あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

なりゆきまかせの使い魔-1

 気がつくと、いきなり異世界だった。

「あんた誰?」
 抜けるような青空をバックに、エリの顔をまじまじと覗き込んでる女の子が言った。

「おおっ!」
 おもわず笑みを浮かべながら、エリはあたりを見渡した。
 目の前の女の子の見るからにそれもんの魔法使い姿!
 遠くに見えるヨーロッパの写真で見るような古い石造りの城!
「おおおっ!」
 周囲から彼女をに視線を注いでいる、やはりいかにもそれもんの姿の少年少女たち!
「おおおおおおおおっ!」
 そしてその少年少女たちの傍らにいるドラゴンやマンティコア―――地球にはいないはずの空想上の生物たち!

「これよっ!」
 エリはその場でガッツポーズを取った。
「あたしはこういうシチュエーションを待っていたのよ!」
 目の前の女の子は、ただ呆然とそんなエリを眺めている。
「毎朝の通学ラッシュもっ! 塾も来年の受験戦争も、やがてやってくる就職もっ!
 親の小言もうっとうしい担任も、これでぜぇぇぇぇぇんぶさよならよっ!」
 エリは日頃たまった鬱憤をこの場にすべてぶちまけるかのように絶叫する。

「……もしもし……?」
 目の前の女の子が、自分の世界に入っていたエリに話しかけてきた。
 黒いマントに白いブラウス、グレーのプリーツスカート。
 桃色がかったブロンドの髪に透き通るような白い肌、鳶色の瞳。
「ふむふむふむ」
「な、なによ」
 エリは目の前の女の子の姿をまじまじと見つめ、
「……ちょっと若すぎるような気がしないでもないけど、こういうパターンも王道か。それに可愛いから許すっ!」
「だからさっきから何の話をしてるのよ! 何をそんなに喜んでるのよ!」
「当然よ!」
 はしゃぐ彼女についていけない女の子、エリは無意味に胸を張り、
「いきなり異世界に呼ばれるなんてシチュエーション、今日びのマンガや小説じゃあ、それこそゴロゴロしてるのよっ!
 これくらいのことでいちいち驚いてちゃ、女子高生やってらんないわよっ!」
「……よくわかんないわよ」
「そんでもって、きっとこの世界は戦乱の世の中で、どーしよーもなくなった弱小軍団が、別の世界から英雄か何か呼ぼうなんて他力本願なこと考えて、魔法使いにあたしを召喚させたに違いないわっ!」
「だからさっきから何の話をしてるのよ!」
「それでさらに、実はあたしは伝説の勇者とか失われた王国のプリンセスか何かで、戦いの中、英雄だか王子だかのやたらいい男と結ばれることになるのよっ!」
「……よ、よくそこまで話が作れるわね……」
「ふっ! 作るも何もっ! いくらすっとぼけたってあたしにはちゃーんとわかってるんですからねっ! ふふふふふっ!
 ……というわけで、そうと決まれば話は早いわっ! さっそく現状説明してちょーだいっ!
 …………ちょっと、何頭抱えてんのよ……?」
「うう……呼び出したのが平民ってだけでも頭痛いのに……ミスタ・コルベール!」
 女の子が怒鳴ると、人垣が割れて、中年の男性が現れた。
 大きな杖に真っ黒なローブ。これまた典型的な魔法使いルックだ。
「なんだね、ミス・ヴァリエール」
「あの! もう一回召喚させてください!」
 ミスタ・コルベールと呼ばれた黒いローブの男性は首を振った。
「それはダメだ、ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今やってるとおりだ」

「……使い魔?」
 不穏な単語を耳にして、エリの動きが止まる。
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼女はただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。
 古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼女には君の使い魔になってもらわなければな」
「そんな……」
「ちょっとちょっと、使い魔って何の話よ!?」
 話がおかしくなってきたので、慌ててエリは二人の会話に割り込んだ。
 ミスタ・コルベールと呼ばれたU字ハゲの男性がエリの質問に答える。
「君はミス・ヴァリエールの『サモン・サーヴァント』で、このトリステイン魔法学院に召喚されたんだよ。
 人が召喚された例は初めてなのだが、召喚されてしまった以上、君にはミス・ヴァリエールの使い魔になってもらわなくてはならない」
「じゃ、じゃああたしは選ばれた英雄とか勇者とかじゃないのっ!?」
「それはあんたが勝手に言ってただけでしょ!」
 ミス・ヴァリエールと呼ばれた少女がエリにツッコミを入れる。
「くっ……まさかわざわざ異世界から召喚しといて、ただの使い魔にされるとは……想定外だわ……」
 エリはがっくりと肩を落とした。
「あー、とにかくミス・ヴァリエール。儀式を続けなさい」
 エリを無視して、U字ハゲが話を進める。
「儀式って、まだ何かあるの?」
「そうよ、今は『サモン・サーヴァント』であんたを召喚しただけなんだから。次は『コントラクト・サーヴァント』でちゃんと契約しないとダメなのよ」
「……ふーん、つまりあたしは、まだあんたの使い魔じゃないってわけね」
「そうよ、だからさっさとわたしと契約しなさい!」
 偉そうにこちらを杖で指してきた女の子に、エリは満面の笑顔で答えた。

「やだ」
「なっ……!」
 まさか断られるとは思っていなかったのだろう。ルイズが固まった。
「だって、いきなり召喚されて使い魔になれっていわれてもねえ」
「召喚された以上、あんたはわたしと契約しなくちゃいけないのよ!」
「使い魔になってあたしに何の得があるの? お給料とかちゃんともらえる? 福利厚生は?」
「お給料って……使い魔がご主人様に従うのは当然でしょ!?」
「だーかーらー、あたしはまだあんたの使い魔じゃないんだってば」
「わたしが召喚した以上、あんたはわたしの使い魔なのよ!」
「あのね、契約ってのはビジネスなのよ。双方が納得できる条件じゃないと承諾できるわけないじゃない」
「へ、平民のくせに生意気よ!」
「あら、あたしはこれから人を雇おうとしてる人間に対して、当然の事を言ってるだけよ?」
「……っ!」
 エリの半ばへ理屈な正論に、女の子は言葉に詰まる。
 ……よっしゃ勝った! と、エリは心の中でガッツポーズをとった。
 と、女の子が静かになったことで周囲の生徒たちの囁き声が聞こえてきた。
「さすがはゼロのルイズだな! 平民に言い負かされそうになってら」
「あ~あ、あれじゃルイズは留年決定だな。ま、ゼロのルイズじゃしょうがないか!」
 どうやら、このルイズと呼ばれている女の子は周囲から馬鹿にされてるらしい。
「困ったな。使い魔と契約できない以上、ミス・ヴァリエールを進級させるわけにはいかないのだが……」
 しかも、先生らしいU字ハゲの男までこんな事を言い出した。

 留年。女子高生であるエリにとってはわりと他人事ではない単語だ。
 ……まさか異世界魔で来て、留年なんて言葉を聞くとは……
 ふとルイズを見ると、うつむいて黙り込んでしまっている。
 ……そっか、あたしを使い魔にするのに失敗したら、この子は留年しちゃうんだ。
 さすがにちょっと同情心が芽生える。
「……しょうがないわね、契約してあげるわよ」
「……え?」
 エリの言葉を聞いてルイズが顔を上げた。
「あんたの使い魔になってあげるって言ってんの」
「……いいの?」
 不安そうに聞いてくるルイズ。
「うん。ただし、契約後のあたしの待遇についてはちゃんと保障してもらうわよ。変な扱いされたらすぐに使い魔やめるからね」
「……いいわ。ちゃんと衣食住の世話はしてあげる」
 ふむ、まあその辺で妥協しときますか、とエリは頷いた。、
「OK。それで契約って具体的に何やるの」
「じゃあ、こっち向いて、じっとして……」
 ルイズは杖をエリの額に置いて、呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この物に祝福を与え、我の使い魔となせ」
「お、なかなか本格的ね」
「黙って、じっとしてなさい」
 そしてルイズは、エリの唇に唇を重ねた。

「な、なななな、何するのよ!」
 思わずエリは後ずさった。
「うるさいわね、これが『コントラクト・サーヴァント』なんだから仕方ないじゃない! わたしのファーストキスだったのに……」
 ルイズは顔を真っ赤にしてそう言った。
「あたしだって初めてよ!……いや、今のは女の子同士だし、契約のためのものだから人口呼吸と一緒! ノーカンよノーカン!」
「そ、そうよね、今のは数に入らないわよね!」
「そうそう、あたしたちはまだ清いままよ!」
 エリとルイズによくわからない連帯感ができたところで、エリの体に異変が起こった。
「……って熱っ!? なんか左手がすごく熱くて痛いんだけど!?」
「すぐ終わるわよ。『使い魔のルーン』が刻まれてるだけだから」
「聞いてないわよ、そんなのが刻まれるなんて!」
 ルイズに抗議の声を上げたところで、すっかり忘れ去られていたU字ハゲの男がエリのルーンを覗き込んだ。
「ほう、これは珍しいルーンだな」
「……え? 珍しいの? これって」
 エリも改めて自分に刻まれたルーンを見てみたが、正直ミミズがのたくったような図形でよくわからない。
「さてと、じゃあみんな、教室に戻るぞ」
 そう言ってU字ハゲの男は宙に浮いた。
「おおっ!」
 思わずエリは歓声をあげる。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「その平民、あんたにお似合いよ!」
 他の生徒たちも次々と宙に浮かび上がった。
「うわー、やっぱここってファンタジーな世界の魔法学校なのね」
 飛び去っていった生徒たちを見送るエリに、ルイズが声をかける。
「それで、あんた、名前はなんて言うの?」
 エリは振り向いて、ルイズに名前を告げた。
「ん、そういえば言ってなかったっけ。あたしは村瀬栄理。エリって呼んで。あんたは……ルイズって呼ばれてたわね」
 ルイズもエリに名前を告げる
「そうよ。わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズでいいわ」
「そう、それじゃよろしくね、ルイズ」
「ええ、こちらこそよろしく、エリ」
 こうして、エリはルイズの使い魔となったのだった。

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