あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-16


16,それぞれの思惑

それから三人でひとしきり話あった後、
さて寝ようかとマーティンが言おうとした時だった。
玄関が騒がしくなったかと思うと、
傭兵が現れ、店を襲おうと弓を構えて撃ち始めたのだ。

「敵襲!?何が起こってるのよ!!」

矢が届く前にマーティンとワルドは机を盾にし、
寝ているキュルケと現状把握の出来ていないルイズを抱え込みつつ、
そこで傭兵達の攻撃を凌いだ。

「さて、どうしますか?ミスタ・ワルド」

迂闊だったか。やはり逃すべきではなかった。
とはいえ仕方ない、情報の対価という奴だ。
まさか街中で堂々と襲い掛かると思っていなかったマーティンは、
舌打ちをして応戦を始める。

手だけ机から出して範囲の広い氷の魔法を放つ。
タムリエルの氷魔法は冷気が球形に広がって飛び、
しばらくの間着弾点に留まる。
店内に踏み込まれない様にするには、
丁度良い魔法と言えるだろう。
放った魔法は、数分間玄関口全体を凍らせる物だった。

「こういった修羅場に慣れていらっしゃるようですね。とりあえず逃げるしかありませんが――」

感心した風にワルドは言おうとしたとき、
ごう、と風が吹いて、飛んできていた矢を弾いた。
二階で寝ていたタバサが異常を感じたらしい。
四人のいる机までやってくると、キュルケの頭を杖で軽く叩いた。
気持ち良さそうに寝ていたキュルケは、怒りをあらわにしながら目を覚ます。

「あいた!あにすんのよって、あら、タバサじゃない。寝た――」

ヒュンと矢が飛んできて壁に刺さる。それでキュルケは状況を理解した。
酒の酔いは即座に消えて、炎を杖先から出して応戦に加わる。

「酔い潰したと思ったけれど、案外強いのだね。ミス・ツェルプストー」
「キュルケって言ってくださいなマーティン。一度寝れば醒める体質ですの」

お互いに軽口を叩きつつ、相手を牽制する。否、しなければマズイ。
入られたら終わりだろう。傭兵の数は多かった。氷玉で玄関を凍結している今こそ、
敵の数を少しでも減らすために、手数を増やさないとならなかった。

「人海戦術とはいえ命は惜しいようです。そうそう入って来ないでしょう」

私達の精神力が切れたら、その時点でゆっくりと入って来るでしょうね。
ワルドはしっかり狙いをつけながら言った。

「となると、このままではどうしようも無い…か」
「こういった場合、約半数が目的地にたどり着けば成功になるでしょう。マーティンさん」
「帰りの勘定まで計算に入っていませんが?ミスタ・ワルド。それにこの二人は留学生で、どっちにせよここに置いていく訳にはいかない」

自身が言ったのは真っ当な事だが、しかしどうする。誰かがここに残らないといけない。
マーティンが、自分が残ろうと言おうとした時キュルケが艶やかに言った。


「あら、心配していただけるのかしら?けれど大丈夫。貴方達の任務は知らないし、
元より刺激を求めて来たんですもの。この程度で根をあげていたら、
ご先祖様に笑われますわ。ルイズ、あんたがどんな事承ったのか知らないけど…貸し一つよ?」

最後は別の事を言いたかったのだが、ツェルプストーの血が許さなかった。
未だに何が何だか良く分かっていないルイズだが、それを聞いていつもの調子に戻る。
彼女の心がどう変わろうとも、赤髪の挑発には必ず乗ってしまうのだ。

「な、ななななにが貸し一つよ!絶対に返してあげないんだかんね!!」

「そうそう。あんたはそうでなくっちゃね。ほら、二人と一緒に行きなさいな。
ここはあたしとタバサがどうにかするわ。それでいいんでしょ。衛士隊長のワルドさん?」

「恩にきる。僕達は裏側から出るから君たちもどうにか頑張ってくれ」

あ、と数瞬経ってルイズはやっと発破をかけられたと理解したが、
感謝の言葉なんぞこいつに言いたくはなかった。
マトモに言えそうになかったからだ。しかし、
何か言わねば。そう思い口を開く。

「ああ、あんた。こんな所で死んだりしたらだ、だめなんだからね?貸しは返してあげないけど、その、ええと」
「はいはい。さっさと行きなさいな…これから先のが危険でしょうから、せいぜい気をつけるのよ?」

そう言ってルイズの頬にキスをする。ひぇ。とルイズが呻くが気にしない。

「幸運の女神のキスよ。後は上手くいきますようにと祈るだけってね。さ、早く行って」

ルイズはキュルケに頭を下げ、二人と共にタバサの風に守られながら通用口へと抜け出した

「誰もいないようです。桟橋へ向かいましょう」

ワルドが先頭に立ち、マーティンが殿を請け負う。
ルイズは、残してきた仇敵が心配だったが、
あれは殺しても勝手に生き返るだろうと、思い込む事にした。


「ああ言ったものの、どうしましょうか。ねぇタバサ」

ルイズが私に頭下げる所を見る日がこようとは。
そう言ってニヤケているキュルケだが、
現在の状況がマズイ事は分かっている。
だが、後悔なんて無い。あのヴァリエールに恩を売ったのだ。
これからはそれをネタに遊ぶ事が出来ると考えると、
キュルケは自然と笑みがこぼれてしまうのだ。

「厨房の油」

レビテーションで持ってきたらしい、床に落ちていたそれをタバサはキュルケに渡す。

「あら、良い感じじゃない。けどちょっと待ってね」

化粧直しに興じるキュルケを尻目に、タバサは魔法で応戦を続ける。

「あなたもしなさいな。この大一番で助演女優の雪風がすっぴんだなんてしまらないもの」

暇が無い。と応戦を続けるので、邪魔にならない様に、
キュルケはタバサに軽く化粧を施した。


「うんうん。これで良い感じね。さて、始めましょうか」

近場に落ちていた鍋に油を注ぎ、タバサの風で入り口まで吹き飛ばす。

「ショウタイムよ!」

鍋が甲高い落下音を放つと同時に、油に火が放たれる。
入り口から突撃を敢行しようとした傭兵達が燃える。
キュルケは色っぽく呪文を唱え、入り口付近の傭兵も炎に巻き込んだ。
ここぞとばかりにキュルケは立ち上がり、優雅に髪をかきあげた。
しかし矢は飛んでこない。

「変」
「何が?」
「まだ数はいた。なのに矢が飛んでこない」

たしかに、今の状況から考えて無防備なキュルケに矢を撃つのが普通のはず。
それを狙って余裕の表情で出てきて、更に追い討ちをかけようとしたのに。
そう残念がるキュルケだったが、入り口からの金属音を聞いてサッと机に戻った。

「ゴーレムかしら?」
「おそらく」

敵は傭兵メイジも雇っていたらしい。規則的な金属音が鳴る中、
はたして現れたのは鋼鉄でできた二メイル程のゴーレムと、

「ミス・ロングビル?」

学院で少し見知った学院長の秘書、ロングビルだった。

「あら?何故ここにお二人が。まぁ、構いませんわ。外のは今私のゴーレム達と遊んでいますから」

故郷のアルビオンに、
用があって戻らないといけなくなったらしい彼女は、
騒ぎを聞きつけてここに来たらしい。
傭兵達は十体程の鋼鉄のゴーレムに振り回され、
蹴散らされている。契約も何もあったものではない。
命あっての物種である彼らは、くもの子をちらす様に逃げ出して行った。

「援軍感謝しますわ。ミス・ロングビル」

「いえいえ、私は何も知りませんでしたから。ところで、
よろしければ何故ここにいるのか、教えていただけませんか?」

聞いてロングビルは焦った。予定と違う。何で衛士隊長がいる?
やっぱりお姫様の頭は花畑だってのかい。顔に出さず思う。

「追いかける」

タバサは言った。外で口笛を吹くと彼女の使い魔がきゅいきゅい鳴きながら降下してきた。

「ニューカッスルの敵陣を突破するのは無理ですよ。一つの方法を除いて、ですが」

ロングビルは笑った。今まで見たことの無いその笑みは、
普段の彼女のイメージとギャップがあった。

「何を知っている?」
「とりあえず桟橋の近くに置いてある私の船へ急ぎましょう。お二人もそれに乗せますから」


良いお友達を持って幸せですね。ミス・ヴァリエールは。と言い、
あのガキも何だかんだで幸せ者じゃないかい。と思う。
表と裏を器用に使い分け、フーケと二人は竜に乗り桟橋の船へ向かった。


彼女達が竜に乗って桟橋に向かっている頃、
ルイズ一行は桟橋の階段にて、白い仮面の男と対峙していた。
マーティンはルイズの前に出て、デルフリンガーを構えずに手を掲げる。
淡い白光が彼の体を包む。主に物質の状態を変化させる『変性』系統の呪文の一つで、
体の周囲に透明の魔法防壁を作る「盾(防御)」を唱えたのだ。

「先住の魔法は便利ですね。そんな風に魔法が使えるなんて」

相手の出方を伺いながら、ルイズの盾になるようにワルドの隣にでた。
動く気配は今のところ無い。しかし、逃してくれるとも思えなかった。
男の出で立ちは暗くてよく見えなかったが、
ワルドと同じくらいだろうその体格はがっちりとしていた。
こいつが言われていた白仮面か、油断は出来ない。
マーティンはそう思いながらワルドの声に応じた。

「確かに、そうかもしれない。さて、どうしたものかな?デルフ」

喋る事が出来る程度に剣を鞘から出して、とりあえず聞いてみる。嬉しそうな声が返ってきた。

「おお、相棒久しぶりに喋ってくれたね。突撃だろここは」

無茶を言うなぁ、と口だけ笑わせていると相手が動いた。
魔法を使わせるために敢えて隙を作ったのだが、
既に呪文は唱えていたらしい。男の周辺から稲妻が伸びる。

「『ライトニング・クラウド』!」

それを聞き、マーティンは魔法を掛けなおすと同時に、
右腕の裾に隠し持っていたダガーを相手に投げつけた。
シロディールで、相手に直接的なダメージを与える魔法は四種類に分けられる。
完全魔法効果の減退、それから炎、氷、そして雷だ。
これらの魔法には、いくつもの対策魔法が考案されていて、
それらはメイジ同士の戦いでは、なくてはならない物になっている。
今回使うのは変性系統の「稲妻の盾」である。

「つうっ!」

完全に相殺する事は出来なかったが、腕に火傷を負った程度だ。
これならすぐに回復できる。
相手へ放ったダガーは、狙い通りに首元へ刺さった。
もがくこともせずに倒れて、そして…消えた。

「消えた…私は悪夢でも見ているのか?」

回復魔法を己にかけつつ、静寂を取り戻した階段でマーティンは呟いた。
今の様を見て彼が思い出したのは、夢世界の主ヴァーミルナが作り出した「堕落の杖」。
それが放つ光に当たれば、堕落と呼ばれる自身のコピーが作り出され、
オリジナルを襲うという、何ともおぞましい効果を持った杖である。

「違うわ、あれが『遍在』よ。敵に風のスクウェアクラスがいるって事ね…」


『風』系統の中でも殊更特殊な魔法のそれは、
使えるだけでも凄いとルイズは言う。
敵の本体が近くにいない事を祈りつつ、彼らは乗る船へと急いだ。
階段を駆け上った先の船が目当ての船だったらしい。
急ぎ船に乗り込むと、甲板で寝ていた船員が起きてワルドに突っかかる。
少々強引だったが、船長を呼び出した。

風石が足りないとわめく船長だったが、
ワルドが代わりになると言って場を収めた。

「出航だ!もやいを放て!帆を打て!」

船長が号令を発し、船員がぶつぶつ文句を言いながら、
命令を遂行しようとした時、一人の男が叫びながら走ってきた。

「まってくれぇぇぇぇ!!」

男はそのまま勢いで飛び乗ると甲板で息をぜいぜいと切らした。
船長はいぶかしんで、男に尋ねる。

「誰だ?あんた」

「何言ってるんだ船長!マリー・ガラント号で俺を運ぶと言う約束だったじゃないか!
変に町が慌しいからまさかと思って来てみればこれだ。ほら、コルヴァスだよ。
昨日予約した商人のコルヴァスだ」

あー、コルヴァス様でしたか。たしか積荷の食料と一緒にあっちに行く予定でしたね。
何故忘れていたのかすら思い出せなかったが、
この大きなカバンを持った男の話を聞いて確かに思い出した。

昨日確かにこの男はやって来て、軍用食料と一緒に運んでくれと依頼を受けたのだ。
明日出る最初の便はこの船で、彼は朝一番で行きたいと言うのが理由だった。
だが、何故今まで忘れていたのだろう。思考の海に入ろうとすると、
コルヴァスが話を始めた。

「そうだ。まさかまだ積んでいないなんて言わないよな?」
「ご心配なく。ちゃんと船の中で硫黄と――」

談話はワルドの放った風の魔法が終わらせた。
どちらとも当たってはいないが、船長の背筋を凍らせる。
無言でコルヴァスと名乗る男に閃光は近づいた。
先に口を開いたのはコルヴァスだった。

「な、何でございましょうか。貴族様」

「…いや、すまない。追っ手かと思ってね」
「あ、ああ。騒ぎの中心はあなた様がたですか。
ま、まぁ何事も無い事をノ…始祖に祈りましょう」

少なくても、王宮内の兵士でこんな顔の男は見たことがない。
なら大丈夫だろう。警戒を怠らなければ良い。
まさか盗賊如きに後れを取るなどありえない。
そして男から目を逸らし、完全に今思った事を何故か『忘れ』て、
何事も無かったかのように、ルイズ達の方へ戻って行った。

「野郎共!さっさと準備にとりかかれ!」

今度は邪魔が入ることも無く、船員は命令どおりに動い

「おお、凄いものだな。空を飛ぶとはこういう事なのか…」


もともと海の船にもあまり乗ったことの無い内陸出身のマーティンは、
ただ船に乗るだけでも興味深いらしい。辺りをキョロキョロ見回していた。

「気楽ね…さっき襲撃を受けたのよ?」
「なに、問題はないさ。それにこんな所から緊張していたら身が持たないよ」

その場で即座に切り替える方が効率も良い。そう言って笑う。
内心は別だが、それでルイズを困らせる訳にもいくまいと思って。
傷はすっかり治っていたし、確かに問題は無い。しかし今から山積みである。

ああ、姫さま。もし駄目でしたら骨くらいは拾ってくれると嬉しいです。
物騒な事を考えながら、ルイズはラ・ロシェールを後にした。
二人のお供と、今回の仕掛け人を連れて。

「相棒…何で俺使ってくれなかったの?」
「読み合いというかね。あの場では突撃よりも不意打ちを狙った方が大丈夫だろうと判断したんだ」

寂しそうな剣をなだめるマーティンであった。


「姐御!何が起こってるんですかい!?傭兵連中が俺達の――」

姐御と呼ばれたロングビルは、頭巾を被った男の叫び声を止めさせ、
後ろの二人を見せてから、とりあえずその呼び方はやめなと言った。

ロングビルに連れられた二人が見た船は、
置かれている場所と中の船員達の風貌からして、
どう考えても真っ当な商売に使われている船には見えなかった。

桟橋内でも特に汚らしいドックに置かれているその船。
その中でロングビルが動かしているのは、
さっき襲ってきた連中と同じくらい人相の悪い連中で、
その中の何人かは、賞金首になって「いた」連中なのをタバサは知っていた。

比較的小さく、造りから速度に重点を置いていると思われるそれは、
船体に何か青紫色で文様が施されている。どういう訳か砲口が一つとして無いが、
武装よりも、速度と積載量を取ったと解釈できないことはない。
そして、何の旗も掲げてはいなかった。

「空賊船?」

タバサが言った。さっき、彼女は私の船と言った。では彼女は一体何者か。
見極める必要がある。

「聞いて驚け!この船は何とあの――」
「だまっとこうか?このうすらとんかち!」

調子に乗りやすいらしい陽気な男が口を開く前に、
ロングビルの足が股間を蹴り上げる。
男は悶絶して倒れ、周りの連中の失笑を買っていた。

「流石は俺たち盗賊ギルドが誇るフーケの姐御だ!そんだけ良い胸してるのに、俺達より男らしいぜ!!」
「全くほめてないよそれ。とりあえず私が誰かは秘密なんだけどね?さっきので分かるだろ普通!」

ゴーレムの腕だけを壁から作り出して、頭巾を被った男をぶん殴った。
きゅうと気絶してしまったそいつを見て、また他の連中が笑う。
まったくこいつらはとフーケも笑って、その様を見ながらキュルケは困惑した。


「フーケ?だってあの時ミス・ロングビルは捕まって…」
「仲間と打ち合わせたのさ。何であの時私が学院長室にいなかったのか、不思議に思わなかったのかい?」

いやーあの風はやばかったね。
下手すりゃ皇帝陛下と一緒に粉々だったわ。
ロングビルをやめフーケに戻ったマチルダは、
清楚さの欠片も無い心からの笑いを顔に浮かべた。
キュルケは続けて質問する。

「皇帝?まぁそれは後で聞きますけど。なら、どうして一々宝物を返しに?」
「ギルドの規定を破ったからさ。まぁ仕方なかったんだよ。うん」
「姐御は鍵開け下手くそだもんなぁ。一晩一緒になってくれれば手取り足取り教えるぜー?」

復活したらしい男の股間を無言でもう一度蹴り上げる。あぅと言って倒れた男はぴくぴく痙攣しだした。

「ここらの男共はこんなのばっかりだから、何かされたら容赦なくやってくれてかまいやしないよ」

はぁ。とため息をつく彼女を少し同情しながら、
キュルケは先ほどの「皇帝」という事について聞き出そうとしたが、
それより先にタバサが口を開いた。

「二つ、質問がある。貴女達は何故アルビオンへ行く?どうして私達に正体を明かした?」

「一つは依頼さ。基本的に単独で盗みに入るのが盗賊ギルドの流儀だけれど、
たまに誰かに盗みを頼まれる事があるんだよ。全く、あの脳味噌花畑姫にとんでもない事を頼まれてね。
まぁ、それであのヴァリエールのお嬢さんと、マーティン皇帝陛下が関係してくるんだよ」

「皇帝って、マーティンは皇帝なの!?」

「おうよゲルマニアのお嬢さん!我らがマスターグレイ・フォックスの街と妻を救った大恩人!
シロディールの英雄マーティン・セプティム皇帝陛下さ!こんな事に利用するのは、
いけない事なんだがなぁ。あの桃色髪のお嬢さんは『虚無』らしいし」

はい?ルイズがあの伝説の『虚無』?何であの子が?
頭巾の男の口から出た言葉にキュルケは戸惑いを隠せない。

そして、何度かのアタックの際にマーティンの口からシロディールの、
クヴァッチと言う街に住んでいた事までは聞き出せていた。
だからこそ、尚更この連中がその地名を知っている事を疑問に思った。

「バカ!まだ確定しちゃいないだろ!指輪と秘宝が揃って初めて魔法が使えるんだろうが!」
「お前達って、どうしてそんなに口が軽いんだい?教えてくれると嬉しいねぇ…?」

ひ、とさっきから殴られ蹴られの男達が声色の変えたフーケの声におののく。
いつの間にか鋼のゴーレムに取り囲まれ、二人は殴る蹴るの暴行を加えられた。

「まぁ、『虚無』の事は置いときな。二つ目はあんた達がそれなりに腕っこきだから。
見ての通りこの船は大砲が無い。ウチらのやり方はスマートさがモットーでね。
敵が雇った傭兵達を二人で凌いだあんたらに、ちょいと手伝って欲しいのさ。今回の依頼をね」


あんた達はお友達に会えるし、私達は仕事をこなせる。一石二鳥だろ?
フーケの提案は確かにそうだが、しかし信頼すべきかどうか。
二人は判断に迷った。

「あー、なぁお嬢さん方。俺達の事信用できないってのは良く分かるぜ。
でもな?そっちの竜よりこっちのが安全だ。貴族派の軍船が哨戒するルートは、
この中じゃ俺しか知らないし、あんたらが腕利きっつっても、
アルビオン竜騎兵の小隊には敵わないだろ?俺達はお嬢さん方を利用するから、
お嬢さん方も俺達を利用する。そう考えれば良いじゃねぇか?なぁ」

奥の方からやって来た太っちょの男がそう言った。
キュルケは覚悟を決めてタバサを見た。コクリと二人は頷きあい、
キュルケが艶っぽく言った。

「なら、乗せていただけるかしら?盗賊の皆様方」
「お前らー!上物二人だ!!丁寧に扱わなけりゃ命はねぇぞ!!」

はなっからそれが目的だったらしい。太っちょの男は声高に叫んだ。
女だー!!と盗賊達は騒ぎ立てる。なるほど。本当にこんなのばっかりか。
とりあえず尻やら胸やらを触ろうとする連中に片っ端から焼きを入れ、
タバサに興味を示した輩にはすかさずそいつの股間を蹴り上げるキュルケだった。

「良い筋してんじゃないか。貴族様ってなぁ、もうちょいとすましているものかと思ったがね」
「おあいにく様。こうした連中はどこにでもいますから、慣れていますのよ」

男達の死屍累々の様を見て、違いないとフーケは笑う。
今度はキュルケがため息をついた。
さて、とフーケが雰囲気を変えて確認する。
盗賊達も立ち上がってそれに応えた。

「お前達、準備はいいね?船はニューカッスル付近で待機。
マスターの連絡で秘密のルートを通って城の中に突入。
その時には城の中で話はついてるはずだから、
そのままお目当ての品をいただくんだよ!」

おう!!と叫ぶ盗賊達。フーケは号令を発した。

「エマー・ダレロス号発進準備!さっさと行くよ。
ただでさえ予定が狂い気味なんだ。傭兵達といい、衛士隊長といい」

忌々しくはき捨てるフーケの前に、おずおずと初老の男が歩み寄った。
船長の帽子をかぶった男は、フーケに遠慮しがちに話しかける。

「な、なぁフーケ。この船一応ワシが船長なんだけど…」
「いいんだよこまかい事は。専門はあんたに任せるから大丈夫さ」

一番偉いのワシなのに。そう思いながらもフーケに逆らえない船長であった。

エマー・ダレロス。それが何かは誰も知らない。
ただ、今それはグレイ・フォックスが決めたこの船の名であるだけだ。
だからこそ誰にも忘れられないのだ。




新着情報

取得中です。