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第三話『めいよの決とう』




 ――きっかけは、些細なことだった。

「おいきみ。おとしものだぞ」
 ルイズの相手をするのが面倒で食堂に逃げてきたドラえもんが、
一人の貴族のポケットから落ちた香水の小壜を拾ってやったのだ。
 しかしそれがきっかけでその貴族、ギーシュの二股がばれ、
それを逆恨みしたギーシュはドラえもんにいちゃもんをつけようとした。

「おい、どうしてくれるんだ。そこのタヌキく…」
「ぼ、ぼくはタヌキじゃなぁーい!」

 だが図らずもNGワードを口にされ、悪口を言われる前にすでに怒り狂うドラえもん。
 そうなると、きっかけなんてほんともう些細なことだった。
 ていうかぶっちゃけ関係なかった。

「け、決とうだぁ!!」

 ……ということで、言いがかりをつけようとしたギーシュがではなく、
タヌキと言われて(しかも悪口ではなく素で!)むかついたドラえもんがギーシュに決闘を申し入れ、
「む。なんか予想とはちがった展開だが、……よかろう。ここで降りれば貴族の名がすたる」
 二股がばれていい加減ムシャクシャしてたギーシュもそれを受け入れた。
 さらにギーシュはドラえもんを見つめ、今気づいた、というように眉を上げると、
「おや、よく見れば君はあのゼロのルイズのところの妙な使い魔じゃないか。
 使い魔の分際で貴族にたてつくなんて主人と同じで愚か者だな。
 ふむ、いい機会だ。僕がその身に使い魔の分というものを教えてやろう。
 タヌキにも分かるように、はっきりとね。あははははは!」
 分かりやすい哄笑と共に立ち上がり、
「ヴェストリの広場で待っている。コテンパンにされる覚悟が出来たら来たまえ。
 待っているよ、タヌキくん?」
 最後までキザな台詞を残し、食堂を去っていった。

 ――かくして、すっかり頭に血が昇ったドラえもんの暴走によって、
タヌキ型…もといネコ型ロボット対貴族の異色の対決が実現する運びになったのだった。


「バ、バカ! なんてことしてくれちゃってんのよ! 使い魔が貴族に喧嘩を売るなんて…!
 なんであんたはよけいなことばっかりするのよ! バカ! この、バカダヌキ!」
「ぼ、ぼくはタヌキじゃなぁーい!」
「なによ! タヌキじゃない! どっからどう見てもタヌキじゃない!」
「け、決とうだぁ!!」
 その後、騒ぎを聞きつけてやってきたルイズとドラえもんはさっそく不毛な争いを始め、 
「お、おふたりとも、落ち着いてください。今はそんなこと言ってる場合じゃないですよ!」
 その場にいたメイドによって、なんとか引き離される。
「そ、そうだったわ。わたしとしたことが、ついわれを忘れちゃって……。ところであんた誰?」
「あ、わたしはこの学院のメイドでシエ…」
 と自己紹介をしようとするが、
「ていうかなんでいんの? あんた関係ないじゃない」
「あ、そういえばそうですね。どうしてでしょう。ずっと見てたからでしょうか、
 なんだかわたしにも責任があるような気がしちゃって…」
 と言ってすごすごと引き下がっていく。
「……へんなやつね」
 ルイズは首をかしげるが、今はメイドなんぞに構っている時間はない。
 不本意だが一応自分の使い魔ということにしているドラえもんが、貴族と決闘しようというのだ。
 自分は主人として、この無謀を止めなければならない。……まあこの怒り具合を見れば、絶望的な気もするが。
 とにかくルイズは諭すようにドラえもんに話しかけた。
「いい、ドラえもん。ドットとはいえ、魔法が使える貴族にただの平民や使い魔が勝てるはずないの。
 そりゃ、使い魔と言ってもドラゴンとかなら話は別かもしれないけど、タヌ…、じゃなかった、ネコじゃ……」
 今度は掛け値なしの親切心からルイズがそう忠告するが、怒り心頭のドラえもんにはやはり届かなかった。
「いいや。ぼくはもうゆるさないぞ。貴族だからってあんなにいばりちらして。
 そ、それに、ぼくのことを、なんども、なんども、タヌキ、タヌキって……。
 きょうというきょうは、めっためたにしてやる!」
 ドラえもんはそう息巻いたかと思うと、
「そうさ。ぼくのひみつ道具でけちょんけちょんのコテンパンにやっつけてやる! くふ、くふふふふ!」
 おもむろにポケットから様々な道具――腕くらいの太さの黒い筒や、オモチャの銃――を取り出し、
ぶつぶつと呪詛の言葉を呟きながら磨き始めた。
「そ、そう? じゃ、じゃあまあ、がんばりなさいよね」
 尋常じゃなく頭の沸いている様子のドラえもんに、ルイズもさすがに引く。
「頭がかわいそうなタヌキさんなんですね…」
 見れば、メイドのシエなんとかまでが、何かせつないものを見るような目つきをしている。
「こんな調子でだいじょうぶなのかしら…」
 ルイズは首をかしげるが、こうなってしまったドラえもんを止める術はない。
 内心やきもきしながら、道具の手入れをするドラえもんを眺めるだけだ。

 そうして、決闘の時がやってきた。


「タヌキくん。もうしわけないが、本来なら君のような使い魔ごときに使う時間は僕にはないんだ。
 だから、僕のワルキューレ七体で、すぐに葬らせてもらうよ!」
 ギーシュの言葉と共に手に持った薔薇から花弁が飛び、それが次々と形を変え、
「さあこれで全部だ。この『青銅』のギーシュの力、思い知るがいい!」
 なるほど、『青銅』の二つ名に恥じない見事なゴーレムを七体錬金してみせた。
 一方で、ドラえもんが用意したのは、
「空気ほう~!」
 小さな突起のついた筒一本。
 それを手にはめると、こちらもこれで準備万端とばかりにギーシュに向き直った。
「ははははは! さすがゼロのルイズが喚び出しただけのことはある!
 魔法の才能はなくても、人を笑わせる才能だけはあるようだね!」
 ギーシュは笑い声をあげると、一気に勝負を決めるべく、ワルキューレに命じる。

「さあ行け! 僕のワルキュ「ドカン!」……え?」

 自分が目にした光景が信じられず、ギーシュは目をしばたかせる。
 それは周りで見物していた学院の生徒たちも、主人のはずのルイズですら同じだった。
 みんなタヌキに、いや、キツネにつままれたような顔をしてドラえもんを見ている。
「な、ワルキューレ…?」
 ドラえもんが「ドカン!」と口にした瞬間、手にはめた筒から衝撃波が飛び出し、
それがギーシュのワルキューレに直撃して吹き飛ばしたのだ。
 しかもどれだけの威力があったのか、壁に激突したワルキューレはバラバラに壊されていた。
「ま、まだだ! まだ僕のワルキューレは六体いる! それに、もう一度錬金し直せば……」
 ギーシュは残ったワルキューレに望みを託し、何とか巻き返しを図ろうとするが……。

 それから先は、ほんの数秒の出来事だった。

「ドカン! ドカン! ドカン! ドカン! ドカン! ドカン!」
 ドラえもんがドカンと口にする度、ドラえもんの手にはめた筒から衝撃波が出て、
ギーシュの作り出したワルキューレたちをただの鉄くずに変えていった。
 ……結果。
「な、な……。こんなことが、僕の、ワルキューレたちが……」
 瞬く間にワルキューレを全滅させられ、ぼうぜんと膝をつくギーシュ。

 ――その目の前に、一つの丸い影が差した。


 ジャキン、とドラえもんは至近距離からギーシュに空気砲を向ける。
「あ、あ……」
 ギーシュの口から言葉にならないうめきが漏れた。
 ……ギーシュにはもう戦意はなかった。
 こんな相手に勝てるワケがない。それよりこれ以上逆らって、
大怪我でもさせられたらつまらない。
 そう考えたギーシュが「参った」と言いかけた、その時だ。
「……ふう」
 さんざん発砲してようやく正気に戻ったドラえもんがため息をつく。
 コテンパンにしてやろうと思っていたのに、どうにも簡単にギーシュが折れてしまって、
やる気がなくなってしまったのだった。
 ――もう勝敗は決した。このまま少し説教でもして、一度謝らせたら終わりにしよう。
 ドラえもんはそう考えて、ギーシュに話し始めた。
「きみはまったくこんじょうがないなあ。心がよわいやつほ『ど、かん』たんに…」

 が、事件はその時起こった。

 ドラえもんの言葉に反応して、あらぬ方向へ向けて空気砲が発射されたのだ。
「わああっ!」
「きゃあっ!」
 見物していた生徒たちが悲鳴をあげる。幸いにも、人に直撃はしなかったようだが、
その代わり、
「あ、あれは…!」
 どこにひそんでいたのだろうか、爆風に飛ばされ一匹のネズミが広場に降って来て、


「ね、ネズミー!! ……きゅう」


 ――ドラえもんは倒れた。



 突然の状況の変化についていけず、ぼうぜんとしていたギーシュだが、
ドラえもんを助けにルイズが駆け寄ってくる段になって、ようやく口を開いた。
「あー。……この場合、決闘の勝者はどっちということになるのかな?」
 ルイズはドラえもんのほおをぺちぺちとたたきながら肩をすくめた。 
「どっちでもいいわよ、そんなの。……それとも、この状況になってもまだ
 あんたは勝ち負けにこだわるっていうの?」
 ルイズに言われてギーシュが辺りを見回すと、さっきまで熱心に見物していた生徒たちは
明らかに拍子抜けした様子で帰っていくところだった。
 もう、二人の決闘に注意を払っている者などいない。
 それを見て、ギーシュは悟った。
 この決闘の勝者がどちらなのか、この決闘が後にどういう影響をおよぼすのか、
そもそもこの騒ぎに何の意味があったのか、それは分からない。
 ――だがなんにせよ、もう決闘は終わったのだった。

「うん、そうか。じつにその通りだな、うん」
 納得して、ギーシュはうなずいた。
 そもそもこれは、ギーシュにとって特にする意味などなかった決闘だ。
 ネズミが出てくるまでは負けそうだったのだし、このままうやむやになってくれる方が
ギーシュにとってはむしろ都合がいい。
 ギーシュはしきりにうんうんとうなずいていたが、ふと気になってルイズに聞いた。
「そういえばさっきのネズミ、あれはなんだったんだ?」
「たぶん、学院長のモートソグニルじゃない?
 たしかこの前、ミス・ロングビルの足の下を入りこもうとして
 思い切り踏んづけられてるのを見たことがあるわ」
「……なるほど」
 そういえば学院長のセクハラネズミについてはギーシュも聞いたことがあった。
 それが自分のピンチを救ったというのは微妙に思ったが、考えてみれば靴に踏まれたり、
爆風に吹き飛ばされたりとなかなか災難である。
「なかなかふびんな使い魔だな。今度、ナッツでも持っていってやるか」
 ギーシュのその言葉は、何の気のなしに言った発言だったのだが、
「なら、今から行ってきなさいよ。善は急げだわ」
 予想もしなかったことに、ルイズがそう促した。
「なに? 今かい? しかし、大した用もないのに学院長室を訪れるなんて……」
「そうじゃなくて、今日の報告をしてきたら、って言ってるの。
 これだけの騒ぎになったんだし、使い魔が見てたんだもの。
 きっと学院長はもうお知りになられてるわ。
 だったら呼び出される前に自分で事情を説明した方がいいでしょ。
 ……ま、勝手に決闘騒ぎ起こしたんだから、怒られるかもしれないけど」
 そのルイズの言葉に、ギーシュはさらに戸惑った顔をした。


「その、それについては異論はないが……。このまま行ってもいいのかい?
 君の使い魔、倒れているようだが」
「こいつはネズミを見て倒れただけよ。別にあんたのせいじゃないわ」
「しかし…」
 なおも渋るギーシュに、ルイズははっきりと首を振った。
「こいつは、わたしの使い魔だもの。だから、わたしが連れて行くわ」
 ルイズはみっともなくひっくり返っているドラえもんの姿を、どこか優しい目で見つめながら、
「たとえコントラクト・サーヴァントしてなくても、こいつを喚んだのはわたしだから」
 と付け加え、ドラえもんのテッカテカの頭をなでる。
 その姿を見て何か感じるところがあったのか、ギーシュはぽりぽりとほおをかきながら口を開く。
「その、なんだ、ルイズ」
「……なによ?」
「あー、今まで君のこと、ゼロだゼロだとバカにしていたが、その……」
「だから何よ。言いたいことがあるならはっきり言いなさいよね」
 急かされ、ようやく覚悟を決めたのか、ギーシュは心持ち早口に言う。
「いや、その、つまりだね。……今の君の姿は、なんというかこう、とても貴族らしいと思ったよ。
 魔法がどうこう、家柄がどうこう、ではなく、その態度というか、心が、ね」
「…え?」
 ルイズはぼうぜんとギーシュを見返した。
 なにそのキザな台詞、こいつ頭沸いてんじゃないの、と思ったワケではない。
 今まで言われたことのないようなことを言われ、すぐには誉められたと気づかなかったのだ。
「さ、さて…」
 するとギーシュはどうにも恥ずかしくていたたまれないとばかりに立ち上がり、
「で、では僕は行くよ。……あ、そうそう。そこのネコくんに、君は使い魔は使い魔だが、
 勇気ある使い魔だ。侮辱して悪かった、と伝えておいてくれ」
 そう言葉を残すと、顔を真っ赤にしたまま立ち去ってしまった。
「……なによ。伝えたいことがあるなら、自分で言えばいいじゃない」
 小さくなっていく背中に、ルイズは小さくそう毒づく。
 もう少し素直に喜べばいいのだが、慣れない誉め言葉を聞いて、ルイズも恥ずかしかったのだ。
 それから、ルイズは倒れたままのドラえもんに向き直り、
「あんたはまあ、今日はがんばったわ。だから、ご主人様のわたしが部屋まで運んであげる。
 きょ、今日だけ、今日だけ特別なんだから、感謝しなさいよね!」
 誰が聞いている訳でもないのに、まるで言い訳するようにそう語りかける。
 そして……



「あああ! やっぱり誰かに頼めばよかったわ! 重い! こいつ重すぎる!」
 ルイズはドラえもんの体をずりずりと引きずりながらそうぼやいた。
 ギーシュだけでなく、あの後メイドのシエなんとかがやってきて「お手伝いしますわ」
とかなんとか言ってきたのだが、ルイズは意地を張って受け入れなかったのである。
「まったく、わたしより背もちっちゃいのにどうしてこんなに重いのよ。
 こいつ一人で129.3キロくらいあるんじゃないかしら」
 ぶつくさと言いながら、それでも何とかズルズルと数ミリずつ引きずっていくが、
こんなことをしていては部屋に着く前に日が、いやもうむしろ年が暮れてしまうだろう。
「こんな時、わたしにもレビテーションとか軽量化の魔法が使えたら……」
 ゼロのこの身が恨めしい、とないものねだりの言葉を漏らし、
しかしそこでルイズは、名案を思いついた、とばかりに手をたたいた。
「そうだわ。サモン・サーヴァントは成功したんだし、錬金は無理でも、
 レビテーションくらいなら使えるようになってるかも」
 その言葉にはどんな根拠があったのか、とにかく楽をしたいルイズは
ドラえもんに向けて杖を向け、朗々と呪文を紡ぐ。
 そして、


「レビテーション!」












 その後、ドラえもんの姿を見た者はいない……



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