あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロ 青い雪と赤い雨-07


決闘が終わって一段落ついた所ではあるが、
それで「疲れたから今日はもう寝るわ」とはいかない所が、“書生”と呼ばれる身分の辛い所である。
ルイズは現在、目下教室の清掃作業に追われている。
その原因を説明するには、少し時間を遡る必要があるだろう。


決闘終了後間もなくの事、ルイズは休む間も無くミセス・シュブルーズによる土の講義を受けていた。
噂話の大好きな貴族の子弟達の学校なだけあって、終わって間もない決闘の噂は既に周知の所であったので、
(ギーシュの騎士道とも取れる雄姿は、それを称揚する女子生徒の間で往々にして誇張される所ではあったが)
化け物―――つまりアトリを伴っているルイズを、面と向かって貶す者は最早居なかった。
しかし、ルイズに叱られている姿も彼らの知るの所であった為、必要以上に恐れられる事も無かった。

授業内容については特に特筆するべき事は無かった。
“錬金”の復習である。
“錬金”とは物質の形質を変化させる、土系統で最も基本的とされる魔法である。
教師はそれを実演した際に、アトリを少なからず一驚に喫させる事に成功した物の、
その後に生起した事に対する“それ”とは比にならなかった。

その後に生起した事とは、生徒による“錬金”の実演である。
授業内容も、実演対象である魔法も多くの生徒にとって、至って平凡な物であった。
しかし、教師に指名され実演した生徒が平凡ではなかった。
ルイズである。

杖を持ち、精神を研ぎ澄まし、ルーンを紡ぐ。
それに起因する結果は、彼女の場合他者とは異なる。
それは“爆発”である。
そしてそれは“錬金”という魔法に限った事では無い。
彼女にとってハルケギニアに存在する、無数の魔法は全て等価値であった。
帰結する先が全て同じなのだから……。


その際、アトリはレイズが急速に収縮したのち、まさに“爆発的”に拡散していくのを観測し、
驚駭の念を禁じえなかったのだが、周囲の目には『ルイズの失敗魔法を初めて見た為である』
と捕えられたため、特に記憶に残るという事も無かった。

ルイズにとってはアトリの驚駭の表情は、無論気分の良い物では無かったが、決闘の直後という時間帯もあいまって、
モンモランシーが授業中何か言いたげな面持ちで、こちらをちらちらと見ていた事の方が気になった。
しかし、授業が終わると同時教室を飛び出して行ってしまった為、真相はその時点では未だ不分明であった。
大方医務室で寝ているギーシュを見舞ってやっているのだろうが……。


兎にも角にも、教室を吹き飛ばしてしまったルイズは、その清掃を命じられたのだった。
ルイズの爆発により吹き飛ばされた教室の惨状は相当な物で、時間の面から言えば恐らく夕方位までは要する事が予測された。
それは、途方に暮れるに値する事だったが、その時間すら惜しいので、とにかく手を動かす事にした。
アトリはさり気なく重い物、危ない物を率先して処理してくれている様で、その無言の気遣いがとても心地よい物に感じられた。
相変わらず口は悪かったが。
そんな調子で清掃作業に従事していると、教室の扉が開く音が、来客を2人に知らせた。

タバサであった。
『雪風』と呼ばれる少女も、決闘の際に、観衆の「幽霊」発言により気絶してしまっていた為、医務室で寝かされていたのだった。
無論医務室にいた為に、授業が中止になった事を知らなくて来るに至った訳では無い。
彼女の親友のキュルケが、それを彼女に伝えていない道理は無かった。
「では、何をしに来たのか」ルイズの頭上に疑問符が浮かぶ。

ルイズの視線を気にする様子もなく、タバサはその蒼氷色の瞳で、教室を無言のまま水平に切る。
そして、アトリをその視野に収めると、接近し些かの言葉を交わしたのちに去って行った。
タバサがキュルケ以外と会話するなんて(キュルケともあまり長話する所は見ないが)、滅多に無い事である。

ルイズは「何話してたのよ」と即座に詰問するも、
アトリは「何でもねぇよ」と言うのみであった。

彼女としては、主人に対しやたらと説明責任を怠る上に、知らない間に他の女の子と仲良くなってしまっている、
このけしからん使い魔に何か罰を負わせたい所であった。
しかし、怒られている(というよりも、むしろ叱られている)時のすまなそうな表情を見ていると、どうも調子が狂ってしまうのだった。
尤も彼に対し、食事抜きや鞭での体罰が効果があるとは思えなかった、という側面もあるが。

だが罰を与えないにせよ、糾弾の調子は衰える様子は無かった。
愛嬌のある鳶色の瞳は怒りに燃え、愛くるしい口元からは容赦の無い言葉が掃射された。
ルイズのその不満に満ちた胸中には、独占欲や、嫉妬心といった要素が多分に含まれている事は誰の目から見ても明らかだった。
無論、その当人の目を除いてはあるが。


彼女の糾弾の奔流は無限に続くかと思われたが、2度目の扉の開く音がそれを断ち切った。
ルイズはブルー・アッシュの頭髪を持つ少女を想像し、臨戦態勢に入る。
しかし、予想は裏切られ視界に飛び込んだのは、光沢のある艶やかな金髪であった。

来客はギーシュとモンモランシーであった。
俯くモンモランシーの手をギーシュが引いている。
ギーシュはアトリをその碧眼にアトリを映したのちに、教室の惨状を見回し、少しばかり微笑み、言った。
「まぁ随分と派手にやった物だね」
「う、うう、うるさいわねっ!何の用なのよっ!」

ルイズの問いを受け、ギーシュの表情が質実な物へと変容し、彼自身の精神がそうである様にまっすぐに、アトリを見据える。
「モンモランシーから話を聞いたよ。僕の勝手な勘違いで決闘を挑み、あまつさえそれに負けた。君には本当に上げる頭が無い。本当にすまなかった」
「ごめんなさい・・・」
頭を下げたギーシュに続いて、少々戸惑いはした物のモンモランシーも頭を下げた。

これに驚愕の念を禁じえなかったのはルイズであった。
可愛らしい両手を口にあて、鳶色の瞳をまんまるに見開いている。
貴族が平民に頭を下げる等、本来ありえない。
尊大で、貴族としての矜持を守る為なら、自らをも含めた死人が出る事さえ厭わない、というトリステイン貴族なら尚更の事である。
誰の眼から見てもアトリがただの平民では無い事は間違いないが、貴族も王族でもない以上、人間であるならばカテゴライズされるのは平民なのである。


彼等の誠意を尽くした謝罪に、(尤も、貴族が平民に対し頭を下げるという事の意味等、未だ知る由もなかったが)
アトリは表情を温かみのある、微笑寸前と言ったような物にする事で應えた。が、
言葉に出さなかった為ルイズが腰に手を当て、“出来の悪い弟に苦労する姉”といった風な表情を取り、世話を焼いて代弁する。

「いいわよ、もうそんな事」

「感謝するよ。そこで、まぁなんて言うか、負債を少しでも返済しておこうと思ってね」
穏やかな表情に戻ったギーシュが造花の薔薇を振り、素手の“ワルキューレ”を一体だけ生成する。

「まだ精神力が回復しきっていないんだ、僕とモンモランシーも含めて3人。まぁ居ないよりはマシだろう?」
ポーズを決め、気障ったらしく言い放つ彼の姿は、自称“薔薇”のそれに立ち返っていた。


ギーシュはワルキューレと共に、率先して重量のありそうな物を運び出していき、
ルイズとモンモランシーは箒や雑巾で、教室を綺麗にしていく。
アトリは3人はというと、談笑しながら片づけていくのを、教室の片隅でその瞳に優しい光を湛え見守っている。
そして言うまでもない事だが、その後アトリはルイズの怒りをその一身に受け、作業に復帰する事になるのだった。

「主人が作業に従事しているのに、休息を得るとは何たることか」とはルイズの弁である。
人差し指をピンと立て、アトリを怒った調子で睨み上げると(やはり身長差の為に、アトリからは上目使いにしか見えないのだが)、
柔らかなチェリーブロンドの頭髪を持つ少女は続ける。



「忘れないで!あんたは私の使い魔なんだからね!」




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