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毒の爪の使い魔-14




――『土くれのフーケ』による秘宝の盗難事件から数日…

「くわあああぁぁぁぁぁ~~」
本塔の屋根の上に寝転んだジャンガは口を開き、大きな欠伸をした。
眠気に霞む目を擦る。
「どうしたい相棒、そんな大きな欠伸をしやがって…退屈なのか?」
隣に置いてある鞘に納まった剣が僅かに鞘から出て、金具を鳴らして話しかける。
インテリジェンスソード……知性を持たされたその剣の名はデルフリンガー。
昨日、ジャンガが暇潰しに町へ出た際、度々客に喧嘩をふっかける為、
店主によって処分されかけていた所を彼が気まぐれで貰ったのだ(無論、脅す形でタダにして)。
この剣…よく喋る為にうるさい事この上ない。鞘に収めていても勝手に鞘から出て、喋りまくるしまつだ。
だが、ジャンガは特に気にする事は無かった。…この程度のお喋りな相手にはジョーカーで慣れているからだ。
(あんまりうるさいなら、地面にでも埋めればいいしよ…)
デルフリンガーの言葉を適当に聞き流しながら、ジャンガは先程の事を思い返していた…。



――今から三十分程前…

フーケ襲撃の際にその場にいたという事で、ルイズ、キュルケ、タバサの三人にジャンガを加えた四人は、
コルベールにより本塔最上階の学院長室へと呼び出された。
学院長室にはコルベールやオスマン氏、ミス・ロングビルの他にも学院の教師達が顔を揃えている。
全員が揃い、まずは独自に調査をしていたと言うミス・ロングビルの報告から話は始まった。
「街で色々と聞き込みをした所、森の奥の廃屋に出入りしている不審な人物を目撃したと言う情報を入手しました」
「流石はミス・ロングビル、仕事が早いの」
自分の秘書の手際の良さに、オスマン氏は微笑む。
それにミス・ロングビルも笑顔で返すと、手に持った丸められた紙を差し出す。
「それで、聞き込みで得た証言を素に、私が描いてみたのがこれです」
ミス・ロングビルの差し出した紙を受け取り、広げてそこに描かれた人物を確認する。
オスマン氏は頷き、確認を取るべくその人物画をルイズ達に見せた。
そこに描かれていたのは紛れも無く、ゴーレムに乗っていた黒ローブの人物=フーケ。


「どうかね?」
「間違いありません、これはフーケです!」
尋ねるオスマン氏に、ルイズは確信を持って答えた。
ルイズの言葉に教師達の間にざわめきが広っていく。コルベールはオスマン氏に言った。
「直ぐに王室に報告しましょう。王室衛士隊に頼んで兵を差し向けてもらわなくては」
「そんなグズグズしておってはフーケに気取られる。ここは我々の力で『破壊の箱』と『紅の巨銃』を奪還し、
盗賊によって汚された学院の名誉を取り戻すのじゃ」
オスマン氏はそう言うと、教師達を見回しながら声を張り上げる。
「では、捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ!」
杖を掲げようとする者はいない。困ったように顔を見合わせるばかりだ。
「どうした?フーケを捕らえて、名を上げようとする者はおらんのか!?」
教師達を見回しながら、オスマン氏が再度声を張り上げる。しかし、それでも教師達は皆、顔を見合わせるばかりだ。
すると、それまで俯き黙っていたルイズが杖を掲げた。
「私が行きます!」
突然の事に教師達一同はルイズを見て、驚きの表情を浮かべる。
そんなルイズに続くように、キュルケも杖を掲げる。
「ツェルプストー?」
「ヴァリエールには負けられませんもの」
「あんたねぇ…」
半ば呆れたような視線を向けるルイズ。
と、キュルケはルイズの向こうに立つタバサを見て驚く。
見ればタバサもまた杖を掲げている。
「タバサ、貴方はいいのよ。これは私達の問題なんだから」
キュルケの言葉にタバサは表情を変えずに一言。
「二人が心配」
その言葉にキュルケとルイズの二人は嬉しさに思わず微笑む。
オスマン氏はそんな三人のやりとりを見ると、軽く咳払いをする。
「では、三人に頼むとしよう」
そしてオスマン氏は三人を改めて見回す。
「この三人はフーケの目撃者だ。それにミス・タバサは、若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておるが?」
「騎士?」
「本当なのタバサ?」
驚く二人の言葉にタバサは小さく頷いてみせる。
そんな二人とは別に、ジャンガはオスマン氏の説明に納得していた。
(なるほどなァ…。この前、吸血鬼の件であの竜に騎士だとか名乗らせていたのはそれでか)
続いてオスマン氏はキュルケを見つめた。
「そしてミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人の家系で、彼女自身も可也強力な炎の使い手と聞くが?」
キュルケは得意げに鼻を鳴らし、胸を張る。
「そして…、こほん」
最後にオスマン氏はルイズを見たが、軽く咳払いをすると、直ぐに目を逸らしてしまった。
無理も無い……何しろ、誉める所が殆ど無いのだ。オスマン氏は悩みながら口を開く。
「その……、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女で、
その…うむ…なんだ…、将来有望な――」

「ハッキリ言っちまえよ?『テメェには誉める所なんか何一つ無い!』ってな」


その場に居た一同全員が声の方に顔を向ける。
ジャンガが呆れを通り越したような表情で一同を見ていた。
「見ていて滑稽な事、この上無いな。ダメな奴はダメなんだよ…、無理して誉める必要なんざ無ェんだゼ?」
「な、何ですって!?」
ルイズの怒鳴り声などなんとも感じないジャンガは鼻で笑う。
「何逆ギレしてやがるんだ?事実だろうが…。爆発しか起こせない、他人に迷惑を掛ける事しか出来ないくせによ」
「そ、そんな事無いわよ!」
「ほゥ?…本当にそう言い切れるのかよ?」
「ど、どう言う意味よ?」
ジャンガの言葉に嫌な予感がした。こういう時、こいつは大抵碌な事を言わないのだから。
ルイズにゆっくりと近寄り、不安に曇る表情を浮かべた顔を覗き込むジャンガ。
「聞いたゼ~?お前の大切な”お友達”のお姫様…今回の事の責任を負わされそうになってるんだってな?」
「…な、何であんたが、私と姫殿下の関係を……そんな事を知ってるのよ?」
「あの夜のお話、聞かせてもらっただけさ」
「ぬ、盗み聞き……あ、ああ、あんた~…」
「それは置いといてだ…。お姫様は大切なお友達のお前の活躍を見たいから、品評会を見に来たんだよな~?
…周囲の反対を押し切ってよォ~。その為、学院の警備兵は全員お姫様の警護…、お陰で警備は薄くなったと。
…まァ、お前に似て我侭で、ガキな事この上ない”ダメ”お姫様だな」
ジャンガの大暴言にルイズはわなわなと身体を震わせる。
「あ、あんた…な、ななな、なんて事言うのよ!?」
「ハンッ、事実じゃねェのか?まァ、別にどうでもいい事だけどよ…。
で…話を戻すがよ、お前は俺があのゴーレムとやりあってる時に何をした?」
「な、何って…本塔の壁を壊そうとしているゴーレムに”ファイヤーボール”を唱えただけよ。…失敗したけど」
「その失敗で、テメェは…”これ”を傷付けたんだよなァ~?」
言いながらジャンガは爪でマフラーの端を持ち上げ、その先端をルイズに突きつける。
マフラーの先端部分の色が微妙に変わっている…いや、別の毛糸で編まれているのだ。
あの後、欠けたマフラーをどうにか出来ないかと悩んでいたジャンガは、
偶然シエスタが編み物が得意だと言う事を思い出し、彼女に良く似た色の毛糸で欠けた部分を直してもらったのだ。
微妙に色は違い、また長さ等も微妙に変わっていたが、欠けているのを見ているよりは幾分かマシだった。
「まァ…それも置いとく。それでだ、お前はその失敗の爆発で壁に穴を開けたんだよな?」
「あ…」
そうなのだ。彼女の起こした爆発が壁の一部に罅を入れてしまった為、フーケのゴーレムに侵入されてしまったのだ。
「お前が短絡的な行動に出たりしなけりゃ壁は壊れなかったし、あのまま俺がフーケの野郎を仕留めてたのによ…。
言い換えれば、テメェは盗みの手助けをしたのと変わりないんだぜ?しかも、お姫様も迷惑を被った。
キキキ、傑作じゃねぇか?貴族なのに盗人の手助けをして、
挙句にテメェでテメェの大切なお姫様に”悪夢”を届けたんだからよ?…キキキキキ」
ルイズは呆然とジャンガを見つめるしか出来なかった。ジャンガはニヤリと笑う。
「解るかよ?テメェが爆発一つ起こしただけで、学院と俺と姫様と…これだけの規模で”悪夢”を届けたんだ?
やっぱりテメェは『悪夢のルイズ』だよ……他人に不幸を届ける事しか出来ない”疫病神”なんだよ!!!」
ジャンガの叫び声に学院長室は沈黙に包まれた。ルイズは顔面蒼白、目には涙を浮かべ始めている。
それでもルイズは何とか反論しようとする。
「ち、違う…私は、誰かを苦しめたりなんか…するつもりは――」
「無かった…って言うつもりかよ?言い訳にもなんねェゼ」
「私はただ……ただ…」
言いながらルイズは床に膝を突き、遂に泣き出してしまった。
そんなルイズをジャンガはこれ以上無い位の冷酷な目で見下ろす。
(ケッ…この程度で言い負かされるなんてよ…、やっぱこのガキはダメだな…。…似ているのは目と髪だけか…)
ジャンガはそのまま踵を返すと、そのまま部屋を出て行った。

「盗人捕まえに行くならテメェ等だけで行きな。俺は御免だからな…」
部屋を出る間際にそう言い残して…。



――そして話は冒頭に戻る…


白い雲が流れる、澄み渡った青空を見上げた。
些細な悩み事などこの青空を見ているとどうでも良くなってきそうだ。
だが、ジャンガが抱えている事はどうでも良くなるような些細な事ではない。
ジャンガは今度は欠伸ではなく、ため息を吐いた。そこにデルフリンガーが声を掛ける。
「なぁ、相棒?さっきの事だがよ…言いすぎだと思うぜ?」
「…あン?」
「…一々睨むなよ」
「だったら話しかけるな…俺は虫の居所が悪い」
「だろうね……と言うか、相棒の虫の居所が良い時ってあんのか?」
「知るか…」
「そうかい」
それっきり、一人と一振りは口を閉ざした。

…そのまま十分程経っただろうか?

「おい、相棒」
「…話しかけるなっつっただろうが?」
「そんな事言ってないで、”あれ”見てみろよ…”あれ”」
頻りにデルフリンガーは何かを見るのを促す。が、彼には手が無いので何処の何を指しているのか解らない。
「”あれ”ってなんだ……って、ン?」
身体を起こすと、正門から出て行く馬車が目に入った。
それに乗っているのはルイズ、キュルケ、タバサに手綱を握るミス・ロングビルの四人だった。
「ありゃ、間違い無く盗人の討伐…そして盗まれた秘宝の奪還に行くのに間違いないね?」
「だろうな…」
何の関心も示さない口調でジャンガは呟く。
「相棒…いいのかい?」
「何がだ?」
「あのまま娘っ子達を行かせる事さ…。俺はそん時居なかったから見てねぇけどよ…、
盗人の使ったゴーレム…結構デカかったらしいな?」
「”こっち”の単位で言えば三十メイルは軽くあったゼ」
「そんだけデカイ図体のゴーレムなら、あの娘っ子達の魔法じゃ歯が立たないね…。確実に」
「だろうな…」
ジャンガはまた素っ気無い返事を返すだけだ。デルフリンガーは流石にため息を吐いた。
「なぁ…相棒、本当にいいのか?」
「しつけェな…どうでもいいって言っただろうが」
「…はぁ~…こんなにも主人を慕わない使い魔ってのも聞いた事が無いぜ…。
相棒、使い魔の歴史に名が残るんじゃねぇか?」
「…俺は使い魔になんざなった覚えは無ェ…。次、口を開いてみろ…圧し折ってから地中深く埋めるぞ?」
「おお、怖え…。解ったよ、もう黙るよ」
それだけ言うとデルフリンガーは鞘の中へと引っ込んだ。
ジャンガは忌々しげに鼻を鳴らすと、正門から続く道の先へ目を向けた。
馬車は既に小さくなり、視界から消えようとしていた。





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