「ふむ…。 ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな…美人だったもので、なんの疑いもなく秘書に採用してしまった」
くそ真面目な顔で語るオスマンを、烈火たち4人が冷めた目で見つめている。
フーケをとらえ、『破壊の杖』を取り戻したルイズたちは、校長室で報告を行っていた。
「君たちの『シュヴァリエ』の爵位申請をだしておいた。
すでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているミス・タバサは、精霊勲章の授与じゃ」
「ほんとですか!?」
無邪気に喜ぶキュルケ。
「なに、君たちはそれほどのことをしたのじゃ」
しかし、ルイズの表情は浮かないものだった。
「…オールド・オスマン。 レッカには、何もないんですか?」
実際にフーケを捕まえたのは烈火なのに、酬いを受けないのはおかしい。
ルイズはそう思った。
「残念じゃが、彼は貴族ではない」
その言葉を聞いてルイズは肩を落とした。
「かまわねえよ姫。 俺、勲章なんていらねえし」
しかし、烈火は満足そうに微笑んでいる。 ルイズが褒められたのがうれしいのだろう。
「そんなことより、早くパーティーに行け。 主役がいねえと始まんねえだろ」
今夜は、フーケを捕まえたルイズたちを主役とした舞踏会が開かれるのであった。
「あんたは来ないの?」
「俺はちょっとこのオッサンに話があるから、遅れて行くよ」
烈火はオスマンを示しながら言った。ルイズはしばらく首をひねっていたが、やがて頷いた。
「わかったわ…なるべく早く来なさいよ。アンタは私の使い魔なんだから。
それから、オッサンじゃなくてオールド・オスマンよ」
「わーったよ。心配すんな」
ひらひらと手を振る烈火。
その態度にルイズは不満そうな顔をしたが、キュルケとタバサに続いて部屋を後にした。
ルイズたちが部屋をでたのを確認すると、烈火はオスマンに向き直った。
くそ真面目な顔で語るオスマンを、烈火たち4人が冷めた目で見つめている。
フーケをとらえ、『破壊の杖』を取り戻したルイズたちは、校長室で報告を行っていた。
「君たちの『シュヴァリエ』の爵位申請をだしておいた。
すでに『シュヴァリエ』の爵位を持っているミス・タバサは、精霊勲章の授与じゃ」
「ほんとですか!?」
無邪気に喜ぶキュルケ。
「なに、君たちはそれほどのことをしたのじゃ」
しかし、ルイズの表情は浮かないものだった。
「…オールド・オスマン。 レッカには、何もないんですか?」
実際にフーケを捕まえたのは烈火なのに、酬いを受けないのはおかしい。
ルイズはそう思った。
「残念じゃが、彼は貴族ではない」
その言葉を聞いてルイズは肩を落とした。
「かまわねえよ姫。 俺、勲章なんていらねえし」
しかし、烈火は満足そうに微笑んでいる。 ルイズが褒められたのがうれしいのだろう。
「そんなことより、早くパーティーに行け。 主役がいねえと始まんねえだろ」
今夜は、フーケを捕まえたルイズたちを主役とした舞踏会が開かれるのであった。
「あんたは来ないの?」
「俺はちょっとこのオッサンに話があるから、遅れて行くよ」
烈火はオスマンを示しながら言った。ルイズはしばらく首をひねっていたが、やがて頷いた。
「わかったわ…なるべく早く来なさいよ。アンタは私の使い魔なんだから。
それから、オッサンじゃなくてオールド・オスマンよ」
「わーったよ。心配すんな」
ひらひらと手を振る烈火。
その態度にルイズは不満そうな顔をしたが、キュルケとタバサに続いて部屋を後にした。
ルイズたちが部屋をでたのを確認すると、烈火はオスマンに向き直った。
ルイズたちが部屋をでたのを確認すると、烈火はオスマンに向き直った。
「すいません、大事な『破壊の杖』を傷つけちまって」
烈火はまず謝った。
「かまわんよ。戻ってきただけで満足じゃ。
もとより、これを戦闘に使う気はなかったからの…
それで、相談とはなんじゃね?」
オスマンの表情が真剣なものになる。
「…この『破壊の杖』は、この世界のものじゃない。俺の世界の武器です」
「…もう少し、詳しく説明してもらおうかの」
結局烈火は全てを隠さず話した。
自分が突然ルイズに召喚されたこと。生まれつきの炎の能力。
そして。
「こいつに書かれている文字。 これは間違いなく俺らの世界の文字だ」
烈火が示した先には取り戻した『破壊の杖』。
棒に埋め込まれた石の玉には、"石"という漢字が書かれていた。
「ふむ…概ね事情はわかった。 儂も君に話しておくべきことがある」
今度はオスマンが話す番だった。
オスマンは昔、ワイバーンに殺されかけたことがあり、そこを『破壊の杖』の持ち主に助けられたという。
「そいつは…『破壊の杖』の持ち主は、今どこに?」
「…怪我をしていたようでな、儂を助けた直後に倒れ、そのまま息をひきとった」
「そっか…」
烈火は不意に自分の左手のルーンを見つめた。
「それについても話があるのじゃ」
オスマンはハルケギニアに伝わる"伝説"を烈火に語った。
「"ガンダールヴ"?」
「そう、君の左手に刻まれたそのルーンは、伝説の使い魔"ガンダールヴ"の印じゃ。
ガンダールヴは、手にしたあらやる武器を使いこなして主人を守ったと言われる」
その言葉で烈火は、武器を手にすると体が軽くなることの意味がわかった。
しかし、疑問は尽きない。
炎は武器として扱われるのか?
自分の体から生み出したものでも、このルーンは反応するのか?
そもそも、この『破壊の杖』は何なのか? こんな武器の話、日本では聞いたことがない。
…それに、どうすれば日本に帰れるのか?
「すいません、大事な『破壊の杖』を傷つけちまって」
烈火はまず謝った。
「かまわんよ。戻ってきただけで満足じゃ。
もとより、これを戦闘に使う気はなかったからの…
それで、相談とはなんじゃね?」
オスマンの表情が真剣なものになる。
「…この『破壊の杖』は、この世界のものじゃない。俺の世界の武器です」
「…もう少し、詳しく説明してもらおうかの」
結局烈火は全てを隠さず話した。
自分が突然ルイズに召喚されたこと。生まれつきの炎の能力。
そして。
「こいつに書かれている文字。 これは間違いなく俺らの世界の文字だ」
烈火が示した先には取り戻した『破壊の杖』。
棒に埋め込まれた石の玉には、"石"という漢字が書かれていた。
「ふむ…概ね事情はわかった。 儂も君に話しておくべきことがある」
今度はオスマンが話す番だった。
オスマンは昔、ワイバーンに殺されかけたことがあり、そこを『破壊の杖』の持ち主に助けられたという。
「そいつは…『破壊の杖』の持ち主は、今どこに?」
「…怪我をしていたようでな、儂を助けた直後に倒れ、そのまま息をひきとった」
「そっか…」
烈火は不意に自分の左手のルーンを見つめた。
「それについても話があるのじゃ」
オスマンはハルケギニアに伝わる"伝説"を烈火に語った。
「"ガンダールヴ"?」
「そう、君の左手に刻まれたそのルーンは、伝説の使い魔"ガンダールヴ"の印じゃ。
ガンダールヴは、手にしたあらやる武器を使いこなして主人を守ったと言われる」
その言葉で烈火は、武器を手にすると体が軽くなることの意味がわかった。
しかし、疑問は尽きない。
炎は武器として扱われるのか?
自分の体から生み出したものでも、このルーンは反応するのか?
そもそも、この『破壊の杖』は何なのか? こんな武器の話、日本では聞いたことがない。
…それに、どうすれば日本に帰れるのか?
「結局、何もわかんねえまんまだな…」
思わずため息が漏れる。
「君に勲章をやることはできん。じゃが、儂に出来ることなら君に尽力を惜しまないことを約束しよう」
献身的なオスマンの言葉も、今は虚しく響くばかり。
サンキュと小さく呟いて烈火は部屋を後にし、舞踏会に向かった。
思わずため息が漏れる。
「君に勲章をやることはできん。じゃが、儂に出来ることなら君に尽力を惜しまないことを約束しよう」
献身的なオスマンの言葉も、今は虚しく響くばかり。
サンキュと小さく呟いて烈火は部屋を後にし、舞踏会に向かった。
烈火が会場に到着したのは、舞踏会が始まってから1時間半も後だった。
どうやらそろそろお開きのようで、すでに人が減り始めていた。
しゃあねえ、俺も部屋に戻るか…烈火がそう思ったとき。
「遅いわよ、レッカ!!」
君主の声に、烈火は反射的に振り向いた。
「ああ、ごめんひ…」
烈火はそこで固まった。
ドレスアップしたルイズは、普段とはまた違う貴賓溢れる美しさを湛えていた。
「へえ。 馬子にも衣装じゃねえか」
デルフリンガーがからかうように言う。
「うっさいわね…何ぼーっとしてんのよ、レッカ?」
「あ…ああ、わりい。 キュルケとタバサは?」
「待ちくたびれて先に帰っちゃったわよ」
ルイズが怒ったように言う。
「そっか。じゃあ俺らも帰ろうぜ。もう舞踏会もお開きみたいだし」
くるりと向きを変え、歩きだそうとする烈火。
眩しすぎて、これ以上ルイズを見ていられなかったのである。
「…待ちなさい」
ルイズは烈火の服を掴む。
「何だよ?」
「…どりなさい」
「何?」
「一緒に踊りなさい!って言ってるの!!」
一瞬、烈火はルイズの言ってることが理解できなかった。
「え? でも、俺ダンスなんかやったことないし…」
「あんた運動神経いいでしょ! 私に合わせれば大丈夫だから、早くしなさい!!」
ルイズは強引に烈火はフロアに引っ張った。
どうやらそろそろお開きのようで、すでに人が減り始めていた。
しゃあねえ、俺も部屋に戻るか…烈火がそう思ったとき。
「遅いわよ、レッカ!!」
君主の声に、烈火は反射的に振り向いた。
「ああ、ごめんひ…」
烈火はそこで固まった。
ドレスアップしたルイズは、普段とはまた違う貴賓溢れる美しさを湛えていた。
「へえ。 馬子にも衣装じゃねえか」
デルフリンガーがからかうように言う。
「うっさいわね…何ぼーっとしてんのよ、レッカ?」
「あ…ああ、わりい。 キュルケとタバサは?」
「待ちくたびれて先に帰っちゃったわよ」
ルイズが怒ったように言う。
「そっか。じゃあ俺らも帰ろうぜ。もう舞踏会もお開きみたいだし」
くるりと向きを変え、歩きだそうとする烈火。
眩しすぎて、これ以上ルイズを見ていられなかったのである。
「…待ちなさい」
ルイズは烈火の服を掴む。
「何だよ?」
「…どりなさい」
「何?」
「一緒に踊りなさい!って言ってるの!!」
一瞬、烈火はルイズの言ってることが理解できなかった。
「え? でも、俺ダンスなんかやったことないし…」
「あんた運動神経いいでしょ! 私に合わせれば大丈夫だから、早くしなさい!!」
ルイズは強引に烈火はフロアに引っ張った。
ドレスアップした高貴な美少女と、真っ黒のシャツの平凡な少年。明らかに不釣り合いな組み合わせ。
最初は無言でぎこちなく踊っていた二人だったが、烈火がステップに慣れ、表情に余裕が出てきた。
「ねえ、烈火」
「ん、どした姫」
「…信じてあげるわ。あんたが別の世界からきたってこと」
ルイズは華麗にステップを踏みながら言った。
「まだ信じてなかったのかよ…」
ほんと信頼ねーよな、と呆れ顔の烈火。
「今まで半信半疑だったけど…あの『破壊の杖』…あんなの見たら、信じるしかないじゃない」
それからルイズは少し俯いて言った。
「ねえ、帰りたい?」
「そりゃあ、友達も親も心配してるだろうしな」
「そうよね…」
ルイズは烈火から顔を隠した。
烈火は、なぜかルイズが悲しそうな顔をしているのがわかった。
「…でも、今は帰れねえよ」
「え?」
「簡単に君主を見捨てる男なんて、忍者じゃねえからな。
言ったじゃん。俺が姫を守るって」
ルイズは俯き、頬を染めた。
「あ、あと…ありがとう」
烈火はルイズがお礼を言ったことに驚いた。
「なにがだ?」
ルイズはごまかすようにモゴモゴと言った。
「ゴ、ゴーレムの下敷きになりかけたとき、助けてくれたじゃない…その、お礼よ」
烈火は当然、といった顔で返事をした。
「当たり前だろ。 俺はお前を守る忍なんだから」
二人は、月の光に照らされた誰もいない幻想的なダンスフロアで、踊り続けた。
そんな様子をひとり(?)眺めていたデルフリンガーがこそっと呟いた。
「おでれーた! 相棒! てーしたもんだ!」
テーブルの脇に立てかけられた大剣は、カチャカチャと音を立てて続ける。
「主人のダンスの相手をつとめて、おまけに手から炎を出す使い魔なんて、初めて見たぜ!」
最初は無言でぎこちなく踊っていた二人だったが、烈火がステップに慣れ、表情に余裕が出てきた。
「ねえ、烈火」
「ん、どした姫」
「…信じてあげるわ。あんたが別の世界からきたってこと」
ルイズは華麗にステップを踏みながら言った。
「まだ信じてなかったのかよ…」
ほんと信頼ねーよな、と呆れ顔の烈火。
「今まで半信半疑だったけど…あの『破壊の杖』…あんなの見たら、信じるしかないじゃない」
それからルイズは少し俯いて言った。
「ねえ、帰りたい?」
「そりゃあ、友達も親も心配してるだろうしな」
「そうよね…」
ルイズは烈火から顔を隠した。
烈火は、なぜかルイズが悲しそうな顔をしているのがわかった。
「…でも、今は帰れねえよ」
「え?」
「簡単に君主を見捨てる男なんて、忍者じゃねえからな。
言ったじゃん。俺が姫を守るって」
ルイズは俯き、頬を染めた。
「あ、あと…ありがとう」
烈火はルイズがお礼を言ったことに驚いた。
「なにがだ?」
ルイズはごまかすようにモゴモゴと言った。
「ゴ、ゴーレムの下敷きになりかけたとき、助けてくれたじゃない…その、お礼よ」
烈火は当然、といった顔で返事をした。
「当たり前だろ。 俺はお前を守る忍なんだから」
二人は、月の光に照らされた誰もいない幻想的なダンスフロアで、踊り続けた。
そんな様子をひとり(?)眺めていたデルフリンガーがこそっと呟いた。
「おでれーた! 相棒! てーしたもんだ!」
テーブルの脇に立てかけられた大剣は、カチャカチャと音を立てて続ける。
「主人のダンスの相手をつとめて、おまけに手から炎を出す使い魔なんて、初めて見たぜ!」