石ころが光る。
一瞬、もしかして成功したのかと希望を抱いた。
でも、その光は膨れ上がり、爆発の予兆を示す。
ああ、やっぱりわたしは『ゼロ』なんだ。
これでダネットにも愛想を尽かされる。
閃光と爆音が教室に響き、わたしとミセス・シェヴルーズは黒板に叩きつけられた。
痛みで顔をしかめるが、それよりも胸が痛かった。
立ち上がりはしたけれど、ダネットの方を見れない。
どんな顔をしていいかわからない。
そんな事を考えていると、生徒達が騒ぐ声の中に、どたばたという足音が聞こえ、わたしは肩を掴まれた。
一瞬、もしかして成功したのかと希望を抱いた。
でも、その光は膨れ上がり、爆発の予兆を示す。
ああ、やっぱりわたしは『ゼロ』なんだ。
これでダネットにも愛想を尽かされる。
閃光と爆音が教室に響き、わたしとミセス・シェヴルーズは黒板に叩きつけられた。
痛みで顔をしかめるが、それよりも胸が痛かった。
立ち上がりはしたけれど、ダネットの方を見れない。
どんな顔をしていいかわからない。
そんな事を考えていると、生徒達が騒ぐ声の中に、どたばたという足音が聞こえ、わたしは肩を掴まれた。
「大丈夫ですかお前!」
顔を上げると、そこには顔と服をすすまみれにした心配そうな顔のダネットがいた。
「え?あ、うん。」
わたしがあっけに取られながらも返事をすると、ダネットは心底安心したような顔をした後、黒板に打ち付けられた衝撃で気絶してしまったミセス・シェヴルーズの方へ行き、外傷が無いか確かめだす。
ミセス・シェヴルーズは、どうやら気絶してしまっただけで、目立った外傷は無いと判断したらしいダネットは、またわたしの方へ来た後、わたしの頭をぺしんとはたいた。
ミセス・シェヴルーズは、どうやら気絶してしまっただけで、目立った外傷は無いと判断したらしいダネットは、またわたしの方へ来た後、わたしの頭をぺしんとはたいた。
「な、何すんのよ!」
驚いたわたしが文句を言うと、ダネットは眉を上げ、ボロボロになった教室と生徒達を指差し、一言「謝りなさい。」とだけ言った。
「い、嫌よ!何でわたしが謝んなくちゃいけないのよ!」
納得がいかなかったわたしがそう言うと、ダネットはまたわたしの頭をぺしんとはたいて、先ほどよりも強い口調でわたしを諭すかのように言った。
「お前は乳でかや太っちょや、そこで気絶してるおばさんや他の人達に迷惑をかけました。だから謝りなさい。」
太っちょとはマリコルヌの事だろうか?
だが今は、そんな事よりも、謝るという事に抵抗があった。
わたしは誇り高きヴァリエール家の三女。
そんな簡単に頭を下げていい訳が無い。
いつもなら「ちょっと失敗しちゃったわね。」とか言って済ます。
きっとそれが正しいのだ。
でも、そうしたらきっとダネットはわたしを許さないだろう。
何となくわかった。だから。
だが今は、そんな事よりも、謝るという事に抵抗があった。
わたしは誇り高きヴァリエール家の三女。
そんな簡単に頭を下げていい訳が無い。
いつもなら「ちょっと失敗しちゃったわね。」とか言って済ます。
きっとそれが正しいのだ。
でも、そうしたらきっとダネットはわたしを許さないだろう。
何となくわかった。だから。
「…………ごめんなさい。」
わたしは、教室の生徒の方を見て、小さな声で謝罪の言葉を口にした。
そんなわたしを見たダネットは、満面の笑顔になった後、自分もぺこりと生徒に頭を下げ「ごめんなさい。」と言った。
それを見て呆気に取られた生徒達は、いつもならわたしを責める言葉を言うための口をぽかんと開け、ばつが悪そうにしぶしぶ納得する仕草を取る。
そしてわたしが、隣のダネットをちらりと見ると、彼女はとても嬉しそうな顔をしていた。
そんなわたしを見たダネットは、満面の笑顔になった後、自分もぺこりと生徒に頭を下げ「ごめんなさい。」と言った。
それを見て呆気に取られた生徒達は、いつもならわたしを責める言葉を言うための口をぽかんと開け、ばつが悪そうにしぶしぶ納得する仕草を取る。
そしてわたしが、隣のダネットをちらりと見ると、彼女はとても嬉しそうな顔をしていた。
あれから、気絶したミセス・シェヴルーズを医務室に運んだ後、わたしとダネットは教室の片付けを命じられた。
掃除の間、魔法は禁止というのは、片付けを命じた教師の皮肉だろうか?
ダネットは文句一つ言う事無く片付けを手伝い、わたしも机を拭いたり、軽いものを運んだりする。
ダネットは簡単そうにひょいひょいと重いガレキや机を運ぶ。
あの細い身体のどこにそんな筋肉が詰まってるのだろうか?と不思議になるぐらいだ。
片付けの間、わたし達は簡単なやり取り以外、口にしなかった。
というか、わたし自身が話すのを拒絶していた。
だって、結局魔法は失敗してしまい、わたしがダメメイジだとダネットに知られてしまったから。
爆発の直後はわたしの身を案じてはくれたが、あれから時間も経ち、落ち着いた今は考えもまとまっているだろう。
嫌だ。初めて成功魔法の結果である使い魔にまで、自分を拒絶されたくない。
そんな事を考え、自然と俯いていたわたしに、ダネットが話しかけてきた。
掃除の間、魔法は禁止というのは、片付けを命じた教師の皮肉だろうか?
ダネットは文句一つ言う事無く片付けを手伝い、わたしも机を拭いたり、軽いものを運んだりする。
ダネットは簡単そうにひょいひょいと重いガレキや机を運ぶ。
あの細い身体のどこにそんな筋肉が詰まってるのだろうか?と不思議になるぐらいだ。
片付けの間、わたし達は簡単なやり取り以外、口にしなかった。
というか、わたし自身が話すのを拒絶していた。
だって、結局魔法は失敗してしまい、わたしがダメメイジだとダネットに知られてしまったから。
爆発の直後はわたしの身を案じてはくれたが、あれから時間も経ち、落ち着いた今は考えもまとまっているだろう。
嫌だ。初めて成功魔法の結果である使い魔にまで、自分を拒絶されたくない。
そんな事を考え、自然と俯いていたわたしに、ダネットが話しかけてきた。
「お前、あの爆発ですが」
来た。とうとう来た。
どうしようどうしようどうしよう。
でも、いくら考えてもいい返事が思いつかない。
どうしていいかわからず、無言のままのわたしに、ダネットは言葉を続けた。
どうしようどうしようどうしよう。
でも、いくら考えてもいい返事が思いつかない。
どうしていいかわからず、無言のままのわたしに、ダネットは言葉を続けた。
「凄い術ですね!お前、やるじゃないですか!見直しました!」
は?何を言ってるんだこいつは?
凄い?何が?見直す?何を?誰を?
なる程、こういう回りくどい嫌がらせをする奴なんだこいつは。
そしてわたしを笑うんだ。『ゼロ』だと。
わたしの中に怒りが渦巻き、ダネットにぶつけようと顔を上げる。
キラキラした目がわたしを見ていた。
ダネットは馬鹿になんかしていなかった。
心底、驚いて、感心して、尊敬してる目だった。
凄い?何が?見直す?何を?誰を?
なる程、こういう回りくどい嫌がらせをする奴なんだこいつは。
そしてわたしを笑うんだ。『ゼロ』だと。
わたしの中に怒りが渦巻き、ダネットにぶつけようと顔を上げる。
キラキラした目がわたしを見ていた。
ダネットは馬鹿になんかしていなかった。
心底、驚いて、感心して、尊敬してる目だった。
「あれはどうやるんですか?他の術師も同じ事をできるんですか?あ、それとお前は焔術師では無いのですね。という事は、お前もレナ様みたいな凄い術師ですか?」
ダネットの口から次々に飛び出す質問にどう答えていいかわからず、取り合えず判るところだけ返す。
「あ、あれはただの失敗魔法よ。わたしだけ…わたしだけが爆発するの。どんな魔法を使ってもね…」
それを聞いたダネットは、目を丸くする。
「失敗であれですか!?じゃあ成功したら、もっと凄い事ができるんですね!!お前、本当に凄い術師なんですね!!」
どうして彼女は、わたしが今まで聞いたことの無い言葉ばかり口にするのだろう。
そこには悲観的なものなんて一つも無く、希望や幸せといったものばかりが見える。
それはとても眩しい。わたしには耐えられないぐらいに。
だからわたしは、悲観的な言葉を返す。
そこには悲観的なものなんて一つも無く、希望や幸せといったものばかりが見える。
それはとても眩しい。わたしには耐えられないぐらいに。
だからわたしは、悲観的な言葉を返す。
「凄くないわよ…。わたしの二つ名、『ゼロ』っていうの。どんな魔法を使っても爆発しちゃう。だから『ゼロ』。ゼロのルイズなのよ。」
その言葉を聞いたダネットは、指を頬に当てて首を傾げ、またわたしが予想してなかった返事をする。
「それ間違ってますよ。」
どうして彼女はこうなんだろう?
次にどんな言葉を返してくれるのだろう?
それが知りたくて、言葉の続きを促す。
次にどんな言葉を返してくれるのだろう?
それが知りたくて、言葉の続きを促す。
「『ゼロ』っていうのは、何も無いってことですよね?でも、お前は術で爆発させる事ができます。さっきお前は、お前だけが術で爆発を起こすと言いました。それは、お前しかできない術ということでしょう?」
それから、更に言葉を続ける。
「第一、お前は私を召喚しました。しかも支配無しにです。これは凄い術なのです。召喚と爆発。ほら、お前は『ゼロ』じゃありません。えっと…にのルイなんとか?つー?うー…何か変ですね…何かいい呼び方は……」
そう言って、「うー…」と唸りながら必死にわたしの二つ名を考え出す。
その様子が可笑しくて…嬉しくて、わたしは笑う。
その様子が可笑しくて…嬉しくて、わたしは笑う。
「あ!お前!今、笑いましたね!?上等です!私が凄い呼び名を考えてやるのです!首を洗って待ってなさい!!」
そしてまた「うー……」と唸って考え込む。
そんなダネットを見てわたしはまた笑い、笑われた彼女はぷりぷりと怒るのだった。
そんなダネットを見てわたしはまた笑い、笑われた彼女はぷりぷりと怒るのだった。
教室の片付けも終わり、昼食の時間になったので、わたしとダネットは食堂に向かった。
食堂の前でダネットと別れ、一人で席に向かう。
朝の一件で、ダネットの食事はメイドやコックといった使用人と同じ場所で行うという事になっていたからだ。
始祖ブリミルへの祈りをし、豪勢な昼食を口にする。
料理はどれも素晴らしく、わたしのお腹を満たしていく。
でも何故か物足りない。
一人で取る、静かな食事は今までと同じはず。
寂しくなんか無い。うん。大丈夫。
そんな感じで食事を終え、食後の紅茶を口にする。
確か、今日のデザートはケーキだったかしら?
食堂の前でダネットと別れ、一人で席に向かう。
朝の一件で、ダネットの食事はメイドやコックといった使用人と同じ場所で行うという事になっていたからだ。
始祖ブリミルへの祈りをし、豪勢な昼食を口にする。
料理はどれも素晴らしく、わたしのお腹を満たしていく。
でも何故か物足りない。
一人で取る、静かな食事は今までと同じはず。
寂しくなんか無い。うん。大丈夫。
そんな感じで食事を終え、食後の紅茶を口にする。
確か、今日のデザートはケーキだったかしら?
「お前!このケーキ美味しいですよ!!」
そうそう。今日のケーキは、前に食べた時も確かに美味し……って!!
「ちょっとダネット!あんた何やってんのよ!!」
「へ?ケーキを運んでるんですよ?変ですか?」
「へ?ケーキを運んでるんですよ?変ですか?」
確かにケーキを運んでる。それは変じゃない。
しかし、それは使い魔の仕事じゃないだろう。
しかし、それは使い魔の仕事じゃないだろう。
「何であんたがケーキの配膳なんかやってんのよ!」
「はいぜん?運ぶことですか?えっと、ご飯を食べさせてもらったお礼に手伝ってるのです。」
「はいぜん?運ぶことですか?えっと、ご飯を食べさせてもらったお礼に手伝ってるのです。」
そして、笑顔で配膳を続けようとする。
いや待て。待たんかこのダメット。
食事が終わったら、速やかにご主人様の元に戻ってくるのが使い魔ってもんでしょう。
まあ、ご飯のお礼にっていうのはダネットらしいと言えばらしいけど…何か気に入らない。
なので、わたしがダネットを連れ戻そうと席を立つ直前、見知らぬメイドが声をかけてきた。
いや待て。待たんかこのダメット。
食事が終わったら、速やかにご主人様の元に戻ってくるのが使い魔ってもんでしょう。
まあ、ご飯のお礼にっていうのはダネットらしいと言えばらしいけど…何か気に入らない。
なので、わたしがダネットを連れ戻そうと席を立つ直前、見知らぬメイドが声をかけてきた。
「あの…ミス・ヴァリエール、よろしいでしょうか?」
それは、黒髪のメイドだった。
そう言えば、何度か見かけた事があるような気がする。
そう言えば、何度か見かけた事があるような気がする。
「誰よあんた。」
わたしの問いに、慌てた様子で答えるメイド。
「あ、失礼しました!私はメイドのシエスタと申します。」
そしてペコリと頭を下げた後、言葉を続けた。
「その、ミス・ヴァリエール。差し出がましい事とは思いますが、ダネット様の配膳を続けさせてはもらえないでしょうか?」
「はあ?何でよ?何であんたがそんなお願いなんてするのよ?」
「はあ?何でよ?何であんたがそんなお願いなんてするのよ?」
怒気混じりのわたしの言葉に、ビクっとしながらも、シエスタは答える。
「それは…ダネット様、何やら皆さんに迷惑をかけてしまったから、そのお詫びにと……」
迷惑?お詫び?何の事だろう?
今日といえば、朝、食事をして、その後は授業で……。
今日といえば、朝、食事をして、その後は授業で……。
「あ」
「ミス・ヴァリエール?」
「ミス・ヴァリエール?」
シエスタとかいうメイドの言葉も頭に入らない。
迷惑…それはきっと、さっきのわたしがやった教室爆破の事。
わたしが掛けた迷惑を、ダネットは少しでも詫びようとしているのか。
迷惑…それはきっと、さっきのわたしがやった教室爆破の事。
わたしが掛けた迷惑を、ダネットは少しでも詫びようとしているのか。
「そんな事聞いちゃったら、止めるわけにいかないじゃない……」
シエスタはそれを聞いて満足したのか、「では、仕事に戻ります。」と言って去っていった。
ダネットの方を見ると、今も笑顔でケーキを配って回っていた。
全く、普段はダメダメなのに、何でこういう所だけはしっかりしているんだろう。
いつの間にかわたしの頬は緩み、笑顔になっていた。
ふふ、楽しそう。あら?何かを拾ったみたいね。
それを誰かに…あれはギーシュかしら?ん?あれはモンモランシーと、一年生の女子?何か……揉めてる?
おお、ギーシュがぶっ飛ばされて……ダネットとギーシュが言い合いしてる!!
やばい!!止めなきゃ!!
しかし、わたしの考えもむなしく、食堂にギーシュとダネットの声が響き渡り、その内容を聞いたわたしは机に突っ伏した。
ダネットの方を見ると、今も笑顔でケーキを配って回っていた。
全く、普段はダメダメなのに、何でこういう所だけはしっかりしているんだろう。
いつの間にかわたしの頬は緩み、笑顔になっていた。
ふふ、楽しそう。あら?何かを拾ったみたいね。
それを誰かに…あれはギーシュかしら?ん?あれはモンモランシーと、一年生の女子?何か……揉めてる?
おお、ギーシュがぶっ飛ばされて……ダネットとギーシュが言い合いしてる!!
やばい!!止めなきゃ!!
しかし、わたしの考えもむなしく、食堂にギーシュとダネットの声が響き渡り、その内容を聞いたわたしは机に突っ伏した。
「け……決闘だ!!」
「上等ですキザ男!!首根っこへし折ってやります!!」
「上等ですキザ男!!首根っこへし折ってやります!!」