あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

THE GUN OF ZERO-11



 その日、ルイズは上機嫌だった。
 理由は昨日の使い魔品評会。
 幼なじみでもあるアンリエッタ王女の前で、予定通り行ったクォヴレーの射的。
 弾ごめの間絶えない連続射撃に、他の出席者共々目を白黒していた王女だが、品評会を終えた後、こっそり会ってこう言ってくれたのだ。
『人間の使い魔だなんて変わっていますけど、とても強い使い魔を呼んだのですね、ルイズ。あなたの努力が実を結んだ証でしょう』
 誉めてもらえた!
 幼い頃からの一番の友達に!
 王族の少女に!
 それだけでもう舞い上がってしまっているルイズだ。開始前に「アンリエッタ様に見せるには、無骨すぎはしないだろうか?」などと悩んでいたのも遠い過去。
 誉められる『一助を担った』クォヴレーにも、何か褒美をあげねばなるまい。
 何が良いだろうか?
 宝石?アクセサリー?
 いやいや、相手は少女ではないのだ。
 だが、異性が喜ぶ物などとんと見当が付かないルイズ。
 ならば、自分にしかできないことをしてあげよう。
 何がある?
 自分は貴族だ。貴族である自分が、彼にしてあげられること。
(そうだわ。今夜のフリッグの舞踏会で一緒に踊ってあげましょう!)
 普通、平民はそこに立つことは出来ないのだ。ならば自分がその場に引き上げてやろう。
 想像してみる。
 自分がドレスを着て、楽士が手がける曲の流れる中、クォヴレーと共に踊り……。
 カッと顔が熱く火照る。
 なんだか凄く気恥ずかしいのは何故だろう?
(そ、そうよ!平民相手だから恥ずかしいのね!でも、ご褒美だからこの恥ずかしさも我慢しなくちゃいけないのよ、私は!)
 そう自分に言い含めつつルイズはしきりに頷いていた。

 その日、オスマンは憂鬱だった。
 理由は昨日の使い魔品評会。
 ヴァリエール公爵家三女の使い魔が、派手なガンアクションを展開したためだ。
 早速今日、王立アカデミーの連中が噂を聞きつけて使い魔と銃の提出を申し入れてきた。
 冗談ではない。
 アカデミーにクォヴレーを差し出せば、下手をすれば解剖しようとする者も出てくるかも知れない。
 そうすれば、いくらあの穏和な性格の少年とはいえ黙ってやられるはずもなく、間違いなく呼び込むだろう。
 ――あの、悪魔を。


『これが、俺のアストラナガン。言ってみれば俺の使い魔のような物だ』
 腰を抜かした自分たちを引き起こそうとしながら、あっけらかんと少年は言った。
 説明の上ではゴーレムのような物だと彼は言っていたが、断じてそんな可愛い物ではないだろう。
 噂の盗賊、土くれのフーケが作るという巨大なゴーレムより一回り小さい程度であるらしいそれは、オスマン達の目の前で常識を遙かに超える高速で飛び去っていった。
 あの巨体。あの速度。
 銃を見た時には、彼に脅威を感じた。今は、恐怖を抱いている。
 グラモンのぼんぼんとの決闘で使って見せた銃など話にならない。本気で彼が戦えば、止めるのに一体何人のメイジが犠牲になるのだろう?
 ……その疑問の正解を知らないだけ、まだしもオスマンは幸せだと言えた。
 結論を言えば、メイジが何人束になったところで、本気を出した彼には敵わないのだから。
 ともかく、銃に関してはコルベールと彼が譲られた銃を説明役として送り、クォヴレーの身柄に関しては、当学院に在籍する生徒の大切な使い魔であるからして、提出しないと盛大に突っぱねてやった。
 だが、今後あの使い魔にもルイズにも自重を求めねばなるまいと、オスマンはため息をついた。

 その日、クォヴレーはいつも通りだった。
 理由はない。当然だ。
 何もないからこそいつも通りの日だ。
 いつも通り朝起きて洗濯に行き、いつも通り帰ってきてルイズを起こすと、結局一度しか手伝わなかった着替えの間は室外で待機。いつも通りルイズが食事をしている間給仕をし、いつも通り授業を聴講。
 その後は、剣を与えられてからルイズに言われて設けた剣の修行時間だった。
「……しかし不思議だ。結局教わることなくそれなりに剣が使えている」
 それなりどころではない。剣を与えられてから一週間余り。今のクォヴレーはもはや達人の域に達していた。
 リシュウ・トウゴウとて切り結べるだろう。
「そりゃそうだろ!何てったって、相棒はガンダールヴなんだからな!」
 手の中の振るっているデルフリンガーが楽しげに答えた。
「ガンダールヴ?何だそれは」
「えーっとだな……そう!『使い手』のことだよ!使い手のことをガンダールヴってんだ!」
「……その『使い手』に関する事を度々聞いてもお前は思い出せていないんだが」
「……面目ねぇ」
「まぁ別に今すぐ思い出さなくても困りはしないが」
 そこで左手甲のグローブに開いた穴から、今現在輝いている使い魔のルーンとやらを見る。


 ……そういえばこれ、確かガンダルフだかガンダールヴだか読むのではなかったか。以前立ち寄った世界の言語を思い返す。
(世界を隔てて同じ言語が使われる。あり得ない話ではない)
 無限に存在し続ける平行世界。それらの根っこは全てが同じで、木の根のように、木の枝のように、いくつもに際限なく分岐し続ける。
 別の世界との分岐前に共通する言語が使われていたのなら、十分に説明の付く事態だ。
 となれば、やはりこのルーンはガンダールヴと読むのが妥当なのだろう。
(使い魔が……ガンダールヴ?いや、このルーンは珍しいと言っていたな、コルベールは)
 思考しつつ剣は中空を奔り続ける。
「そういや相棒。一つ聞きてぇんだがな」
「何だ」
「夜、娘ッ子からわざわざ自由時間を与えられてるってのに、ここ最近はずっとただ飛び回ってるだけじゃねぇか。俺っちとしても今まで見たこと無いところに連れて行ってもらえる散歩は楽しいけどよ。どうせなら少しは休んだらどうだ?」
「別に無意味に飛び回っている訳じゃない」
 振るう腕を止め、デルフリンガーに話しかける。
「挑発して誘って居るんだ」
「挑発?」
 デルフリンガーを鞘に戻して近くの木に立てかけ、訓練後の柔軟を始める。
「……この世界に有るはずのない戦力が紛れ込んでいる話はしたな?」
「ああ。正直、異世界なんてピンとこねぇけどよ」
「そこは別に問題ではないから信じても信じなくても良い。重要なのは、このハルケギニアを軽く征服出来るだけの軍事力を持った個人、あるいは組織が存在しているということだ」
「ふんふん」
 相づちを打つ。
「おそらくそいつらにとって、俺とアストラナガンは邪魔な存在の筈だ。こうしてわざと姿を晒すことで、連中の側からアクションを起こさせたいのと」
「なるほど。できれば、こっちからそいつらを見つける意味も込めて飛び回ってるって事か」
「そうだ」
 屈伸を終え、今度は全身の筋肉を揉みほぐす。
「ところでよ、娘ッ子にははなさねぇのか?」
「何をだ?」
「だから、相棒が戦ってる相手のことだよ」
「話したところで、彼女が信じるとは思えないし、要らぬ不安を与えるだけだ」
 きっぱりと、クォヴレーは言い切った。
「それに俺の推測が正しければ、存在する戦力はこの世界のメイジが束になったところで太刀打ち出来る物ではない。俺一人で動くのが適任だ」
「普通ならここで、『自分一人で戦ってるつもりか!』って怒るんだろうけど、相棒はホントに一人で戦えるからなぁ……」


「別にいつも俺一人という訳ではない。最初は大勢の仲間がいたし、これまで立ち寄った世界でも、時としてその世界の住人に助けを求めたこともある」
 ディス・アストラナガン、そしてその母体となったアストラナガンも基本的にスタンドアローンでの運用を前提とした機体だ。
 それと共に戦うというのは、それなりに力を必要とされる。
 別にクォヴレーとしても真・ゲッターやマジンカイザー程の力を要求している訳ではない。
 しかし少なくとも足手まといになるようでは論外であり、この数週間、この世界の魔法についての知識を授業で得てきたクォヴレーから見て、この世界のメイジがその必要条件を満たしているとは思いがたかった。
 まず第一にスピードと火力である。この世界の魔法は詠唱が長い。威力が高いほど、詠唱時間も増す。
 せめて一小節のみシングルアクションの魔法で、メラゾーマかファイガクラスの火力が欲しい。
 弱い魔法では装甲を打ち抜けないし、ちんたら唱えていては、どんなに威力のある魔法だろうと、発動前にハバククのメタリウム・キャノンで一掃されてしまう。
 第二に機動力である。フライやレビテーションといったコモン・マジックでメイジ達が飛べるのは知っているが、どうにも、遅い。しかも、唱えている間他の魔法を使えないらしい。
 タバサのシルフィードのように、空を飛ぶ幻獣を足場にもするようだが、それでもあの程度のスピードではあっという間にメギロートに追いつかれ、フィールドを纏った体当たりで挽肉にされるのがオチだろう。
 第三に防御力だ。どうもこの世界のメイジ達、防御のことを念頭に置いてないんじゃないかと言うぐらい、防御に関しての魔法が見あたらない。
 事実、そうであろう。攻撃は最大の防御を地でいくスタイルでもって、平民を従えるのがハルケギニアのメイジ達だ。
 土の系統のメイジなら、ゴーレムでもって防御態勢をとれるかも知れないが、材質は所詮土か岩、良くても鋼鉄で、とてもではないがフーレの艦砲射撃に耐えられる物ではないだろう。
 何しろ超合金Z製の鉄の城、マジンガーZにすらまともなダメージを与えるほどの威力だ。
 今回の敵、おそらくはゼ・バルマリィ帝国自動攻撃衛星ネビーイームのネビーイーム本体を除く全戦力を相手取るのに必要な資質は、メギロートぐらいは楽に一掃出来、人型の主力部隊を攪乱し、倒せないまでもフーレの一隻ぐらいは釘付けにしておける程の力だ。
 もちろんディス・アストラナガンの助けを抜いてである。
 部隊単位だろうと一個人だろうと、これぐらいはやって貰わないと足手まといになってしまう。
 ハルケギニアの全メイジを動員すれば、そういった事の出来る部隊も何隊か編成出来るだろうが、その場合人命の消費量が凄まじいことになるし、そもそもハルケギニアのメイジを動員する方法も思いつかない。事実上不可能である。


 以上のことが、クォヴレーの出した結論であり、ルイズを始めとするメイジ達に頼ろうとしない理由だった。
「ったく、相棒が今まで一緒に戦ってきた連中はどんだけ化け物揃いだよ!?」
「フフフ……実に心強い、化け物達さ」
 さらりと、クォヴレーは嘯いた。
 柔軟体操を終えて、デルフリンガーを背負う。
 そこで調度、建物の影から現れたタバサと目があった。
 一瞬の間の後、すっと建物の影に隠れるタバサ。
「……?」
 何をしているのかと尋ねようとしたところで
「クォヴレー!」
 反対側から彼の主が現れた。
「どうした、ルイズ」
 くるりと振り向く。
「え、えっと……今日の夜、フリッグの舞踏会があるのよ」
「聞いている」
「それで……その、昨日は、頑張ったでしょう?」
「頑張った?何をだ」
「品評会よ!おかげで、アンリエッタ様にも誉めて頂いたし……」
 もじもじしながら言葉を続ける。このままもじもじしていては黒か銀色の全身タイツになりそうである。もじもじだけに。
「だから、ご、ご褒美として、今日一緒に踊ってあげるわ!」
「ルイズ、俺は踊りの経験がないんだが……」
「あ、アンタの覚えの早さは知ってるわ!これから舞踏会が始まるまでみっちり練習するわよ。どこに出しても恥ずかしくない紳士に仕立ててあげる!」
 付いてきなさいと言うルイズの後に続く途中、一瞬だけ建物の影を振り返った。もう誰もいないようだ。
(彼女に嫌われて居るんだろうか、俺は)
 ハテ、と首をかしげる。
 名前を交わしたその日にあんなモン見せられて、しかもタバサの苦手な幽霊がどうとかいう話になったのだから、苦手意識ぐらいは持っているのが、当然であろう。クォヴレーには、そんな彼女の感性など知るよしも無かったが。







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