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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第十九話(後編)


 「貴族派! ワルド、あなた! アルビオンの貴族派の仲間だったのね!」

 ルイズは震えながら怒鳴った。ワルドは裏切り者だったのだ。

 「トリステインの貴族であるあなたがどうして!?」
 「『レコン・キスタ』はハルケギニアの将来を憂い、国境を越えて繋がった貴族の連盟さ。ハルケギニアは我々の手で一つになり、『聖地』を取り戻すのだ」
 「昔のあなたはそんな風じゃなかったわ! 何があなたを変えたの!」
 「月日と奇妙なめぐりあわせだ。それが君の知る僕を変えたのだろう……しかし、それを悔やんだ事はない」

 そう言ってワルドは風の魔法『ウインドブレイク』をルイズ目掛けて放つ。静留がルイズを庇うように間に入ってデルフを掲げるが、勢いを全てを殺すことが出来ずにルイズもろとも床に転がる。

 「残念だよ、ルイズ。素直に僕の申し出を受けていればよかったものを……言うことを聞かぬ小鳥は、首を捻るしか無いだろう?」

優雅に着地したワルドは酷薄な笑みを浮かべて床に倒れているルイズに歩み寄ろうとするが、その前にデルフを構えた静留が立ちふさがる。

 「結局、可愛さ余って憎さ百倍いうことどすか……ずいぶんと勝手なお人やね」
 「ああ、我ながら身勝手だと思う。だが、それのどこが悪い? 自己の為に人を欺き利用し、不要なものは切り捨てる……所詮、人間とはそんなものだ」
 「そんな御託は別にどうでもええ。あんたがルイズ様の信頼を踏みにじった、それだけの話や……ただ、そのツケはきっちり払うてもらいますえ!」

 静留はそう言い放つと、ワルドの懐に踏み込んで剣を横なぎに振るった。しかし、ワルドはひらりとかわし、杖を振るってさっきと同じ『ウインドブレイク』を静留に放った。
 静留は横っ飛びして呪文をかわすが、風圧で舞い上がった堂内の埃を吸い込んで激しく咳き込む。

 「どうしたね、ガンダールヴ? 渾身の一撃だったようだが、それでは僕を捕らえるには遅い。足掻くならもう少し僕を楽しませてくれよ」

 ワルドが油断なく杖を構えた姿勢で静留に嘯く。その時、今まで黙ってデリフリンガーが口を開いた。

 「調子に乗るなよ、若造! 手前ごときが、この俺様の使い手に勝てるとでも思ってんのか」
 「無論、そのつもりだよ。確かに君は優れた武器もしらんが、残念ながら使うのは彼女だ。いくら相手がガンダールヴとはいえ、女に不覚など取るものか」
 「へっ、その言葉そっくり手前にかえしてやるぜ! 姐さん、ちいとばっかり本気出すけどかまわねえよな?」
 「何するか知らんけど、好きにするとええ」
 「よっしゃ! 見てな若造っ、これが俺の本気だぜ!」

 咳き込んで少しげんなりした静留から許可をもらったデルフリンガーが叫ぶ。それと同時にデルフリンガーの全体が白く輝き始める。

 「くっ、小細工などさせるものか!」

 三度ワルドは『ウインドブレイク』を放つ。とっさに静留は光りだしたデルフリンガーを構えた。

 「無駄だ! 剣では全ては防げん!」

 ワルドが叫ぶが、放たれた強風は静留に襲い掛かる前にデルフリンガーの刀身へと吸い込まれる。
 そして、光が収まると、デルフリンガーはその身を白い柄と鋼色に輝く刃をもつ立派な剣へと変身させていた。

 「……デルフはん?」
 「へへっ、どうだい、おでれーたろ? これが俺様――『ガンダルーヴの左手』デルフリンガー様の本当の姿さ! 退屈すぎて自分で姿を変えちまったのを今まですっかり忘れてたぜ。姐さん、ちゃちな魔法は全部吸い込んでやるから、思う存分暴れてくれ!」

 ワルドはデルフを興味深かげに見ると、自嘲するような笑みを浮かべた。

 「なるほど、やはりただの剣ではないということか……ならば、こちらも本気をだそう。何故、風の魔法が最強なのか、その所以をその身で知るがいい!」
 「姐さん、何の呪文かしらねえが奴の呪文を止めるんだ!」

 静留はデルフの言葉を聞くやいなや斬りかかるが、ワルドは剣戟をかわしながら呪文を完成させる。

 「ユビキタス・デル・ウィンデ……出よ、わが偏在!」

 ワルドが叫ぶと同時にその姿が蜃気楼のようにぶれたかと思うと、ワルドが本体を含めた五人に分裂した。

 「分身どすか……なかなか面白い手品やね」
 「ただの分身ではない。風のユビキタス……風は偏在する。風の吹くところ、何処となく現れ、その一つ一つが意思と力を持って動く」

 ワルド本人以外の分身が懐から白い仮面を取り出すと、顔につけた。それを見た静留は、怒りにすっとの目を細めてワルドを睨みつける。

 「なるほど、桟橋で襲ってきたんは、あんただったんやね」
 「いかにも。言っただろう、風は偏在すると!」

 五人のワルドが一斉に静留に襲いかかる。さらに呪文を唱え、杖に青白い魔法の光を纏わせた。

 「今度はこの杖自体が魔法の渦の中心だ。さっきのように剣で吸い込むことはできぬ!」

 杖から空気が渦巻き、鋭い切っ先となって、静留に襲い掛かる。それを静留は跳ね除け、受け流す。だが、一度に五人が相手とあって、じりじりと堂内の隅へと追いやられていく。

 「さすが伝説の使い魔、平民の、しかも女にしてはよくやるではないか。しかし、所詮はカビの生えた伝説ということか。風の偏在相手に防御一辺倒で手も足も出ないようではな!」
 「そっちこそ、手数の割には一本も当てられんのはどうかと思いますけどな。女やと思うて舐めたらあきまへんえ!」

 静留はそう叫んで、周囲にいた五人のワルドを力任せに跳ね除ける。次の瞬間、左手のルーンとデルフリンガーが光り輝いたかと思うと、静留の体が疾風のような速さで空中に跳躍し、ワルドの分身を三体切り伏せた。

 「馬鹿な、一度に三体だと? 信じられん!」

 残ったワルドの顔が驚きに歪む。 

 「その調子だぜ、姐さん! 『ガンダルーヴ』の強さは心の震えで決まる! 何でもいい、心を震わせてりゃ、そんな若造に負けやしねえ」
 「へえ、そうなんどすか……ほんなら、ここは一気に勝負にでますえ」

 静留はデルフに答えると、残る二人のワルド達に向かって斬り込んでいく。デルフを左手一本で軽々と振り回し、激しく繰り出される静留の攻撃に、今まで余裕の表情を崩すことのなかったワルドたちの顔にあせりの色が浮かぶ。

 「ええい、この僕をこうも手こずらすとは……忌々しい!」
 「う、う~ん」

 その時、静留たちから15メイルほど先で失神していたルイズが、目を覚ましたのか小さなうめき声を上げた。戦っていた静留の意識がルイズの方へと逸れる。だが、そんな僅かな隙をワルド達が見逃すはずもなく――。

 「――隙ありっ!」

 ここぞとばかりにワルドと分身が前方と右側面から静留に襲い掛かった。完全にふいを突かれた静留は、ワルドの杖でデルフを弾き飛ばされ、さらに右から分身の蹴りを受けて後方の壁面に背中から叩きつけられる。

 「ぐっ……」
 「姐さん!」

 衝撃でふらふらになりながらも何とか立ち上がった静留を、すでに目の前に移動していたワルドが胸倉を掴かんで床に投げ倒す。

 「無様だな、ガンダル-ヴ。君はいささか武芸の心得があったようだが、所詮は素人の生兵法に過ぎん。戦いの最中に主人に気を取られるようでは僕には勝てんよ」

 そう言いながらワルドはうつぶせに倒れた静留の背中を踏みつけた。そして、分身と共に散々に蹴りつけた後、その胸元に杖の切っ先を向ける。

 「君のおかげで久々に緊張感のある戦いが楽しめた。せめてもの手向けだ、一思いに楽にしてやろう」
 「やめて――――っ!」

 ワルドが静留の胸を貫こうと杖を振り上げた瞬間、堂内にルイズの叫びが響き、ワルドの分身が爆音と共に消滅した。

 「どうしたね、ルイズ? 心配しなくても君もすぐに彼女の後を追わせてあげるよ。それとも僕に用事があるのかい?」

 ワルドは杖を静留に向けたままの姿勢で、身を起こしたルイズに笑顔で尋ねる。

 「貴方の目的は姫様の手紙と私自身のはずでしょ……ここでシズルを見逃してくれれば、なんでも貴方の言うとおりにするわ」
 「ふむ、たかだか使い魔の命乞いのためにそこまでするのは理解できんが……それで君が僕と一緒に来てくれるなら、お安い御用だ。では、その証明としてまず姫殿下の手紙を渡してもらおうか」
 「……分かったわ」

 ルイズは悔しげに顔を歪めると、懐からアンリエッタの手紙を取り出してワルドに差し出した。
 それを見たワルドは静留が動けないことを確認した上で、満面の笑みを浮かべてルイズへと近づいていく。

 「ああ、ルイズ、君ならきっと考え直してくれると僕は信じていたよ。まったく、最初から素直に言うことを聞いていれば事を荒立てずにすんだものを……」 

 ワルドが手紙を受け取ろうと左手を伸ばす。その手が手紙に届く寸前、風を切るような鋭い音と共に紅い刃がかすめ、肘から先が切り落とされて床にごろりと転がった。

 「ぐあああああああっ!」

 切断された左腕を押さえ、ワルドが苦痛の叫びを上げる。それをあざ笑うような冷ややかな声がワルドの耳を打つ。

 「――敵に止め刺さんと後ろを見せたらあきまへんえ」
 「き、貴様……一体どうやって……」

 ワルドが声の方に振り向くと、、そこにデルフを杖にして立ち上がり、右手に自らのエレメント『殉逢』を構えた静留の姿があった。

 「うちを女だと思って甘くみたのが間違いどしたな、ワルドはん」
 「おのれ、許さん! 許さんぞ、この女狐が――――っ!」

 静留の言葉に逆上したワルドは右手で杖を振り上げ、静留に襲いかかった。静留は『殉逢』を刃の背が表になるように両手で構えると、左手のルーンを輝かせ、向かってくるワルドの腹部を目がけて思いっきり振り抜いた。

 「がはっ……!」

 『殉逢』の一撃を腹に喰らったワルドは弾き飛ばされ、そのまま天井付近のステンドグラスを突き破って遥か彼方へと消えていった。

 「あんたには悪いけど、うちはもうこれ以上、大切なもんを失うのは嫌なんよ……」

 『殉逢』を振りぬいた格好で荒い息をつきながら静留は誰ともなしにそう言うと、崩れ落ちるように倒れた。ついで『殉逢』が宙に解けるように消え失せる。

 「――シズルっ!」

 ルイズは静留に駆け寄って抱き起こすが、静留は目を覚まさない。ルイズは慌ててして呼吸と脈を確認する。呼吸は穏やかで脈も落ち着いていてルイズはほっとする。
 だが、腕の中の静留は満身創痍で、服はあちこち破れて素肌が露出し、戦闘中に切ったのか額と唇から軽く出血していた。

 「安心しな、娘っ子。姐さんは、ガンダルーヴの力を出し尽くして寝ちまっただけだ」

 デルフがルイズを安心させるように声をかけると、続いて尋ねる。

 「で、どうするよ? 外のざわめき具合からして王軍は負けちまったようだぜ? 急いで逃げねえとすぐに敵が押し寄せてくるぞ」

 デルフの言う通り、怒号や爆発音はすでに城内部にまで迫っていた。ここに敵が来るのは時間の問題だろう。

 「……そうね、敵が来たらとりあえず私たちをトリステインの大使として扱うよう交渉してみるわ」

 そのルイズの答えにデルフが呆れた声を上げる。

 「おいおい、お前みたいな小娘の言うことを相手が聞いてくれるとでも? それこそ疑われて酷い目にあうのがオチだ。戦場で女がどんな目にあうか知らねえのか?」
 「それぐらい分ってるわよ! でも、こんな状態で一体どこにどうやって逃げればいいっていうのよ!」

 ルイズが癇癪をおこしてデルフを怒鳴りつける。
 その時、目の前の床がもっこり盛り上がったかと思うと、茶色の生き物が顔出した。その生き物は穴から這い出してルイズに近づくと、嬉しそうな鳴き声を上げる。

 「……あんた、ギーシュの使い魔のヴェルダンテじゃないの」

 ルイズが驚きに目を丸くしていると、続いて泥にまみれたギーシュがその穴から顔を出した。

 「ああ、ヴェルダンテ! まったく君はどこまで穴を掘れば気が済むんだね! って……おや、そこにいるのはルイズじゃないか!」

 ギーシュは静留を胸に抱えているルイズを見て驚きの声を上げるが、すぐに静留の状態に気づいて血相変えて穴から飛び出した。

 「これは酷い! ルイズ、シズルさんの身に一体何が? ワルド卿がついていながらどうしてこんなことに」
 「……そのワルドの仕業よ、彼は裏切り者だったの。幸い、シズルのおかげで手紙を奪われずにすんだわ」
 「なんと、子爵が……それでシズルさんの容態は?」
 「大丈夫、デルフが言うには、疲れて寝ているだけで命に別状はないそうよ……それよりどうやってここまで?」
 「タバサのシルフィードよ」

 ルイズの問いに、いつの間にかギーシュの横にいたキュルケが答える。

 「キュルケ!」
 「それでアルビオンについたはいいが、ニューカッスルになかなか近づけなくてね。どうしたものかと困っていたらヴェルダンテが急に穴を掘り始めた。その後をついてきたらここに出たというわけさ」

 ルイズの指に光る『水のルビー』にふがふがと鼻を押しつけるヴェルダンテに、ギーシュはうんうんと頷く。

 「なるほど『水のルビー』の臭いを追って、ここまで穴を掘ったのか。さすが僕の可愛いヴェルダンテだ」

 恍惚の表情を浮かべてヴェルダンテを撫で回すギーシュを見て、ルイズとキュルケがうんざりとした表情を浮かべる。そこにデルフのいらいらとした怒鳴り声が響く。

 「おい、お前ら! 悠長に話してんじゃねえ! 逃げねえと敵が来ちまうぞ!」
 「では、僕がシズルさんを……ふべらっ!」

 ルイズはギーシュに肘鉄を打ち込んで黙らせ、静留をキュルケに預けると倒れているウェールズに近づく。
 しかし、すでに彼は事切れており、ルイズは目を閉じて軽く黙祷した。

 「ねえ、ルイズ、まだなの?」

 そんなキュルケの声を背にしながら、せめてアンリエッタに形見になるものを持ちかえろうと、ルイズはウェールズの指から『風のルビー』を抜き取ってポケットにしまいこんだ。

 「さようなら、ウェールズ様……どうか始祖の御許から姫様を見守りください」

 ルイズはそう言うと穴の場所へと戻った。ルイズが穴に入った瞬間、王軍を打ち破った貴族や兵士たちが礼拝堂に雪崩れ込んできた。


 ヴェルダンテの掘った穴は大陸下部にある岩棚に繋がっていて、タバサとシルフィードがルイズたちを待っていた。タバサは静留に応急処置を施し、ルイズたちが乗り込むのを確認すると、岩棚からシルフィードを飛び立たせる。
 シルフィードは緩やかに滑空して雲を抜けると、力強く翼を羽ばたかせ、トリステイン目指して降下を始めた。
 ルイズは眠る静留を落とさないようにしっかりと抱きしめ、遠ざかっていくアルビオン大陸を見上げた。
 心地よい風が全身をなぶる中、短いアルビオンでの滞在の間の出来事が脳裏に浮かんでは消えていく。
 裏切り者だったワルドのこと。
 死んでしまった皇太子のこと……。
 王軍に勝利を収めた貴族派『レコン・キスタ』のこと……。
 どれも忘れたい悲しいことばかりだったが、たった一つだけうれしいと思えたことがあった。
 ワルドを撃退した時に零れた静留の『大切なものを失うのは嫌』だという言葉……。
 自惚れかも知れないが、その大切なものに自分も含まれていると感じた。それは静留にとってルイズの気持ちほど確かな想いではないだろう。
 だが、今はそれだけで十分だ、とルイズは思った。

 「まったく……好きになった責任、いつか取ってもらうわよ……」

 ルイズは静留の顔を汚れを綺麗にふき取りながら呟く。そして、身を屈めるようにして顔を近づけると、静留の唇に自分の唇を重ねた。



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