぉぉぉおお~」と唸っていると、アバンがルイズに背を向けて腰を落とした。
「うおぉぉお~」とか「ぐおぉぉぉおお~」と唸っていると、アバンがルイズに背を向けて腰を落とした。
「さあ乗って下さい。私なら大丈夫です。君1人くらい軽いものですよわっはっは」
早くもルーンの痛みから回復したアバンがあまりにもにこやかに笑っていたので、こちらも釣られるように笑みを浮かべ、アバンの背に乗り首に手を回し、万感の思いを込めて締め上げた。
早くもルーンの痛みから回復したアバンがあまりにもにこやかに笑っていたので、こちらも釣られるように笑みを浮かべ、アバンの背に乗り首に手を回し、万感の思いを込めて締め上げた。
声無き悲鳴が広場に響き渡り、ルイズを乗せたアバンの姿は右へ左へ蛇行運転しつつ、一先ずは保健室を目指して行くのだった…
「ふーん、つまりアンタは別の世界から来た、と言いたいわけね?」
「少なくとも別の大陸から来た、という次元ではなさそうですね。だって…」
月が二つもあるんですから、と窓から夜空を見上げて感慨深げに呟くアバンだった。
「少なくとも別の大陸から来た、という次元ではなさそうですね。だって…」
月が二つもあるんですから、と窓から夜空を見上げて感慨深げに呟くアバンだった。
時は深夜、一先ず保健室での治療を終え部屋に戻ったルイズ(腰を強打)とアバン(軽いムチ打ち)。
早速質問タイムが始まり、かかる事態は二人の予想を大きく上回る規模であることに気付かされた。
早速質問タイムが始まり、かかる事態は二人の予想を大きく上回る規模であることに気付かされた。
「いくら何でも嘘くさいわね~弟子1人行方不明になったから探しに異世界に旅立つなんて話し荒唐無稽だわ!」
「いや~それが地上は何処を探してもてんで見当たらないんですよねぇ~」
「だからって異世界を探そうなんて発想がまず有り得ないもの」
「私の世界の場合、魔界と地上は本来一つだったものが神によって別たれたとされていましてね、可能性としては十分有り得るンですよ。しかしこんな異世界もあったとは驚きましたね~」
「…しかもその弟子…ダイって言ったっけ? とは精々一週間ぐらいの付き合いなんでしょ?」
「ルイズ…人と人との付き合いは時間じゃないのです。ダイ君は既に私の子供のようなものです」
「ルイズじゃなくてご主人様と呼びなさい!!! でもね~信用できないわよね~~」
「いや~それが地上は何処を探してもてんで見当たらないんですよねぇ~」
「だからって異世界を探そうなんて発想がまず有り得ないもの」
「私の世界の場合、魔界と地上は本来一つだったものが神によって別たれたとされていましてね、可能性としては十分有り得るンですよ。しかしこんな異世界もあったとは驚きましたね~」
「…しかもその弟子…ダイって言ったっけ? とは精々一週間ぐらいの付き合いなんでしょ?」
「ルイズ…人と人との付き合いは時間じゃないのです。ダイ君は既に私の子供のようなものです」
「ルイズじゃなくてご主人様と呼びなさい!!! でもね~信用できないわよね~~」
異世界問答はその後も続き、いい加減話しがループしかけたところでルイズが切り出した。
「じゃあ異世界から来たという証拠でもあるわけ?」
「ふっふっふ、良くぞ聞いてくれました! 今回は長旅も想定して色々準備してきましたからね~」
「じゃあ異世界から来たという証拠でもあるわけ?」
「ふっふっふ、良くぞ聞いてくれました! 今回は長旅も想定して色々準備してきましたからね~」
ゴソゴソ…!
「…これにしましょうか。私の……この必殺アイテムでっ……!」
「………………」
不意に真面目な顔つきになったアバンの様子に思わずゴクッと喉を鳴らすルイズ。
そしてアバンは懐からあるものをスッと取り出すと…
「………………」
不意に真面目な顔つきになったアバンの様子に思わずゴクッと喉を鳴らすルイズ。
そしてアバンは懐からあるものをスッと取り出すと…
「でゅわっ!!!」
と何故知ってるのか変なメガネでセブンの変身ポーズを取る。
と何故知ってるのか変なメガネでセブンの変身ポーズを取る。
「………………」
「私が破邪の迷宮で手に入れたこの”ミエールの眼鏡”はいかなる罠をもズバリ見抜いてしまうアイt」
「…ッザケんじゃないわよこのバカ犬がァ~~~!!!」
「私が破邪の迷宮で手に入れたこの”ミエールの眼鏡”はいかなる罠をもズバリ見抜いてしまうアイt」
「…ッザケんじゃないわよこのバカ犬がァ~~~!!!」
ノリノリで解説するアバンに強烈な膝蹴りをお見舞いするルイズ。前回のお返しである。
結局その後もルイズを説得することはできず話題は「これからどうするか」に移っていった。
結局その後もルイズを説得することはできず話題は「これからどうするか」に移っていった。
「とりあえず使い魔になった以上、私の忠実なる下僕として働いてもらうわよ!」
「貴方が退学になりそうだったから成り行きで協力したというのに随分な物言いですね~」
「うるさいわね~ここでは文無し宿無しのアンタの寝食を提供してやるだけでもありがたいと思いなさい!」
「ふう、まったくこの子は…で、具体的にはどんな仕事があるんですか?」
「貴方が退学になりそうだったから成り行きで協力したというのに随分な物言いですね~」
「うるさいわね~ここでは文無し宿無しのアンタの寝食を提供してやるだけでもありがたいと思いなさい!」
「ふう、まったくこの子は…で、具体的にはどんな仕事があるんですか?」
「そうね、まずは主人の目となり耳となること…」
「私こう見えて視力バッチリですからね~」
「でも感覚を共有できなきゃ意味ないわね」
「私こう見えて視力バッチリですからね~」
「でも感覚を共有できなきゃ意味ないわね」
「次は、秘薬の材料とかそういった貴重な資源を集めてくること…」
「薬学に関してなら私すんごいですよ? 実は代々学者の家系でしてね~」
「この世界の植物生態系とか知ってるわけ?」
「薬学に関してなら私すんごいですよ? 実は代々学者の家系でしてね~」
「この世界の植物生態系とか知ってるわけ?」
「じゃあ主人を敵から守るって役目もあるわ」
「一応名誉ある騎士団に名を連ねていたこともあるんですよ? まぁ何時も調理場でお料理教室を開く毎日でしたが…」
「ダメダメじゃない…」
「一応名誉ある騎士団に名を連ねていたこともあるんですよ? まぁ何時も調理場でお料理教室を開く毎日でしたが…」
「ダメダメじゃない…」
「もう! 結局なんもできないじゃない!! じゃあなんならまともにできるのよ!!!」
「ですから家庭教師なんですってば。そうですね~本来の育成メニューの他にレディのマナー講座とかもできますよ」
「なんで貴族のあたしがマナーを平民のアンタから学ばなきゃいけないのよ!?」
「別に不思議でもなんでもないでしょう? 特に貴方はちょ~~~とばかしマナーがバットなところがありますからね~」
「な、な、な、なんですってぇ~!!?」
「いや~私が見た生徒の中でもダントツですね~~流石に女性から貰った膝は初めてでしたよ膝は」
「ですから家庭教師なんですってば。そうですね~本来の育成メニューの他にレディのマナー講座とかもできますよ」
「なんで貴族のあたしがマナーを平民のアンタから学ばなきゃいけないのよ!?」
「別に不思議でもなんでもないでしょう? 特に貴方はちょ~~~とばかしマナーがバットなところがありますからね~」
「な、な、な、なんですってぇ~!!?」
「いや~私が見た生徒の中でもダントツですね~~流石に女性から貰った膝は初めてでしたよ膝は」
……等々のやり取りが暫く続いた……
「うるさいうるさいうるさーい! もうアンタは黙って洗濯、掃除、その他雑用でもやりなさい!!!」
「ん~~まあ家事全般得意ですからそれは良いんですが……」
「何よ?なんか文句でもあるの?」
「ん~~まあ家事全般得意ですからそれは良いんですが……」
「何よ?なんか文句でもあるの?」
さっきまでのお茶らけた雰囲気とはうって変わって神妙な顔つきをしたアバンだが、ルイズはさっきの例もあるので普段どおり素っ気無く返したのだが…
「この世界で召喚の儀式が神聖で大事なことも、使い魔の役目の重さも私なりに少しは理解したつもりです」
「…それで?」
「ですが、私も何時かは元の世界に返らなければいけない、ということです。
ダイ君を探して私がこの世界に来たように、私にも心配してくれる人、戻るべき故郷がありますから」
「…それで?」
「ですが、私も何時かは元の世界に返らなければいけない、ということです。
ダイ君を探して私がこの世界に来たように、私にも心配してくれる人、戻るべき故郷がありますから」
それまでにない静かで優しい口調、その分だけその言葉は真剣みを帯びていた。
今まで散々アバンの話し―異世界から来た―を疑ってきたルイズだが、この時ばかりは話し半ば以上に信じかけた。
それに仮に異世界というのが嘘だとしても、故郷があるというのに変わりはない。
今まで散々アバンの話し―異世界から来た―を疑ってきたルイズだが、この時ばかりは話し半ば以上に信じかけた。
それに仮に異世界というのが嘘だとしても、故郷があるというのに変わりはない。
「暫くは貴方のお世話を引き受けましょう。でもそれが何時までも…というわけにはいかないことを前もって知っていて貰いたいのです」
「それは判らないでもないけど…でも無理よ」
「それは何故?」
「私使い魔を元の世界に戻す呪文なんて聞いたことないもの…そもそも異世界から来た使い魔が初耳なんだけど」
「ああ、それは私の方でなんとかしますよ。元の世界に戻るあてが無いわけではないんです。…ただあまりに遠すぎるみたいでさっぱり感覚が掴めないんですが、なんらかのきっかけさえあれば多分イケルと思います」
「それは判らないでもないけど…でも無理よ」
「それは何故?」
「私使い魔を元の世界に戻す呪文なんて聞いたことないもの…そもそも異世界から来た使い魔が初耳なんだけど」
「ああ、それは私の方でなんとかしますよ。元の世界に戻るあてが無いわけではないんです。…ただあまりに遠すぎるみたいでさっぱり感覚が掴めないんですが、なんらかのきっかけさえあれば多分イケルと思います」
なるほど、と納得しかけたルイズだが、
「でも、召喚の魔法『サモン・サーヴァント』は呼び出した使い魔が死ぬまで新たに唱えることもできないわ。アンタが帰ったら、私の使い魔が居なくなっちゃうじゃない!」
平民とは言え使い魔は使い魔、居なくなって再召喚もできないのでは退学もあり得る。
平民とは言え使い魔は使い魔、居なくなって再召喚もできないのでは退学もあり得る。
「それもなんとかしましょう。恐らく契約状態を解除できれば良いのでしょうから、調べればなんらかの方法は見つかるはずです。私は解呪とか得意ですから。ダイ君の情報と合わせてそれらの目処がつくまでは勝手に帰ったりしませんよ」
「本当でしょうね?」
「約束しましょう」
「んむむ…」
「本当でしょうね?」
「約束しましょう」
「んむむ…」
ルイズは考えた。この平民? の言う事が何処まで信用できるのか判らないが、もし本当でも勝手になんとかすると言ってる以上問題はない。
仮にどこかで嘘をついていたとして、だからどいってルイズに如何こうできることがあるとも思えない。
ならばここは快諾して主人としての器のでかさを示すべきか。
仮にどこかで嘘をついていたとして、だからどいってルイズに如何こうできることがあるとも思えない。
ならばここは快諾して主人としての器のでかさを示すべきか。
「わかったわ。それについては勝手にしなさい。けどそれまではビシビシ働いて貰うわよ!!!」
「ベリ~グット!! では宜しくお願いしま~すネ」
「ベリ~グット!! では宜しくお願いしま~すネ」
そういって差し出した右手を華麗にスルーされずっこけるアバン。
「ふあ~長々喋ってたらなんだか眠くなっちゃったわ。私はもう寝るわね」
「じゃあ私はここで寝させて貰いますね」
「じゃあ私はここで寝させて貰いますね」
ルイズが「アンタは床よ~あ、流石に寒いでしょうから毛布一枚恵んであげるわオッホッホ」とやる前に、どこからか簡易寝具を取り出して床に敷きだしたアバン。
絶対的な地位の差を演出するルイズの作戦その一『床で寝なさい』は不発に終わった。
絶対的な地位の差を演出するルイズの作戦その一『床で寝なさい』は不発に終わった。
(クッ…どっから取り出したというの? ま、負けてなるものですか!)
ルイズはブラウスをボタンを次々外し、まずはアバンに脱いだブラウスを投げてよこした。
ルイズはブラウスをボタンを次々外し、まずはアバンに脱いだブラウスを投げてよこした。
「…ルイズ」
「何?」
(ふっ…貴様は次に『何故私の前で服を脱いで寄越すんですか?』と言う)
「何?」
(ふっ…貴様は次に『何故私の前で服を脱いで寄越すんですか?』と言う)
「言い忘れてましたが私結婚してますから。それに君と私じゃ犯罪です。良家の子女なら自分の体を大切になさい……」
「!!!!!!!!!いきなり飛躍しすぎでしょうがあああああああああ馬鹿犬ぅうううううううううううううう!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!いきなり飛躍しすぎでしょうがあああああああああ馬鹿犬ぅうううううううううううううう!!!!!!!!」
露骨に失望したような表情で左右に首を振るアバンに真っ赤になって絶叫するルイズ。
「まぁ冗談はさて、置き早速これを洗濯しとけば良いんですね? 今日はもう遅いので明日の朝には済ませておきましょう」
「…アンタ、ホンットに覚えときなさいよ! フンッ」
「…アンタ、ホンットに覚えときなさいよ! フンッ」
色々ありすぎて怒る気力すら使い果たしてしまいそうなルイズは布団を被ってそっぽを向くと、数分後にはスヤスヤと寝息を立てていた。
(やれやれ、寝てるところは可愛らしいんですけどねぇ…)
そう苦笑し、アバンも床に横になった。
そう苦笑し、アバンも床に横になった。
(大変なことになってしまいましたが、こんな世界でもダイ君捜索の手がかりがゼロとは言えません)
(しばらくは様子を見ることにしましょうか…それに…)
(ルイズ……あの子は実に良い目をしてる…多少素直ではないところもあるようですが…)
(きっと……本来は…良い子……あの子たちのように………)
(フローラ……しばらく………心配しない…………必ず……………………)
(しばらくは様子を見ることにしましょうか…それに…)
(ルイズ……あの子は実に良い目をしてる…多少素直ではないところもあるようですが…)
(きっと……本来は…良い子……あの子たちのように………)
(フローラ……しばらく………心配しない…………必ず……………………)
最後には故郷に残して旅に出たかたちとなる妻フローラを想いつつ、アバンも深い眠りに落ちた。